ブドウ糖はその名の通り「糖」の一種ですが、食品として食べた時にどのような効果や働きを持つものなのでしょうか?
ブドウ糖の体内での効果や働き・摂取源となる食べ物のほか、不足や過剰による影響、ブドウ糖を含む食品とそのメリットとデメリットについて解説します。
Contents
ブドウ糖とは
ブドウ糖は「炭水化物」の中の「糖質」のうち「糖類」に分類される物質で、化学名でグルコースともいいます。
天然にはハチミツや果物に含まれており、果物のぶどうから発見された物質であることから、「ブドウ糖」の名前がついています。
糖質のなかでのブドウ糖の立ち位置と、同じ糖質であるデンプンや砂糖との関係を解説します。
単糖のひとつ
ブドウ糖の属する「糖類」はさらに単糖類や二糖類というグループに分けることができますが、ブドウ糖はこのうち単糖類に含まれます。
ブドウ糖は単糖類として、さまざまな糖質の最小構成単位となっています。
ブドウ糖は同じ単糖であるフルクトース(果糖)やガラクトースなどと結合することでショ糖、乳糖、麦芽糖、オリゴ糖、アミロース、アミロペクチンなどの「糖質」を構成しています。
糖質の消化吸収で得られる
糖質に属する栄養素の多くは、食品中では「二糖類」「多糖類」の形で存在しています。
二糖類や多糖類はそのままでは体内に取り込むことができないため、体内の消化酵素などの働きを受けて、ブドウ糖などの単糖に分解されてから吸収されます。
甘味のない糖質であるデンプンをよく噛むと甘味が出てくるといわれるのは、唾液の消化酵素によってブドウ糖が現れるためです。
ブドウ糖を摂取したい、という場合でも、「ブドウ糖そのもの」として口に入れる必要はなく、「ブドウ糖から構成されている糖質」を摂取すれば、ブドウ糖として体内に吸収されていきます。
砂糖との違い
糖、と名の付くもので多くの人に最も身近なものは「砂糖」ではないでしょうか?
砂糖とブドウ糖はどちらも糖質であり、甘味のあるものですが、異なる物質です。
砂糖は化学名では「スクロース(ショ糖)」といい、単糖であるブドウ糖と果糖が結合してできている物質で、体内では消化吸収の過程でブドウ糖と果糖に分解されます。
よって、ブドウ糖と砂糖(スクロース)は別の物質ではありますが、体内に取り込まれる際に、砂糖の半分はブドウ糖として吸収されます。
また、砂糖の残り半分を構成している果糖も吸収された後、ブドウ糖と同様に体内で利用されます。
砂糖の甘味度(甘味の強さ)を100とすると、ブドウ糖は65~80とされています。
同じ強さの甘味を付けたい場合は、ブドウ糖では砂糖よりも多くの量を使う必要があるといえますね。
ブドウ糖の効果・働き
ブドウ糖は数多くある糖質の一種ですが、人の体の中では糖質の中でも代表的なものとしてとても重要な働きを持ちます。
具体的には、全身のエネルギー源となるほか、一部の体組織では原則唯一のエネルギー源として働きます。
全身のエネルギー源となる
内臓の活動や新しい細胞の合成など、人の体の生命機能の維持のためにはエネルギーが必要です。
ブドウ糖は生命維持に必要なエネルギーを産生する栄養素のひとつで、血液に乗って全身の組織に送られ、エネルギー源として消費されています。
ブドウ糖を含む糖質のほか、たんぱく質、脂質はエネルギー源となる栄養素です。
また、あまり知られていませんが、アルコールもエネルギー源となる物質です。
