ボディメイクやダイエットの目的で筋力トレーニングをしている人も多いのではないでしょうか?
筋トレをしているときに必要な栄養素といえば「たんぱく質」が有名ですが、実は嫌われがちな「糖質」もとても重要な働きを持っているのです。
筋トレ中の糖質摂取の重要性を知って、トレーニングをより効果的なものにしてみませんか?
Contents
筋トレ中に糖質が必要な理由
筋トレをしている人の中には糖質の摂取を控えているという人は少なくありません。
しかし、筋トレをより効果的なものにするには、糖質の摂取もとても重要になります。
筋トレ中の糖質摂取が必要な理由を紹介します。
筋肉のエネルギー源として必要なグリコーゲンの材料
食事に含まれる糖質は腸管から体に吸収されたあと、脳などのエネルギー源として使われるほか、肝臓や筋肉でグリコーゲンとして貯蔵されます。
このうち、筋肉に貯蔵されたグリコーゲンは筋肉専用のエネルギー源として利用されます。
たんぱく質の節約効果で筋肉の分解を抑制
糖質は主にエネルギー源として働く栄養素ですが、そのほか食事に含まれる栄養素ではたんぱく質、脂質もエネルギー源として利用されます。
運動やトレーニング、食事制限などで消費するエネルギーに対して食事からの摂取エネルギーが不足すると、体は貯蔵したエネルギー源を分解してエネルギーを補填します。
このとき、体脂肪がエネルギー源として消費されますが、それと同時に筋肉に含まれるたんぱく質も分解されてエネルギー源として利用されてしまいます。
筋肉量を増やしたい筋トレ中においては、筋肉が分解されてしまうのは避けたいですよね。
ここで十分な量の糖質を摂取していると、たんぱく質よりも糖質がエネルギー源として利用されるため、筋肉の分解が抑制されることが知られています。
トレーニング中においてはたんぱく質だけではなく糖質の摂取も重要なポイントとなります。
参考:カーボローディングについて
1~2時間以上の競技に出るアスリートがよく行う食事法のひとつで、カーボローディング(グリコーゲンローディング)と呼ばれるものがあります。
カーボローディングは体内のグリコーゲン貯蔵量を最大限まで高めることで、長時間に及ぶ競技中にエネルギー切れになることを防ぐことを目的として行われます。
グリコーゲンのもととなる糖質とグリコーゲンの合成を間接的に促進するたんぱく質を適切なタイミングで摂取することにより、通常の状態よりも多くのグリコーゲンを肝臓や筋肉に貯蔵することができ、競技中の持久力を高めることにつながります。
グリコーゲンローディングはすべての人に必要な食事法ではありませんが、糖質が筋肉において能力を最大限に引き出すためにとても重要な栄養素であることのひとつの例といえます。
筋トレ中の糖質はいつ・どのくらいとる?
糖質は筋トレ中の人にとってたんぱく質と並んで重要な栄養素ですが、トレーニング中の人に最適な摂取のタイミングや量も研究されているようです。
スポーツ栄養学の分野で研究されているトレーニング中の糖質におけるベストな摂取量や摂取タイミングについてまとめました。
筋トレ中の糖質摂取のタイミングは?
筋肉のエネルギー源となるグリコーゲンの補給のためには、運動前後のどのタイミングで糖質を摂取するのがよいのでしょうか?
Journal of the International Society of Sports Nutrition(国際スポーツ栄養学会誌)に掲載された論文*)では、運動終了後30分以内と以後4~6時間においてそれぞれ適量の糖質を摂取することで、グリコーゲンの補充を最大限促進するとされています。
また、別の方法として、一定量の糖質を30分おきに3.5時間摂取する方法も紹介されています。
どちらの方法も、運動直後30分~数時間以内での糖質摂取を推奨しており、筋肉のグリコーゲンの回復の面では運動直後30分~数時間以内に糖質が摂取できるよう、食事までの時間を長くあけないようにすることが良いようです。
筋トレ中の糖質摂取、どのくらいとる?
