鶏肉はよく加熱して食べましょう、といわれるのは、生の鶏肉には高い確率で食中毒菌が付着しているため。
60%以上という高い確率(調査によっては100%だった例も)でカンピロバクターという食中毒菌に汚染されています。
生もしくは生焼けの鶏肉から生きているカンピロバクターを摂取することによって、カンピロバクター食中毒を引き起こす恐れがあります。
一方で、「鶏刺し」や「鶏のたたき」など、一部の地域・飲食店では鶏が生食で提供されている場合も。
飲食店で見かける鶏刺しや鶏のたたきは衛生上問題ないのでしょうか?
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カンピロバクター食中毒とは
有名なO-157やノロウイルスに比べるとあまり耳慣れない「カンピロバクター食中毒」。
どのような特徴があるのでしょうか?
感染源は生の鶏肉
主な感染源は生や加熱不十分の鶏肉や鶏レバーですが、潜伏期間が長いために、原因食品が分からない場合もあります。
主な症状は下痢・腹痛・発熱
食べてから1~7日で発症し、下痢や腹痛、発熱などの症状が現れます。
比較的少ない菌数で発症
カンピロバクターによる食中毒は、比較的少ない菌量でも発症することが特徴です。
室温のような菌の繁殖しやすい温度で長時間放置した場合でなくとも食中毒をおこすため、冷蔵しているか否かは発症にあまり関係しないといえます。
発症頻度が高い
カンピロバクターによる食中毒は、実はかなりの頻度で起こっています。
厚生労働省が公表している食中毒発生状況についての資料では、平成30年(2018年)の細菌性食中毒467件のうち、319件がカンピロバクターによるものとされています。
ギラン・バレー症候群を発症することがある
カンピロバクター食中毒そのものは命に係わることは少ない食中毒ですが、まれにギラン・バレー症候群という重大な病気のきっかけになることに注意が必要です。
ギラン・バレー症候群とは、体内の免疫細胞が自分の神経組織を異物として認識して攻撃してしまうことによって手足に力が入らなくなるなどの症状が出る病気です。
重症の場合は呼吸不全を引き起こすこともあり、危険な疾患のひとつです。
カンピロバクター食中毒を含む感染症から発症することがあり、カンピロバクター食中毒からの発症率は0.1%といわれています。
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カンピロバクター食中毒を防ぐには?
加熱不十分な鶏肉で起こりやすいカンピロバクター食中毒。
食中毒にならないためにどのようなことに気を付けるべきなのでしょうか?
生の鶏肉にカンピロバクターがついているのは自然な状態
鶏肉にカンピロバクターが存在するのは、健康な鶏であっても、その多くが消化管内にカンピロバクターを保有しているため。
食肉加工が不適切・不衛生に行われているからではありません。
解体中にどうしても消化管内のカンピロバクターが肉に移行してしまうため、食べるまでの調理過程で殺菌する必要があるのです。
食中毒の予防法は「加熱」
カンピロバクター食中毒の最も効果的な予防法は「殺菌」です。
鶏肉の中心温度が75℃になってからさらに1分以上の加熱をするようにしましょう。
目安としては、鶏肉の中心部が白く変わるまでしっかりと加熱するのがよいでしょう。
また、生の鶏肉が触れたまな板や包丁などの調理器具、手指をしっかりと洗って殺菌することで、ほかの食材に菌が移るのを防ぎましょう。
鶏肉を洗うのはもっと危険
鶏肉にカンピロバクターが付着しているなら、しっかり「洗ってから」調理しようというのは間違いです。
水洗いによってカンピロバクターの含んだ水分が(私たちが予想する以上の)広範囲に飛び散り、鶏肉が直接触れない食材や調理器具、食器に付着する恐れがあります。
カンピロバクターが付着した調理器具で加熱せずに食べる野菜類を扱ったりといったことでカンピロバクター食中毒が起こる恐れもあります。
鶏肉が触れる範囲は最小限に、そして触れたところはしっかり洗浄・消毒をするというのが一番です。
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鶏肉の鮮度と安全性
例えば、飲食店で「この鶏は新鮮だから刺身で食べられますよ」といわれたら、何となく食べても大丈夫そうだと思ってしまいませんか?