エネルギー源となる栄養素のうち、ブドウ糖および糖質全般は1gあたり4kcalのエネルギーを産生します。
脳、赤血球などの唯一のエネルギー源
人の体内では糖質、脂質、たんぱく質がエネルギー源として使われていますが、一部の体組織では原則、ブドウ糖しかエネルギーとして使えないというものがあります。
具体的には脳、神経組織、赤血球、腎尿細管、精巣、酸素不足の骨格筋等が挙げられます。
特に脳が必要とするエネルギー量は多く、基礎代謝量(安静にしていても消費する、生命維持に必要な最低限のカロリー)の20%にもなると考えられています。
ブドウ糖が不足すると
ブドウ糖はエネルギー源となる栄養素として、体内で重要な働きを持っています。
他のエネルギー源となる栄養素との兼ね合いによっても異なりますが、ブドウ糖が不足することで現れる影響には、
- 筋肉や体脂肪の減少
- 血液のpHの変化
- 生活習慣病リスク上昇
などが挙げられます。
筋肉や脂肪が減少する
エネルギー源のひとつであるブドウ糖(を含む糖質)の摂取量が減ることで摂取カロリーが減少し、消費カロリーを下回る場合があります。
このとき、不足するカロリーを補填するために、体脂肪や筋肉が分解され、エネルギー源として消費されます。
血液のpHに影響する場合も
一方、脳をはじめとする「原則、ブドウ糖のみをエネルギー源としている組織」が必要とするブドウ糖の量に対し、ブドウ糖やその給源となる糖質の摂取量が少ない場合には、体内の脂肪からケトン体を生成しこれをエネルギー源とします。
ブドウ糖(糖質)の不足量が多く、かつ不足が長期間に及ぶと、血液中のケトン体の量が高くなる「ケトーシス」という状態になります。
ケトーシスが進行すると酸性物質であるケトン体によって血液のpHが酸性に傾いた「ケトアシドーシス」を発症し、重症化すると生命にかかわることもあります。
生活習慣病リスク
消費カロリーに対して摂取カロリーが十分ある場合でも、ブドウ糖(を含む糖質)の摂取割合が少なく、たんぱく質や脂質の摂取割合が増えることで、長期的な生活習慣病のリスクが高まる可能性があります。
具体的には、
- 腎臓の負担が増える
- 肥満や心筋梗塞の発症率が上がる
- 糖尿病の発症率が上がる
といった影響が考えられます。
ブドウ糖を過剰摂取すると
主要なエネルギー源であるブドウ糖ですが、いくらでもとってよいというものではありません。ブドウ糖(を含む糖質または糖類)を必要以上に摂取することでおこる悪影響では、
- 肥満
- 虫歯
が代表的です。
体脂肪の蓄積、肥満につながる
ブドウ糖や糖質の摂取量が増えた結果として摂取カロリーが消費カロリーを上回ると、使い切れなかった分は体脂肪として蓄積されます。
使い切れなかったカロリー量が多く、また長期間に及ぶと体脂肪が徐々に増えて肥満になり、生活習慣病のリスクを高めます。
糖類の過剰による肥満や虫歯
糖質の中でも特に砂糖やブドウ糖のような「糖類」の摂取量が増えると、肥満のリスクに加えて虫歯のリスクが高まることが知られています。
このことに関連して、世界保健機構(WHO)では、調味料のように加えられる糖類について、1日の摂取量をエネルギーの10%未満(できれば5%未満)にすることを勧告しています。
1日に必要なブドウ糖の量は?
体内で重要な働きをするブドウ糖について、1日に必要な量はどのくらいでしょうか?
