健康にいい、美容にいい成分として注目されるポリフェノールですが、具体的にどのような効果があるか、ご存知ですか?
この記事では、ポリフェノールの種類や働き、ポリフェノールを含む食品について紹介します。
ポリフェノールを含む特定保健用食品の健康効果やポリフェノールを摂取するときに気をつけるべきポイントについても解説しますので、ぜひ参考にしてくださいね。
Contents
ポリフェノールとは
ポリフェノールは単一の物質ではなく、似た構造を持つ複数の物質をまとめた言い方です。
化学的には、数個以上(ポリ)のフェノール性水酸基(-OH)をもつ成分をまとめて「ポリフェノール」といいます。
植物に含まれる成分であり、その種類は5000種類以上になるともいわれています。
ポリフェノールの概要について詳しく解説します。
植物に含まれる色素・渋味成分・褐変物質
ポリフェノールは植物に含まれる成分のひとつです。
植物の色素、渋味成分、褐変物質(変色のもとにもなる成分)として存在しています。
身近なところでいえば、ごぼうやリンゴなどの変色のもとになる物質です。
ゴボウやリンゴの切り口が変色するのは、一部のポリフェノールと酸素が反応して起こるものです。
5000種類以上が存在する
ポリフェノールは植物に含まれる成分ですが、単一のものではなく、5000種類以上が存在しているといわれています。
種や皮の部分に多く存在し、植物の体を守るための物質とも考えられています。
ポリフェノールの働きと効果
ポリフェノールの健康効果が注目されたきっかけは「フレンチ・パラドックス」といわれています。
「フランスでは食事の脂質が多いにも関わらず心臓疾患にかかる人が少ない」ことが、「フレンチ・パラドックス(フランスの矛盾)」と呼ばれていました。
1990年ごろ、この矛盾の理由はワインに含まれるポリフェノールを毎日摂取しているためではないかという研究が報告され、ポリフェノールの健康効果が期待されるようになりました。
ポリフェノールには5000もの種類があり、それぞれが違った構造を持つため、それぞれについて、ヒトの体にどのような作用を持つのかという研究が進められています。
現在、ポリフェノールの健康効果として注目されている作用は以下のようなものがあります。
- 抗酸化作用
- 殺菌作用(一部のポリフェノール)
- 抗肥満作用(一部のポリフェノール)
それぞれの作用についてひとつずつ解説します。
抗酸化作用
ポリフェノールは全般的に抗酸化作用を持つ成分です。
抗酸化作用とは、「活性酸素によるダメージを低減する」働きのことです。
※活性酸素、フリーラジカルとは
活性酸素はヒドロキシラジカル、スーパーオキシド、過酸化水素などをまとめた名称。
酸素や水、脂肪酸など、体内の物質が使われる過程で生成する不安定で反応性の高い物質。
フリーラジカルも活性酸素と同じく不安定な物質で、体内の物質と反応しやすいのが特徴。
体が正常な状態でも作られ、常にごく少量が体内に存在する。
活性酸素の一部は細胞内での情報伝達や代謝の調節・免疫機能の中で病原菌の殺菌などの働きを持つ。
一方で、細胞やDNAを傷つける作用、細胞の脂質を酸化して精製した過酸化脂質がDNAを損傷させてガンの発生原因の一つになることもある。
通常の場合、必要以上に発生した活性酸素・活性酸素によるダメージは、体内の尿酸、グルタチオン、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)などの抗酸化物質によって処理される。
しかし、病的な状態、たばこ、紫外線、過剰な運動などによって、活性酸素の発生量が増えてしまう。
ポリフェノールには、このような「活性酸素による体へのダメージ」を低減する以下の作用があることが知られています。
- 体内で発生した活性酸素やフリーラジカルといった物質の発生を抑える
- 活性酸素やフリーラジカルを捕まえて分解する
- 活性酸素やフリーラジカルによって損傷した部分を修復する
殺菌作用
ポリフェノールのうち、緑茶に含まれるカテキンなど一部のポリフェノールには殺菌作用があることが知られています。
カテキンの触れた部分において殺菌効果が期待できることから、「緑茶うがい」などが注目されたこともあります。
とはいえ、緑茶を飲んで全身の殺菌が行われるという訳ではないため、取り入れ方には注意しましょう。
