近年、ダイエットやボディメイクに関連するものとして、「カルニチン(L-カルニチン)」の注目度が高まっています。
カルニチン(L-カルニチン)はエネルギー代謝にかかわる成分であり、その働きから、ダイエット目的で摂取することやサプリメントの成分として使われることが注目されているもののひとつです。
カルニチンを摂取することで期待できる効果にはどんなものがあるでしょうか?
カルニチンを含む食品やサプリを用いた場合のダイエット効果について解説します。
Contents
カルニチン(L-カルニチン、Lカルニチン)とは?
カルニチン(L-カルニチン)は肉に多く含まれる成分で、名前もラテン語の肉(carnus)に由来するといわれています。
カルニチンは脂肪燃焼にかかわる働きを持つアミノ酸の一種です。
一部の特殊な場合を除き、体内で必要量が合成されていますが、食品からも摂取することが可能です。
アミノ酸の一種
カルニチン(L-カルニチン)は、「アミノ酸誘導体」というアミノ酸由来の成分の一種です。
L-カルニチン、アセチル-L-カルニチン、プロピオニル-L-カルニチンなどをまとめて「カルニチン」と呼ばれることも少なくありません。
脂肪燃焼に関与する
カルニチンはエネルギーの産生にかかわる物質です。
具体的には、脂質由来の長鎖脂肪酸をミトコンドリア内に運び、燃焼させてエネルギーを産生する働きを持ちます。
また、ミトコンドリア内で生成した有害物質をミトコンドリア外に運び出す働きを持ちます。
人体のほぼすべての細胞に存在しますが、特に骨格筋や心筋など、エネルギーを多く消費する部位に多く存在しています。
体内で合成される
カルニチンは食事から摂取するほかに、体内でもアミノ酸のリジンとメチオニンから合成されています。
体内でも合成されることから、食事から一定量を摂取する必要のある「必須栄養素」としては分類されていません。
カルニチン(L-カルニチン)に期待されている効果
カルニチンは体内で脂肪燃焼等にかかわることから、食品等からの摂取によってさまざまな効果が得られることが期待されています。
しかし、世間に広く出回っているカルニチンの健康効果にまつわる情報には、正確性に欠けるものも少なくありません。
カルニチンに期待されている各種健康効果について、実際に効果が期待できるのかという点から解説します。
ダイエット効果
脂肪燃焼にかかわる働きから、カルニチンはダイエット効果が期待されている成分でもあります。
動物を対象とした研究では体重増加抑制作用*1)や脂肪燃焼促進効果*2)が報告されているものの、ヒトを対象とした研究では、「効果がないとする報告」と「運動を併用した場合に効果があったとする報告」が混在しており、今のところは結論が一貫していないのが現状です。
現時点では、カルニチンをどのくらい摂ればダイエット効果があるのか、といったことについては「わからない」というのが現状です。
今後研究が進むことでダイエットに役立つものとして利用される可能性はあるものの、現時点では、カルニチンを含む食品やカルニチンを配合したサプリメントは「誰でも簡単にやせる魔法のやせ薬」のようなものではないことは確かです。
ダイエットの基本は食事からの摂取エネルギーと運動などによる消費エネルギーのバランスを整えることが原則です。
確実な効果を得たいのであれば、堅実な方法がいちばん、といえそうです。
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運動能力の向上
カルニチンは骨格筋に多く存在し、エネルギー産生に関与するために、食品やサプリメントからの摂取によって運動能力の向上につながるのでは?と期待され、実際にカルニチンを配合したプロテインサプリメントも多く販売されています。
しかし、現状、カルニチンサプリメントを摂取することで運動能力や身体能力が改善した、と結論付けられる研究報告はなく、カルニチンサプリメントをとったとしても、筋肉中のカルニチンを増やしたり、運動時にエネルギー産生量を増やしたりといった効果は必ずしも得られない、と考えられています。
老化抑制・認知機能改善
カルニチンはミトコンドリア内で働く物質のひとつで、ミトコンドリア内の有害物質を外に出す働きも持っています。
また、老化とミトコンドリアには深い関係があることが考えられています。
年齢が上がることで体内のカルニチン濃度が低下するとミトコンドリアの状態悪化を招くことから、カルニチンをサプリメント等で補うことで老化抑制に働くことが期待されています。
