投稿日: 2019.04.19 | 最終更新日: 2023.08.07

ミネラルとは?不足しないための食品と過剰摂取を避ける食べ方を解説

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岩塩

日本人はミネラルが不足している、ミネラルを十分に摂取しましょうといった表現はさまざまな場面で見かけるものです。
しかし、ミネラルとは実際にどんなものか、不足するとどうなるのかを知っている人は少ないのではないでしょうか。
カルシウムや鉄分をはじめとしたミネラルの役割や、不足しないための食事のコツ、取りすぎにも気を付けたいミネラルについて、わかりやすく解説します。

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ミネラルとは

人間の体が健康を保つのに必要な成分は「栄養素」と言われています。
5大栄養素の炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミンに続く栄養素の一つがミネラル(無機質)です。

人体に必要なミネラルは13種類

石や金属、塩の結晶などが無機元素の塊とも言えますが、人の体もこのような成分をごく微量ながら必要としています。
地球にはさまざまな無機元素が存在していますが、栄養学的にはそのうち人体に含まれているものを「ミネラル(無機質)」と呼びます。
そのうち、

  • カルシウム

  • リン
  • マグネシウム
  • ナトリウム
  • カリウム

  • ヨウ素
  • マンガン
  • セレン
  • 亜鉛
  • クロム
  • モリブデン

の13種類が栄養素として重要で人体に必須なものとして摂取基準が定められています。
この13種類が一般的にミネラルとして扱われるものと考えていいでしょう。

ほかの栄養素と同様に不足することで病気などの原因となりますので、十分な摂取が必要なものです。
ただし、取りすぎもまた健康のリスクとなります。こちらも、ほかの栄養素と同様ですね。

ミネラルは不足・過剰摂取のどちらも良くない

ミネラルは不足と過剰に注意

ミネラルの不足や過剰によって、どのような影響が出るのでしょうか。

不足した場合の影響

ミネラルの摂取量が少ない、または何らかの原因によって排出される量が増えて体内に存在するミネラルの量が少なくなると、「欠乏症」と呼ばれる症状が出ることがあります。
不足するミネラルによってその症状は変わりますが、代表的なものに

  • 鉄欠乏による貧血
  • カルシウム欠乏による骨粗しょう症
  • 亜鉛不足による味覚障害
  • ヨウ素の不足による甲状腺肥大

などがあります。

過剰摂取の影響

反対に、ミネラルは取りすぎても体への負担があるのも特徴です。
過剰に摂取しても尿などで排出されるものもありますが、臓器に蓄積されて悪影響を及ぼすものもあり、ミネラルの種類によってさまざまといえます。
代表的なものとして

  • ナトリウムの過剰摂取による高血圧
  • 銅の排泄障害による肝障害や脳の神経障害

があります。

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日本人が不足しがちなミネラル、過剰になりがちなミネラル

日本人が摂取不足または摂取過剰になりやすいものを表にまとめました。

18歳以上女性
推奨量/目標量
18歳以上男性
推奨量/目標量
20代女性摂取量 20代男性摂取量
カルシウム 600~650mg 700~800mg 420mg 435mg
10.5mg 7.0mg 6.4mg 7.3mg
カリウム 2,600mg 3,000mg以上 1,796mg 2,002mg
ナトリウム
(食塩相当量)
6.5g未満 7.5未満 8.1g 10.2g

厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書、厚生労働省:平成29年「国民健康・栄養調査」の結果より作成、数値は年齢区分により異なる

※横スクロールで表全体の確認が可能です。

カルシウムは不足がち

日本人の不足しがちなミネラルの一つに、カルシウムがあります。
カルシウムは体内でもっとも多く使われているミネラルで、多くは骨や歯の主要な成分として存在しています。
カルシウムが不足すると骨や歯がもろくなる「骨粗しょう症」のリスクが高まります。
若いうちは平気でも、カルシウム不足が長期にわたると高齢になったときにちょっとした負荷で骨折することがあります。また、その骨折が原因で寝たきりになることも少なくありません。

女性は鉄分が不足がち

もう一つ、日本人が不足しがちなミネラルはです。
血液中の赤血球や、筋肉の成分となるものですが、特に赤血球では酸素を全身に運ぶのに必要なミネラルです。
もともと吸収率が悪いことに加え、月経のある女性では毎月出血によって体内から失うため、若い女性では鉄の不足による貧血が多いといわれています。
貧血の状態では全身に酸素が行き届かないため、慢性的に疲れやすくなる、頭痛などが起こりやすくなるなどが起こります。
貧血については別記事で詳しく解説しています。

