投稿日: 2022.11.19 | 最終更新日: 2023.08.18

ビタミンB12の働きとは?多く含む食品と一日の摂取量の目安

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ビタミンB12は必須栄養素のひとつであり、健康維持のためには一定量の摂取が必要になる栄養素です。
ビタミンB12の働きと不足や過剰による影響、1日あたりの摂取量とビタミンB12を豊富に含む食品について紹介します。

ビタミンB12が不足しやすい人の特徴とサプリメントの活用についても解説します。

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ビタミンB12の働き

ビタミンB12は、体内の以下の機能にかかわる栄養素です。

  • たんぱく質やDNAの合成
  • 脳や脊髄といった中枢神経の機能維持
  • 脂肪の代謝

これらの機能により、同じ必須栄養素である葉酸とともに、

  • 正常な赤血球をつくる

ためにはたらくことが知られています。

ビタミンB12の不足や過剰による影響はある?

必須栄養素であるビタミンB12が不足すると、健康上ではどのような問題が起こるのでしょうか?
また、必要な量を大きく超えて摂取した場合、悪影響はあるのでしょうか?

ビタミンB12が不足すると「悪性貧血」になる

DNAの合成から赤血球をつくるはたらきにかかわるビタミンB12が不足すると、正常な赤血球が作られなくなり、「悪性貧血(巨赤芽球性貧血)」を引き起こします。

症状としては

  • 疲労、脱力感、蒼白など貧血症状
  • 感覚消失
  • 筋力の低下
  • 下痢
  • 舌炎
  • 食欲不振
  • 末梢神経障害(下肢のしびれ、進行すると運動失調など)
  • 認知症

などが挙げられます。

ビタミンB12はとりすぎにはならない

ビタミンB12は摂取したすべての量が体内に吸収されるのではなく、必要量以上は吸収されないことが分かっています。

そのため、食事等から過剰量のビタミンB12を摂取しても過剰摂取による健康障害は起こらないとされています。

ビタミンB12の一日の摂取推奨量と平均摂取量

健康維持のために必要なビタミンB12の1日あたりの摂取量はどのくらいでしょうか?
そして、私たちはどのくらいのビタミンB12を摂取できているのでしょうか。

摂取推奨量

ビタミンB12は必須栄養素の中でも、必要とされる量が最も少ない栄養素で、その量は最大でも1gの40万分の1程度にとどまります。

日本人の食事摂取基準2020年版では、ビタミンB12の吸収率等も加味し、年齢区分ごとに以下のような摂取推奨量および目安量を定めています。

■ビタミンB12の摂取基準

年齢等  推奨量(㎍/日)  目安量(㎍/日)
0~5か月  –  0.4
6~11か月 –  0.5
1~2歳  0.9 – 
3~5歳  1.1 – 
6~7歳  1.3 – 
8~9歳  1.6 – 
10~11歳 1.9 – 
12歳以上  2.4 – 
妊婦  推奨量+0.4
授乳婦  推奨量+0.8 – 

数値は男女共通、厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書 より作成

日本人の摂取状況

令和元年の国民健康・栄養調査で得られた摂取平均値をみると、いずれの年齢区分でも推奨量を大きく上回る量を摂取できているようです。

■令和元年におけるビタミンB12摂取量(平均)

年齢区分  摂取量平均値(㎍/日)
1~6歳  3.5
7~14歳  5.8
15~19歳  4.7
20~29歳  5.4
30~39歳  5.2
40~49歳  5.2
50~59歳  5.8
60~69歳  7.3
70~79歳  8.1
80歳以上  6.8

数値は男女合わせたもの(総数)、1歳未満はデータなし 厚生労働省:「令和元年国民健康・栄養調査」 より作成

あくまで平均値のデータであり、日本に住む人すべてがこの量を摂取できているという訳ではありませんが、日本の平均的な食生活では、不足の心配はあまりないと考えることができそうです。

