ビタミンB1は必須栄養素のうち、ビタミンB群に属するビタミンのひとつです。
必須栄養素であるビタミンB1を摂取するのによい、ビタミンB1を多く含む食べ物にはどんなものがあるでしょうか?
ビタミンB1の働きと推奨される摂取量、不足や過剰摂取についても解説します。
Contents
ビタミンB1とは
ビタミンB1はどんな栄養素で、どのくらいとるべきとされているのでしょうか?
ビタミンB1の働きと健康維持のための摂取基準値を紹介します。
ビタミンB1の働き
ビタミンB1は体内で糖質をエネルギーに変える代謝などに必要とされる物質です。
糖質のエネルギー代謝にかかわることから、糖質をエネルギー源とする脳や神経の働きを正常に保つはたらきがあり、健康維持のために食事から一定以上の量を摂取する必要のある栄養素です。
ビタミンB1の摂取推奨量
日本人の食事摂取基準2020年版では、ビタミンB1の摂取推奨量として、以下のような値が定められています。
ビタミンB1はエネルギー代謝にかかわる栄養素であるため、消費するエネルギー(カロリー)が多いほど、ビタミンB1の必要な量も多くなる特徴があります。
■日本人の食事摂取基準2020年版のビタミンB1の摂取推奨量(㎎/日)
年齢等 | 男性 | 女性 |
0~5か月 | 0.1(目安量) | 0.1(目安量) |
6~11か月 | 0.2(目安量) | 0.2(目安量) |
1~2歳 | 0.5 | 0.5 |
3~5歳 | 0.7 | 0.7 |
6~7歳 | 0.8 | 0.8 |
8~9歳 | 1.0 | 0.9 |
10~11歳 | 1.2 | 1.1 |
12~14歳 | 1.4 | 1.3 |
15~17歳 | 1.5 | 1.2 |
18~29歳 | 1.4 | 1.1 |
30~49歳 | 1.4 | 1.1 |
50~64歳 | 1.3 | 1.1 |
65~74歳 | 1.3 | 1.1 |
75歳以上 | 1.2 | 0.9 |
妊婦・授乳婦 | – | +0.2(付加量) |
厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書 より作成
ビタミンB1が不足・過剰摂取するとどうなる?
健康維持のために一定量が必要なビタミンB1ですが、必要な量が不足した場合や過剰に摂取した場合にはどのような影響があるのでしょうか?
また、ビタミンB1は現在の日本人の平均的な食生活では不足しがちな栄養素なのでしょうか?
ビタミンB1が不足したときの影響
ビタミンB1は糖質のエネルギー代謝にかかわる栄養素で、脳や神経の働きを正常に保つ働きを持ちます。
そのため、ビタミンB1の摂取量が不足すると神経や脳組織の障害が起こります。
具体的な病名としては、以下のようなものが知られています。
病名 | 症状の例 |
脚気 | 疲労、イライラ、記憶力低下、食欲減退、睡眠障害、体重減少、手足のしびれ、むくみ、動悸、心不全など神経・心臓・脳の異常 |
ウェルニッケ脳症 | 錯乱、歩行困難、眼球の不随意運動や部分麻痺など |
コルサコフ精神病 | 記憶障害、錯乱など |
ビタミンB1を過剰摂取したときの影響
精製したビタミンB1を長期間大量に摂取した影響として、頭痛、いらだち、不眠、速脈、衰弱、かゆみなどが起こるという報告がありますが、これは摂取推奨量の数千倍の量にあたり、通常の食事では過剰摂取による健康障害はほとんど起こらないとされています。
ビタミンB1の現在の摂取状況
令和元年の国民健康・栄養調査では、ビタミンB1の摂取量の中央値は
- 20歳以上男性…0.94㎎
- 20歳以上女性…0.80㎎
となっており、日本人の食事摂取基準2020年版の推奨値(18歳以上)を下回っています。
しかし、食事摂取基準におけるビタミンB1の推奨値は「これ以上摂取しても尿として排出されてしまう量(体内のビタミンB1の在庫がいっぱいになる量)」から設定されているため、摂取量が推奨値を超えていなければ健康を損なう…ということはありません。
現代の日本においては脚気などビタミンB1の欠乏症の報告はほとんどないことからも、ビタミンB1が不足しているという状況ではないようです。
ビタミンB1を多く含む食品は?