「新鮮」=「生でも安全」と考えられがちですが、実際にはそれが当てはまるものとそうでないものがあるのです。
新鮮=安全ではない
鶏肉だけに限らず、豚肉や牛肉についても非加熱での喫食は鮮度にかかわらず食中毒の恐れがあり、危険です。
特に豚肉・豚内蔵は寄生虫や肝炎ウイルスの恐れもあり、生食での販売はできません。
牛肉に関してもレバーはO-157などの菌が表面だけではなく内部にまで入り込んでいることがあるため、非加熱または表面のみを加熱した状態では販売できません。
(牛の筋肉に関しては、筋肉部分のかたまり肉の中心部までの加熱は必ずしも必要でない場合があります)
鮮度が安全性にかかわるものもある
「新鮮=安全」ということではありませんが、「新鮮でない=危険」というものも存在します。
サバやイワシ、サンマなどの魚は、常温に放置することで(≒鮮度が落ちると)ヒスタミン産生菌が増殖し、アレルギーに似た症状を起こす「ヒスタミン」を生成することが知られています。
加熱によってヒスタミン産生菌が死滅したとしても産生されたヒスタミンはなくならないため、食中毒の原因となります。
また、魚に寄生するアニサキスによる食中毒も、魚の鮮度が落ちることで危険性が増すもののひとつです。
アニサキスは菌ではなく寄生虫で、通常は魚の内臓に寄生しています。
魚が死亡してから時間が経過することで(≒鮮度が落ちると)内臓から筋肉(身)に移動することが知られており、刺身などで食中毒を起こす要因の一つになります。
「新鮮だから大丈夫」とはいえない
ヒスタミンやアニサキスについては、鮮度が安全性の目安になる場合もある、ということが言えますが、どんな食品にも当てはまるものではないということに注意が必要です。
少なくとも鶏肉に関しては新鮮であっても食中毒の原因になることは知っておきたいポイントです。
鶏肉の生食と法律による規制
食中毒の原因になるとして、豚肉および豚の内臓、牛レバーは生食用として販売・提供することは法律で禁止されています。
鶏肉の生食は法律で禁止されていないのでしょうか?
国としての規制はない
豚肉や豚の内臓、牛レバーと異なり、鶏肉を生食することに関しては、「明確な法規制」はありません。
そのために多くの飲食店で「鶏刺し」「鶏のたたき」などが提供されているということですが、だからと言って安全ということではありません。
禁止されていない=安全ということではない
基本的に日本国内で流通している鶏肉はすべて「加熱用」です。
法規制がないのは安全だからではなく、どちらかというと「基本的には加熱して食べるもの」として認識されているためです。
そのため、国として生食用として安全に提供するためのルールやガイドラインは存在せず、安全性は提供する店の意識や技術等に依存してしまいます。
ルールがないということは安全だとは言えず、鶏肉の生食に関しては、むしろ危険な状態だと考えたほうがよさそうです。
独自のガイドラインを定めている地域もある
国としてのルールやガイドラインはありませんが、もともと鶏の生食文化のある南九州(鹿児島県・宮崎県)では、独自にガイドラインを作成して安全性を確保する取り組みをしています。
とはいえ、鹿児島県のガイドラインでも、
「一般的に食肉の生食は食中毒のリスクがある」
「子ども・高齢者・食中毒に対する抵抗力の弱い人は控えること」
といった記述があり、ガイドラインを守っていたとしても、安全性は絶対のものではないということが読み取れます。
まとめ:基本的に鶏肉は生食NGのものであると理解しよう
飲食店で大々的に提供されていても、ガイドラインをしっかり守っていたとしても、基本的に鶏肉の生食は「安全ではありません」。
食中毒を確実に防ぐためには、衛生的な調理と、やはり中心部までの十分な加熱が必要です。
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