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ビタミンB12を多く含む食品

食品に含まれる量はごく微量であるものの、体にとって重要な働きを持つビタミンB12

ビタミンというと野菜を思い浮かべる人も少なくないですが、ビタミンB12は魚介類、肉類、乳類、たまご類などの「動物性食品」が主な摂取源となっています。

魚介類

ビタミンB12を含む食品の筆頭となるのが魚介類、特に貝類です。
比較的身近なものからリストアップした表は以下の通りです。

■魚介類のビタミンB12含有量

食品 100gあたり含有量(㎍/100g)
しじみ(生)  68.0
しろさけ・すじこ(生)  54.0
あさり(生)  52.0
しろさけ・いくら(生)  47.0
はまぐり(生)  28.0
かき(生)  23.0
さんま(皮つき・生)  16.0
かずのこ(生)  11.0
ほたてがい(生)  11.0

文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」 より作成

魚介類の中も特に貝類では100gあたりの含有量が高く、少量でも1日の摂取推奨量が摂取できるのが魅力です。
一方で、人体が一度に吸収できるビタミンB12の量は2.0㎍程度といわれており、例えばしじみを100g食べた場合でも、2.0㎍だけ吸収され、残りの66.0㎍は排泄されてしまいます。

肉類

肉類もビタミンB12の主要な摂取源となる食品ですが、部位によって含有量が異なるのが特徴です。

■肉類のビタミンB12含有量

食品 100gあたり含有量(㎍/100g)
牛レバー(生)  53.0
鶏レバー(生)  44.0
豚レバー(生)  25.0
牛ヒレ肉(国産牛・生)  3.0
牛肩肉(国産牛・脂身付き・生)  2.8

国産牛は乳用肥育牛肉、文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」 より作成

ビタミンB12は肝臓に特に多く、次いで内臓肉、牛の赤身肉に比較的多く含まれます。
レバーと比較すると牛赤身肉では含有量がごく少なく見えますが、1食あたりの吸収量(最大2.0㎍)を考えると、十分に摂取源となる食材です。

乳類

動物性食品である乳製品も、多くはありませんがビタミンB12の給源となります。

■乳類のビタミンB12含有量

食品 100gあたり含有量(㎍/100g)
プロセスチーズ  3.2
パルメザンチーズ  2.5
チェダーチーズ 1.9
モッツァレラチーズ 1.6
カマンベールチーズ  1.3
低脂肪乳  0.4
普通牛乳 0.3

文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」 より作成

牛乳にも多くはありませんが、ビタミンB12が含まれています。
また、乳製品の中でも、牛乳を濃縮して作るチーズ類には比較的豊富に含まれていますが、カロリーや塩分等を考慮すると、多量の摂取は避けたほうが無難です。

卵類

卵類もビタミンB12を含みますが、鶏卵とうずら卵で重さあたりの含有量が大きく異なっています。

■卵類のビタミンB12含有量

食品 100gあたり含有量(㎍/100g)
うずら卵(全卵・生)  4.7
鶏卵(卵黄・生)  3.5
鶏卵(全卵・生)  1.1

文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」 より作成

卵では特に卵黄部分に多く含まれることが知られています。
鶏のたまごの場合、全卵1個(50g程度)で摂取できるのは0.6㎍程度ですが、ほかの食材と比較して日常的に食べる機会が多いため、効果的な摂取源のひとつといえそうです。

ビタミンB12は植物性食品にはほとんど含まれない

ビタミンB12は食物連鎖により吸収・蓄積される栄養素であるため、野菜や穀物などの植物性食品には含まれていません。

一部の藻類(アマノリ、アオノリ、クロレラ、スピルリナ)などは植物性食品でありながらビタミンB12を多く含んでいますが、このうちスピルリナに含まれるビタミンB12は人体で利用できないもの(シュードビタミンB12)であることが知られています。

アマノリ、アオノリ、クロレラでは人体が利用できるビタミンB12が含まれているという報告もあるため、これらを原料とする食品である焼きのりや青のりは一度に食べられる量は少ないものの、植物性食品としては貴重なビタミンB12の摂取源になるかもしれませんね。

ビタミンB12のサプリメントはどんな人に必要?

