毎年、春先になると花粉が気になって外出がおっくうになる人も多いのではないでしょうか。
花粉症対策を行う人に注目されているのが、花粉症を和らげてくれるという食品の効果。
有名なものでは、「ヨーグルト」や「甜茶」に花粉症を抑える効果があるといわれていますが、実際の効果はどうなのでしょうか?
花粉症に効果があるといわれる食品の効果と花粉症の改善のための生活習慣のポイントについて解説します。
Contents
花粉症とは
花粉症は季節性アレルギー性鼻炎ともいわれます。
花粉症に悩む人は日本人の20%以上に及ぶとも言われ、多くの人を悩ませる疾患のひとつです。
アレルギー疾患のひとつ
花粉症はアレルギー症状による疾患のひとつです。
スギなどの植物が放出する花粉を、体が排除すべき異物として認識してしまうことが原因で、体から花粉を排除しようとして、以下のようなアレルギー症状が起こります。
- 鼻水
- くしゃみ
- 鼻詰まり
- 粘膜のかゆみ
花粉症の原因となる植物は複数存在し、人によっても異なります。
- スギ
- ヒノキ
- イネ科
- ブタクサ
花粉症の原因植物は、それぞれ花粉の飛散時期が異なるため、複数の植物に対して花粉症がある場合には、1年のうち大部分で花粉症症状がみられる場合もあります。
花粉症の治療法
花粉症に対する一般的な治療は、根治療法と対症療法に分けられます。
- 根治療法…花粉そのものの接触を避ける、または花粉に対する反応を減らすよう働きかける治療法
- 対症療法…薬などでくしゃみや鼻水などの症状を抑える治療法
花粉症に対する治療では、これらの治療法を複数取り入れる人が多くなっています。
花粉症に効く食べ物・飲み物はある?
花粉症の改善に効果があるとうたわれる食品は多数ありますが、今回は一般的に取り上げられることが多い「ヨーグルト」と「甜茶」について紹介します。
ヨーグルトの効果
ヨーグルトやヨーグルトに含まれる乳酸菌は腸内環境を整えることで免疫のバランスを整え、アレルギー症状を軽くすることが期待されています。
しかし、その効果は誰にでもあるということではないようです。
花粉症は季節性のアレルギー性鼻炎ですが、アレルギー性鼻炎の患者さんのうち、ヨーグルトに効果があったという人は30%以下となりました。
一方で、ヨーグルトのメーカーでは花粉症などに対して機能性のある特定の乳酸菌の研究が進められています。
腸内細菌とアレルギー症状の関係はいまだ研究が進められている分野で、詳しいメカニズムなどは分かっていませんが、今後研究が進められていく分野といえそうです。
甜茶の効果
「甜茶」は中国茶の一種で、この中にもいくつかの種類があります。
その中のテンヨウケンコウシという種類のものに含まれる甜茶ポリフェノールという成分が、アレルギー症状の発現にかかわるヒスタミンという物質の分泌を抑制し、アレルギー症状が軽減するといわれています。
しかし、厚生労働省のホームページで紹介されている花粉症に対する民間療法についての調査では、花粉症の患者さんのうち、甜茶が有効であったという人は14%にとどまりました。
花粉症の改善については、多くの人に効果が期待できるものではないようです。
花粉症対策での薬と食品の違い
ヨーグルトや甜茶について、花粉症が改善したという口コミが多数ある一方、全く効果がなかったという口コミも少なくありません。
実際、花粉症に対する民間療法についての調査でも、ヨーグルトや甜茶による花粉症への効果があったという人は少数派となっていました。
花粉症などの疾患の改善を目的としてヨーグルトや甜茶などを摂取することは、一般的な治療とは区別して「代替療法(民間療法)」といわれます。
一般的に、食品を用いた代替療法には、基本的に医薬品ほどの安定した効果は期待できません。
その原因は「機能性が明らかでない」「食品は有効成分が一定ではない」ということ。
花粉症の改善に役立つといわれる食品については、あくまで補助的な立ち位置に留めるのが賢明です。
機能性が明らかでない
食品の持つ機能性については分かっていないことも多いのが現状です。
花粉症の改善など、何らかの機能性が期待されている食品はあるものの、
- 具体的にどの成分が効果を発揮するのか