上で紹介した論文では、
- 運動直後30分以内に体重㎏あたり0.6~1.0gの糖質を摂取、その後4~6時間でも2時間おきに摂取する
- 運動後3.5時間にわたって30分ごとに体重㎏あたり1.2gの糖質を摂取する
と2つの方法が紹介されています。
それぞれの方法でのトータルの糖質摂取量は
- 1.8~3.0g/㎏体重(運動後4.5時間までの場合)または2.4~4.0g/㎏体重(運動後6.5時間までの場合)
- 8.4g/㎏体重(運動後3.5時間)
となり、かなり幅があるようです。
2つ目の方法は摂取のタイミングも量も多く、アスリートでない場合にはここまで多量の糖質をとる必要性はないかもしれません。
ひとまず取り入れるハードルの少ない方法で、運動直後30分以内に体重1㎏あたり0.6~1.0g(体重60㎏の人の場合、36~60g)の糖質の摂取を試してみてはいかがでしょうか?
補足:1日を通しての糖質摂取目安(食事摂取基準から)
日本人の食事摂取基準2020年版では、炭水化物の摂取量の目標値を1日の摂取エネルギーの50~65%の範囲に定めています。
この糖質摂取の目標値を、推定エネルギー必要量の数値を用いて実際の炭水化物の重量に換算すると、
18~49歳男性、身体活動レベルⅢ(活発な運動習慣あり)(参照体重18~29歳64.5㎏、30~49歳68.1㎏)の場合
推定エネルギー必要量3050kcal/日 × 50~60% =炭水化物エネルギー1525~1830kcal/日
炭水化物1gは4kcalのエネルギーとなるので
1日の炭水化物量=1525~1830kcal/日 ÷ 4kcal/g =381~458g/日
となります。また、
- 18~29歳で身体活動レベルⅢの女性(参照体重50.3㎏、推定エネルギー必要量2300kcal/日)の場合:1日の炭水化物量288g~374g
- 30~49歳で身体活動レベルⅢの女性(参照体重53.0㎏、推定エネルギー必要量2350kcal/日)の場合:1日の炭水化物量294~382g
と計算されます。
性別によっても異なりますが、運動直後30分以内に体重1㎏あたり0.6~1.0g の糖質をとる方法では、1日の食事のうち1~2割程度の糖質を運動直後に摂るイメージとなります。
*各年齢、身体活動レベルにおける推定エネルギー必要量は平均的な身長・体重から計算されたものであり、必ずしもすべての人に当てはまる数値ではありません。
筋トレ中の糖質摂取におすすめの食べ物
糖質は私たちが普段食べている食事の中に含まれていますが、その含有量は食品によって大きな差があります。
糖質の摂取源になる食品と、その含有量から筋トレ中に食べる量の目安を紹介します。
糖質の摂取源になる食品
糖質の主な摂取源となるのは、米や小麦などの穀類、芋類、砂糖類です。
糖質の主な摂取源とその含有量(100gあたり)
食品名 | 糖質含有量 |
白米ごはん | 37.1g |
うどん(ゆで) | 21.6g |
食パン | 46.4g |
じゃがいも(蒸し) | 18.1g |
バナナ | 22.5g |
スポーツドリンク | 5.1g |
プロテイン (リカバリータイプ、1食30gのもの) |
69.3g |
*)文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」、商品情報より作成
砂糖類はスポーツドリンクなどの飲み物として摂取でき、短時間での糖質補給に適しています。運動直後に食欲がないというときでも摂取しやすい糖質源となりそうです。
穀類や芋類は砂糖類と比較して腹持ちがよく、食事の満足感が高いのが魅力です。
運動の直後には砂糖を含む食品による糖質補給、それ以外では穀類、芋類を中心に糖質を摂取することで、栄養バランスとしてもすぐれた食事にできそうです。
筋トレ中の摂取目安
上で紹介した、運動直後30分以内に体重1㎏あたり0.6~1.0gの糖質を摂取する方法の場合の食事の目安を計算してみましょう。
体重1㎏あたり0.6~1.0gの糖質というのは、体重60㎏の人の場合、36~60gに該当します。
この数値は、
- おにぎり1~2個、ごはん小盛1杯~中盛1杯
- ゆでうどん0.7~2.5玉
- 食パン5枚切り1枚~6枚切り2枚
- バナナ小さめ2本~3本
- スポーツドリンク700ml~1200ml
- プロテイン(リカバリータイプ)1.5食~3食分
に相当します。
スポーツドリンクだけでの摂取は厳しそうですが、複数の食品から食べやすいもの、手軽に用意できるものを選ぶのもよさそうです。
筋トレ中の糖質摂取について気を付けたいこと
筋トレ中はたんぱく質だけではなく糖質の摂取も重要なポイントですが、とり方には注意が必要です。
摂りすぎによる摂取エネルギー過剰に注意!