サプリメントは不足しがちな栄養素を効率的に摂取するのに便利な食品です。

ビタミンB12は通常の食生活では不足する心配はほとんどありませんが、

  • 特殊なメカニズムで吸収されること
  • 植物性食品にはほとんど含まれないこと

という特徴から、特定の人で不足する可能性が考えられます。

胃にトラブルのある人

ビタミンB12は消化・吸収の際に胃から分泌される胃酸や内因子が必要とされています。
そのため、胃の粘膜に異常があり、加齢などにより胃酸の分泌が少ない人や胃の全摘手術を受けた人ではビタミンB12が吸収されずに不足することがあります。

経口摂取ではビタミンB12が吸収できない場合は注射などで補給されますが、高齢者など、分解に必要な胃酸の分泌が下がっているものの、吸収に必要な内因子が十分量ある場合には、すでに分解された「遊離型ビタミンB12」を含むサプリメントや強化食品で補うことができる可能性があることが報告されています。

現時点では確実に有効とまでは言えないようですが、将来的にはビタミンB12の不足に対して、サプリメントが有効な解決手段となるかもしれませんね。

菜食主義者の人

ビタミンB12は植物性食品にはほとんど含まれないことから、ヴィーガン(完全菜食主義者)などの厳格な菜食主義ではビタミンB12が不足しやすいことが知られています。

ビタミンB12は必要量に対して体内の貯蔵量が多く、数年分も蓄えておくことができるため、完全菜食を実施しても、すぐに欠乏症が起こることはありませんが、長い期間完全菜食を行った場合には、ビタミンB12の欠乏症状が起こることが考えられます。

そのため、ヴィーガンやマクロビオティックなどにより、厳格な菜食を長期的に行う場合には、ビタミンB12のサプリメントが必要となります。

ヴィーガン向けのサプリメントには藻類のスピルリナを原料としたものもありますが、スピルリナに含まれるビタミンB12は人体で利用できないシュードビタミンB12であることがわかっているため、スピルリナ以外のサプリメントを選ぶのが確実です。

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まとめ

ビタミンB12はDNAの合成にかかわる栄養素で、正常な赤血球の産生にかかわる必須栄養素です。

摂取量が不足すると「悪性貧血(巨赤芽球性貧血)」を引き起こし、

  • 疲労、脱力感、蒼白など貧血症状
  • 感覚消失
  • 筋力の低下
  • 下痢
  • 舌炎
  • 食欲不振
  • 末梢神経障害(下肢のしびれ、進行すると運動失調など)
  • 認知症

などの症状が起こることが知られています。

その一方で、過剰摂取による悪影響は起こらないことが分かっています。

日本人の食事摂取基準2020年版では、成人の場合、ビタミンB12の1日あたりの摂取推奨量は2.4㎍となっています。
令和元年の国民健康・栄養調査の平均値はこの摂取推奨量を上回っており、平均的な食生活では不足の心配はなさそうです。

ビタミンB12の摂取源となる食品は魚介類、肉類、乳類、たまご類などの動物性食品で、植物性食品にはほとんど含まれないことが知られています。

健康で平均的な食生活を送っている場合には不足の心配はありませんが、ビタミンB12の吸収に必要な胃の機能が不十分な場合や、動物性食品を厳格に制限した食事をとっている場合には、長期的に見た時に欠乏症の恐れがあります。

厳格な菜食主義などではサプリメントの活用もオススメですが、そうでない場合には、ビタミンB12の不足だけでなく、その他の栄養素も不足・過剰にならないように、幅広い食材を取り入れた「バランスの取れた食事」をとるようにしたいですね。

バランスの取れた食事について詳しく解説した記事はこちら

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ビタミン全般について詳しく解説した記事はこちら

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参考文献

吉田勉 監修. わかりやすい食品機能栄養学. 三共出版, 2010.

厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書

MSDマニュアル家庭版:「ビタミン欠乏性貧血(巨赤芽球性貧血)」

MSDマニュアルプロフェッショナル版:「巨赤芽球性貧血」

厚生労働省:「国民健康・栄養調査」

文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」

渡辺 文雄, 食用藻類のビタミンB_<12> : 食品学から分子生物学まで, ビタミン, 2007, 81 巻, 2 号, p. 49-55

成田崇信, 名取宏 著. 今日から使える薬局栄養指導Q&A. 金芳堂, 2022.

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。