ビタミンB1を含む食品は幅広く、動物性食品では肉類、魚類など、植物性食品では豆類、穀類などに含まれています。
肉類
肉類では特に豚肉に多く含まれていることが知られています。
■肉類のビタミンB1含有量(食品100gあたり)
食品名 | ビタミンB1含有量(100gあたり) |
豚肉(ヒレ・生) | 1.32㎎ |
豚肉(もも・脂身無し・生) | 0.94㎎ |
生ハム | 0.92㎎ |
豚肉(もも・脂身付き・生) | 0.90㎎ |
ボンレスハム | 0.90㎎ |
豚肉(ロース・脂身無し・生) | 0.75㎎ |
豚ひき肉(生) | 0.69㎎ |
鶏レバー(生) | 0.38㎎ |
ラム肉(もも・脂身付き・生) | 0.18㎎ |
文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」 より作成
ビタミンB1は赤身部分に多く含まれており、豚肉の中でも脂身が少ない部位ほど重さあたりのビタミンB1の含有量が高くなっています。
魚類
魚類では豚肉よりも少ないものの、魚卵、うなぎのほか、多くの魚類がビタミンB1の摂取源となることが知られています。
■魚類のビタミンB1含有量(食品100gあたり)
食品名 | ビタミンB1含有量(100gあたり) |
たらこ(生) | 0.71㎎ |
いくら(生) | 0.42㎎ |
ウナギ(生) | 0.37㎎ |
真鯛(養殖・生) | 0.32㎎ |
紅鮭(生) | 0.26㎎ |
たいせいようさけ(生) | 0.24㎎ |
タラ白子(生) | 0.24㎎ |
文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」 より作成
魚卵は塩分を多く含む加工品が多く1回の食べる量が少なめなので、ビタミンB1の摂取源としては魚卵より魚類のほうが効率的かもしれません。
豆類
肉類や魚類よりは少なめですが、豆類や大豆製品もビタミンB1の摂取源となります。
■豆類のビタミンB1含有量(食品100gあたり)
食品名 | ビタミンB1含有量(100gあたり) |
ゆで大豆 | 0.17㎎ |
湯葉(生) | 0.17㎎ |
ひよこまめ(ゆで) | 0.16㎎ |
充てん豆腐 | 0.15㎎ |
絹ごし豆腐 | 0.11㎎ |
生おから | 0.11㎎ |
木綿豆腐 | 0.09㎎ |
文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」 より作成
一般的に栄養素は加工により水分量が減るほど濃縮される傾向がありますが、大豆製品に含まれるビタミンB1に関しては納豆と比較して豆腐のほうが多いなど、水分量が多い加工品でもある程度の量が摂取できるようです。
穀類
ビタミンB1は米の「ぬか」の部分から見つかったビタミンで、米ぬかやぬかを含む精製度の低い穀類で含有量が高くなっています。
■穀類のビタミンB1含有量(食品100gあたり)
食品名 | ビタミンB1含有量(100gあたり) |
米ぬか(生) | 3.12㎎ |
そば粉(生) | 0.43㎎ |
キヌア(生) | 0.45㎎ |
玄米(生) | 0.41㎎ |
小麦全粒粉(生) | 0.34㎎ |
全粒粉パン | 0.17㎎ |
玄米ごはん | 0.16㎎ |
文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」 より作成
パンやごはんなどの調理後の状態では重さあたりのビタミンB1含有量はさほど多くありませんが、主食として食べる機会が多いため、摂取源として比較的大きい部分を占める食品といえます。
栄養ドリンク等
一般の食品以外で身近なものでは、栄養ドリンク等でビタミンB1を配合しているものも販売されています。
栄養ドリンクの摂取によりビタミンB1の摂取推奨量を満たすことはできますが、基本的には通常の食事から十分量のビタミンB1をとることが理想です。
ビタミンB1の不足に注意が必要な人とは
平均的な食生活を送っている日本人ではビタミンB1が不足することによる健康への悪影響はほとんど起こりません。
しかし、一般的な生活習慣を逸脱している場合にはビタミンB1が不足する場合があることも知られています。
