アレルギー疾患とは、体内に入ってきた花粉や食べ物などの本来は無害な成分に、体内の免疫機能が過剰反応してしまうことから起こるものです。
食べ物に対してアレルギー反応を起こす食物アレルギーを持つ場合、普段の食事で気を付けるべきポイントが多くなります。
食物アレルギーについて、原因となる食品や症状、普段の生活で注意すべきポイントを解説します。
Contents
食物アレルギーとは
食物アレルギーとは、食べ物に対して起こるアレルギーを指します。
7歳未満の幼児に多く、乳幼児の5~10%、学童期の1~3%が食物アレルギーを持っているといわれています。
成長に従って症状が軽くなっていくことも多いのが特徴ですが、大人になっても食物アレルギーがある人や、大人になってから食物アレルギーを発症する人も存在します。
アレルギーが疑われる場合には自己判断せず、医療機関に相談することが重要です。
食物アレルギーと混同されやすいものとして、乳糖不耐症や食中毒、アニサキス食中毒などがあげられます。
いずれもアレルギーとは対処法が異なるため、食事が原因の体調不良については、安易な自己判断は避けるようにしましょう。
食物アレルギーの原因食材
原因となる食べ物は多種にわたりますが、卵、牛乳、小麦が原因となっているケースが多数です。
平成23年の調査によると、すべての年代における食物アレルギーの原因となりやすい食品は、鶏卵(39.0%)、牛乳(21.8%)、小麦(11.8%)の順に多く、この3つで7割を占めています。
そのほか、エビやカニ、大豆、魚類、果物など、様々な食品がアレルゲンとなります。
卵
卵(鶏卵)は食物アレルギーの原因に最も多くなっている食品です。
卵白に含まれるたんぱく質のオボムコイド、オボアルブミン、リゾチーム、卵黄に含まれるたんぱく質のα-リベチンが主要なアレルゲンとなることが知られています。
加熱することでアレルゲン性が低下するため、卵アレルギーを持つ人の中で、生食はできないが十分に加熱したものなら食べられるという場合もあります。
(個人差があるので自己判断は避けましょう)
鶏卵のほか、うずらの卵などほかの鳥の卵でもアレルギー反応を起こす場合があります。
乳
牛乳のほか、牛乳を使った加工食品(乳製品)がアレルギーの原因になることもあります。
- 牛乳
- チーズ
- ヨーグルト
- 生クリーム
- バター など
牛乳に含まれるたんぱく質のカゼインが主要なアレルゲンとなります。
名称に乳・ミルク・バターなどとついていても、乳成分が含まれない場合もあります。(豆乳、乳化剤、乳酸、ココナッツミルク、カカオバターなど)
乳アレルギーのある人は、ヤギのミルクでもアレルギー症状を起こすことがあると知られています。
小麦
小麦はさまざまな用途のある食品ですが、食物アレルギーの原因物質になることも多い食品です。
- 小麦粉
- パン
- うどん、パスタ、そうめんなどの麺類
- ケーキなどの菓子類 など
小麦の主要なアレルゲンはグリアジンというたんぱく質です。
調味料の醤油は原材料に小麦を含むものの、発酵によりグリアジンが分解されるため、症状を起こす人は稀といわれています。
また、同じ麦類の大麦、ライムギ、エンバク(オーツ麦)などは別の食品ではあるものの、似た症状が出る場合もあるようです。
特定原材料8品目
食物アレルギーの原因となる食品のうち、症例数が多かったり、重篤な症状が知られていたりする食品については「特定原材料」として指定されています。
2023年6月現在の特定原材料にしていされているものは以下の8品目です。
- えび
- かに
- くるみ
- 小麦
- そば
- 卵
- 乳
- 落花生(ピーナッツ)
これらの食品を含む加工食品、特定原材料由来の添加物を含む生鮮食品の一部、特定原材料に由来する添加物には、特定原材料を含む旨を表示することが義務付けられています。
特定原材料に準ずるもの20品目
また、特定原材料以外で、過去に一定の頻度で健康危害が見られた食品については、「特定原材料に準ずるもの」とされます。
2023年6月現在の特定原材料に準ずるものは以下の20品目です。
- アーモンド
- あわび
- いか
- いくら
- オレンジ
- カシューナッツ
- キウイフルーツ
- 牛肉
- ごま
- さけ(鮭)
- さば
- 大豆
- 鶏肉
- バナナ
- 豚肉
- まつたけ
- もも
- やまいも
- りんご
- ゼラチン
特定原材料に準ずるものに関しては、含む旨の表示は推奨されるにとどまっています。
食物アレルギーの症状
食物アレルギーの症状は、出る部位も幅広く、人によって出やすい症状も様々です。
- 皮膚・粘膜症状
- 消化器症状
- 呼吸器症状
- 全身症状
このように、食物アレルギーの症状は多岐にわたるうえ、症状の重さも軽いものから命に危険が及ぶものまであります。
食物アレルギーに関しての自己判断は難しいため、アレルギーが疑われるときはアレルギー専門医への相談をおすすめします。
皮膚・粘膜症状
皮膚にじんましんや発疹ができ、かゆみを感じます。
白目が充血したり、瞼が腫れることもあります。
