カリウムは生活習慣病予防の観点からも積極的に摂取したい栄養素のひとつですが、どのような食品に多く含まれているのでしょうか?
カリウムのはたらきと摂取源として優れた食べ物、健康維持のための摂取目標量について解説します。
Contents
カリウムとは?働きと生活習慣病予防効果を解説
カリウムはミネラルのひとつであり、体内で健康維持のためにはたらく必須栄養素に分類される成分です。
健康維持のためのカリウムのはたらきと、生活習慣病予防のためのカリウムのはたらきをそれぞれ紹介します。
体内の調節機能の維持
カリウムは全身の細胞内に存在し、体の調節機能の維持に役立っています。
- 体液の浸透圧(濃さ)の維持にかかわる
- 酸性・アルカリ性のバランスをとる
- 神経の興奮や筋肉の収縮にかかわる
…といったものがあり、体の正常な状態を維持するのに重要な栄養素だといえます。
ナトリウムを排出して高血圧を予防
カリウムには体液の浸透圧維持に関連して、とりすぎたナトリウムを排出する働きがあります。
この働きにより、カリウムは生活習慣病の一つである「高血圧」の予防に深く関係しています。
血圧とは血管内にかかる圧力のこと。
高血圧とは、安静にした状態であっても、血圧が一定以上高い状態になってしまうことを指します。
高血圧は長期化すると血管内に負担をかけ、動脈硬化のリスクを高めることが知られています。
動脈硬化が進行すると、脳卒中や心臓病、腎臓病など大きな病気のリスクが高まるため、これらの予防の観点から、高血圧の予防や改善が必要と考えられています。
高血圧の原因の一つに「ナトリウム(≒食塩)の過剰摂取」が挙げられます。
現代の日本人はナトリウム(食塩)の摂取量が多く高血圧の発症リスクが高いことから、減塩と合わせてカリウムの積極的な摂取が大切です。
カリウムを多く含む食品
カリウムは必須栄養素のひとつであり将来の生活習慣病予防の観点からも積極的に摂取したい栄養素ですが、どのような食品から摂取することができるのでしょうか?
カリウムの効率的な摂取に適した食品と、カリウムの含有量を紹介します。
カリウムの摂取効率がいい食品
カリウムはさまざまな食品に幅広く含まれるミネラルですが、効率的に取ろうとした場合には、以下のような食品が効率的です。
- 野菜類
- 果物類
- 海藻類
- きのこ類
カリウムをたくさん取ろうとしたときに摂取カロリーも同時にたくさん取ってしまうと、肥満を招き高血圧の予防の観点からも望ましくありません。
これらの食品は、カリウムの含有量のわりにカロリーが低いのが利点で、摂取カロリーを抑えながらカリウムを摂取するのに適しています。
カリウムの多い野菜ランキング
乾物や調理加工済みのものは除く生野菜の中で、比較的まとまった量を食べる機会の多いものをカリウムの含有量が高いものから順に紹介します。
■野菜類のカリウム含有量とカロリー(100gあたり)
食品名 | カリウム含有量 | エネルギー |
ほうれんそう(生) | 690㎎ | 18kcal |
えだまめ(生) | 590㎎ | 125kcal |
にら(生) | 510㎎ | 18kcal |
こまつな(生) | 500㎎ | 13kcal |
ブロッコリー(生) | 460㎎ | 37kcal |
西洋かぼちゃ(生) | 450㎎ | 78kcal |
セロリ(生) | 410㎎ | 12kcal |
ししとう(生) | 340㎎ | 24kcal |
ごぼう(生) | 320㎎ | 58kcal |
ズッキーニ(生) | 320㎎ | 16kcal |
アスパラ(生) | 270㎎ | 21kcal |
にんじん(生) | 270㎎ | 30kcal |
オクラ(生) | 260㎎ | 15kcal |
文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」より作成
例外はあるものの、野菜類の多くは100gあたりのカロリーが50kcal以内と低く、摂取エネルギーを抑えながらカリウムの摂取量を増やすのに適した食品です。