抗肥満作用
ウーロン茶や緑茶、玉ねぎ由来のポリフェノールにおいて、適量を一定期間摂取することで体脂肪の分解や燃焼を促したり、食事由来の脂質の吸収を妨げる作用が知られています。
特定保健用食品としても活用されており、注目度の高まっている分野といえます。
ポリフェノールを含む食べ物・飲み物
ポリフェノールは植物由来の成分であるため、食品中では植物性のものに含まれています。
また、植物性食品を原料とした加工品にも含まれており、一部は健康機能が確認されて「特定保健用食品」として販売されている場合も。
そのほか、抽出されたポリフェノールを使用した健康食品等もあります。
ポリフェノールの摂取源となる食品について解説します。
天然の食べ物・飲み物
ポリフェノールは、天然には植物性の食品に含まれています。
代表的なものとしては、以下のようなものが挙げられます。
ポリフェノールを含む食品とポリフェノールの名称
- 緑茶…カテキン
- ごぼう…タンニン
- ブドウ…レスベラトロール
- ブルーベリー…アントシアニン
- カカオ…カカオポリフェノール
- 大豆…イソフラボン
- ターメリック…クルクミン
- 生姜…ショウガオール
- コーヒー…コーヒーポリフェノール
- イネ科植物…フェルラ酸
ひとつの植物に1種類が含まれているわけではなく、数種類のポリフェノールをもつことも多く、また、別の植物でも同じポリフェノールを持つ場合もあります。
特定保健用食品や健康食品
ポリフェノールはその健康効果が注目されており、特定保健用食品や健康食品にも活用されています。
ポリフェノールの健康効果について、科学的に実証されたものは多くはありませんが、その中でもヒトを対象にした試験で有効性が認められたものに関しては、特定保健用食品などとして販売されているものもあります。
- 黒烏龍茶
ウーロン茶の製造過程でできるウーロン茶重合ポリフェノールが、脂質を多く含む食事の中の脂肪分の分解・吸収を妨げ、便からの脂質の排泄を促す効果が認められてトクホになりました。 - ヘルシア緑茶
緑茶に含まれるポリフェノールであるカテキンが、BMIが高めの人に対して体脂肪の消費を促進する作用がある事が認められ、特定保健用食品として販売されています。緑茶に含まれるカテキンにはこのほかにも殺菌作用や血圧低下作用などが知られています。 - 伊右衛門特茶
緑茶や玉ねぎなどに含まれるケルセチン配糖体というポリフェノールにより、軽度肥満の人に対して脂肪細胞からの脂肪の分解を促進する効果が認められています。
一方、これらの効果はおだやかなものであることに注意が必要です。
トクホで効果が認められているといっても、その効果はかなり穏やかな作用で、条件もかなり限られたうえでの効果である場合が多いのが現状です。
ダイエットや肥満対策として有名なものであっても、体重の変化は限定的なものと考えたほうが良いでしょう。
また、ポリフェノールは特定保健用食品以外の健康食品やサプリメントにも配合されている場合があります。
一般的な健康食品やサプリメントに関しては、トクホのような審査を受けていないため、健康効果が実証されていないことに注意しましょう。
ポリフェノールを無駄なくとるためのポイント
ポリフェノールを無駄なく取り入れるためには、調理の過程でポリフェノールを損失しないようにすることがポイントです。
ゴボウやリンゴは切った後に放置すると変色してしまうことから、水にさらしたりする調理操作を行うことがありますが、断面に存在するポリフェノールの一部が溶けだしてしまうため、ポリフェノール摂取の観点では避けたいところです。
- 大きめに切って断面を減らす
- 切った後にすぐに加熱して変色を防ぐ
- リンゴなど火を通さないものは食べる直前に切る
- いっそ変色は気にしない
などの工夫により、ポリフェノールを無駄なく取り入れることが可能です。
とはいえ、水にさらしたからといって、すべてのポリフェノールが溶け出すといったことはありません。
切った断面に存在するポリフェノールが溶け出すのみで、断面以外の場所に存在するポリフェノールは残っていますので、あまり気にしすぎないことも大切です。
ポリフェノールの注意点
健康効果が期待されているポリフェノールですが、健康の維持・増進を目的に取り入れる場合にはいくつかの点に注意が必要です。
