トレーニングやダイエットをしている人が利用することの多い「プロテイン」ですが、トレーニングやダイエットに役立つ一方でデメリットを心配する声も少なくありません。
プロテインをとることにデメリットはあるのでしょうか?
プロテインをとる目的と健康的に取り入れるためのポイントを紹介します。
Contents
プロテインとは?
「プロテイン」はもともと英語で「たんぱく質」を指す言葉です。
一般的に「プロテイン」は、たんぱく質の摂取を目的とした食品であり、サプリメントのような役割で活用されるものを指します。
原料となるのは乳成分や大豆が一般的です。
プロテインはたんぱく質「だけ」を含むものではなく、原料由来の成分のほか、ビタミンやミネラル、糖質などの成分が添加されており、製品によってそのバランスも様々です。
たんぱく質の主な働き
栄養成分としてのたんぱく質は私たちの体の中でどのような役割を持っているのでしょうか?
体組織の構成成分
筋肉や皮膚、内臓などの組織は無数の細胞からできていますが、たんぱく質はこの細胞の重要な構成成分のひとつで、全身の15~20%を占めるともいわれます。
体の「構造」の面だけでなく、酵素としてはたらくなど体内の「機能」の面でも重要な役割を担っています。
エネルギー源
たんぱく質は炭水化物、脂質と並んでエネルギー源となる栄養素のひとつであり、1gあたり4kcalのエネルギーを生み出します。
食事から摂取したたんぱく質は消化吸収されて体の構成成分として使われるほか、エネルギー源にもなります。
食事からのエネルギー摂取が不足すると、脂肪だけでなく筋肉を分解してエネルギーを補填することもあります。
プロテインと食事からとるたんぱく質の違い
プロテインはたんぱく質をとることを目的としたサプリメントの一種ですが、通常の食事からとるたんぱく質とはどのような違いがあるのでしょうか?
プロテインからたんぱく質をとるときの特性を紹介します。
たんぱく質源に付随しがちな脂質が少ない
通常の食事では、たんぱく質の主な摂取源となるのは
- 肉類
- 魚類
- たまご
- 乳製品
- 大豆製品
などが一般的です。
しかし、肉や魚などの食材には「脂身」の部分があったり、料理にする過程で調理油が加えられていたり、たんぱく質の摂取量を増やそうとすると脂質の摂取量も増えやすくなります。
トレーニングなどに合わせてたんぱく質の摂取量を増やす目的でプロテインをとる人にとって、たんぱく質に付随する脂質はなるべく減らしたいものです。
製品の種類にもよりますが、プロテインでは成分の調整が行われており、脂質の含有量は低く抑えられているため、同じ量のたんぱく質を摂取する場合に余分な脂質のエネルギーを避けることができます。
一方で、製品によっては肉や魚、たまごにはほとんど含まれない糖質が添加されている場合もあります。
【同量のたんぱく質を摂取するときの脂質及びエネルギーの比較】
たんぱく質 | 重量 | 脂質 | エネルギー | |
豚ロース肉 (脂身付き) |
16.0g | 83g | 15.9g | 206kcal |
鶏むね肉 (皮なし) |
16.0g | 68.5g | 1.3g | 72kcal |
プロテイン (一例) |
16.0g | 21g(粉末) | 1.0g | 77kcal |
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
*)日本食品標準成分表(八訂)およびプロテイン商品情報より作成
作る、摂取する手間が少ない
プロテインの特徴は摂取するまでの手間が少ないことにもあります。
プロテインと同様にトレーニング中の人に人気の「鶏むね肉」は、生ものですので保存がききにくく、また、食べるためにゆでる、焼くなどの調理が必要となります。
いっぽう、プロテインは粉末を水などに溶かして飲むものが多くなっています。
プロテインは粉末であるため保存性もよく、水に溶かすだけで飲むことができるのが特徴です。
また、ドリンクタイプのものなので時間や咀嚼の負担がなく、たんぱく質の摂取量を増やしたい人には効率的な選択肢となります。
プロテインにデメリットはある?
効率的にたんぱく質の摂取量を増やせるプロテインですが、それゆえに健康への悪影響を心配する声も聞かれます。
プロテインを取り入れる際に気を付けたいポイントはどこでしょうか?
