投稿日: 2022.11.26 | 最終更新日: 2023.08.18

腸内環境を整える食べ物は?食事で腸内環境を改善する腸活の方法を紹介

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腸内環境を整えるための取り組みである「腸活」が人気です。
腸内環境を整えるために効果的な食べ物にはどんなものがあるでしょうか?

腸内環境の良し悪しを決める「善玉菌」「悪玉菌」とは何か、
腸内環境を改善する働きを持つ食品成分とそれを含む食品を中心に、腸内環境を整える方法について解説します。

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腸内環境とは

善玉菌、日和見菌、悪玉菌のイラスト

そもそも、腸内環境とはどのようなものを指すのでしょうか?

内臓としての腸の状態というよりも、その中に住む「腸内細菌」の状態が重要なポイントとなるようです。

腸内細菌のバランスのこと

人の大腸には1000種類、100兆個に及ぶ腸内細菌が生息しており、この細菌の集団は腸内細菌叢、腸内フローラと呼ばれています。

腸内細菌にはたくさんの種類がありますが、人体に対して有用か、有害かによって3つのグループに分けることができます。

  • 善玉菌(有用菌)…ビフィズス菌や乳酸菌など
  • 悪玉菌(有害菌)…ウェルシュ菌や黄色ブドウ球菌など
  • 中間の菌(日和見菌)…大腸菌無毒株、連鎖球菌など

腸管内における善玉菌・悪玉菌・日和見菌のバランスや、腸内細菌のバランスに影響する腸管内の状態を総合して「腸内環境」と呼んでいます。

「腸内環境が悪くなる」とはどういう状態?

通常、腸内細菌のバランスは中間の菌(70%)が多く、次いで善玉菌(約20%)、最も少ないのは悪玉菌(10%)となっています。

悪玉菌と比較して善玉菌が優勢に働いている状態を「腸内環境が良い」といい、悪玉菌の働きを抑制して体への悪影響が防げている状態といえます。
反対に、善玉菌と比較して悪玉菌が優勢に働いている状態を「腸内環境が悪い」といいます。

腸内環境が悪くなるとどんなことが起こる?

腸内環境が悪くなる、ということは、善玉菌の働きが弱まり、悪玉菌の働きが強まることです。
腸内環境が悪化し、悪玉菌の働きが強まると、腸にかかわる体の症状だけでなく、皮膚や免疫機能に悪影響が現れるといわれています。

便秘や下痢

善玉菌は乳酸や酢酸を産生する働きを持ちます。
この乳酸や酢酸によって腸管内が酸性になることで、悪玉菌の増殖を抑制し、腸の運動を促しています。

腸内環境の悪化により善玉菌の働きが弱まることで、腸の運動が鈍くなり便秘になりやすくなること、悪玉菌の働きが強くなることによりガスが多くつくられ、便秘に加えておなかの張りが起こりやすくなることが考えられています。

また、腸の動きが悪くなることから、下痢を起こす場合もあるようです。

肌荒れ

人での研究はまだ十分に進んでいないものの、腸内環境と皮膚の状態が相関することがわかってきています。

善玉菌が産生する短鎖脂肪酸には皮膚のバリア機能を改善する作用があることが報告されており、腸内環境が悪化することで善玉菌の働きとともに皮膚のバリア機能も弱まることで皮膚トラブルが起こることが考えられています。

食中毒や腸管からの感染症

善玉菌が産生する乳酸や酢酸には食中毒菌や病原菌の感染予防作用があることが知られており、この働きが弱まることで食中毒などの病気にかかりやすくなることが考えられます。

腸内環境が悪くなる原因は?

悪玉菌を増やし善玉菌を減らしてしまう原因はなんでしょうか?
腸管に直接かかわる食事の影響に加え、生活習慣の乱れも間接的に腸内環境に影響を与えるようです。

食生活

たんぱく質や脂質に偏った食事が腸内の悪玉菌を増やすことが知られています。
これは、たんぱく質や脂質が悪玉菌の栄養源となることが理由です。

たんぱく質や脂質そのものは必須栄養素として適量の摂取が必要ですが、だからと言ってそればかりになるのは腸内環境に悪影響を与えるといえます。

たんぱく質や脂質に偏った食事とは、具体的には野菜などの植物性食品が少なく、肉類などの動物性食品ばかりといったもの。

偏食で肉類ばかり食べる食生活のほか、糖質制限などの食事スタイルでもこの状態になりやすいといえます。

生活習慣の乱れ

腸内細菌に直接触れる食品の影響意外にも、ストレスや不規則な生活により悪玉菌の働きが強まることが知られています。

生活習慣の乱れから腸内環境が悪化し、便秘などの不調につながると考えられますね。

腸内環境を整える食べ物とは

食べ物は腸内環境に影響を与えるもののひとつですが、善玉菌の働きを助け、腸内環境を整えるには、食事から善玉菌そのもの、または善玉菌の栄養源となるものを摂取するのが有効です。

善玉菌の入った食べ物

ヨーグルトや漬物、納豆、みそ、乳酸菌飲料などの発酵食品の多くには乳酸菌やビフィズス菌のような善玉菌に分類される細菌類が含まれています。
食品に含まれる生きた善玉菌は「プロバイオティクス」といい、腸内の善玉菌の働きを助けます。