消化器症状
吐き気や嘔吐、下痢の症状がみられることもあります。
下痢の症状が長期に及ぶと、十分な栄養素が吸収できず、栄養失調に陥ることも考えられます。
呼吸器症状
口の中やのどのかゆみや腫れが起こったり、くしゃみや鼻水、せきが起こる場合もあります。
気道が腫れて狭くなると、空気が通りにくくなりゼーゼーとした呼吸になります。
呼吸困難の可能性が高く危険な症状です。
全身症状
重いアレルギー症状では、血圧が下がり意識障害をもたらすなど、ショック症状が起きる場合もあります。
緊急に病院への搬送が必要な危険な状態です。
アナフィラキシーとは
アレルゲンを摂取したことで上記の部位に強い症状が2種類以上出ることを「アナフィラキシー」といいます。
(例:顔全体の腫れや強い腹痛、息苦しさなどが同時に出た場合)
また、アナフィラキシーに加えて血圧の低下や意識障害などのショック症状があるものを「アナフィラキシーショック」といいます。
食物アレルギーがある場合に注意するポイント
食物アレルギーがある場合に、日常生活で注意すべき基本的なポイントについて紹介します。
個人によって症状の重さは異なるため、全員に当てはまるものではありません。
治療や除去に当たっては医師の指示に従いましょう。
医師の指示に基づき原因食品を避ける
特定の食物にアレルギーを持っていることが分かっているときは、症状を引き起こさないために特定の食物の摂取をしないようにするのが基本です。
とはいえ、原因食品はそのままの形のみで存在するわけではなく、様々な加工品等に利用されていることも少なくありません。
卵アレルギーについて考えた場合、
- 加熱した卵は除去するか
- 卵を少量混ぜ込んだ加工品は除去するか
- 卵を原料とする添加物を使用した食品は除去するか
など、一概には判断できない場合も多く存在します。
食品の除去についての判断は必ず医師の指示のもと決めることが必要です。
加工食品は食物アレルギー表示を確認する
原因食品を除去した食事を用意する場合、いちから手作りする場合には材料を把握することができますが、市販の食品では材料の把握が難しいことも。
除去範囲が定まっている場合で、市販の加工食品のように一見すると原材料に何が使用されているかわからないものについては、原材料等の表示が役立ちます。
前述のとおり、容器包装された食品では、症例数が多かったり、重い症状が出やすかったりする特定原材料8品目について、使用の有無を記載する義務が課せられています。
加えて、義務ではありませんが、特定原材料に準ずるもの20品目においては可能な限り表示するよう努めることが推奨されています。
しかし、この表示が義務付けられているのは容器包装されたもののみで、飲食店の食事や店内調理のおでんなどのお惣菜類、露店の食品などの容器包装されていないものはこの対象ではありませんので、注意が必要です。
飲食店などでは義務でなくとも、原材料のアレルゲン表示を行っているところもあるため、外食をするときには選択肢の一つにもなりますね。
栄養が偏らないように配慮する
アレルギーに対する対応としては、原因食品の除去が基本となりますが、あまり厳密に食品成分を避けようとすると、食事内容が偏って別の問題が起きることがあります。
頻度の高いたまご・乳・小麦について考えてみると、たまごや乳のたんぱく質、小麦の炭水化物はほかの食品(たんぱく質:肉・魚類、炭水化物:米やイモ類など)で補うことができますが、問題となりやすいのが乳に豊富なカルシウムです。
幼児期のカルシウム摂取は乳類が大きな役割を占めるため、乳アレルギーで完全除去の場合にはカルシウムの摂取が少なくなり、子どもの成長を妨げるといったことが起こりやすくなります。
このような場合には、カルシウムを比較的豊富に含む小魚や大豆製品、緑黄色野菜などを意識してとるようにしたいですね。
栄養素の摂取不足を防ぐためには、医師と相談の上「食べられる範囲で食べる」というのも大事なポイントです。
ただし、食べられる範囲というのは人によっても様々で、見極めは大変難しいことです。
血液検査による数値と症状の強さは必ずしも比例しません。
自分や家族だけで判断せずに、必ず医療機関に相談するようにしましょう。
まとめ
食物アレルギーがある場合、食事選びが大きな負担になることも少なくありません。
食物アレルギーについて知る人が増え、原材料表示などの周知が広がることで、食物アレルギーを持つ人も安心して食事がとれる社会になっていってほしいですね。
赤ちゃんの食物アレルギーを予防する方法について詳しく解説した記事はこちら
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参考文献 一般社団法人 日本アレルギー学会 アレルギーポータル:「アレルギーって?」 食物アレルギー研究会:「食物アレルギーの診療の手引き2017」 日本小児アレルギー学会:「よくわかる食物アレルギー対応ガイドブック」 独立行政法人 環境再生保全機構:「食物アレルギーを正しく知ろう」 内閣府食品安全委員会:「アレルゲンを含む食品(卵)に係るQ&A」 |