「メタボリックシンドローム」というと、おなかがぽっこり出た状態がイメージされますが、実際には単なる「おなか太り」だけの問題ではありません。
今は何ともなくても、将来の健康や命にまで関わることもある高リスクの状態です。
この記事では、「メタボ」が気になり始めた人に向けて、メタボリックシンドロームの定義と原因、改善するためのポイントを紹介します。
診断基準や改善のためのポイントも紹介しますので、生活改善のきっかけにしてくださいね。
Contents
メタボリックシンドロームとは
「メタボリックシンドローム」「メタボ」とは、内臓脂肪の蓄積と代謝異常が重なった、心血管疾患リスクの高い状態を指します。
特定健康診査、いわゆるメタボ健診では、腹囲と血糖値、血圧、血中脂質の数値を組み合わせて診断されます。
メタボリックシンドロームの定義と診断基準について詳しく解説します。
内臓脂肪蓄積と代謝異常による心血管疾患高リスク状態
メタボリックシンドロームとは、「内臓脂肪型肥満に高血圧や高血糖、脂質代謝異常が組み合わさった状態」であり、「心血管疾患(心臓病や脳卒中)を起こしやすい状態」を指します。
肥満に加えて複数のリスクを抱えることで、単なる肥満よりもさらに健康リスクの高い状態であると考えられています。
メタボリックシンドロームと診断されても、痛みや明確な不調などの「自覚症状」はほとんどありませんが、その一方で動脈硬化が進行し、血管が傷つけられて硬くなり、内側が狭くなって詰まりやすくなってしまいます。
このとき、血管の詰まりが心臓や脳で起こると「心筋梗塞」「脳梗塞」といった命にもかかわる重大な病気にもつながります。
メタボリックシンドロームの診断基準
メタボリックシンドローム診断基準検討委員会におけるメタボリックシンドロームの診断基準は以下の通り。
- 腹部肥満…腹囲男性85㎝以上、女性90㎝以上
に加えて、
- 糖代謝異常…空腹時血糖110㎎/dL以上
- 脂質代謝異常…血中中性脂肪150㎎/dL以上または血中HDLコレステロール40㎎/dL未満
- 高血圧…収縮期血圧130㎜Hg以上または拡張期血圧85㎜Hg以上
のうち2つ以上が該当する場合、メタボリックシンドロームと診断されます。
また、メタボリックシンドロームの診断基準における「ウエスト周囲径(腹囲)」は内臓脂肪面積を反映します。
洋服のサイズとは異なり、おへその高さで測るものなので注意が必要です。
メタボリックシンドロームの原因
では、メタボリックシンドロームになってしまう原因は何なのでしょうか?
- 肥満
- 栄養バランスの乱れ
- 飲酒、運動不足、喫煙などの生活習慣の問題
などが挙げられます。
以下より詳しく解説します。
肥満
メタボリックシンドロームの原因のうち、最も主要なものは「肥満」です。
肥満はウエスト周囲径以外の高血糖・脂質代謝異常・高血圧の発症リスクにも大きくかかわっています。
このことからも、メタボリックシンドロームの診断には、腹部肥満が必須の項目です。
肥満は食事からの摂取エネルギーと、日常生活での消費エネルギーのバランスがとれておらず、摂取エネルギーが多すぎる(消費エネルギーが少なすぎる)ことの積み重ねによっておこります。
栄養バランスの乱れ
食事から摂取する栄養バランスの乱れは、肥満のほか、高血糖や高血圧、脂質異常症のリスク要因となります。
具体的には、以下のような問題点が肥満や各種代謝異常の原因となります。
- 摂取カロリー過剰
- 栄養素(たんぱく質、脂質、炭水化物)の摂取バランスの乱れ
- ナトリウムの摂取過剰
- 飽和脂肪酸の摂取過剰
- 食物繊維の摂取不足
このような栄養バランスの乱れが長期に及ぶと、肥満や代謝異常を引き起こし、メタボリックシンドロームの原因となります。
飲酒、運動不足、喫煙などの生活習慣
食事以外の生活習慣上の問題もメタボリックシンドロームの原因となります。
- 過剰な飲酒
- 運動不足
- 喫煙
酒類に含まれるアルコールはカロリーのある物質であり、臓器や代謝に影響を及ぼすことが知られています。
そのため、過度のアルコール摂取では肥満のほか、肥満とは別に高血圧の原因となります。
運動不足は消費カロリーが少なくなる要因であり、肥満の原因のひとつです。
