「血糖値が高い」といわれても、何がどう悪いのかよくわからない方は多いのではないでしょうか?
この記事では、健康診断で血糖値が高いと指摘された方に向けて、血糖値とは何か、高いとどう悪いのかを解説します。
血糖値を下げるための食事や生活習慣のポイントも紹介しますので、早期の改善に役立ててくださいね。
Contents
血糖値とは?健康診断の読み方と基準値
血糖値とは、血液中の「ブドウ糖」の量を示した検査値です。
血液中のブドウ糖についての概要と、健康診断の血液検査で見るべき数字について解説します。
血液中のグルコース(ブドウ糖)濃度
血糖値とは、血液中のグルコース(ブドウ糖)の濃度をしめした数値です。
ブドウ糖は食事に含まれる炭水化物が分解されてできる栄養素で、腸管から吸収されて血管内に入り、インスリンというホルモンの作用によって全身に取り込まれ、エネルギー源となります。
よって、血糖値は測るタイミングによっても大きく変動します。食後には高く、空腹時には低くなります。
一般的な健康診断等では空腹状態で測定するため、「空腹時血糖」という呼び方もあります。
空腹時には一定以下に下がるはずの血糖値が十分に下がらないと、糖の代謝に異常があると判断されます。
健康診断の基準値
日本人間ドック学会の2020年度判定区分表*1)では、以下の基準値が示されています。
空腹時血糖の判定基準
- 異常なし…99㎎/dL以下
- 軽度異常…100~109㎎/dL
- 要経過観察(生活改善・再検査)…110~125㎎/dL
- 要治療・要精密検査…126㎎/dL以上
ご自身の検査結果はどの範囲に入ったでしょうか?
空腹時血糖のほか、「HbA1c」という別の項目も糖代謝の判定に使用されます。
血糖値が高いとどうなる?
血糖値が高いことで体にどのような悪影響があるのでしょうか?
血糖値が高い状態が慢性化すると糖尿病に、さらに肥満やその他の代謝異常が組み合わさった場合はメタボリックシンドロームと呼ばれる状態になります。
いずれも血管にダメージを与え、重大な病気のリスクを高めます。
糖尿病とメタボリックシンドロームについて詳しく解説します。
糖尿病
高血糖の状態が慢性的になると、「糖尿病」と診断されることもあります。
糖尿病は血液中のブドウ糖が多い状態が続く病気で、血管の劣化(動脈硬化)を早めます。
進行すると、全身の血管でトラブルが起こり、網膜症や腎症、神経障害などの合併症が起こる事が知られています。
糖尿病の診断においては血液検査の数値のほか、慢性的な高血糖の有無・症状・家族歴・体重歴などから総合的に判断されます。
そのため、健康診断において空腹時血糖126㎎/dL以上が複数回確認されている場合は、慢性的な高血糖と判断される可能性もあると考えられますので、注意が必要です。
ちなみに、糖尿病にはⅠ型とⅡ型の2種類が存在します。
Ⅰ型は自己免疫によって膵臓のインスリンを分泌する部分(β細胞)が破壊されてインスリンが作れなくなるタイプ、
Ⅱ型はインスリンの分泌が少なくなりやすい遺伝的な原因に加えて内臓脂肪型肥満によってインスリンの効きが悪くなるタイプであり、原因や治療法に異なる部分があります。
今回は糖尿病の大部分を占め、生活習慣と大きくかかわるⅡ型糖尿病に関連する高血糖について解説しています。
メタボリックシンドローム
高血糖(糖尿病)に加えて、肥満、脂質代謝、血圧、喫煙習慣のうち2つ以上ある状態になると、「メタボリックシンドローム」、いわゆる「メタボ」と診断されます。*2)
メタボリックシンドロームは動脈硬化を進行させるリスク要因が複数組み合わさった状態で、動脈硬化によって起こる心血管疾患(動脈硬化や脳卒中など)のリスクがさらに高い状態です。
メタボの診断基準のうち、糖代謝の基準は空腹時血糖110㎎/dLとなっています。
どちらも無症状で心血管疾患リスクを高める
糖尿病、メタボリックシンドロームはいずれも、はじめのうちは体調不良などの自覚症状はないことがほとんどです。