貧血について詳しく解説した記事はこちら

ナトリウム(塩分)は摂りすぎている人がほとんど

反対に、摂取過剰のミネラルはナトリウムです。
主に食塩(塩化ナトリウム)として食事に含まれているため、濃い味付けになるほど取りすぎになりがちです。

ナトリウムは体内で細胞の水分量の調節などにかかわっていて、一定量を摂取する必要があります。
しかし、不足の心配があるのは夏場に大量に汗をかいたときやひどい下痢が続いたときくらいです。

ナトリウム摂取が過剰になると、短期的には体内に水分がたまってむくみを起こすことがあります。
長期的には血圧が上がって血管や心臓、腎臓に負担がかかることにもつながり、心不全や腎疾患の原因にもなりえます。
むくみについても別記事にて紹介しています。

むくみについて詳しく解説した記事はこちら

不足しがちなミネラルを補うには

いろいろな食材

カルシウムや鉄分など、不足しがちなミネラルを十分に摂取するにはどのような工夫が必要なのでしょうか?

食事中のミネラル含有量を増やす

まずは、必要なミネラルを多く含む食品をしっかり取り入れましょう。
例えば、20代女性が不足しているカルシウム230㎎を補う方法としては、プロセスチーズで40g程度(6個入りの某チーズで約2個半)を毎日加えるなどがあります。
ただ、毎日同じ内容だと飽きてしまったり、ものによってはカロリーが気になったりもしますので、いろいろな食材を知っていると便利ですね。

■カルシウムを多く含むおすすめ食品リスト

カルシウムを多く含む食品
(100gあたり)
1食の使用量
(参考)
1食で摂れる
カルシウム量
干しえび 7100㎎ 2.5g(大さじ1) 177.5㎎
煮干し 2200㎎ 5g(中サイズ約10匹) 110㎎
粉チーズ  1300㎎ 5g(小さじ2) 65㎎
いりごま 1200㎎ 3g(小さじ1) 36㎎
ひじき(乾燥)  1000㎎ 5g(戻して35g) 50㎎
プロセスチーズ  630㎎ 15g(個包装1個) 945㎎
しらす干し 520㎎ 5g(大さじ1) 26㎎
油揚げ 310㎎ 30g(1枚) 93㎎
ヨーグルト(無糖) 140㎎ 80g(個包装1個) 112㎎
牛乳 110㎎ 200g(小パック1個) 220㎎

※横スクロールで表全体の確認が可能です。

干しエビや煮干しは高い含有量ですが、一度に食べる量も少なく、毎日食べるのは難しい食材でもありますね。

含有量はさほど多くありませんが、豆腐製品や乳製品は日常的に使う量も頻度も多いため、カルシウムの良い摂取源となります。

■鉄分を多く含むおすすめ食品リスト

鉄分を多く含む食品
(100gあたり)
1食の使用量
(参考)
1食で摂れる
鉄分量
干しえび 15.1㎎ 2.5g(大さじ1) 0.38㎎
豚レバー 13.0㎎ 70g(レバニラ炒め) 9.1㎎
いりごま 9.9㎎ 3g(小さじ1) 0.3㎎
鶏レバー 9.0㎎ 30g(串焼き1本) 2.7㎎
きな粉 8.0㎎ 5g(小さじ1) 0.4㎎
大根の葉 3.1㎎ 50g(1/2本分) 1.55㎎
牛ヒレ肉
(国産牛)
2.4㎎ 100g 2.4㎎
レーズン  2.3㎎ 10g(約20粒) 0.23㎎
ほうれん草  2.0㎎ 100g(1/2束) 2.0㎎
鶏卵(全卵)  1.8㎎ 60g(1個) 1.08㎎

※横スクロールで表全体の確認が可能です。

鉄分は食材によって吸収率が異なり、野菜やたまごからとる非ヘム鉄に比べて肉や魚から取るヘム鉄のほうが吸収率が高いのが特徴です。

鉄分といえばレバーが代表的ですが、あまり日常的には食べない食材です。
赤身の牛肉は意外にも鉄分補給に役立つので、取り入れてみるのもおすすめです。

ミネラルの吸収効率を上げる工夫を加える

ミネラルは食品に含まれるそのままの形では吸収率の悪いものが多く、鉄分がその代表的なものです。
ミネラルの吸収促進をしてくれるものは、

  • 乳製品に含まれる乳糖 (腸壁を通りやすくしカルシウムの吸収を促進)
  • 肉や魚などのタンパク質が分解して生成されるペプチド・アミノ酸 (ミネラルと結合して一緒に吸収される)
  • 果物に豊富なクエン酸などの有機酸 (腸内が酸性だと吸収しやすくなる)
  • 野菜や果物に豊富なビタミンC (鉄を吸収促進)
  • 魚類やきのこ類に豊富なビタミンD (カルシウムを吸収促進)
  • 納豆のねばりであるポリグルタミン酸 (カルシウムを吸収促進)

