飲み物などに含まれ、気分をすっきりさせてくれるカフェインは比較的身近な食品成分のひとつですが、一日に摂取していい量の上限はどのくらいでしょうか?
カフェインの一日摂取量の上限値と過剰摂取による副作用、カフェインの摂取量に特に注意が必要な人について解説します。
Contents
カフェインとは
カフェインはアルカロイドと呼ばれる化合物の一種で、白色・無臭で強い苦味のある物質です。
適量の摂取では眠気や倦怠感を解消する効果がありますが、過剰量の摂取では健康被害が多く報告されています。
天然にはコーヒーナッツ、茶葉、カカオナッツ、ガラナナッツ、コーラナッツ、マテ葉に含まれており、これらの食品を原料とする加工食品にも含まれます。
■原料由来のカフェインを含む加工食品の例
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また、天然にカフェインを含むものが原材料になっているもののほかに、人工的にカフェインを添加したものとして、一部の食品や医薬品が挙げられます。
■人工的にカフェインが添加されているものの例
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カフェインの一日摂取量の上限は?
カフェインは眠気や倦怠感を解消する効果があることや苦味をつける調味料としても利用されることから、様々な食品(飲料)に含まれていますが、過剰摂取による健康被害の報告も多く、日本を含む複数の国で注意喚起が行われています。
カフェイン摂取量について日本での基準
日本国内でのカフェインの摂取量の基準について、カフェインに対する感受性は個人差が大きく、健康に及ぼす影響を正確に評価することが難しいことから、明確な「摂取上限」は設定されていません。
明確な摂取上限の基準値はないものの、内閣府食品安全委員会、厚生労働省、農林水産省から過剰摂取に対する注意喚起が行われています。
- 内閣府 食品安全委員会:「食品中のカフェインについてのファクトシート」
- 厚生労働省:「食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~
- 農林水産省:「カフェインの過剰摂取について」
カフェイン摂取量について世界の基準
海外においては、カフェインの摂取上限値について、世界保健機関(WHO)をはじめとしたさまざまな組織がリスク評価を行い、悪影響のない最大摂取量について提言を行っていますが、その数値は対象によって必ずしも一致していません。
健康な成人に対して悪影響のない最大摂取量については各国の間で比較的一致しており、欧州食品安全機関(EFSA)とカナダ保健省、オーストリア保健・食品安全局(AGES)、ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)、国際生命科学研究機構(ILSI)北米支部の提言によると、一日あたり400㎎までとされています。
■カフェインについて、悪影響のない最大摂取量と提言を行っている機関
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また、1日あたりの摂取上限量に加え、1回あたりの摂取上限量も示されており、EFSA、AGES、BfRにおいて1回あたり200㎎までにすることが推奨されています。
日本人はどれくらいカフェインを摂取している?
2009年の報告では、1日あたりのカフェインの平均摂取量は女性で256.2㎎、男性は268.3㎎と推定されています。
また、カフェインの摂取源はお茶(日本茶または中国茶)とコーヒーがほぼ半分ずつを占めていることが分かっています。
平均値を見た場合には、日本人のカフェイン摂取量は各機関が低減する悪影響のない摂取量(400㎎/日未満)の範囲に収まっているようです。
一方で、400㎎/日を超えたカフェイン摂取をしている人は女性の11%と男性の15%を占めていたとされています。
平均値を見る分には過剰摂取の心配は少なそうですが、日常的なカフェイン摂取量には個人間でのばらつきがあり、過剰摂取の心配がある人も相当数いるようです。
カフェインを含む飲料や食品の摂取量を振り返り、それぞれの人が適正範囲に収められるようにしたいですね。
実際の「悪影響のない最大摂取量」は個人差が大きい
日本国内での基準についての部分でも触れましたが、カフェインに対する感受性(作用や効果の現れ方)は個人差が大きく、同じ摂取量であっても人によって効果の現れ方は違うことが分かっています。
一般的に悪影響のない摂取量の範囲に収まっている場合でも、健康上の問題が現れた場合には「過剰摂取」と考えられますので、自分の体調をよく観察しながら適量範囲の摂取を心掛けたいですね。
カフェインを過剰摂取するとどうなる?