- ポリフェノールは必須栄養素ではないこと
- 濃縮物の有効性・安全性は不明確であること
- ビタミンと比較して吸収率は低いこと
それぞれの点について解説します。
必須栄養素ではない
ポリフェノールはたんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルなどの「必須栄養素」には含まれていません。
よって、体に必ずしも必要な成分ではないため、「どれくらいとるべき」といった指標はありません。
ポリフェノールの不足を心配して、ポリフェノールを豊富に含む食品を意識してとる必要はないのです。
濃縮物の有効性・安全性は不明確
健康食品やサプリメントに含まれる「抽出・濃縮されたポリフェノール」は、有効性や安全性が確認されていないため、注意が必要です。
特定保健用食品に関しては有効性とともに安全性が検証されているため、通常の食生活の中で体に悪影響を及ぼすことはほとんどないと考えられます。
その他の大部分のポリフェノールに関しては、通常の食生活の中で摂取する食品に含まれる範囲での悪影響は考えにくいですが、サプリメントのように食品の中からポリフェノールを抽出し、高濃度の状態で摂取するものに関しては、何かしらの影響もある可能性もあります。
たとえば、ポリフェノールの一つであるタンニンなどを多量に摂取すると、必須栄養素であるミネラルの吸収を阻害することが分かっています。
単にポリフェノールを含むサプリメント製品では、安全性も有効性も実証されていないことも多いため、取り入れる際には注意が必要です。
ビタミンと比較して吸収率は低い
ポリフェノールは同様の作用を持つ必須栄養素と比較して吸収率が悪く、体に作用しにくい点にも注意が必要です。
必須栄養素のビタミンCやビタミンEは抗酸化作用を持つビタミンで、ヒトに不可欠なものとして摂取基準が設けられています。
ポリフェノールは同じく抗酸化作用を持つビタミンEに比べて1/100、ビタミンCに比べて1/500の吸収率ともいわれており、意識して摂取したとしても、ビタミンCやビタミンEほどの作用は得られないと考えたほうが良いでしょう。
ポリフェノールはこれらのビタミンの補助的な働きをするものととらえましょう。
まとめ
ポリフェノールには多くの種類があり、それぞれの健康効果や安全な摂取量についてもまだまだ分かっていません。
よって、「○○はポリフェノールがたっぷりだから健康にいい!」と特定の食品・サプリメントにこだわることは避けるべきことです。
冒頭に紹介したフレンチ・パラドックスについても、ワインの摂取量の多いフランスでは心臓疾患については少なかったものの、近隣の国と比較しても特に寿命には差は見られず、また、アルコールに起因すると考えられる肝臓の疾患は多かったといわれています。
同じく、ポリフェノールが豊富だとして注目されるチョコレートについても、脂質を多く含み、高カロリーであるため、食べすぎは肥満や健康を害する恐れもあります。
ポリフェノールに限らず、食品の機能が注目され、メディアが紹介した食材が爆発的にブームになることも多いですが、食品はさまざまな成分から成り立っています。
ひとつの成分・食品に注目しすぎると、かえって食事のバランスをとれなくなることも大いに考えられます。
健康の維持には炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルなどの各種栄養素をバランスよくとり、適度に運動をする、十分に休養をとるといったことが大事です。
どんなに健康にいいとされている食べ物も、それひとつだけでは健康を保つことはできないのです。
特定の食品に偏ることなく、バランスの取れた食生活を心がけていきたいですね。
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参考文献 独立行政法人国民生活センター:「ポリフェノール含有食品の商品テスト結果」 吉川敏一:フリーラジカルの医学.京府医大誌,120(6),381-391,2011 食品安全委員会:「黒烏龍茶に係る食品健康影響評価に関する審議結果(案)」 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報(ヘルシア緑茶、伊右衛門特茶、黒烏龍茶OTPPについて) |