投稿日: 2020.03.27 | 最終更新日: 2024.06.14

コレステロールとは?LDL・HDLの違いと基準値、コレステロールを下げるコツを解説

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コレステロールを含む食品

コレステロールについて、健康診断などで名前は聞いたことあるけれど、どんなものかよく知らない人がほとんどではないでしょうか?

の記事では、コレステロールが気になる方に向けて、コレステロールとは何か、健康との関係と毎日の食事で気をつけたいことを解説します。

HDLコレステロールとLDLコレステロールの違いやコレステロール値を下げるためのポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてくださいね。

コレステロールとは

コレステロールとは

コレステロールは油の仲間「脂質」に分類され、食品に含まれているほか、人の体内では健康維持に働く成分でもあります。

食品に含まれるコレステロールと体内で働くコレステロールについて、それぞれ詳しく解説します。

食品中では脂質の一部

食品に含まれるコレステロールは、脂質の一部として含まれています。

コレステロールは脂質の仲間ではあるものの、エネルギー源にはならず、「カロリーゼロ」の物質です。
また、コレステロールを多く含む食品=高カロリーというイメージもありますが、必ずしもそうではありません。

食品の中に含まれるコレステロールは主に肉類やたまご、魚介類などの動物性食品に含まれ、野菜や穀物などの植物性食品にはほとんど含まれていません。

食品に含まれるコレステロール(例)

食品名 コレステロール
(100gあたり)
コレステロール
(1食目安量あたり)
鶏卵・卵黄 1400㎎ 280㎎(黄身1個20g)
あんきも 560㎎ 560㎎(1/2匹分:100g)
鶏卵・全卵 420㎎ 252㎎(1個60g)
豚レバー 250㎎ 250㎎(炒め物1人分100g)
するめいか(生) 250㎎ 625㎎(可食部のみ1杯分250g)

※横スクロールで表全体の確認が可能です。

加えて、食事に含まれるコレステロールのすべてが吸収されるわけではなく、その吸収率は40~60%といわれています。

体内ではホルモンなどの材料

体内でのコレステロールは、主に細胞膜に存在するほか、細胞膜やホルモン、胆汁酸の材料として使われ、体にとって必要な成分のひとつです。

体内でも1日に体重1㎏あたり12~13㎎が合成されています。
体で作られるコレステロールは食事からとるものよりも多く、食事由来のコレステロールの3~7倍になるといわれています。

また、体内のコレステロールのうち、血液中ではリポたんぱくと呼ばれる物質と結合した状態で存在します。

血液中のコレステロールは結合したリポたんぱくの種類によって分類されており、それぞれ対照的な働きを持ちます。

  • HDLコレステロール(善玉コレステロール)
  • LDLコレステロール(悪玉コレステロール)

LDLコレステロール(悪玉コレステロール)とは

LDLコレステロールは、肝臓のコレステロールを体全体に運ぶ役割を持つLDL(低比重リポたんぱく質)とコレステロールが結合したものを指します。

血液中のLDLコレステロールが増えると、血管の内側にコレステロールが沈着しやすくなります。
沈着したコレステロールにより血管が狭くなり、血管が詰まると心筋梗塞や脳梗塞などの重大な病気につながることがあります。

このようなことから、LDLコレステロールは悪玉コレステロールとも呼ばれています。

HDLコレステロール(善玉コレステロール)とは

HDLコレステロールは、血管内のコレステロールを回収し、肝臓に戻す働きを持つHDL(高比重リポたんぱく質)とコレステロールが結合したもの指します。

LDLコレステロールとは反対に動脈硬化を予防する働きを持ち、少ないと動脈硬化になりやすくなることから、善玉コレステロールとも呼ばれています。

コレステロールの基準値

コレステロールの基準値

血中のコレステロールは、その量が健康の維持に関係することから、一定範囲に収まっていることが望ましいとされています。
また、血中コレステロール値には、食事からのコレステロール摂取量も関係しています。