過剰摂取による悪影響
プロテインはたんぱく質の効率的な摂取には最適な食品のひとつといえます。
しかし、1日に取るプロテインの量が増えすぎたり、プロテインの摂取によって理想的な栄養素バランスと比較してたんぱく質の摂取量が多くなりすぎたりすることで、様々な悪影響が心配されています。
プロテインは「効率的」であるがゆえに、「過剰摂取」が懸念事項となりそうです。
肥満リスク
プロテインの過剰摂取では肥満につながる可能性があります。
トレーニングやダイエットをする人の間では、脂質や糖質は肥満につながるがたんぱく質はそうではない…といったイメージが定着しているように見受けられます。
しかし、たんぱく質にもエネルギーがあり、とりすぎた場合には摂取エネルギーの過剰につながります。
消費エネルギーに対して摂取エネルギーが増えれば体脂肪の増加につながりますので、プロテインもとればとるほど痩せるようなものではありません。
反対に言えば、プロテインをとっていてもエネルギー収支がマイナスの状態では基本的に体脂肪が増えることはありません。
生活習慣病のリスク
プロテインの過剰摂取によってタンパク質のとりすぎの状態が続くと、栄養バランスの乱れから生活習慣病の発生リスクが増す可能性があります。
日本人の食事摂取基準2020年版では、食事全体のエネルギーの13~20%をたんぱく質からとることを目標量としています。
たんぱく質の摂取量がエネルギー比20%を超えた場合には、
- 糖尿病発症リスクの増加
- 心血管疾患の増加
- がんの発症率の増加
- 骨量の減少
- BMI の増加
などの健康障害が起こる可能性が示唆されており、たんぱく質は多ければ多いほどいいというものでもなく、適量の範囲に収めるのが健康的であるということが知られています。
腎臓への負担が増える可能性
たんぱく質の摂取量が増えると、体内でのたんぱく質の代謝により、腎臓への負担が増えることが知られています。
1日にどのくらいとることでどれだけ腎臓に負担があるか、腎臓の機能に影響があるかという点は分かっていませんが、どれだけ飲んでも問題はないという訳ではありません。
腎機能に問題がある人でなくても、通常の摂取から大きく外れたとり方をしている場合には、腎臓の機能を傷害することが懸念されます。
腸内環境の悪化
こちらも明確な因果関係は解明されていませんが、たんぱく質の摂取量が増えることで腸内細菌のバランスに影響を与え、腹部の違和感や下痢のような症状が起こることがあるようです。
プロテインのメリットとは
プロテインは食品としての形態も、摂取方法も従来のたんぱく質源とは異なります。
デメリットも気になりますが、それを踏まえても魅力となる点はどこでしょうか?
余分な脂質を避けられる
前述のとおり、通常の食品に対してプロテインは成分が調整されており、余分な脂質を取り除いたものも多数販売されています。
そのため、余分な脂質による摂取エネルギーを避けつつたんぱく質を効率よく摂取するのに役立ちます。
手軽に摂取しやすい
プロテインの主な形態は粉末となっており、水で溶かすだけで飲むことができるため準備が簡単という点も大きなメリットです。
また、飲み物であるため咀嚼が必要なく、摂取の負担も少ないのが特徴です。
粉末状では保存もきくため、日常的にとりたいという人には全般的に負担の少ない選択肢となりますね。
プロテインを上手に取り入れる方法
メリットもデメリットもあるプロテインを上手に活用するには、自分の生活スタイルやニーズに合っているかを判断するのがよいでしょう。
- プロテインがそもそも必要か
- どのくらい取り入れるか
- 1日のうちどこで飲むか
について考えてみましょう。
自分にプロテインが必要か判断する
プロテインはたんぱく質を効率的に摂取するのに役立つサプリメントです。
健康な成人の場合、運動やトレーニングの習慣の有無、または仕事などによる身体活動の多い少ないによってたんぱく質の必要量が変化するので、自分の生活習慣に合わせて、必要に応じてプロテインを取り入れるのをおすすめします。
トレーニングの習慣や特別に多い身体活動がない場合
日本人の食事摂取基準2020年版では、たんぱく質の摂取量は摂取エネルギーの13~20%に収めることが目標とされています。
この数値を体重当たりに計算すると、運動習慣(または体力仕事)のない健康な成人では男女ともに約1.2~2.0g/㎏体重/日が1日あたりのたんぱく質摂取量の目標値となります。
令和元年の国民健康・栄養調査では、たんぱく質の摂取量は20歳以上の男女ともに約1.2g/㎏体重/日となっており、目標値をほぼ満たしているようです。
この数値は「目標値」であり、下限を多少下回っても直ちに健康に影響があるような数値ではありません。(最低限必要なたんぱく質量は0.66g/㎏体重/日とされています)
特に運動の習慣がない人では、平均的な食事内容の場合、不足の心配はあまりないため、あえてプロテインを取り入れる必要性はないと考えることができます。
運動やトレーニングを行っている場合
運動やトレーニング(または体力仕事)を習慣的に行っている場合には、そうでない人と比べて必要なエネルギー量やたんぱく質量が増加します。
この場合、1日あたりのたんぱく質摂取目標量はおよそ1.4-2.3g/㎏体重/日となり、平均的な摂取量1.2g/㎏体重/日よりも多くなります。
新たに運動習慣を始めたということであれば、普段の食事量に加えてさらにたんぱく質を含む食品やプロテインを活用し、たんぱく質の摂取量を増やすとよいでしょう。
このとき、毎日の食事の量を増やすことでも対応はできますが、通常の食品ではたんぱく質がとり切れない、または付随する脂質が気になるということであれば、プロテインがよりよい選択肢になるといえそうです。
プロテインをどのくらい足す?自分の適量は
では、実際にプロテインを取り入れたいと考えた時、どのくらい摂取するのがよいのでしょうか?