その一方で、目に見えない動脈硬化(血管の劣化)を着実に進行させ、血管をもろく・詰まりやすくしていくため、放置すると心筋梗塞や脳梗塞といった命にかかわる大きな病気を引き起こすリスクを高めます。
高血糖が原因になって起こる大きな病気を予防するためには、血糖値を挙げている要因を取り除くことが必要です。
血糖値が高くなる原因
血糖値が高くなってしまう要因には、肥満や食事、生活習慣における問題点が関係しています。
ひとつずつ解説していきます。
肥満
空腹時の血糖値が上がる原因として第一に挙げられるのが「肥満」です。
肥満は食後の血糖値を下げるインスリンの効きを悪くし、血糖値が下がりにくい状態を作り出すことがわかっています。
摂取カロリーが消費カロリーと比べて多すぎると、余ったカロリーは体脂肪として蓄積され、体脂肪が増えすぎると肥満となります。
メタボリックシンドロームの診断基準では、おへその高さでの腹囲が男性85㎝以上、女性90㎝以上の場合を生活習慣病につながりやすい「腹部肥満」としています。
また、日本肥満学会の定めた基準では、身長と体重から肥満度を表すBMI【=体重(㎏)÷身長(m)2】が25以上の場合を肥満としています。
肥満や腹部肥満に当てはまる場合には、改善を目指しましょう。
不規則な食事
カロリーのとりすぎによる肥満のほか、不規則な生活や食事習慣は肥満を助長する要因のひとつでもあります。
具体的には、以下のような食事習慣がある人は注意が必要です。
- 朝食を食べない
- 夜遅くに食事をとる
仕事や生活環境が変わってから体重が増えた…という人も多いため、気を付けたいポイントです。
運動不足、喫煙、ストレス、睡眠の問題
肥満や食事習慣の乱れのほか、生活習慣上の様々な問題点が糖尿病の発症リスクを上げることも知られています。
- 運動不足
- 喫煙習慣
- 睡眠不足、長すぎる睡眠
それぞれ、肥満や食事習慣の乱れともお互いに関係しているため、どれか一つではなく、生活全体を整えていくのが理想です。
血糖値を下げるための食事のポイント
血糖値を下げるためには、食事の見直しが大きな意義を持ちます。
- 肥満解消のためのカロリーコントロール
- 全粒穀物、果物、野菜を意識して食べる
- アルコールは適量範囲にとどめる
また、近年注目されているものの、その効果や安全性が確立されていないものも。
- 糖質制限
- トクホ(特定保健用食品)
それぞれの効果と詳しい内容を解説します。
肥満解消のためのカロリーコントロール
肥満はこれまでの消費エネルギーに比べて摂取エネルギーが多かったことを示します。
よって、まずは、
- 食べる量を減らして摂取エネルギーを減らす
- 身体活動量を増やして消費エネルギーを増やす
といった方法をとり、体についた体脂肪を減らす必要があります。
減量の目標は腹囲やBMIを適正範囲まで落とすことですが、短期間での減量は体への負担も大きくお勧めできません。
1か月あたり1~2㎏程度の緩やかな減量がおすすめです。
ちなみに、1㎏の体脂肪はエネルギーに換算しておよそ7200kcal。
1か月で1㎏の体脂肪を落としたい場合、体重の増減が止まっている状態から1日当たり240kcalを食事または運動でカットできると1か月1㎏のペースに当てはまります。
また、運動はウォーキングやジョギングのような有酸素運動だけでなく、筋トレでも糖尿病の発症リスク低下にかかわっています。
食べすぎの是正は必要ですが、運動を組み合わせるとさらに理想的です。
全粒穀物、果物、野菜を意識して食べる
糖尿病の発症リスクを下げたり、血糖値の上昇を抑えることがわかっている食べ物や食べ方もあります。
- 食物繊維を多く含む穀類(例:精製度の低い玄米や全粒粉、麦ごはんなど)
- 適量の果物(1日100g程度まで。ジュースは除く)
- 野菜を先に食べる食べ方(ベジタブル・ファースト)
穀類の食物繊維や適量の果物は糖尿病の発症リスクを下げるといわれており、野菜を先に食べる食べ方は食後の血糖値の上昇を抑えることに役立つと報告されています。