また、料理として食べるにあたって、なるべく食塩を足さずに食べられると、より効果的です。
カリウムの多い果物ランキング
果物についても、乾物や調理加工済みのものは除き、食べる機会の多いものからカリウムの含有量が高いものを順に紹介します。
■果物類のカリウム含有量(100gあたり)
食品名 | カリウム含有量 | エネルギー |
アボカド(生) | 590㎎ | 176kcal |
バナナ(生) | 360㎎ | 93kcal |
メロン(生) | 340㎎ | 40kcal |
キウイ(緑)(生) | 300㎎ | 51kcal |
キウイ(黄)(生) | 300㎎ | 63kcal |
ネーブルオレンジ(生) | 180㎎ | 48kcal |
もも(白)(生) | 180㎎ | 38kcal |
いちご(生) | 170㎎ | 31kcal |
マンゴー(生) | 170㎎ | 68kcal |
温州みかん(生) | 150㎎ | 49kcal |
パインアップル(生) | 150㎎ | 54kcal |
グレープフルーツ(白)(生) | 140㎎ | 40kcal |
和梨(生) | 140㎎ | 38kcal |
ぶどう(生) | 130㎎ | 58kcal |
文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」より作成
果物類は野菜類と比較するとカリウムの含有量に対するエネルギーが平均的に少し高いといえます。
一方で、食べる際に塩分を含んだ味付けをほとんど必要としない点、生で食べることが多く調理によるカリウムの損失が少ない点が魅力です。
これまでの食べていたお菓子類と代えて取り入れることで、カロリーの低い間食として健康的な食事の一部とできそうです。
カリウムの多い海藻類・きのこ類ランキング
野菜類と果物類のほか、海藻類やきのこ類もカリウムの含有量に対してカロリーが低く、カリウムの効率的な摂取源となる食品です。
野菜や果物と合わせて、積極的に食べる量を増やしていきたい食材です。
■海藻類・きのこ類のカリウム含有量(100gあたり)
食品名 | カリウム含有量 | エネルギー |
昆布(素干しを水煮) | 890㎎ | 28kcal |
わかめ(生) | 730㎎ | 24kcal |
ぶなしめじ(生) | 370㎎ | 26kcal |
マッシュルーム(生) | 350㎎ | 15kcal |
えのきたけ(生) | 340㎎ | 34kcal |
エリンギ(生) | 340㎎ | 31kcal |
しいたけ(菌床栽培)(生) | 290㎎ | 25kcal |
わかめ(素干しを水戻し) | 260㎎ | 22kcal |
まいたけ(生) | 230㎎ | 22kcal |
ひじき(干しひじきをゆでる) | 160㎎ | 11kcal |
なめこ(カット)(生) | 130㎎ | 14kcal |
文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」より作成
このほか、穀類、芋類、肉類、魚介類、たまご、牛乳等にも一定量のカリウムが含まれますが、野菜や果物に比べると重さあたりのエネルギーが高いため、カリウムの摂取を目的とする場合に摂取量を必要以上に増やす必要はないと考えられます。
カリウムはどのくらいとるべき?
積極的な摂取がすすめられるカリウムについて、どのくらいの量を摂取するべきなのでしょうか?
現在の日本人の摂取量と健康維持と生活習慣病のための摂取量から、プラスしたい摂取量を整理します。
日本人の平均摂取量
日本人はカリウムをどのくらい摂取しているでしょうか?
令和元年の国民健康・栄養調査では、
- 男性20歳以上のカリウム摂取量平均値…2439㎎
- 女性20歳以上のカリウム摂取量平均値…2273㎎
というデータがあります。
この数値は健康維持や生活習慣病予防の観点からは十分な量といえるのでしょうか?