メカニズムに関してはまだ明らかになっていない部分が多いものの、軽度認知機能障害とアルツハイマー病をもつ高齢者が「アセチル-L-カルニチン」を一定量摂取し続けることで、症状悪化を抑制・精神機能が改善される可能性が示唆されています。
ただし、この研究でのカルニチン摂取量は一般の食品から摂取するよりもかなり多く、また許容一日摂取量(ADI)を大きく超える量であることから、一般の方が自己判断で摂取することは安全上の理由から避けるべきと考えられます。
生活習慣病予防効果
脂肪燃焼にかかわる働きから、肥満が大きな原因となる生活習慣病の予防効果が期待されています。
カルニチンの食品等からの摂取による生活習慣病予防効果についてははっきりとは分かっていませんが、治療の一環としての投与によって改善の可能性はあるようです。
生活習慣病のうち、2型糖尿病はインスリンの効き目が弱くなる「インスリン抵抗性」によって起こりやすくなることが知られています。
肥満等で筋肉中の脂肪が増えると、ミトコンドリアの機能を妨げてインスリン抵抗性が増すことが考えられており、L-カルニチンを静脈内投与することよって筋肉中の脂肪減少とインスリン感受性を改善、血糖値の低下につながる可能性が示唆されています。
経口摂取の場合には、アセチル-L-カルニチンを1年間摂取し続ける治療で神経痛の改善がみられたなどの報告がありますが、糖尿病の改善までの効果は得られていないようです。
がん患者の体調改善
がん患者においてはカルニチンが不足することがあり、カルニチンを補充することによって疲労感や気分の改善がみられ、睡眠の質の向上等の良い影響がみられたことが報告されています。
とはいえ、こちらの効果に関しても、健康食品等からの安全な摂取量を超えた量となっており、医師の管理下で行うことが必要です。
また、研究によってはカルニチン補充による効果は認められなかったというものもあるため、現状、その効果は確固たるものとは言えないようです。
男性不妊の改善
男性の精子数と精子の運動率にカルニチンが関係していることが知られており、カルニチン摂取量を補うことで精子の質の改善の可能性があるといわれています。
ただし、研究によって効果があるとする結果と効果がないとする結果が混在しているのが現状です。
また、研究でのカルニチン摂取量は健康食品等からの安全摂取量を超えた量であることなどを踏まえると、個人が自己判断で行うことは避けたほうが安心です。
疲労回復効果
カルニチンはエネルギー産生にかかわることから、摂取量を増やすことで疲労回復効果が得られるのでは?と期待されることも。
しかし、ヒトを対象とした研究で疲労回復の効果を検討した研究はほとんどなく、カルニチン不足がみられるがん患者の疲労感や甲状腺機能低下症患者の精神疲労の自己評価など、一部の条件に限られているようです。
健康な人が日常的な疲れを感じた時の疲労回復のためにカルニチンをとる…というのは、あまり効果が期待できないかもしれませんね。
L-カルニチンの不足・過剰の影響
カルニチンは、1日に必要とされる量のうち25%が体内で生合成され、残り75%は食事等から摂取されているといわれています。
何らかの要因で必要な量のカルニチンが不足したり、反対にカルニチンが多くなりすぎたりすることで、身体に様々な悪影響があることが知られています。
カルニチンの不足や過剰による影響と、適量摂取のための目安について解説します。
不足の影響
カルニチンは必須栄養素には分類されていないものの、特定の疾患や身体の状況によるさまざまな要因により、体内のカルニチンが不足・欠乏することがあることが知られています。
カルニチン欠乏は以下のような場合に発症しうると考えられています。
- 先天代謝異常患者
- 特定の治療を受けている人
- 経管栄養や完全静脈栄養などの栄養管理を受けている人
- 高齢者
- 重症心身障がい児
- 低栄養患者
カルニチン欠乏症では、以下のような症状がみられることが知られています。
- 意識障害
- けいれん
- 筋力低下
- 重度のこむら返り
- 重度の倦怠感
- 精神、運動発達の遅延
- 体重増加不良
- 呼吸の異常
- 心機能の低下
体調に不安がある場合には自己判断せず、医療機関に相談するのが安心です。
過剰摂取の影響
カルニチンは健康食品の素材として、サプリメントなどに使用されていることが多くありますが、取りすぎることによる健康への悪影響も確認されています。