積極的に取り入れたい一方、いつもの食事にただプラスするだけでは摂取エネルギーの適正化を妨げる可能性も。
適正なエネルギー摂取量の範囲で、積極的に取り入れてみてくださいね。
アルコールは適量範囲にとどめる
血糖値が高くても、直ちに禁酒が必要なわけではありませんが、適量を超えた飲酒では糖尿病の発症リスクが高まることが知られています。
糖尿病診療ガイドライン2019では、多くとも25g/日までにとどめることが勧められています。
また、健康日本21にてアルコールによる様々な影響をもとに決められた「節度ある適度な飲酒量」は1日あたり平均純アルコール20g程度まで、週2日の休肝日をつくることとされています。
純アルコール20gとは、アルコール度数5%のビールでおおよそ500ml、中ビン1本ほど。
量や頻度が「適量」よりも多いという人は、量や頻度が適量に収まるよう、気を付けてみましょう。
また、普段の飲酒がこれよりも少ない場合でも、なるべく増やさないようにするのがよいでしょう。
そのほかのお酒についての「適量」はこちら
糖質制限は最善とは言えない
糖質制限食が注目されていますが、現段階では長期的な効果や安全性ははっきりとは分かっていません。
高血糖は血液中に糖分が多い状態であることから、糖質の取りすぎが原因であると考えられがちですが、実際には糖質(炭水化物)の摂取量が多いと糖尿病を発症しやすい…といったような結論はいまだ得られていません。
よって、高血糖=食事の糖質を減らせばよい、とは言い切れません。
通常の食事のバランスから大きく外れることによって、高血糖以外の健康リスクを高めることもわかっています。
(例:たんぱく質の過剰摂取による心血管疾患リスク上昇など)
現状では「糖質の制限」ではなく、「摂取エネルギーの適正化」が第一となります。
トクホは補助的なものと考える
近年ではメタボリックシンドロームの改善に着目した特定保健用食品(トクホ)も多く発売されています。
摂取することで血糖値の低下などに効果があると認められたものではありますが、薬のように効果があるものではないことを理解して取り入れるのがおすすめです。
可能であれば、各商品の紹介ページなどにアクセスし、
- 誰が(例:空腹時血糖が110~125㎎/dLの人)
- どのような取り方をしたら(例:食事とともに1本飲用)
- どのくらいの効果があったのか(例:血糖値のピークが5㎎/dL程度低下)
を確認し、納得してから取り入れるのが理想的です。
また、研究で得られた効果は平均値であり、すべての人に同じように効果が表れるとは限らないことを頭に置く必要があります。
簡単に取り入れられるトクホは魅力的な存在ですが、通常の商品に比べて割高であったり、期待するほど効果が大きくなかったりと、トクホ「だけ」に頼るのはあまり良い方法とは言えません。
食事や運動の見直しに「プラスするもの」として、上手に取り入れるのがおすすめです。
まとめ
血糖値は血液中のグルコースの濃度を示す数値で、血管系の疾患リスクに関連しています。
高血糖状態を放置するのは大きな病気につながるリスクを高めるため、早めの対処が大切です。
高血糖には肥満や食事、生活習慣の問題が関係していることが知られていますが、生活全体を短期間に改善しようとするのは負担が大きく、続きません。
負担が少なく取り組めそうところから、少しずつ習慣を見直していってくださいね。
メタボに着目した特定健診(メタボ健診)で高リスクと指摘された場合には、特定保健指導が受けられる場合も。医師や管理栄養士など、専門家の助けを受けられますので、ぜひ活用してくださいね。
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参考文献 厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書 *2)メタボリックシンドローム診断基準検討委員会. メタボリックシンドロームの定義と診断基準. 日本内科学会雑誌; 2005;94:188-203. |