カリウムの摂取目標量
健康維持のための各種栄養素の摂取量の基準を示した「日本人の食事摂取基準2020年版」では、カリウムの摂取量について体から失われるカリウムを補うことのできる摂取「目安量」と高血圧や心血管疾患、脳卒中、冠動脈性心疾患のリスクを減らすための摂取「目標量」のふたつを設定しています。
■体から失われるカリウムを補うことのできる摂取目安量 18歳以上の男性…2500㎎/日 18歳以上の女性…2000㎎/日 |
■高血圧や心血管疾患、脳卒中、冠動脈性心疾患のリスクを減らすための摂取目標量 18歳以上の男性…3000㎎/日以上 18歳以上の女性…2600㎎/日以上 |
令和元年度の国民健康・栄養調査の平均摂取量と比較すると、平均的な食生活では体から失われるカリウムを補うことのできる摂取目安量はおおむねクリアできているようです。
その一方で摂取量の平均値は高血圧や心血管疾患のリスクを減らすための摂取目標量を満たしておらず、生活習慣病予防の観点では、カリウムの摂取量を増やすことが望ましいと考えられているようです。
補足: 日本人の食事摂取基準2020年版におけるカリウムの摂取目標量については、世界保健機構(WHO)のガイドラインにおける推奨値をもとに設定されています。 WHOのガイドラインでは、高血圧や心血管疾患、脳卒中、冠動脈性心疾患のリスクを減らすために1日あたり3510㎎のカリウム摂取を推奨していますが、日本人の現在の摂取量がこの推奨値を大きく下回っていることから、実施可能性を考慮したうえでWHOの推奨量と成人の摂取量(中央値)との中間の値から摂取目標量を設定しています。 |
目標はあと+330~550㎎
令和元年度の国民健康・栄養調査における20歳以上の摂取平均値と、日本人の食事摂取基準2020年版における高血圧や心血管疾患、脳卒中、冠動脈性心疾患のリスクを減らすための摂取目標量を比較すると、普段の食生活に上乗せしたいカリウムの摂取量は
- 18歳以上の男性…+550㎎
- 18歳以上の女性…+330㎎
となります。
摂取量の平均値から計算したもので、個人の実際の摂取量にはばらつきがありますが、現在の摂取量に1.5~2割ほど上乗せできると目標量に近づくようです。
カリウムをとりすぎるとどうなる?
通常の食生活においては、必要な量を超えてカリウムを摂取しても不要な分は排泄される仕組みがあるため、摂りすぎによる健康への影響はありません。
ただし、腎臓の機能が低下している場合やサプリメントの不適切な使用ではカリウムの摂りすぎによる健康への悪影響に注意する必要があります。
腎機能が低下している人は高カリウム血症に注意
腎臓の機能が低下している人などではカリウムを排泄する働きが不十分なことにより、多量のカリウムを摂取すると体内のカリウムが多くなりすぎる高カリウム血症を起こす恐れがあります。
そのため、腎臓の機能が低下している場合には、カリウムの摂取量に制限が設定される場合もありますので、主治医の指示に従うようにしましょう。
高カリウム血症の症状としては、不整脈や血圧の低下などが知られています。
サプリメントの使用は注意が必要
カリウムについて、腎臓の機能が正常である場合には、通常の食事からのカリウム摂取について過剰摂取の心配はないとされています。
しかし、サプリメントなど、濃縮された形態での摂取はカリウムの大量摂取が比較的容易にできてしまうために注意が必要です。
サプリメントは特定の栄養素や食品成分を濃縮した食品です。
目的とする成分を摂取するのに効率的である一方、過剰摂取につながりやすかったり、製品の種類や使い方によっては健康被害につながるケースもあったりするなど、活用にあたっては少し注意が必要です。
カリウムを含有するサプリメントでは、腸管に異常のある人、腎臓や心臓疾患のある人では使用に注意が必要とされています。
また、高血圧の予防や改善を目的としている場合には、これまでの食生活を変えずにカリウムを付加的に摂取する方法では根本的な解決にならないことが考えられます。
サプリメントからのカリウム摂取では通常の食事からの摂取と同様の効果があるという実証はなく、また大量摂取した場合には高カリウム血症を起こす恐れがあることが知られていますので、利用する際には医師や管理栄養士に相談することをお勧めします。
カリウムを十分にとるためのポイント
普段の食事で十分な量のカリウムを摂取するには、カリウムを多く含む食品を上手に取り入れることが大切です。
カリウムの摂取量を増やすためのポイントを紹介します。
野菜・果物を十分にとる
十分な量のカリウムを摂取するためには、効率的な摂取源となる野菜や果物をしっかりとることを心がけてみましょう。
上述の通り、カリウムにはナトリウムの排出を促進して血圧を下げる働きがあります。
上で紹介した野菜類、果物類、きのこ類、海藻類などの食品が効率的にカリウムを摂取するのに役立ちます。
野菜や果物をどのくらい食べるかについて、国民の健康増進のための厚生労働省の運動「健康日本21(第二次)」の目標をもとに考えると、具体的には以下のような目標が挙げられます。