ブドウ糖のみをエネルギー源とする組織が必要とする量、食事全体に占める割合の目標値と、日本人の平均的な摂取量を解説します。
脳などの組織に必要なブドウ糖の量
脳は原則としてブドウ糖のみをエネルギー源としており、その消費量は基礎代謝量の20%にも及びます。
成人男性の基礎代謝量約1500kcalの20%を糖質量に換算すると、1日あたり75gに相当します。
また、脳とそれ以外の、原則としてブドウ糖のみをエネルギー源としている体組織全体では、必要なブドウ糖の量は1日最低でも100g、文献によっては160g以上ともいわれます。
糖質として摂取エネルギーの50~65%
脳などの組織が必要とするブドウ糖の量に加えて、同じエネルギー源として働く脂質やたんぱく質とのバランスも重要です。
日本人の食事摂取基準2020年版では、ブドウ糖としての必要量を満たしつつ、たんぱく質や脂質の望ましい摂取量と必要なカロリーのバランスを保てるブドウ糖(炭水化物)の摂取量を定めています。
ブドウ糖は様々な糖質(炭水化物)の消化吸収の過程で得られるため、日本人の食事摂取基準2020年版における摂取基準値は「ブドウ糖」ではなく「炭水化物」として定められています。
- 炭水化物の目標量…摂取エネルギー全体の50~65%
必要なカロリー及び炭水化物の量は個人の年齢、性別、体格、日常的な活動量によっても異なります。
例えば平均的な体格・活動強度の18~64歳の男女の場合、
- 男性…推定エネルギー必要量約2650kcal、炭水化物量344~431g
- 女性…推定エネルギー必要量約2000kcal、炭水化物量250~325g
となります。
日本人の平均的な摂取量
令和元年の国民健康・栄養調査では、炭水化物の摂取量と炭水化物エネルギー比について、以下のような結果が得られています。
■炭水化物摂取量(中央値) 男性(20歳以上)…267.0g |
■炭水化物エネルギー比(中央値) 男性(20歳以上)…58.0% |
国民健康・栄養調査では測定誤差や過少申告によって必ずしも正確なデータではない場合がありますが、炭水化物エネルギー比では目標値の範囲に収まっているようです。
日本人の平均的な食生活では、ブドウ糖やその給源となる糖質の摂取量はおおむね問題ない範囲に収まっていると考えることができそうです。
ブドウ糖を含む食品
ブドウ糖の摂取源となる食べ物にはどんなものがあるでしょうか?
ブドウ糖そのものとして含む食品と、消化吸収によってブドウ糖に分解される糖質を含むものに分けて紹介します。
ブドウ糖そのものとして含むもの
ブドウ糖は天然には果物やはちみつに含まれているほか、加工品としてはガムシロップやラムネ菓子などに含まれています。
■ブドウ糖を含む食品と含有量(100gあたり)
食品名 | ブドウ糖含有量(100gあたり) |
はちみつ | 33.2g |
干しいちじく | 29.0g |
干しブドウ | 28.6g |
ガムシロップ(果糖ブドウ糖液糖) | 28.3g |
オレンジマーマレード | 24.4g |
ブドウ(皮つき・生) | 8.4g |
ライチ(生) | 7.3g |
文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」 より作成
このほか、果糖ブドウ糖液糖などを原材料に含む清涼飲料水や菓子類、調味料類にもブドウ糖が含まれています。
糖質として含むもの
ブドウ糖は糖質全般の消化吸収の過程で得られるので、デンプンや砂糖のような糖質として含むものからも摂取することができます。
■糖質(炭水化物)を含む食品と含有量
食品名 | 炭水化物含有量(100gあたり) |
片栗粉(じゃがいもでんぷん) | 89.8g |
精白米(生) | 83.1g |
はちみつ | 75.3g |
小麦粉(薄力粉) | 80.3g |
食パン | 48.2g |
白米ごはん | 38.1g |
*利用可能炭水化物量(単糖当量)
文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」 より作成
ブドウ糖そのものをとるメリット・デメリット
身体が必要とするブドウ糖は「ブドウ糖そのもの」だけでなく、ブドウ糖を構成単位とする様々な糖質から摂取することができます。
そのため、ブドウ糖そのものとして摂取する必要はあまりなく、実際の食生活でもブドウ糖そのものとして摂取しているものは多くありません。
一方で、ラムネ菓子や一部の清涼飲料水のような、ブドウ糖そのものに近い状態の食品として摂取する場合には、糖質の摂取とは異なり消化吸収の必要がありません。