日本の成人の平均たんぱく質摂取量は1.2g/㎏体重/日程度です。
対して、運動やトレーニングを行っている場合のたんぱく質摂取目標量は1.4g/㎏体重/日以上2.3g/㎏体重/日までとなっています。
また、筋量の増加を目的として筋トレを行っている場合でも、たんぱく質の摂取量は1.6g/㎏体重/日以上に増やしても筋量の増加には差がない*1)といわれています。
よって、トレーニング中のたんぱく質の摂取量としては1.4~1.6g/㎏体重/日程度が妥当な数値といえそうです。
日本人の平均摂取量を差し引いて、運動やトレーニングを始めた人が普段の食事に加えてとりたいたんぱく質量は0.2~0.4g/㎏体重/日と考えることができます。
例えば、体重50㎏の人の場合は1日あたり10~20g、体重70㎏の人は14~28gが追加摂取するたんぱく質の適量であると考えることができそうです。
市販されているプロテインでは、1食あたりのたんぱく質量はおよそ15~25gとなっていますので、自分の体重から推測される追加摂取量と製品のたんぱく質量を確認し、1日0.5~1食、製品と体重によっては2食程度までが適量となりそうです。
とはいえ、今回の数値はあくまでも平均値から推測したものです。
トレーニング内容や普段の食事内容は人それぞれ異なりますので、より正確な数値が知りたい、という場合には専門家に相談することをおすすめします。
プロテインを飲む適切なタイミングとは?
プロテインは1日のうちどのタイミングで取り入れるのがよいのでしょうか?
トレーニング後の筋肉の修復と筋量の増加を助けられるようトレーニング直後に飲むほうがよい、という説*2)があります。
一方で、トレーニングの直前・直後・それ以外にかかわらずいつ飲んでもあまり差はないとする説*3)*4)もあります。
いずれにしても飲む時間の違いによって無意味になるものではありませんので、胃腸への負担が少なく取り入れやすいタイミングで始めるのがよいのではないでしょうか。
まとめ
プロテインはたんぱく質を効率的にとることを目的としたサプリメントや強化食品のひとつです。
とればとるほど良い、というものではなく、メリットもデメリットもあることに注意しましょう。
プロテインのデメリットをまとめると、
- 過剰摂取による肥満や生活習慣病のリスクがあること
- 腎臓への負荷が懸念されること
- 腸内環境への影響が懸念されること
があげられます。
その一方で、プロテインのメリットは
- 肉などの食品と比較して同じ量のたんぱく質を摂取する場合に余分な脂質のエネルギーをカットできる
- 粉末で保存性が高い
- 水に溶かすだけで簡単に摂取できる
という点が挙げられます。
デメリットはなるべく少なく、メリットだけを得るためには、自分に必要な量だけをとるようにしたいですね。
また、プロテインを取り入れるにあたっては、
- トレーニングや運動の習慣がある
- 通常の食事ではたんぱく質がとり切れない、または食事の脂質が気になる
といった、「プロテインの必要性」があるかを確認することをおすすめします。
自分の普段の食事や生活スタイルを振り返ってみて、メリットのほうが大きいという場合にはプロテインを活用してみてはいかがでしょうか?
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参考文献 文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」 厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書 厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書 東京医療保健大学:「ヘルスケアコラム プロテインの必要量や摂取タイミングの誤解」 *1)Morton RW, Murphy KT, McKellar SR, Schoenfeld BJ, Henselmans M, Helms E, Aragon AA, Devries MC, Banfield L, Krieger JW, Phillips SM. A systematic review, meta-analysis and meta-regression of the effect of protein supplementation on resistance training-induced gains in muscle mass and strength in healthy adults. Br J Sports Med. 2018 Mar;52(6):376-384. *2)Esmarck B, Andersen JL, Olsen S, Richter EA, Mizuno M, Kjaer M. Timing of postexercise protein intake is important for muscle hypertrophy with resistance training in elderly humans. J Physiol. 2001 Aug 15;535(Pt 1):301-11. *3)Wirth J, Hillesheim E, Brennan L. The Role of Protein Intake and its Timing on Body Composition and Muscle Function in Healthy Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. J Nutr. 2020 Jun 1;150(6):1443-1460. *4)Phillips SM, Tipton KD, Aarsland A, Wolf SE, Wolfe RR. Mixed muscle protein synthesis and breakdown after resistance exercise in humans. Am J Physiol. 1997 Jul;273(1 Pt 1):E99-107. |