健康診断でのコレステロールの基準値と、食事からのコレステロール摂取について解説します。

健康診断のコレステロール基準値

人間ドック学会では、血中のコレステロール値に対する判定を以下のように示しています。

HDLコレステロール

  • 基準範囲…40㎎/dl以上
  • 要注意…35~39㎎/dl
  • 異常…34㎎/dl以下

LDLコレステロール

  • 基準範囲…60~119㎎/dl
  • 要注意…120~179㎎/dl
  • 異常…59㎎/dl以下、180㎎/dl以上

程度に応じて再検査や精密検査が必要となります。

脂質異常症の基準値と健康リスク

血中の各種コレステロールが基準値を外れると、脂質異常症と診断されます。

  • 低HDLコレステロール血症…HDLコレステロール40㎎/dl未満
  • 高LDLコレステロール血症…LDLコレステロール140㎎/dl以上

脂質異常症は自覚症状がない一方で動脈硬化(血管の劣化)を着実に進行させ、血管をもろく・詰まりやすくしていきます。
放置すると心筋梗塞や脳梗塞といった命にかかわる大きな病気を引き起こすリスクを高めるため、生活改善や治療が必要になります。

食事からのコレステロール摂取基準

食事からのコレステロール摂取は血中コレステロール値に影響を与えることが知られていますが、日本人の食事摂取基準2020年版では、コレステロール摂取量の基準は定められていません。

以前は食事由来のコレステロール摂取量について基準値が示されていたものの、

  • 食事由来のコレステロールも一部は吸収されないこと
  • 食事からのコレステロール摂取量が増えると体内で合成するコレステロールの量が減るようにバランスがとられていること

などから、コレステロール摂取量について明確な数値を設定する根拠が不足しているために設定が見送られました。

とはいえ、どれだけ摂取しても良いというものではなく、脂質異常症や循環器疾患の予防のためには、「過剰摂取にならないように摂取量は低めに抑える」ことが大切です。

コレステロールを下げるために気をつけたいポイント

コレステロールを下げるために気をつけたいポイント

健康診断でコレステロール値を指摘されたとき、どのようなことに取り組めば改善につながるのでしょうか?

ここからは、「LDLコレステロールが高い」「HDLコレステロールが低い」といわれた時に気をつけたいポイントを紹介します。

肥満の解消

肥満は血中コレステロール値の異常を含む脂質異常症になりやすい状態です。
脂質異常症は以下のような血中脂質の異常をまとめた名称で、動脈硬化をはじめとした、様々な病気のリスクが高い状態です。

  • 血中LDLコレステロールが高い
  • 血中HDLコレステロールが低い
  • 血中中性脂肪が高い

メタボリックシンドロームの診断基準では、
おへその高さでの腹囲が男性85㎝以上、女性90㎝以上の場合を生活習慣病につながりやすい「腹部肥満」としています。

また、日本肥満学会の定めた基準では、
身長と体重から肥満度を表すBMI【=体重(㎏)÷身長(m)2】が25以上の場合を肥満としています。

摂取エネルギーの取りすぎを正し、消費エネルギーを増やして適正体重にすることで、血中コレステロール値を含む血中脂質値の改善が期待できます。

体脂肪1㎏に相当するエネルギーはおよそ7200kcal。
食事の見直しや身体活動を増やすことで、消費エネルギーと摂取エネルギーの差を1日あたり240kcal作れると、1か月で1㎏の体脂肪を消費できる計算になります。

飽和脂肪酸を減らし不飽和脂肪酸の割合を増やす

食事由来のコレステロールと同様に、血中コレステロール値や動脈硬化リスクに影響するのが「飽和脂肪酸」です。

飽和脂肪酸の摂取量が増えると血中のLDLコレステロールを増やすことが分かっており、コレステロールとともに摂取量に気をつけたい成分です。

飽和脂肪酸はいわゆる油(油脂)を構成するもののひとつで、以下の油脂に比較的多く含まれます。

  • 乳脂肪分(バター、生クリーム)
  • 肉類の脂肪分(脂身、ラード、牛脂)
  • ココナッツオイル

一方、「不飽和脂肪酸」は血中LDLコレステロールを減らすことが分かっており、摂取割合を増やしたい成分です。
不飽和脂肪酸は以下のような油脂分に多く含まれています。