- どのくらいの量摂取することで効果があるのか
…という部分については、明らかになっていないことがほとんどです。
医薬品の場合、有効成分が効果を発揮できる量が設計されて製造されていますが、食品ではそれがわかっていないことがほとんどです。
食品は有効成分が一定ではない
また、食品に有効成分が含まれていたとしても、その量が必ずしも一定ではない、という点もポイントです。
食品は医薬品と違い、有効な成分の含有量も一定ではありません。
そのため、薬のように「ほとんどすべての人に、速やかに効く」というものではないのです。
食品はあくまでサブと考える
花粉症にヨーグルトや甜茶がどれだけ有効なのか、客観的な研究による信頼できる十分なデータというものははいまだ不十分な状態です。
薬のように効くものではなく、
- 継続的な摂取で、効果が出るかもしれないもの
- 通常の治療薬と併用することで症状の軽減が期待できるもの
というレベルのものであると考えるのが妥当です。
ヨーグルトや甜茶などの食品については「効く」「効かない」と言い切ることが難しいものです。
「効くことも、効かないこともある」ので、過度の期待はせずに、薬などの治療と合わせて普段の食事で取り入れる分には価値があるといえると思います。
花粉症対策になる生活のポイント
花粉症症状の緩和には、食品のほかに生活習慣もかかわっていることが知られています。
日々の習慣を見直すことで症状が和らぐことが考えられていますので、ヨーグルトなどの機能性食品と合わせて取り入れてみてくださいね。
花粉との接触を減らす
生活の中でアレルギーの原因物質である花粉の接触を避ける方法には以下のようなものがあります。
- マスクや眼鏡を身に着ける
- 帰宅後はうがいや顔を洗うことで花粉を洗い流す
- 花粉が付きにくい衣類を取り入れる
単純な方法ですが、症状を抑えるには花粉との物理的な接触を避けるのが効果的です。
規則正しい生活を心がけ、睡眠を十分にとる
規則正しい生活を心がけ、睡眠を十分にとることで、健康状態を保ちましょう。
体が弱っていると、症状が出やすくなることが考えられていますので、十分な休養を取りましょう。
栄養バランスの取れた食事を心がける
食事については、脂質の多すぎる食事は腸内環境を悪くすることや、アレルギー疾患の発症や悪化にかかわることが考えられています。
特定の食べ物を食べすぎたり、反対に食べなさすぎたりといったことがないように気を付けるのも大事です。
お酒の飲みすぎに気を付ける
お酒のアルコールよってアレルギー症状が悪化させることが考えられています。
春はお酒を飲む機会が多い時期でもありますが、量は控えめにしたほうが良いでしょう。
まとめ
花粉症はアレルギー疾患のひとつです。
食事などの工夫によって症状が軽減することになりますが、その効果は医薬品には及ばないと考えるのがよいでしょう。
医療機関での治療と、食事などの生活習慣の見直しを合わせて行うことで、花粉症と上手に付き合っていきたいですね。
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参考文献 木村 五郎, 赤木 博文, 岡田 千春, 平野 淳, 天野 佳美, 大村 悦子, 中重 歓人, 砂田 洋介, 藤井 祐介, 中村 昇二, 宗田 良, 高橋 清. Lactobacillus acidophilus L-55含有ヨーグルト飲用のスギ花粉症に対する臨床効果の検討 アレルギー61(5)628-641.(2012) 木村 五郎, 赤木 博文, 平野 淳, 岡田 千春, 天野 佳美, 大村 悦子, 中重 歓人, 砂田 洋介, 中村 昇二, 宗田 良, 高橋 清.MS2-10 スギ花粉症に対するL55乳酸菌含有ヨーグルトの臨床効果(アレルギー性鼻炎, 第19回日本アレルギー学会春季臨床大会)アレルギー 56 巻 3-4 号 p. 311-(2007) 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報(甜茶・花粉症対策について) 福冨 友馬,谷口 正実. 成人アレルギー疾患の修飾因子 アレルギー 65(6)745-751(2016) |