必須栄養素のひとつ、ビタミンCを多く含む食べ物にはどんなものがあるでしょうか?
ビタミンCの体内での働きと不足や過剰摂取の影響、健康維持のための摂取基準値、そのほかビタミンCを効率的にとるためのポイントを紹介します。
Contents
ビタミンCとは
ビタミンCは「アスコルビン酸」という名前の物質です。
食品中には「還元型」と「酸化型」の2種類のアスコルビン酸が存在しますが、体内ではどちらも還元型に変換され、同様に働きます。
ビタミンCの働き
ビタミンCの体内での働きは多岐にわたります。
身体を酸化から守る働きのほか、体内で多くの化学反応にかかわることで血管や皮膚、骨の健康状態の維持にはたらきます。
コラーゲンの合成を助ける
コラーゲンというと皮膚のイメージも強いですが、コラーゲンは皮膚以外にも血管や骨の構造に関与する物質です。
ビタミンCはコラーゲンの合成を助ける働きを通じて皮膚、血管、骨の健康状態を維持する働きを持ちます。
抗酸化作用
ビタミンCは体内の活性酸素による酸化を防ぐ作用があることが知られています。
抗酸化作用により、血管に様々な負荷がかかることで進行する動脈硬化を防ぎ、心血管系の病気の予防にはたらきます。
メラニン色素の沈着を防ぐ
私たちの体は紫外線を浴びることでメラニン色素が作られ、皮膚の色が濃くなる仕組みがあります。
ビタミンCはメラニン色素をつくる働きを阻害し、メラニン色素の沈着によるシミを防ぐ働きがあるとされています。
各種ホルモンの生成を助ける
ビタミンCは体内の一部のホルモン産生に必要とされます。
ストレスに対するホルモンの血圧上昇や血糖値上昇作用を通じて、間接的にストレスに対抗する働きを持ちます。
鉄の吸収を促進する
鉄分は必須栄養素の中でも吸収率が低いもののひとつです。
ビタミンCは腸管内で鉄分を吸収しやすい形に変化させ、鉄の吸収率を高める働きを持ちます。
鉄の吸収を助けることで間接的に貧血の予防にも役立っています。
ビタミンCの不足・過剰で起こること
ビタミンCは体内で様々な働きを持つ栄養素ですが、ビタミンCの摂取量が不足し、その働きが不十分になるとどのようなことが起こるのでしょうか?
また、反対にビタミンCが不足した場合・過剰摂取した場合の影響を解説します。
ビタミンCが不足するとどうなる?
ビタミンCの摂取量が長期間にわたって不足すると、ビタミンCの欠乏症である「壊血病」が引き起こされます。
壊血病ではコラーゲンの合成がうまく行われなくなることで血管や皮膚がもろくなり、全身の皮膚(皮下)や歯茎から出血が起こりやすくなります。
その他の症状としては、疲労感や倦怠感、イライラ、顔色が悪くなる、貧血、筋肉の減少、心臓障害や呼吸困難があります。
ビタミンCをとりすぎるとどうなる?
過剰量のビタミンCを摂取した場合、一時的に吐き気、腹痛、下痢を起こすことがあるものの、健康な人では腸管での吸収率が低下して尿からの排泄量が増えるため、ビタミンCの過剰摂取による健康障害は起こらないといわれています。
腎機能に障害のある人の場合には、ビタミンCの過剰摂取により「腎シュウ酸結石」のリスクが高くなることが知られています。
ビタミンCの摂取基準と平均摂取量
必須栄養素であるビタミンCですが、健康維持のためにはどのくらいの量を摂取する必要があるのでしょうか?
また、日本人の平均的な食生活では十分な量の摂取ができているのでしょうか?
ビタミンCについて、健康維持のために推奨される摂取量と食事から摂取している量を解説します。
ビタミンCの摂取基準値
日本人が毎日の食事からとるべき必須栄養素などの量を示した「日本人の食事摂取基準2020年版」では、有効な抗酸化作用と心臓血管系の疾病予防効果が期待できる量として、摂取推奨量を以下のように示しています。
■日本人の食事摂取基準2020年版のビタミンCの摂取推奨量(1日あたり)
年齢等 | 1日あたりの摂取推奨量(男女とも) |
0~11か月 | 40㎎(目安量) |
1~2歳 | 40㎎ |
3~5歳 | 50㎎ |
6~7歳 | 60㎎ |
8~9歳 | 70㎎ |
10~11歳 | 85㎎ |
12歳以上 | 100㎎ |
妊婦 | +10㎎ |
授乳婦 | +45㎎ |
厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書 より作成
ビタミンCの欠乏症には壊血病がありますが、壊血病の予防に必要なビタミンCの摂取量は1日あたり10㎎程度といます。
よって、ビタミンCについて食事摂取基準における推奨量などの基準値は「これ以下の摂取では欠乏症が起こる量」ということではありません。
また、過剰摂取による健康障害を防ぐための摂取上限量の設定はありませんが、1日3~4g(3000~4000㎎)の摂取で下痢の症状が出たとの報告もあり、いくらとっても健康に悪影響がないという訳ではありません。
現在の平均的な摂取量
令和元年の国民健康・栄養調査では、ビタミンCの摂取量は
- 男性(20歳以上)…平均値96㎎、中央値78㎎
- 女性(20歳以上)…平均値101㎎、中央値84㎎
という結果が出ています。
単純平均では推奨量に近い量を摂取できているようですが、中央値(例えば100人中50番目の人の値)を見ると推奨量までは届いていない人が半数を超えているような状況のようです。
現代の日本人の食生活では壊血病の心配はほとんどありませんが、ビタミンCによる心臓血管系の疾病予防効果を得るためには、もう少し多めにとることができるとよい、という状況です。
ビタミンCを多く含む食べ物は?