激しい運動習慣のある人
ビタミンB1はカロリー消費が大きいほど必要な量が多くなる栄養素です。
スポーツ選手のような激しい運動を行う習慣がある人は日々のカロリー消費も多いため、体が必要とするビタミンB1の量に対して摂取量が不足する場合があることが知られています。
糖質やアルコールを多量摂取する人
ビタミンB1は糖質やアルコールの代謝にかかわる栄養素であるため、糖質やアルコールの摂取量が多い人では必要なビタミンB1の量が多くなります。
加えて、糖質やアルコールばかり摂取するような食習慣である場合、ビタミンB1の摂取量も少なくなることでビタミンB1の不足状態に陥ることがあります。
食事内容に厳しい制限がある人
完全菜食などで肉・魚類が食べられないなどの食事制限がある場合、ビタミンB1の摂取源となる食品のうち摂取できるものが少なくなります。
そのため、大豆や全粒穀物など摂取できる食品のうちビタミンB1の摂取源となるものをうまく取り入れられないと、ビタミンB1が不足することが考えられます。
ビタミンB1が不足しないために気を付けたいこと
現時点で通常の食生活を送っている人において、ビタミンB1の不足を避けるためにはどのようなことに気を付ければよいのでしょうか?
バランスのとれた食事を意識する
月並みですが、まず大切なのは「バランスの取れた食事」をとることです。
少なくとも現代におけるビタミンB1に関しては、何か特定の食品(または食品群)ばかり食べたり、反対に特定の食品(または食品群)は食べなかったりということがなければ、不足する心配はほとんどありません。
糖質やアルコールの過剰摂取によってビタミンB1が不足しているような場合には、ビタミンB1の摂取量を増やすことよりも、糖質やアルコールの過剰摂取をやめることが必要です。
「バランスの取れた食事」とは、具体的には
- 主食(ごはんやパン、麺類など)
- 主菜(肉、魚、卵、大豆製品など)
- 副菜(野菜料理)
- 果物
- 乳製品
などをまんべんなく取り入れた食事のこと。
バランスの取れた食事を心掛けることで、特定の栄養素の不足や過剰摂取を避け、健康的な食生活を送ることに近づけます。
バランスの取れた食事のとり方について詳しく解説した記事はこちら
必要に応じて食事内容を工夫する
普通の人にとってはバランスの取れた食事をとっていても、激しいスポーツ習慣がある場合には全体量が足りなかったりすることで、ビタミンB1が不足する可能性が考えられます。
また、宗教上・思想上の理由で厳しい食事制限を行っている場合には、ビタミンB1の摂取量を確保するために食事内容を工夫する必要があるかもしれません。
こういった場合には、上で紹介したビタミンB1を多く含む食品を意識的に取り入れたり、栄養士などの専門家に相談してビタミンB1を含む必須栄養素が不足しないような食事方法を考えたりなど、それぞれの生活習慣で可能な対策をとるとよいでしょう。
まとめ
ビタミンB1は糖質をはじめとした栄養素のエネルギー代謝にかかわるビタミンで、不足すると神経や脳に異常が起こることが知られている「必須栄養素」のひとつです。
ビタミンB1を多く含む食品は、
- 肉類(特に豚肉)
- 魚類、魚卵
- 豆類
- 穀類(特に全粒穀物)
などがあります。
現代の日本ではビタミンB1の不足による健康障害はほとんど見られませんが、極端に糖質やアルコールの摂取量が多い場合や、食事内容に制限がある場合、通常よりもカロリー消費が多い場合には不足のリスクが高まります。
食習慣に応じて栄養士等の専門家に相談することが必要な場合もありますが、ビタミンB1の不足を防ぐためには、特定の食品に偏らずいろいろな食品をまんべんなくとる「バランスの取れた食事」を意識することが大事なポイントです。
ビタミンB1を含むビタミン全般について詳しく解説した記事はこちら
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参考文献 厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書 吉田勉 監修. わかりやすい食品機能栄養学. 三共出版, 2010. |