消化吸収が必要ないことから、通常の糖質摂取と比較して都合のよい点と悪い点が考えられます。
あえてブドウ糖そのものとして摂取するときのメリットとデメリットを考えてみました。
メリット:素早くエネルギー源になる
消化吸収の必要がないブドウ糖そのもの(に近い食品)の場合、通常の糖質と比較して吸収スピードが早い特徴があります。
そのため、素早いエネルギー補給が求められる場面では、ブドウ糖やブドウ糖を主成分にしたラムネ菓子のような食品は効率的なエネルギー源として有効です。
具体的には、勉強中や仕事中におなかがすいて集中力が切れてきた…というようなときに、手軽に素早くエネルギー補給をするのに適しています。
次の食事まで時間があるときの「つなぎ」のエネルギー補給に活用できそうですね。
デメリット:血糖値が上がりやすい
ブドウ糖そのもの(に近い食品)では、吸収スピードが速いため、摂取後の血糖値が上がりやすい特徴があります。
血糖値の上がりやすさは同時に食べる食品の組み合わせによっても異なりますが、日常的に血糖値が上がりやすい食事ばかりをとっていると、糖尿病になるリスクが上がるといわれています。
ブドウ糖そのものやそれに近い食品を食べると糖尿病になるというようなものではありませんが、食事全体を通してラムネ菓子や清涼飲料水のようなものばかりにならないよう、いろいろな食材から栄養素をとるようにしたいですね。
食品ごとの血糖値の上がりやすさ(グリセミック・インデックス)について詳しく解説した記事はこちら→GI値とは?GI値の基準、低GI食品とダイエット効果の関係を解説
まとめ
ブドウ糖は単糖と呼ばれる糖質の一種で、様々な糖質を構成しています。
また、ブドウ糖は人体の主要なエネルギー源であり、全身にエネルギーを供給するほか、脳や赤血球では原則唯一のエネルギー源として重要な働きを持つ栄養素のひとつです。
ブドウ糖が不足すると、
- 摂取エネルギー不足を通じて体脂肪・筋肉の減少が起こる
- 重度、長期間の欠乏でケトーシス、ケトアシドーシスの原因となる
- たんぱく質や脂質に偏った食事による生活習慣病リスクが高まる
などの影響が考えられます。
反対に、ブドウ糖や糖質の過剰摂取では、
- 摂取エネルギー過多による体脂肪の増加
- 糖類の摂取過剰による肥満・虫歯リスクの上昇
などの影響が知られています。
成人の場合、ブドウ糖としての最低必要量は100g以上といわれています。
日本人の食事摂取基準2020年版では、ブドウ糖やその給源となる炭水化物の摂取基準は、ブドウ糖の必要量とほかの栄養素とのバランスを考慮し、摂取エネルギーの50~65%と示されています。
穀類や芋類などの食品から、適量の摂取が望ましいですね。
ブドウ糖そのものを含む食品としては、ハチミツや果物類のほか、ラムネ菓子や清涼飲料水などが挙げられます。
ブドウ糖そのものに近い食品では体内への吸収スピードが速いため、素早いエネルギー補給に適している一方で、血糖値を上げやすい性質があります。
たまに食べるくらいであれば心配はあまりありませんが、食事全体を通してブドウ糖そのものに近い食品ばかりにならないようにすることが大切です。
ブドウ糖は体にとって重要な役目を持つ栄養素ですが、ブドウ糖を主成分とするような食品については、メリットを活かせるような取り入れ方を心掛けたいですね。
【消費カロリー管理に便利】スマートウォッチのおすすめ商品ランキングのページはこちら
【おすすめ】運動を習慣に!自宅でトレーニングができるエアロバイクの活用がおすすめです!
エアロバイクのおすすめ商品ランキングのページはこちら
参考文献 文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」 厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書 吉田勉 監修. わかりやすい食品機能栄養学. 三共出版, 2010. 上西一弘. 食品成分最新ガイド 栄養素の通になる 第5版. 女子栄養大学出版部, 2022.8 Greenwood DC, et al. Glycemic index, glycemic load, carbohydrates, and type 2 diabetes: systematic review and dose-response meta-analysis of prospective studies. Diabetes Care 2013; 36: 4166-71. |