- 野菜の摂取量を1日あたり350g以上にする
- 果物の摂取量を1日あたり100g(およそみかん1個分)以上にする
日本人の野菜の摂取量の平均は282gとされており、平均的な食事をとっている人の場合、70g(=野菜料理の小鉢1つ分に相当)の上乗せが目標です。
果物に関しては、1日あたり100g(≒みかん1個、りんご1/2個、バナナ1本程度)が習慣的にとれるとよいと考えましょう。
また、きのこ類と海藻類に関しては明確な目標などは設定されていませんが、野菜類と同様に現在よりももう少し多く食べることを意識するとよいでしょう。
1日の食事のうちどこかで果物を取り入れ、野菜料理を一皿増やすことができるとカリウム摂取の面から健康的な食事に近づけそうです。
加工度の低い野菜・果物をとる
カリウムは水に溶けるミネラルであるため、茹でたり、水にさらしたりすることで水に溶けだしてしまうことが知られています。
例えば、生のほうれん草100gをゆでると、カリウムの含有量は690㎎から343㎎に減少します。
よって、カリウムを効率的に摂取するためには、ゆでこぼしたり水にさらしたりせずに食べられる「加工度の低い」食べ方が効果的です。
- (水にさらしすぎない)生野菜のサラダ、生の果物
- 水に触れる面積を小さくするため大きく切る
- ゆで汁ごと食べられるスープで食べる
- 煮汁の損失が少ない炒め物にする
など、調理の工夫も効果的です。
減塩も意識する
カリウムを意識して摂ることに合わせて減塩も意識するようにしましょう。
日本人の食生活では基本的にほとんどの人が「塩分摂りすぎ」の状態にあります。
高血圧予防のためには、カリウムの摂取量を増やす以上に、摂りすぎているナトリウム(食塩)の摂取量を減らすことも重要です。
WHOが高血圧などの疾患リスク低減のために推奨している食塩の摂取量は1日あたり5g未満ですが、日本人の食塩摂取量は男性10.9g、女性9.3g(一部報告では男性14g、女性11gとするものも)となっており、推奨値よりもはるかに多くの食塩を摂取しています。
日本人の食事摂取2020年版では、現時点で高血圧でない人であっても1日の食塩相当量の目標値は成人男性で1日あたり7.5g、成人女性で1日あたり6.5g未満です。
高血圧と診断された場合、高血圧の治療ガイドラインでは1日あたり6g未満が減塩の目標値とされています。
食塩の摂取量を減らすためのポイントには、以下のようなものが挙げられます。
- 薄味を心掛ける
- 高塩分な食品(漬物など)を控える
- 麺類の汁は残す
- 汁物は具を増やして汁の量を減らす
- 食卓で使う調味料は「かける」ではなく「つける」
- 薬味やハーブ類、香辛料を活用して食塩が少なくても満足できる味付けにする
- 減塩調味料を活用する
- 外食や加工品では食塩含有量を確認し、より少ないものを選ぶ
また、高血圧予防のためには、減塩と合わせて肥満の予防や改善、節酒、運動、禁煙、睡眠を十分にとることなどが大切です。
カリウムの摂取量を増やすことだけでなく、生活習慣全体を見直すことで、高血圧の予防や改善の効果が得やすくなります。
普段の生活を振り返って生活習慣の改善を行うのに加えて、特定健診(メタボ健診)で高血圧を指摘された場合には、特定保健指導などの専門職のアドバイスを受ける機会を有効に活用してくださいね。
まとめ
カリウムは体内の浸透圧・pHのバランスを維持する働きを持つほか、ナトリウムの排出を助けるはたらきがあることから、高血圧や生活習慣病のリスクを減らす意味でも積極的な摂取が勧められる栄養素です。
カリウムの効率的な摂取源としては野菜や果物が代表的であり、摂取エネルギーを抑えながらカリウムの摂取量を増やすのに役立ちます。
WHOのガイドラインで推奨される摂取量に対して日本人の平均的な摂取量は少なく、カリウムを含む食品を積極的にとることが推奨されています。
カリウムの摂取量を増やすためには、
- 野菜や果物の摂取量を増やす
- カリウムの損失が抑えられる、加工度の低い食べ方を選ぶ
などがポイントとなります。
カリウムの摂取量を増やすことは高血圧や生活習慣病を予防するために必要ですが、高血圧や生活習慣病の予防にはナトリウム(食塩)の摂取量を減らすことも重要です。
カリウムの摂取量を増やすことと合わせて、減塩も積極的に取り入れていきたいですね。
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参考文献 厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書 文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報「カリウム」 厚生労働省:「健康日本21(第2次)の推進に関する参考資料」 上西一弘. 食品成分最新ガイド 栄養素の通になる 第5版. 女子栄養大学出版部, 2022.8 |