生活習慣病予防のための食事の意義
生活習慣病の「生活習慣」のひとつ
高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病は、食事をはじめとした「生活習慣」が発症や重症化に大きく影響する疾患です。
生活習慣病の発症や重症化には遺伝的素因などの関連もありますが、日ごろから望ましい生活習慣のひとつとしての「健康的な食事」を心がけることで、発症予防・重症化予防に役立つと考えられています。
特定の食べ物ではなく、もっと広い枠組みでとらえるのが大事
近年は健康志向の高まりもあってか、「○○は血圧にいい」「○○は体脂肪に効く」など、特定の食べ物やその成分の効果を持ち上げる情報があふれています。
しかし、特定の食べ物やその成分が薬のような効き目をもって生活習慣病予防に直接働くことは少なく、さらに、特定の「健康にいい食べ物」ばかりを選んで食べることは、かえって食事のバランスを欠くことにもつながることが心配されています。
生活習慣病の予防においては、「健康にいい食品」のみに注目するよりも、普段食べている食事の全体をみて、何をどのくらい、どんな風に食べるかを考えることが大事です。
生活習慣病予防のための食事のポイントと解説
生活習慣病予防につながる食事のポイントは決して特別なものではありません。
お金や時間をかけずとも取り入れられることがほとんどなので、できることから取り入れてみてくださいね。
食事の回数・時間等
朝食はなるべく毎日食べる(欠食は週2回以下に)
朝食抜きは高血圧や脳出血のリスク因子であることが知られています。
はじめにごはんやパンなどの主食を、余裕があれば卵や肉・魚類の主菜、牛乳や乳製品、野菜のおかずや果物を加えると食事バランス的にも理想的です。
朝、食事をする時間がない場合には、前日の寝る時間を早くしてみたり、始業前にさっと食べられるものをコンビニなどで買うのも方法のひとつです。
就寝前2時間は食事をしない(週2回以下)
遅い時間の夕食は肥満や翌朝の朝食抜きにつながりやすい要素です。
BMIが高い人では、夜遅い時間の食事を減らすことで肥満の解消につながるかもしれません。
仕事などでどうしても夕食が遅くなってしまう場合には、寝る時間を遅らせるのではなく、残業の合間に軽く食事をして寝る直前の食事を減らすようにするのがおすすめです。
早食いをしない、ゆっくり食べる
早食いは肥満や将来の糖尿病リスクと関連することがわかっています。
食事をゆっくり食べるだけでも、体重減少につながるとの報告も。
よく噛んで食べるほか、会話を楽しみながらの食事を心がけたり、飲み物や汁物で流し込まないよう気を付けたり、噛み応えのある料理を取り入れてもいいですね。
食事内容
主食・主菜・副菜をそろえた食事
いわゆる定食スタイルですが、いろいろな食材を取ることができるため、栄養素の偏りが起きにくいのが魅力です。
メインとなる主菜は多くなりやすく、野菜を中心とした副菜は少なくなりやすいので、主菜をひかえめに、野菜のおかずや果物・乳製品をプラスするように心がけると、バランスがとりやすくなります。
野菜料理は1日小鉢5つ分(350g)を目安にする
野菜は低カロリーながらカリウムや食物繊維がとりやすく、血圧や血糖値、血清脂質改善に役立つ食材です。
野菜は1日350gといわれますが、料理に換算すると小鉢5つ程度。
朝昼夕の食事をあわせて5皿分とれるのが望ましいとされています。
1日1回は果物、魚、乳製品を食べる
果物は野菜と同様にカリウム摂取に良い食品で、適量を取りたい食品です。
摂取エネルギーには注意が必要ですが、1日1回は食べる機会があるといいですね。
主菜には肉類ばかりではなく魚も取り入れることで摂取する脂質のバランスがとれ、血中脂質にも良い影響が期待できます。
乳製品はカルシウムの摂取源として優秀な食品です。
カルシウムの不足は骨粗しょう症だけでなく、脳卒中のリスク因子となることがわかっています。
脂質が気にある場合には、低脂肪乳なども選択肢に入れるとよいでしょう。
減塩を心がける
日本人の食事は食塩の取りすぎにつながりやすいのが特徴で、ほぼすべての日本人において、食塩は過剰摂取となっています。
薄味を心がけ、減塩調味料などの活用で、食塩の摂取量を抑えることができます。
また、この後に紹介する主食+主食のセットや丼物・麺類の頻度を抑えることも効果的です。
注意が必要、控えめにしたい食事
主食+主食のセット、丼もの・カレーライス・麺類
ラーメン・チャーハンセットやカツ丼、カレー、うどんやそばなどは手軽に食べやすく、外食でも人気のメニューですが、塩分を取りすぎやすいのが難点ですので、毎日のように食べるのはやめましょう。
主食と主菜だけが多い状態になってしまいやすいので、主食と主菜は量を抑えつつ(大盛りは避けて)副菜としての野菜や果物・乳製品をプラスできるとバランスが整います。
菓子類や甘い飲み物などの間食
朝昼夕の食事以外の間食は肥満につながりやすく、特に夕食後の間食は頻度を下げる(週2回以下)ことで体重減少が期待できます。
菓子類と同じ甘みのあるものでも、果物は反対に体重増加の抑制に関連するため、切り替えると健康的です。(ただし、量には注意)
お酒は適量範囲で、休肝日を作る。(純アルコール20g、休肝日週2日)
酒は百薬の長ともいう反面、1日あたりの平均飲酒量が増えるごとに、飲酒関連のがん・高血圧・脳出血・脂質異常症などのリスクが上がることがわかっています。
毎日飲む、または時々でも飲む量が多い場合には、生活習慣病のリスクを高める可能性があります。
週2日は休肝日を作り、量は控えめに抑えましょう。
摂取するアルコール量が同じであればどのお酒でも体に影響を及ぼします。
どれだけ飲んでも大丈夫な健康的なお酒、というものはないと考えましょう。
揚げ物・肉の脂身(肥満やコレステロール値によって注意)
揚げ物や肉の脂身をよく食べる食生活では、脂質の摂取量が多くなりがちで、摂取エネルギー過剰からの肥満に注意が必要です。
また、肉の脂身には飽和脂肪酸が多く、血中コレステロール値を指摘されている場合には特に注意が必要です。
肥満や血中コレステロール値が気になっている場合には、量や頻度を控えめにしましょう。
補足とまとめ
生活習慣病の予防のための食事のポイントを紹介しました。
一度にすべてのポイントをクリアする必要はありませんので、できそうなところから心がけてみてはいかがでしょうか。
もし、すでに健康診断等で指摘された項目があった場合には、項目に応じた生活習慣の改善が優先されます。
特定保健指導等を活用することで、自分の生活にフィットした、より効果的な生活習慣改善のポイントが見つかるかもしれません。
ぜひ、活用してみてくださいね。