カフェインは天然には植物由来の成分であり、身近な食品ではコーヒーのほか、茶葉、カカオ製品、コーラなどに含まれています。
そのほか、精製したカフェインとしてエナジードリンクや眠気覚ましドリンク、医薬品などにも使用されています。
適切な摂取量では眠気や倦怠感、一部の頭痛の解消に役立ちますが、多量に摂取すると以下で紹介するような健康障害を引き起こします。
様々な国においてカフェインの過剰摂取に対する注意喚起が行われていますが、過剰摂取ではどのようなことが起こるのでしょうか?
中枢神経症状
カフェインは脳や脊髄といった中枢神経系を刺激する作用を持ち、適量の摂取では眠気や倦怠感の解消に役立ちますが、過剰量を摂取すると作用が強すぎることで悪影響を及ぼします。
- 頭痛
- 神経過敏
- 不眠(寝つきが悪くなる、睡眠時間が短くなる)
- 興奮
- 不安
- めまい
- 耳鳴り
循環器症状
カフェインは交感神経を刺激する作用を持ち、心臓を中心とした循環器系に影響を与えることが知られています。
- 心拍数の増加(動悸)
- 不整脈の誘発
- 血圧を高める
- 心疾患(虚血性心疾患など)のリスクを高める
- 尿量増加に伴う低カリウム血症による手足の震え
消化器症状
カフェインによる交感神経への刺激作用により、胃や腸で胃酸や消化液の分泌が促進されることから、消化器症状が現れることも知られています。
適量の範囲では食べ物の消化を助けるなどのメリットがありますが、作用が強くなると以下のような消化器系の健康障害につながります。
- 胃痛
- 下痢
- 吐き気、嘔吐
死に至る場合も
少数ではあるものの、短時間で過剰量のカフェインを摂取したことで死亡した例も報告されています。
いずれもカフェイン製剤やエナジードリンクの多飲によるもので、一般的な摂取量を逸脱した量を摂取していたとみられています。
カフェインを摂りすぎてしまったら
カフェインを摂取しすぎてしまい、体調不良が起こった場合にはどんな対処法が必要となるのでしょうか?
水分をとる
軽い吐き気などの症状が現れた場合には、水分の摂取により血中のカフェイン濃度を下げる効果が期待できます。
コーヒーに含まれるカフェインは、消化管から吸収され、血液中の濃度が高まると作用が強くなります。
カフェインのとりすぎで気分が悪い時には、血中濃度を下げるためにも水分を十分にとりましょう。
また、カフェインの利尿作用により体内の水分排出が促進されるため、失われる水分を補う意味でも水分補給を心掛けるとよいでしょう。
水を飲めば飲むほどカフェインが排出される速度が速まるわけではありませんが、血中カフェイン濃度が上昇したことによる症状を緩和することはできそうです。
安静にする
コーヒーに含まれるカフェインには心拍数をあげるなど、心臓にも作用します。
このときに運動などを行うと心臓の働きがさらに強くなり、負担が大きくなってしまいます。
カフェインのとりすぎで気分が悪いときは体を休めるようにしましょう。
重篤な場合は医療機関へ
ひどいめまいや嘔吐、下痢、心拍数の増加などの重い症状が現れた場合には速やかに医療機関を受診しましょう。
重篤な場合には死に至る可能性もありますので、なるべく早く治療を受けることをおすすめします。
また、症状が軽度の場合でも、水分をとって安静にしてしばらくしても気分が良くならない場合には、医療機関の受診を検討しましょう。
カフェインの摂取量に注意が必要な人とは
カフェインに対する感受性には個人差がありますが、健康な成人とは異なる状態の人でカフェインの摂取量に注意が必要な場合があります。
子ども
子どもは体が小さくカフェインの感受性も高いため、大人に比べてカフェインの影響を受けやすくなっています。
年齢による体格の違いが大きいことなどから、2.5㎎/㎏体重/日(EFSA)、3㎎/㎏体重/日(カナダ保健省)など、体重ごとの基準が示されています。
子どものカフェイン摂取について詳しく解説した記事はこちら→子どもとカフェイン、どこまで気を付けるべき?|管理栄養士執筆
妊婦・授乳婦
妊娠中はカフェインの代謝にかかる時間が長くなり、カフェインの影響を受けやすくなることが知られています。
また、カフェインは胎盤を通して胎児にも移行して影響を与えるため、1日あたりの摂取量を200~300㎎未満(国によって違いあり)にすることが提言されています。
出産後においても、カフェインは乳腺を通過して母乳に含まれることから、複数の国と機関から1日あたり200㎎未満にすることが勧められています。