カルニチンサプリメントを1日あたり約3g摂取した場合の影響として、以下のようなものが報告されています。
- 吐き気
- 嘔吐
- 腹部けいれん
- 下痢
- 体臭
カルニチンを含むサプリメントは良い面だけが強調されて紹介されていることも少なくありませんが、取ればとるだけ良いというものではありませんので、適量範囲での摂取が重要です。
摂取基準値
健康維持のためのカルニチンの摂取量について、公的な基準値は定められていません。
カルニチンは健康な人が通常の食生活を送っている分には不足・過剰の心配はあまりないため、通常の食生活の範疇であれば、バランスのとれた食事をとることが大事です。
一方、サプリメント等からの過剰摂取による健康被害を避けるための摂取上限として、世界的には以下のような基準値が設けられています。
- 20㎎/㎏体重/日(アメリカの許容一日摂取量)
- 1000㎎/日(スイスの摂取上限)
カルニチンを含むサプリメントをとる習慣がある人では、この上限を超えないように摂取量を管理する必要があるといえそうです。
L-カルニチンの摂取源
体内で様々な働きを持つカルニチンは、通常の食生活の場合、75%程度を食事から摂取していることが知られています。
カルニチンの摂取源となる食品は、肉、魚、乳製品といった動物性食品のほか、サプリメントなどの健康食品も含まれます。
それぞれの食品から摂取できるカルニチンの量について紹介します。
肉類
カルニチンはサプリメントの素材として知られているほか、天然にはラム肉に多く含まれることで話題になった成分でもあります。
ラム肉のほかにも、牛肉や豚肉などの肉類全般に豊富に含まれています。
■肉類に含まれるカルニチン量
食品名 | 100gあたりのカルニチン含量 |
羊肉(マトン) | 208.9㎎ |
牛肉(ランプ) | 130.7㎎ |
羊肉(ラム) | 80㎎ |
豚肉(ロース) | 69.6㎎ |
牛肉(ヒレ) | 59.8㎎ |
鶏肉(もも) | 32.8㎎ |
日本小児科学会:「カルニチン欠乏症の診断・治療指針 2018」 より作成
魚類
肉類と比較すると少なめですが、魚介類もカルニチンの摂取源となる食品群です。
■魚類に含まれるカルニチン量
食品名 | 100gあたりのカルニチン含量 |
あさり | 23.8㎎ |
かき | 23.1㎎ |
タイ | 19.6㎎ |
サンマ | 16.6㎎ |
アジ | 14.3㎎ |
クルマエビ | 9.3㎎ |
マグロ(赤身) | 4.5㎎ |
日本小児科学会:「カルニチン欠乏症の診断・治療指針 2018」 より作成
魚のほか、貝類もカルニチンを多く含んでいることがわかります。
乳製品
動物性食品のひとつである牛乳も含有量は少ないながら、カルニチンの摂取源となります。
■魚類に含まれるカルニチン量
食品名 | 100gあたりのカルニチン含量 |
牛乳 | 3.4㎎ |
日本小児科学会:「カルニチン欠乏症の診断・治療指針 2018」 より作成
重さあたりのカルニチン量は少ないものの、比較的多い量を日常的に摂取しやすいため、トータルでの摂取量を底上げできる食材のひとつといえそうです。
サプリメント
カルニチンを配合したサプリメント類は多く販売されていますが、その含有量は製品によってさまざまです。
■カルニチン配合サプリメント(例)
食品名 | 1日あたりのカルニチン量 |
商品A | 510㎎ |
商品B | 750㎎ |
商品C | 1000㎎ |
商品D | 記載なし |
カルニチンの一日摂取許容量(ADI)は1000㎎/日または20㎎/㎏体重/日という目安もあることから、カルニチンのサプリメントを摂取する場合には、1日あたりの摂取量がこれらの目安を超えないような製品が望ましいでしょう。
また、カルニチン含有量が記載されていない商品に関しては、安全に使用することを考えると、避けたほうが無難です。
カルニチンを効果的に摂取する方法
カルニチンを食事から効果的に摂取するには、主菜、特に肉類を意識して食べることが重要です。
また、ダイエットのためにカルニチンを摂取したいという場合には、カルニチンの摂取に加えて食事のカロリー管理と運動を併用するのがおすすめです。
以下に詳しく解説します。
主菜を意識してとる
カルニチンの摂取を増やしたい場合に気を付けるべきポイントは「主菜」です。
健康な人でバランスのとれた食事が日常的にとれている場合には、カルニチンが不足する心配はほとんどありません。
バランスのとれた食事を料理単位で考えると、以下のような構成となります。