■善玉菌を含む食べ物の例

  • ヨーグルト
  • 乳酸菌飲料
  • 味噌
  • 納豆
  • ぬか漬け
  • キムチ

食品由来の善玉菌は一時的にではありますが腸内で生存し、善玉菌優勢の腸内環境をつくることを助けてくれます。
腸管内に長く居続けることは難しいとされているので、毎日の食事から定期的に摂取することが大事なポイントです。

また、加熱等により殺菌された食品や腸まで生きて届かない善玉菌であっても、悪玉菌の排出を助けたり、腸内で生きている善玉菌の栄養源になったりすることで、腸内環境を整えることに役立つことが知られています。

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水溶性食物繊維が豊富な食べ物

人の体では消化されない食物繊維のうち、水溶性食物繊維は腸内の善玉菌の栄養源になることが知られています。
水溶性食物繊維のように善玉菌を増やす働きを持つものを「プレバイオティクス」といいます。

水溶性食物繊維は食物繊維といってもスジっぽいものに多いという訳ではなく、穀類・大豆製品・野菜類・果物類などの植物性食品に含まれます。

■水溶性食物繊維を含む食べ物の例

  • 納豆
  • ごぼう
  • アボカド
  • キャベツ
  • オクラ
  • にんじん
  • モロヘイヤ
  • かぼちゃ
  • ブロッコリー
  • 全粒粉
  • 押し麦
  • オートミール

食物繊維全般について詳しく解説した記事はこちら→
第6の栄養素・食物繊維は生活習慣病にも◎|管理栄養士執筆

オリゴ糖が含まれる食べ物

オリゴ糖は人が消化できない食物繊維とは異なるものの、低消化性で食物繊維に似た働きを持つ糖類です。
オリゴ糖は水溶性食物繊維と同様に「プレバイオティクス」として腸内で善玉菌の栄養源となって増殖を促し、腸内環境を整える働きがあります。

水溶性食物繊維と同様、大豆製品、野菜類、果物類に含まれているほか、特定保健用食品(トクホ)としてオリゴ糖を多く含んだ加工食品も存在します。

■オリゴ糖を含む食べ物の例

  • 大豆
  • 玉ねぎ
  • ゴボウ
  • ねぎ
  • にんにく
  • アスパラガス
  • バナナ

腸内環境を整えるための生活習慣のポイント

善玉菌そのものや善玉菌の栄養源となるものを食べ物から摂取する以外に、生活習慣を見直すことも腸内環境を整えることにつながります。

食事以外の生活習慣とは、具体的には運動や睡眠など。
過度なストレスがかからないようにすることも重要です。

運動

運動が腸内環境に直接与える影響については分かっていませんが、適度な運動は腸の動きを促して便秘の解消に役立つほか、健康的な生活習慣として積極的に取り入れたいもののひとつです。

厚生労働省から発表されている健康づくりのための身体活動指針では、18~64歳は1日の合計で60分、通勤や家事、スポーツなどで体を動かすことを推奨しています。
難しい場合は今より少しでも体を動かす時間を増やすように意識してみてくださいね。

睡眠

不規則な生活は悪玉菌を増やす要因のひとつです。

規則的な生活を送るために、睡眠時間を確保することを心掛けてみてはいかがでしょうか?
無理に朝早く起きるよりも、夜寝る時間を早くするほうが健康的です。
便秘がちな人はしっかり眠って朝ごはんを食べると、排便が促されるのでおすすめです。

ストレス

不規則な生活に加え、各種のストレスが悪玉菌を増やす原因になります。

日々のストレスをすぐになくすことは難しいかもしれませんが、一時的にでもリラックスできる環境を意識的に作ることは可能かもしれません。

先に述べた適度な運動や十分な睡眠もストレスの解消にかかわってくるので、併せて気を付けたいポイントです。

まとめ

腸管内には多くの腸内細菌が存在し、そのバランスによって腸内環境は変化します。

善玉菌の働きが強い腸内環境は良い状態でトラブルが起こりにくい事が知られていますが、
悪玉菌の働きが強くなると腸内環境は悪くなり、便秘などの腸のトラブルのほか、肌のトラブルや免疫機能にも影響が及びます。

悪玉菌の働きを強めて腸内環境を悪化させる原因には「脂質とたんぱく質に偏った食事」「不規則な生活」「ストレス」などがあり、腸内環境を整えるにはこれらの原因を改善し、善玉菌の働きを助ける工夫をする必要があります。

善玉菌を増やす食品成分には

  • 善玉菌そのものを含む食品
  • 水溶性食物繊維を含む食品
  • オリゴ糖を含む食品

が挙げられます。

具体的には、

  • ヨーグルトや漬物などの発酵食品
  • 全粒粉や押し麦などの全粒穀類
  • 野菜類
  • 果物類
  • 海藻類
  • 大豆製品

などがあります。

善玉菌の働きを助ける食品を積極的にとるほか、適度な運動や十分な睡眠、ストレスの解消などの生活習慣の見直しも意識してみてくださいね。

便秘について詳しく解説した記事はこちら

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参考文献

吉田勉 監修. わかりやすい食品機能栄養学. 三共出版, 2010.

厚生労働省e-ヘルスネット:「腸内細菌と健康」

文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」

厚生労働省e-ヘルスネット:「オリゴ糖」

厚生労働省:「健康づくりのための身体活動基準2013」

rompette, A., Pernot, J., Perdijk, O. et al. Gut-derived short-chain fatty acids modulate skin barrier integrity by promoting keratinocyte metabolism and differentiation. Mucosal Immunol 15, 908–926 (2022).

日本薬局協励会:「エルエル VOL.47 No.3 通巻179号 菌と腸活」

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。