カフェインに敏感な人
繰り返しになりますが、カフェインに対する感受性は個人差が大きく、国際的に示されている「悪影響のない最大摂取量」が誰にでも当てはまるわけではなく、そのために、日本では明確な基準値が設定されていません。
カフェインを含む飲料や食品で作用が出やすい人においては、数値基準にとらわれずに体調をよく観察しながら摂取量を調整する必要があるでしょう。
飲酒者
飲酒時にはカフェインを含む飲食物の摂取は控えましょう。
カフェインによる健康被害というよりも、カフェインの作用によってアルコールによる体の機能低下を隠してしまい、結果として過剰な飲酒による健康への悪影響を受けやすくなることが指摘されています。
飲酒時にカフェインを摂取して気分がすっきりしていても、アルコールが体からなくなったわけではないことに注意が必要です。
カフェインをとりすぎないためのポイント
カフェインをとりすぎないためには、カフェインを含む飲み物にはどんなものがあるか知っておき、カフェインを含まない飲み物を上手に活用することが大切です。
具体的には、以下のような方法が挙げられます。
- カフェインを含む飲み物は1日の上限量を決めてそれを守る
- 水分補給を心がける
- カフェインを含まない飲み物を活用する
それぞれについて詳しく解説します。
カフェインを含む飲み物は1日の上限量を決める
1日あたりの上限を決めることで、思いがけずカフェインをとりすぎないようにしましょう。
カフェインを含む飲み物を多量に飲むことがカフェインの過剰摂取につながりやすいのは感覚的にも理解しやすく、自制心が働く人も少なくないはずです。
しかし、仕事中は常にコーヒーが手元にあるなど、長時間かけて多量のカフェイン飲料を飲む場合には気づかないうちにカフェインを過剰摂取しているかもしれません。
ひとつの目安は上で紹介した「健康な成人で1日あたりカフェイン400㎎、コーヒーマグカップ3杯まで」です。
飲み物の種類によって含まれるカフェインの量が異なりますので、合計で1日あたり400㎎を超えないようにしましょう。
食品 | カフェイン濃度 | 一杯分のカフェイン |
エスプレッソコーヒー | 212㎎/100ml | 64㎎/30ml |
ドリップコーヒー | 60㎎/100ml | 90㎎/150ml |
インスタントコーヒー | 57㎎/100ml | 86㎎/150ml |
玉露(高級緑茶) | 160㎎/100ml | 96㎎/60ml |
緑茶(煎茶) | 20㎎/100ml | 30㎎/150ml |
ほうじ茶 | 20㎎/100ml | 30㎎/150ml |
紅茶 | 30㎎/100ml | 45㎎/150ml |
ウーロン茶 | 20㎎/100ml | 30㎎/150ml |
市販コーラA | 10㎎/100ml | 50㎎/500ml |
市販コーラB | 8㎎/100ml | 38㎎/500ml |
市販缶コーヒーA | 77㎎/100ml | 146㎎/190ml |
市販缶コーヒーB | 50㎎/100ml | 93㎎/185ml |
市販エナジードリンクA | 32㎎/100ml | 80㎎/250ml |
市販エナジードリンクB | 40㎎/100ml | 142㎎/355ml |
眠気覚ましドリンクA | 240㎎/100ml | 120㎎/50ml |
眠気覚ましドリンクB | 300㎎/100ml | 150㎎/50ml |
文部科学省:「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」、食品メーカーのデータから作成
合わせて、これまでにコーヒーの飲みすぎで体調を崩したことがあるのであれば、自分の体質等を考慮し、マグカップ3杯よりも少ない量を目安とする必要があります。
このほか、コーヒーやお茶に関しては、滲出時の濃さによってもカフェインの濃度が変化するため、同じ原料でも場合によって摂取量が異なることに注意が必要です。
コーヒーやお茶に関しては濃い目のものは量を少なめにすることを心掛けるなど、状況に応じて上手に調整できるとよいでしょう。
原料にカフェインを含むものや、人工的にカフェインを添加したものがありますが、飲み物の種類によって含有量が異なりますので、製品それぞれの成分値を確認すると確実です。
水分摂取を心掛ける
血液中のカフェインの濃度が高まると作用が強まるため、コーヒーなどのカフェインを多く含む飲み物を飲むときやその前後では水分を補給して血液中のカフェインの濃度を下げるようにしましょう。