また、体内の代謝にも影響を及ぼし、高血糖などの代謝異常を起こしやすくします。
喫煙は肥満や食生活にかかわらず、動脈硬化を進行させる要因で、脳卒中のリスクを高めることが知られています。
メタボ健診では肥満や代謝異常に加えて喫煙習慣がある場合、指導レベルが上昇するなど、リスクを高める一因とされています。
メタボリックシンドローム改善のために必要なポイント
メタボそのものはまだ重大な健康障害がある状態ではありませんが、命にかかわる病気の前段階にあり、将来の病気を予防するための取り組みが必要な状態です。
メタボリックシンドロームは生活習慣等の見直しで改善ができる段階でもあり、「生活習慣改善のタイミング」と考えるのがよいでしょう。
具体的には、以下のような取り組みが有効です。
- 減量
- 食事の見直し
- 節酒、禁煙
- 適度な運動
それぞれの内容について詳しく解説します。
減量
メタボの改善のためには、まずは減量を目指すのが一般的です。
メタボリックシンドロームにおいて、肥満は全員に共通するリスクであり、ほかの項目の大きな発症要因でもあるためです。
後に述べる食事の見直しや運動によって、摂取カロリーと消費カロリーのバランスを是正しましょう。
とはいえ、直ちに標準体重まで落とす必要はありません。
ウエスト周囲径の1㎝低下はおよそ1㎏の減量に相当しますが、短期間で一気に減らそうとするのはリバウンドや体調不良のリスクが高いためです。
現実的には1か月あたり1~2㎏、少しずつ減らしていくのが理想的です。
1㎏の体脂肪に相当するカロリーはおよそ7200kcalともいわれます。
1カ月あたり1㎏減量するためには、摂取カロリーが消費カロリーより1日あたり240kcal少なくする必要があります。
食事の見直し
肥満の解消のため以外でも、食事の見直しはメタボ改善に役立ちます。
- 摂取カロリーの是正…肥満、高血糖、高血圧、脂質異常の改善
- ナトリウムの摂取を減らす…高血圧の改善
- 飽和脂肪酸の摂取を減らす…脂質異常症の改善
- 食物繊維の摂取を増やす…脂質異常症の改善
見直しポイントごとに効果のあるリスク要因は異なりますが、メタボリックシンドロームを構成するリスク要因はそれぞれ関係しあっているため、取り組むものを限定しすぎず、できそうなものから徐々に取り組むのがおすすめです。
節酒、禁煙
メタボリックシンドロームの改善のためにはアルコールを適量範囲にすること、喫煙はやめることが望ましいでしょう。
節酒によって肥満の解消も期待でき、禁煙では呼吸器の疾患リスクを低減することが期待できます。
個人差はありますが、適量のアルコールとは1日あたり男性では20g、女性では10gとされており、アルコール20gはビール中ビン1本に相当します。
「適度な飲酒」について詳しく解説した記事はこちら
適度な運動
運動、特に有酸素運動を行うことが推奨されています。
有酸素運動には、以下のようなものが挙げられます。
- ウォーキング
- ジョギング
- サイクリング
- 水泳
いきなり負荷の高いものを行うのではなく、長期間行うことができるような、無理のない内容を心がけましょう。
まとめ
「メタボ」と簡単に表現されていても、その中身はかなり複雑で、原因や状況も人それぞれ異なります。
単純に食事量が多すぎる場合もあれば、特定の栄養素が極端に多い場合もあります。
食事よりも運動量が問題になることもありますし、仕事による生活リズムが原因となることもあります。
メタボを引き起こす原因と同様に、改善すべきポイントも共通するこれというものはありません。
メタボに着目した特定健診(メタボ健診)・特定保健指導を活用し、医師や管理栄養士など、専門家とともに原因を探るのがおすすめです。
自分では気づかなかった問題点が原因になっていることもあるので、健康診断などでメタボと診断されたときは、医師や管理栄養士に相談してみてくださいね。
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参考文献 メタボリックシンドローム診断基準検討委員会. メタボリックシンドロームの定義と診断基準. 日本内科学会雑誌; 2005;94:188-203. |