牛乳を飲むとおなかがゴロゴロして痛くなる、下痢をするという人は少なくありません。
それはもしかしたら、「乳糖不耐症」かもしれません。
乳糖不耐症とは何か、毎日の生活の中での対処法を解説します。
Contents
乳糖不耐症とは
乳糖不耐症とは、母乳や牛乳などに含まれる「乳糖」を分解吸収できない状態のことを指し、成人の多くがこの乳糖不耐症であることが知られています。
乳糖不耐症は主に消化管内のトラブルを起こすものですが、免疫系のトラブルであるアレルギーとは異なるものです。
乳糖を分解吸収できない状態
「乳糖」は牛乳や母乳に含まれる糖質で、ヒトを含む哺乳類において、赤ちゃんの主な栄養源のひとつとなっています。
乳糖の分解・吸収には乳糖分解酵素(ラクターゼ)を必要とします。
乳から主な栄養を得ている赤ちゃんの時には、ほとんどの人が乳糖を分解する乳糖分解酵素(ラクターゼ)の活性が高い状態です。
しかし、生まれ持っての体質や、成長によって乳糖分解酵素(ラクターゼ)の分泌が不足すると、十分に乳糖が分解できないといったことが起こります。
乳糖が分解できず、体内に吸収されない状態を乳糖不耐症と言います。
吸収されない乳糖は腸管内を刺激し、かつ大腸での水分吸収を阻害するために、腹痛や下痢といった症状が現れます。
多くの場合、ほんの少量の牛乳でもおなかを壊すということではなく、成人では牛乳で250~375ml以上をとった時など、比較的多い量を摂取したときにあらわれるようです。
大人の多くは乳糖不耐症
母乳やミルクから主な栄養を得ている時期では多くの人が乳糖分解酵素を多く持ちますが、成長に伴って分泌量が減ることが知られています。
そのため、個人差はあるものの、2~3歳以降のほとんどの人は乳児期よりも乳糖を分解する能力は落ちています。
乳糖不耐症と判断される人は、全人口の約70%にのぼるともいわれ、アジア人の大人では90~100%の人が乳糖不耐症であるとも言われています。
5歳未満の場合でも、アジア人の子どもでは20%に乳糖を吸収できていないとするデータもあるようで、病気というよりも成長に伴う変化ととらえたほうが実態と近いのかもしれません。
乳糖不耐症と乳アレルギーの違い
乳糖不耐症と乳アレルギーはどちらも下痢の症状がみられるため混同されやすいですが、根本的に異なるものなので区別が必要です。
乳糖不耐症は乳糖を消化吸収できないことで起こりますが、乳アレルギーは本来無害な乳成分に対して免疫が過剰反応することで起こります。
アレルギーでは下痢だけでなく発疹や呼吸困難などの症状が出ることも。
アレルギーの疑いがある場合には、自己判断せず、医療機関を受診するようにしてくださいね。
食物アレルギーについて詳しく解説した記事はこちら
乳糖不耐症の症状
乳糖不耐症の主な症状は腹痛や下痢ですが、大人と子供で現れる症状・影響が異なるため、対処も含めて分けて考えるのがよいでしょう。
大人の乳糖不耐症の症状
大人の乳糖不耐症の症状では、
- おなかの張り
- 腹痛
- 下痢
- 吐き気
などがみられることが知られています。
子どもの乳糖不耐症の症状
子どもの乳糖不耐症に関しても、基本的な症状は大人と同様です。
- おなかの張り
- 腹痛
- 下痢
- 吐き気
このほか、乳児期・幼児期では
- 栄養失調や体重増加の遅れ
- カルシウムの摂取不足
が心配される影響として挙げられます。
母乳やミルクなどを主な栄養源とする乳児期、体のわりに必要とする栄養素(特にカルシウム)が多い幼児期では、乳糖不耐症によって必要な栄養素が取れないといったことが起こりえます。
そのため、子どもの乳糖不耐症では、大人よりも食事内容に配慮が必要になります。
乳児期の乳糖不耐症に対する治療
大人の乳糖不耐症は「体質」と言っても差し支えないものですが、乳を主な栄養源とする赤ちゃんにとっては深刻な問題であり、治療が必要とされます。
先天性の乳糖不耐症など、乳児期におこる乳糖不耐症では体に必要な栄養素を十分に摂取できないため、乳糖を分解または除去したミルクや不足しているラクターゼを補うことで栄養失調を防ぎます。
乳糖不耐症に対する食事の工夫
牛乳は栄養素を豊富に含む食品であり、一律に食べられない、としてしまうと、栄養面で大きなマイナスとなってしまいます。
特に体が成長していく時期の子どもたちにとっては、牛乳はカルシウムやたんぱく質の摂取源として大きな役割を果たす食材のひとつです。
乳糖不耐症に対する食事の工夫ポイントを紹介します。
一度に飲む量を減らす
乳糖不耐症であっても、一定の範囲内(成人の場合250ml未満など・個人差あり)のであれば症状が出ない場合が多いようです。
それぞれの乳糖分解酵素の分泌の程度や体の大きさなどにも影響されると考えられるものの、「このくらいまでなら飲める」という量を見極められれば、食生活への影響は少なく抑えられそうです。
また、習慣的に牛乳を飲んでいるうちにラクターゼの分泌が増え、牛乳を飲んでも下痢にならなくなる場合もあるようです。
温めて飲む
飲む牛乳についても、温めて飲むことで腸内のラクターゼが働きやすくなり、胃腸への刺激も少なくなるため、下痢症状を起こしにくくなるといわれています。
その他、シチューなどの料理に使う分には問題なく摂取できる人が多いようです。
牛乳ではなく乳製品にする
牛乳を原料とする食品(乳製品)も牛乳由来の栄養素をとるのに役立ちます。
ヨーグルトやチーズなどの乳加工品では、製造の過程で乳糖が分解されるなどにより牛乳そのものよりも乳糖不耐症の症状が起こりにくくなっています。
乳糖を減らした牛乳を選ぶ
どこでも手に入るわけではありませんが、乳糖を分解した牛乳(乳飲料)も販売されています。
乳製品ではなく冷たい牛乳が飲みたい!という場合の選択肢として、知っておくといいかもしれません。
カルシウムは他の食品からとる
カルシウムの含有量やその吸収率の高さからカルシウムの摂取源として重要視される牛乳ですが、カルシウムは乳製品以外からもとることができます。
乳製品以外でカルシウムを多く含むのは以下のような食品が代表的です。
- シラスや煮干し、干しさくらえびなどの小魚類
- お豆腐などの大豆製品
- 小松菜
- ゴマ
牛乳や乳製品が取れない場合でも、このような食材をこまめにとることによってカルシウムの摂取量を上げることができます。
小魚類は塩分が気になるので、あまり偏りすぎないと安心です。
まとめ
乳糖不耐症では牛乳が飲めないなどの制約はあるものの、取り入れ方を工夫すれば牛乳由来の栄養素は問題なく取り入れられる場合も少なくありません。
牛乳の取り方を工夫しながら、ほかの食品も活用しつつ、栄養豊富な食事を心掛けたいですね。
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参考文献 Heyman MB; Committee on Nutrition: Lactose Intolerance in Infants, Children, and Adolescents. Pediatrics, 118(3):1279-1286, 2006. |