カフェインは利尿作用があり、体内の水分を排出する働きを持つため、失われる水分を補う意味でも有効です。
水分補給はカフェインの入っていない麦茶や水がおすすめです。
ノンカフェインの飲み物を活用する
カフェインを避けたいときに役立つノンカフェイン(カフェインを含まない)の飲み物を紹介します。
一般的には、コーヒーナッツ、茶葉、カカオナッツ、ガラナナッツ、コーラナッツ、マテ葉などカフェインを含む原料を使っていないもの、人工的にカフェインを添加していないものが当てはまります。
お茶類の中でカフェインを含まない原料から作られたものには以下のようなものがあります。
- 麦茶
- トウモロコシのヒゲ茶
- ルイボスティー
- カモミールティー
- ローズヒップティー
- レモングラスティー
- ミントティー
- ハイビスカスティー
ハーブティーの一部には茶葉がブレンドされているものもありますので、原材料等の表示を確認するのが確実です。
一部、カフェインとは別に妊娠中には適さないハーブティーもありますので、妊娠中には注意が必要です。
また、近年ではコーヒーや茶葉からカフェインを除去したものも見かけることが多くなってきましたので、上手に活用できるとよいでしょう。
- カフェインレスコーヒー
- カフェインレス紅茶
飲みものすべてをカフェインレスに切り替える必要はありませんが、カフェインの摂取量が多くなりすぎそうな時に適宜カフェインレスコーヒーやカフェインレス紅茶を取り入れることで、コーヒーや紅茶を楽しみつつも、カフェインの摂取量を抑えることができます。
カフェインを含まない飲み物について詳しく解説した記事はこちら
まとめ
カフェインは眠気や倦怠感の解消に効果がある成分ですが、過剰摂取では中枢神経や循環器、消化器等に悪影響を及ぼし、重篤な場合には命にかかわる可能性もあるため、適量範囲での摂取にとどめることが勧められています。
カフェインの摂取上限量については発表している機関や対象者によっても異なり、日本では明確な基準は設けられていませんが、各国の基準を参考にすると、健康な成人の場合では、1日あたり400㎎までに抑えるのが一つの目安となっているようです。
また、子ども、妊娠中の女性、授乳中の女性ではさらに少ない量に留める必要があり、個人差も考慮しながら個人ごとの適量を守る必要があります。
カフェインの摂取においては、カフェイン濃度の高いものの大量摂取を避けるほか、ノンカフェインの飲み物の活用も効果的です。
エナジードリンクなど、人為的にカフェインを添加したもの、カフェイン製剤などでは摂取量が多くなりやすく、過剰摂取につながりやすいため特に注意しましょう。
また、アルコールによる影響を隠してしまい過剰な飲酒につながりやすくなることが懸念されていますので、アルコールとカフェインの同時摂取は避けるようにしましょう。
カフェインの効果と過剰摂取について詳しく解説した記事はこちら
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参考文献 栗原 久.日常生活の中におけるカフェイン摂取-作用機序と安全性評価-,東京福祉大学・大学院紀要 第6巻 第2号(Bulletin of Tokyo University and Graduate School of Social Welfare) pp109-125 (2016,3) 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報「カフェイン」 内閣府 食品安全委員会:「食品中のカフェインについてのファクトシート」 Yamada, M., Sasaki, S., Murakami, K., Takahashi, Y., Okubo, H., Hirota, N., . . . Date, C. (2010). Estimation of caffeine intake in Japanese adults using 16 d weighed diet records based on a food composition database newly developed for Japanese populations. Public Health Nutrition, 13(5), 663-672. 福島 洋一, カフェイン, 化学と生物, 2021, 59 巻, 4 号, p. 162-164 |