などがあり、様々な食品を組み合わせて食べることでより効果的です。

反対に、ミネラルの吸収を抑制する働きがあるものもわかっています。

  • ほうれん草などの野菜に含まれるシュウ酸 (カルシウムを吸収阻害)
  • 食物繊維 (ミネラルを排出されやすくしてしまう)
  • カルシウムに対してリンなど、吸収する際に拮抗するミネラル (吸収する場所を取り合ってしまう)
  • 制酸剤 (腸内の酸性が弱まると吸収率が下がる)

などがありますが、食物繊維などは体にとって良い影響の面が多いこともあり、食べないようにする必要はありません。
もし気になるようでしたら、食べるタイミングを分ける程度の対策にとどめるのがおすすめです。
ほうれん草のシュウ酸はあく抜きのために下茹でをすることで減らすことができます。
また、カルシウムの吸収を妨げるリンは加工食品に添加物として含まれていることが多く、加工食品ばかりの食事だと、カルシウムが思ったほど吸収されていないといったことが起こります。
こちらも一切食べてはいけないものではありませんが、全体の食事のバランスを見て、偏らないように心がけたいですね。

取りすぎのミネラル(ナトリウム)を減らすには

反対にとりすぎのミネラル、ナトリウムの摂取量を減らすにはどんな工夫が必要でしょうか。

ナトリウムの摂取量を減らす

単純に、「減塩」という形で体に入る塩分の量を減らす方法があります。
加齢とともに塩分の濃いものを欲するようになるため、若いうちから薄味を心がけるのが将来の生活習慣病を防ぐコツでもあります。
塩分の少ない食事は物足りなく感じる人が多いですが、しっかりきかせたダシ、柑橘類やお酢などの酸味のあるもの、生姜やネギ、シソなどといった香りのある食材を使うと薄味でも物足りなく感じにくくなります。
麺類のスープはかなり濃いめに味がつけられていますので、飲み干すといったことはしないほうがベターです。

ナトリウムの排出を促すカリウムの積極的な摂取

体内でナトリウムとセットで働くミネラルがカリウムです。
カリウムはナトリウムの排泄を促すので、ナトリウムのとりすぎになりがちな日本人には積極的にとってほしいミネラルです。
カリウムはほうれん草や枝豆、にんじん、アボカド、バナナなどの野菜や果物に豊富に含まれています。
ごはんとメインの肉や魚のおかずだけではなく、野菜をメインにした副菜を加えることで、減塩になるだけでなく満足感が得られやすくなります。
ごはんとメインのおかずの量が少なくなれば摂取カロリーも少なくなり、ダイエットにも効果があるともいえます。

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ミネラル摂取にサプリは必要?

サプリメント

不足しがちな栄養素、というとサプリメントをとろうと考える方も多いかと思います。
確かにサプリメントは手軽に栄養素補給ができるものではありますが、1番最初にとる方法ではないと考えています。

サプリはサプリに入っている栄養素しか取れない

例えばカルシウムを多く含む食品はカルシウムだけでなくほかの成分も入っているため、サプリだけでは食品に含まれるその他の成分をとる機会が失われてしまうという点があげられます。
例えばヨーグルトにはカルシウムのほかにタンパク質、脂質、微量なものでいえばビタミンや腸内環境を整えてくれる乳酸菌なども含まれています。
サプリだけを摂取することはこのような別の栄養素や成分をとる機会が減ってしまうことでもあります。
サプリは便利なものではありますが、現状でできる食事の工夫をしたうえで、どうしても足りないものを補うためのものと考えたほうがよいでしょう。

過剰症のリスク

また、ほとんどの栄養素はとればとるほどいいというものではありません。
取りすぎれば過剰症という健康への影響があります。

また、普段の食事から、自分にはどの栄養素が不足しているかを知ることはむずかしいことです。
実はミネラルを十分にとっていたのにそこへサプリを上乗せすることで、過剰な量になってしまうこともないとは言い切れません。

食品から摂取する分には過剰な量にはなかなかなりにくいため(カルシウムの耐容上限量に達する干しエビの量は30g、コップ1杯にもなります。毎日は食べられない量ですね)、
食事で心がける分には過剰の心配があるものはさほどありません。
もし心配な場合は、薬局などで栄養士に相談してみるのも方法の一つです。

まとめ

ミネラルにはたくさんの種類があり、それぞれが大切な役割を持っています。
ひとつひとつをしっかりとろうとすると無理な部分も出てきますが、日ごろの食事で気を付けるのは「いろいろな食べ物を偏りなく食べること」「ちょっと薄味を習慣にすること」です。
無理のない範囲で心がけてみてくださいね。

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参考文献

厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書

厚生労働省:平成29年「国民健康・栄養調査」の結果

文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」

吉田勉 監修:「わかりやすい食品機能栄養学」.三共出版,2010.

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。