メタボと動脈硬化の進行メカニズム

メタボと動脈硬化の進行メカニズム

メタボリックシンドロームはなぜ怖い?

今は何ともなくても、将来の命にかかわる病気

特定健診・特定保健指導など、国を挙げて予防に取り組んでいるメタボリックシンドローム。
メタボリックシンドロームと診断される人の多くは問題なく日常生活を営んでいる人ですが、深刻な体の不調を感じることがない人でも、積極的な予防や習慣改善が勧められるのはなぜでしょうか?

それは、「メタボリックシンドロームは自覚症状なく命にかかわる病気につながるから」です。

異変に気づいたときにはもう遅い?

メタボリックシンドロームは心臓病や脳卒中の前段階である「動脈硬化」を進行させるものです。
この動脈硬化は自覚症状がなくとも進行し、自覚できる症状(心筋梗塞など)が起こった時には命にかかわる危険性が高い…という、とても怖いもの。
一方、早期の生活改善で動脈硬化の進行、将来の心血管疾患等の発症が予防できることから、メタボリックシンドローム及びその予備軍のような、より早い段階での取り組みが重要とされています。

メタボリックシンドローム、動脈硬化性疾患の進行メカニズム

平成30年度における日本人の死因の2位は心臓病、4位は脳卒中で、いずれも血管の劣化である「動脈硬化」がかかわっている病気です。
このことからも、動脈硬化を防ぐことが日本人にとって健康上の大きな課題となることがうかがえるのではないでしょうか。

動脈硬化とは?

動脈硬化とは、血管(動脈)の弾力性が失われ、硬くなったり、血管の内側にプラークや血栓ができることによって狭くなり、詰まりやすくなったりした状態のことです。

血管内での動脈硬化の進行

メタボリックシンドロームは動脈硬化を進行させる

メタボリックシンドロームは、内臓脂肪型肥満に高血圧や高血糖、脂質代謝異常が重なった状態のこと。

この内臓脂肪型肥満・高血圧・高血糖・脂質代謝異常はそれぞれに動脈硬化を進行させる働きを持ち、さらに複数が組み合わさることによってよりリスクを高めることがわかっています。

動脈硬化を進行させる複数のリスク

内臓脂肪型肥満

脂肪組織からの各種生理活性物質(アディポサイトカイン)の分泌に異常をきたし、

  • 動脈硬化を進行させる
  • 血栓の形成を抑える働きが弱まる

…といった動脈硬化性疾患の直接のリスクが高まることがわかっています。
また、

  • インスリンの効きを悪くする(高血糖)
  • 血圧を上げる(高血圧)
  • 血中中性脂肪を増やし、血中HDLコレステロールを低下させる(脂質代謝異常)

…など、動脈硬化にかかわる生活習慣病のリスクも高めることから、メタボリックシンドロームの基盤として位置づけられています。

高血糖

高血糖が進行すると、血管内に多くなりすぎた糖が血管の内側を傷つけ、動脈硬化を進行させます。

高血圧

高血糖と同様に血管の内側に負担をかけ、傷つける要因の一つとなります。

脂質代謝異常

血液中でLDLコレステロールが余ると、酸化されて血管の壁の中に蓄積しプラークを形成、血管を厚くして動脈硬化を進めます。
プラークが破裂して血栓ができると、血流を止め、脳梗塞や心筋梗塞などが起こります。

メタボリックシンドロームから心臓病・脳卒中までの自覚症状はほとんどない

メタボリックシンドロームから動脈硬化、心臓病・脳卒中までの流れにおいて、最も怖いのが「心臓病や脳卒中などの深刻な状態に陥るまで、自覚症状がないこと」です。

初期の段階から痛みがあるような病気では、早めに見つけることができますが、メタボリックシンドロームや動脈硬化は、初めの段階では自覚できる症状はほとんどありません。

動脈硬化性疾患の自覚症状

そのため、体に良くないことが起こっていることが自覚しにくく、ある日突然心筋梗塞や脳梗塞などを起こしてしまう…ということも起こりやすい病気です。

痛みがないからと言って放置してしまい、気が付いたら手遅れになっていた…というのは、なるべく避けたいですよね。

自覚症状がなくても、早めの段階から予防に取り組むことが大事

メタボリックシンドロームや動脈硬化は深刻な病気の前段階であり、毎日の生活習慣が予防や改善に大きく影響するものです。

自覚症状がなく進行に気づきにくいのが怖いところですが、血液検査の数値などから早めに気づき、予防を行うことができる病気でもあります。

特定健診・特定保健指導といった取り組みを積極的に利用し、将来の健康のため、生活習慣の見直しをするのが大事です。