ビタミンCを多く含む食べ物で代表的なものは「野菜」「果物」「いも類」などの植物性の食品です。
動物性食品にはほとんど含まれていないため、健康的な食生活のために野菜類が必要とされる理由のひとつでもあります。
ビタミンCを多く含む野菜類、果物類、いも類において、それぞれビタミンC含有量の多いものをリストアップしました。
野菜類
比較的身近な野菜類について、ビタミンCを多く含むものには以下のようなものがあります。
■野菜類に含まれるビタミンC含有量
食品名 | ビタミンC含有量(100gあたり) |
赤ピーマン(生) | 170㎎ |
芽キャベツ(生) | 160㎎ |
黄ピーマン(生) | 150㎎ |
オレンジピーマン(生) | 150㎎ |
ブロッコリー(生) | 140㎎ |
かぶ(葉・生) | 82㎎ |
カリフラワー(生) | 81㎎ |
とうみょう(生) | 79㎎ |
にがうり(生) | 76㎎ |
緑ピーマン(生) | 76㎎ |
文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」 より作成
赤・黄・オレンジなどのカラーピーマン(パプリカ)で特にビタミンCの含有量が多く、60~70g程度で1日の推奨量を満たすほどです。
ビタミンCはピーマン以外にも幅広い種類の野菜に広く含まれているため、毎日の食事で野菜類全般をしっかりとっていきたいですね。
果物類
比較的食べる機会の多い果物について、ビタミンCの含有量は以下のようになっています。
■果物類に含まれるビタミンC含有量
食品名 | ビタミンC含有量(100gあたり) |
キウイフルーツ(黄・生) | 140㎎ |
キウイフルーツ(緑・生) | 71㎎ |
柿(生) | 70㎎ |
いちご(生) | 62㎎ |
ネーブルオレンジ(薄皮無し・生) | 60㎎ |
せとか(薄皮無し・生) | 57㎎ |
レモン果汁 | 50㎎ |
きんかん(生) | 49㎎ |
しらぬひ(デコポン)(薄皮無し・生) | 48㎎ |
ぶんたん(薄皮無し・生) | 45㎎ |
文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」 より作成
ビタミンCというとレモンをはじめとした柑橘類のイメージが強いですが、キウイフルーツ、柿、いちごで含有量が高くなっています。
あまり一般的ではありませんが、日本食品標準成分表で最もビタミンCを多く含む果物は「アセロラ(酸味種)」で、100gあたり1700㎎ものビタミンCが含まれています。
ちなみに、飲料等で「レモン●個ぶんのビタミンC」と表示されていることがあります。
この場合のレモン1個分のビタミンCとはレモン1個(120g)からとれる果汁(40g)に含まれるビタミンCの量を指しており、レモン1個分のビタミンCは20㎎とされています。
いも類
あまり知られていませんが、さつまいもやじゃがいもには比較的多くのビタミンCが含まれており、摂取源としてよい食品のひとつです。
いも類に関しては野菜・果物と異なり生で食べることはないため、基本的に加熱後のデータを使用しています。
■いも類に含まれるビタミンC含有量
食品名 | ビタミンC含有量(100gあたり) |
さつまいも(皮なし・蒸し) | 29㎎ |
むらさきいも(皮なし・蒸し) | 24㎎ |
じゃがいも(皮なし・電子レンジ調理) | 23㎎ |
さつまいも(皮なし・焼き) | 23㎎ |
さつまいも(皮つき・蒸し) | 20㎎ |
じゃがいも(皮なし・ゆで) | 18㎎ |
じゃがいも(皮なし・揚げ) | 16㎎ |
文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」 より作成
いも類に含まれるビタミンCは野菜類や果物類と比べるとあまり多くはありませんが、さつまいもやじゃがいもでビタミンCの含有量が高くなっています。
加熱調理の方法で摂取できるビタミンCの量に多少の差があることが知られています。
加工食品等
ビタミンCは栄養強化等の目的でビタミン系飲料に使われるほか、菓子類やサプリメントなどが摂取源となることがあります。
精製したビタミンCを添加したものであっても体内での吸収率などは変わらないとされており、野菜や果物などから摂取したビタミンCと同様に働くと考えられます。
ただし、精製したビタミンCを多量に含んだ加工食品やサプリメント等では過剰量の摂取につながりやすい特徴があります。