  • 魚の脂肪分(青魚、魚油)
  • 植物油全般

食事の中で脂質の摂取源となる食材は、調理に使う油脂類のほかに肉や魚などの動物性食品が代表的です。
肉類や乳類に含まれる脂質は比較的飽和脂肪酸が多く、魚類には多価不飽和脂肪酸が比較的多い、という特徴があります。

どちらもメインのおかずとして使われる食材ですので、今までの食事ではメインのおかずに肉類を選ぶことが多かった、という人はお肉に代えてお魚のおかずを選ぶ頻度を上げるのもおすすめです。
あくまでも「切り替える」ことが重要で、いつもの食事に魚のおかずを「プラス」では摂取エネルギーが増えてしまいますので注意が必要です。

また、最近では、魚由来の不飽和脂肪酸を手軽にとれるサプリメントも見かけることが多いように思います。

一見手軽に血中コレステロールを改善できるように思えますが、活用には注意が必要です。

不飽和脂肪酸をサプリとして食事に加え、血中脂質がどう変わるかを調べた研究では、いずれも血中LDLコレステロール値を下げるのに有効であったとは言いにくい結果が出ています。

肥満や運動習慣、食事内容の見直しをせずにサプリメントを取り入れても、あまり期待した結果は出ない、という風に考えたほうがいいでしょう。

コレステロールの摂取量を減らす

食事摂取基準での目標値はなくなりましたが、コレステロールの摂取量が血中脂質に関係しないということではありませんでした。

コレステロールが比較的多く含まれ、食べる頻度も高いのはやはりたまご。
「たまごは1日1個まで」というのも、血中脂質を正常に戻すためには有効な心がけかもしれません。
魚卵にもコレステロールは多く含まれているので、毎日のように食べるのは避けたいですね。

食物繊維をとる

食物繊維をしっかりとることで、血中のコレステロール値を正常化する働きが知られています。

野菜やキノコ、海藻類は低カロリーながら食物繊維の摂取源となる食材です。

エネルギーの低い野菜がたっぷりの食事は摂取エネルギーの過剰をただし、肥満の解消にも役立つので、「野菜たっぷり」は食事ごとに気にしたいポイントです。

適度な運動

血中のコレステロールに影響を与えるのは、食事からのコレステロールだけではありません。

運動そのものは血中脂質の値に好影響を与えることが知られています。
動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2018年版では、

  • 有酸素運動を中心とした種
  • 1日合計30分以上
  • 週3回以上の頻度で行う

のが望ましいとされています。
血中脂質の数値の改善のためには、数か月以上の根気強い取り組みが有効です。

まとめ

コレステロールの取りすぎはリスクのひとつになりますが、コレステロール以外の要素も大きくかかわっているようです。

健康維持のためにはひとつの栄養素に注目するのではなく、食事や運動習慣など、生活全体を広い視野でみるのが大事です。

また、原則40歳以上から受ける「特定健診」いわゆるメタボ健診では、腹囲や血中脂質の数値によってメタボリックシンドロームの診断を行います。

この健診でメタボと診断されると、医師や保健師、管理栄養士によるメタボ改善のための指導や支援が行われます。

リスクレベルによっても変わりますが、個別の面談では人それぞれの検査値や生活習慣からひとりひとりに合った目標設定、計画作成までプロと一緒にできるため、最も効果的な支援といえるでしょう。

受ける機会があるのであれば、スルーはせずに有効活用するのが健康への近道といえそうです。

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参考文献

日本人間ドック学会:「検査表の見方」

文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」

厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書

厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書

厚生労働省e-ヘルスネット:「脂質異常症を改善するための運動」

厚生労働省e-ヘルスネット:「BMI」

日本動脈硬化学会:コレステロール摂取に関するQ&A

メタボリックシンドローム診断基準検討委員会. メタボリックシンドロームの定義と診断基準. 日本内科学会雑誌; 2005;94:188-203.

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。