筋肉のエネルギー補給のため・筋肉の分解を防ぐためには十分な量の糖質摂取が必要ですが、とりすぎには注意が必要です。
たんぱく質・脂質と同様、糖質もエネルギー源となる栄養素ですので、摂取エネルギーが消費エネルギーを大きく上回るような状態が続くと、余った摂取エネルギーは体脂肪として蓄積されてしまいます。
筋トレや運動は健康維持の面でもとても良い習慣のひとつですが、摂取エネルギーの過剰により肥満になってしまっては体づくりだけでなく、健康においてもマイナスです。
体重や体脂肪率の変化をよく観察しながら、適量の範囲で食事をとることを心掛けましょう。
筋トレをしない日の摂取量の目安
筋トレをしない日には食事の量や糖質の摂取量は減らすべきでしょうか?
通常、日々の摂取エネルギーは日ごとに差があります。
消費エネルギーに対して摂取エネルギーが大きい日があったとしても、一定期間を通じて摂取エネルギーが消費エネルギーを過剰に上回っていなければ体脂肪の蓄積にはつながりません。
また、筋トレによって筋肉量が増えると体重が増加することがあります。
トレーニング中は体重の増加=太ったとは単純化できませんので、体脂肪率の変化や体形をチェックして、体脂肪が増えてきた自覚がある場合には、食事の見直しを考えるのがよいかもしれません。
体脂肪の増加傾向がみられたという場合、筋トレを行わない日には運動直後の糖質摂取にあたる食事は控えるなど、余分なエネルギー摂取になっていそうな食事をへらすように心がけてみましょう。
まとめ
ここ数年、糖質制限によるダイエット法が人気であり、トレーニングやダイエットの話題ではたんぱく質が注目されがちですが、筋トレを効果的なものにするためには、適切な量の糖質摂取も必要です。
1日に必要な糖質の摂取目安は摂取エネルギー全体の50~65%であり、また、筋肉のエネルギー補給のためには運動後30分以内に体重1㎏あたり0.6~1.0gの糖質摂取が望ましいとされています。
具体的にはごはんやパン、バナナなどの糖質を含む食品のほか、糖質を含むプロテインドリンクなども選択肢のひとつになります。
糖質、たんぱく質、脂質はいずれもエネルギー源となる栄養素であり、必要以上の量をとり続けると体脂肪の蓄積につながりますので、体重や体脂肪率のチェックを行いながら適量摂取を心掛けたいですね。
筋トレはダイエットやボディメイクにおいても、健康面でもぜひ続けてほしい習慣のひとつです。
適切な糖質摂取と健康的な食事を組み合わせることで、トレーニングをより効果的なものにしていけるとよいでしょう。
トレーニング中のプロテインのとり方についてまとめた記事はこちら
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参考文献 吉田勉 監修. わかりやすい食品機能栄養学. 三共出版, 2010. 日本スポーツ協会:「目標別スポーツライフ-トレーニング・食事・睡眠-」 厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書 文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」 *)Kerksick, C. M. et al. International society of sports nutrition position stand: Nutrient timing. J. Int. Soc. Sports Nutr. 14, 1-21 (2017). |