一過性の症状ではあるものの、下痢などの報告があることから、ビタミンCを多量に含んだ加工食品に関してはとりすぎに注意が必要です。
ビタミンCの効果的なとり方
ビタミンCは水に溶けやすく、光や空気の影響を受けやすいため、調理作業によって損失・減少してしまう性質があります。
また、個人の身体状況等によって体内で必要とされる量にも差があることが分かっています。
食材に含まれるビタミンCを無駄なくとり、不足状態を回避するために意識したいポイントをまとめました。
生野菜、生果物でとる
ビタミンCを効率的に摂取するためには、野菜や果物はあまり調理せず、生で食べるのがおすすめです。
ビタミンCには水に溶けやすい、光、熱で分解されるという性質があります。
よって、加熱調理や水にさらす調理行程などは最低限のほうが食材からとれるビタミンCの量が多くなります。
野菜類はサラダに、果物は生の状態で食べることで、食材に含まれるビタミンCを無駄なくとることができます。
汁ごと食べる料理にする
スープなど、汁ごと食べる野菜料理もビタミンCの効率的な摂取にオススメです。
ビタミンCは主に切り口から水に溶けだすので、茹でたり煮たりした水分も一緒に食べられる料理だと無駄がありません。
茹でて水分を捨てる調理法の場合には、断面がなるべく少なくなるようにすると、切り口から溶け出すビタミンCの量が減るのでおすすめです。
じゃがいもはレンジ調理がおすすめ
じゃがいもの加熱方法にはいろいろな方法がありますが、ビタミンCの含有量だけを見れば
皮つきで電子レンジ加熱>皮つきで丸ごと茹でる>皮をむいて丸ごと茹でる>皮をむいて角切りにしてゆでる の順でビタミンCの残存量が多くなります。
また、じゃがいもは収穫後、貯蔵されている期間にもビタミンCが減っていくことが知られています。
単にビタミンCの摂取の観点だけで見れば、収穫して間もない「新じゃが」がビタミンCの摂取源としては優れているといえそうです。
タバコを吸う人はより多くとる
タバコを吸う人、または受動喫煙で煙を吸う人はそうでない人よりもビタミンCの必要性が高まることが知られています。
健康の維持・増進の観点ではタバコの習慣や受動喫煙がなくなることが望ましいですが、難しい場合にはビタミンCを推奨量以上に摂取することが推奨されています。
まとめ
ビタミンCは体内でコラーゲン合成や抗酸化作用などの重要な働きを持つ必須栄養素のひとつであり、欠乏すると壊血病を引き起こすことから、一定量以上の摂取が必要とされています。
日本人の食事摂取基準2020年版では、有効な抗酸化作用と心血管疾患の予防効果を得るための摂取量として、
- 摂取推奨量(12歳以上男女)…100㎎/日
を設定しています。
これに対して、日本人のビタミンC摂取量の中央値は20歳以上の男女で摂取推奨量を下回っています。
直ちに問題が起こるようなレベルではないものの、ビタミンCの抗酸化作用や心血管疾患の予防効果を得るためには、もう少し摂取量を増やしたい栄養素のひとつであるといえそうです。
ビタミンCの摂取源となるのは、野菜類、果物類、いも類です。
調理の工夫で効果的に摂取することができますが、単純にこれらの食材の食べる量を増やすのも効果的な方法です。
「野菜は1日350g食べましょう」といわれますが、これはビタミンCを含む各種栄養素(ほかにカリウム、食物繊維)を十分に摂取するための目安です。
ビタミンCを十分な量摂取するために、野菜や果物の食べる量を増やすことを意識してみてくださいね。
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参考文献 厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書 文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」 厚生労働省:「健康日本21(第2次)の推進に関する参考資料」 一般社団法人全国清涼飲料工業会:「レモン果実1個当たりのビタミンC量」表示ガイドライン 吉田勉 監修. わかりやすい食品機能栄養学. 三共出版, 2010. 吉田企世子 監修. 女子栄養大学 栄養のなるほど実験室. 女子栄養大学出版部, 2019.4 上西一弘. 食品成分最新ガイド 栄養素の通になる 第5版. 女子栄養大学出版部, 2022.8 |