- 主食(ごはん、パン、麺など)
- 主菜(肉、魚、卵などを使ったメインのおかず)
- 副菜(野菜、きのこ、海藻などを使ったサブのおかず)
- 果物
- 乳製品
カルニチンは肉類、魚類、牛乳などの動物性食品に多く含まれる傾向があります。
これらは料理としての分類は、「主菜(メインのおかず)」となっていることが多い食材です。
食事のバランスを意識していない人では、主菜が少なく主食に偏りがちな例も少なくありません。
カルニチンをしっかりとりたい、という場合には、このうち主菜を意識してとるのがポイントです。
赤身の肉を積極的にとる
カルニチンを重視した食事をとりたい場合には、赤身の肉類がおすすめです。
カルニチンは動物性食品に広く含まれていますが、重さあたりの含有量では、肉類に多く含まれています。
また、カルニチンは肉の中でも筋肉(赤身)部分に多く含まれるため、脂身が少なく赤みの強い肉類でより多く含まれる傾向があります。
含有量で見ると羊肉が優秀ですが、あまりひとつの食材にこだわりすぎず、味の好みや料理のバリエーションなどを総合的に考えて使いやすいものを選ぶとよいでしょう。
ダイエット目的ならカロリー管理と運動を併用する
ダイエットのためにカルニチンを摂取する場合には、食事の管理と運動が必須と考えましょう。
カルニチンは脂肪燃焼にかかわる働きから、ダイエット目的で摂取されることも少なくない成分です。
しかし、カルニチンを含む食品やサプリメントを摂取するだけで得られるダイエット効果についてはいまだはっきりとは分かっていない状況です。
カルニチンを活用しつつダイエット効果をしっかりと得るためには、さまざまな角度からダイエットに取り組む必要があります。
具体的には、
- 自分が消費するカロリーの把握
- 食事から摂取するカロリーの管理
- 運動による消費カロリーの増加
ダイエットに必要な取り組みとしてはこれらがメインとなり、カルニチンの摂取はあくまで補助的なものととらえると、ダイエットの成功につながりやすくなります。
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まとめ
カルニチンは主に肉類に含まれる栄養素のひとつで、脂肪燃焼やエネルギー産生にかかわっています。
カルニチンは必須栄養素ではないものの、体内で重要な働きを持ち、摂取量を増やすことで様々な健康効果が得られるのではないかと期待されている成分のひとつです。
カルニチンを含むサプリメントの摂取で期待できる健康効果については研究途上のものが多く、安全に使用することを考えると自己判断での摂取は避けたほうが安心です。
一日摂取許容量は1000㎎/日、20㎎/㎏体重/日という一応の目安がありますので、このラインを超えないような製品および使用方法を選ぶようにしましょう。
通常の食生活で不足することはほとんどありませんが、特定の疾患等によっては、欠乏症状がみられることがありますので、不安な方は医療機関に相談すると安心です。
ダイエット目的であっても、健康増進目的であっても、サプリメントの単純な摂取だけでは目的とする成果は得られにくいかもしれません。
気になる方は食事のバランスを意識することで、食事全体を整えながらカルニチンを適量摂取することにつながります。
簡単・続けやすいダイエットのための習慣改善について詳しく解説した記事はこちら
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参考文献 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報(アセチル-L-カルニチン、カルニチンについて) *1)辻原 命子, 谷 由美子. 高脂肪食飼育ラットの脂質代謝におよぼすカルニチンおよび運動負荷の影響. 日本家政学会誌 Vol.48 No.1 5~9(1997) *2)田島 眞. L‐カルニチン-その存在量と生理機能-. 実践女子大学 生活科学部紀要第 54 号, 001~005 (2017) 永田 純一. 健康食品におけるカルニチンの基礎-測定、生化学、生理学的役割について-. 生物試料分析 Vol. 35, No 4 275~280 (2012) 日本小児科学会:「カルニチン欠乏症の診断・治療指針 2018」 日本食品化学研究振興財団:「「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)」の食品衛生法上の取扱いの改正について」 |