身体活動の目標値と習慣化のためのヒント

身体活動の目標値と習慣化のためのヒント

身体活動は肥満の是正だけでなく、血圧や血糖値などの代謝の面からも生活習慣病の予防に役立つことがわかっています。
では、具体的にはどのくらい体を動かせばよいのでしょうか?

望ましい身体活動の目安

身体活動基準2013では…

日本人に対して望ましい身体活動の量や内容を示した「健康づくりのための身体活動基準2013」では、全世代に共通する方向性(目標)と、年齢別に具体的な身体活動の基準を示しており、特定健康診査・特定保健指導でも、この基準を取り入れています。

すべての世代に共通する方向性

【現在の身体活動量を少しでも増やす。例えば、今より毎日10分ずつ長く歩くようにする。】
【運動習慣を持つようにする。具体的には、30分以上の運動を週2日以上行う。】

身体活動は数十分以上でないと効果がないという説もありますが、実際にはごく短い時間の積み重ねでも生活習慣病などのリスク低減に効果が期待できるとされています。

また、運動習慣が身につくことで、生活習慣病予防だけでなく、体力の維持や向上にも役立ち、将来の運動機能や認知機能の維持も期待できるとされています。

年齢別、個人の健康づくりのための身体活動基準

年齢別の具体的な身体活動基準では、身体活動の強さを「メッツ」という単位で示します。
横になって安静にしている状態を1メッツとし、その何倍のエネルギーを消費するかで数値が変わります。

18~64歳

身体活動(生活活動・運動):強度が3メッツ以上の身体活動を23メッツ・時/週
具体的には…歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を毎日60分

運動 :強度が3メッツ以上の運動を4メッツ・時/週
具体的には…息が弾み汗をかく程度の運動を毎週60分

65歳以上

身体活動(生活活動・運動):強度を問わず、身体活動を10メッツ・時/週
具体的には…横になったまま・座ったままではない動き(どんなものでもよい)を毎日40分
*可能であれば3メッツ以上の運動を含めた身体活動に取り組むのが望ましい

自分の生活を振り返ってみよう

では、今現在の自分の生活における身体活動は十分できているか、保健指導にも使われる質問項目を用いてチェックしてみましょう。

日常生活において歩行または同等の身体活動が1日1時間以上ありますか?
週2日以上の頻度で、1年以上続けている1回30分以上の軽く汗をかく運動の習慣はありますか?
  • 日本人において、この水準を超えた身体活動を行うことで、生活習慣病などのリスクが下がることがわかっています。
    いずれもクリアできている場合には身体活動面での生活習慣に問題はあまりないと考えられます。
    どちらもクリアできていないという場合には、体を動かすことを意識することから始めるとよいでしょう。
ほぼ同じ年齢の同性と比較して歩く速度が速い
  • 歩く速さは日常的な身体活動の強さとも関連付けられ、体力を推し量ることができます。
    週2日以上の運動習慣がなくとも、歩く速度が十分早い場合には体力に問題がないことが予測されますが、運動習慣がなく、歩く速度も遅い場合には、年齢相応の体力が維持できていないことが考えられ、体力づくりのための運動を始めるのもよいでしょう。

いきなり目標を目指さなくてOK

いままで体を動かす機会が少なかった人が初めから身体活動基準並みの身体活動や運動を行うのは負担が大きくなってしまいます。

いきなり目標を達成する必要はなく、まずは毎日の生活の中で10分多く歩くなど、体を動かすことを少しずつ増やすことから始めるのがおすすめです。

身体活動を増やすためのヒント

身体活動を増やすぞ!と決意しても、時間がなかったり、なかなか続かなかったり、けがをしてしまったり…といったことから、習慣にならないことも。

体を動かすことを習慣にするためのヒントを紹介します。

体を動かすタイミングを見つける

体を動かすタイミングを見つける

忙しい現代では、体を動かすことのために時間を割くことは容易ではないことも少なくありません。
日常生活に支障のない範囲で、体を動かすタイミングを見つけてみましょう。

仕事中の場合

早歩き・自転車で通勤する
こまめに動く、階段を使う、遠くのトイレを使う
食事に出かける
仕事中に軽い体操をする
帰宅時は歩幅を広く、階段を意識して使用する

家にいるときや休みの場合

散歩・ジョギング・ラジオ体操・庭の手入れをする
キビキビと家事を行う、家事の合間にながら体操をする
食事に出かける、ウインドウショッピングをする
地域のスポーツイベントに参加する
テレビを見ながら筋トレやストレッチをする
買い物・子供や孫の送り迎えを徒歩にする
夜の時間にウォーキングや運動施設の利用、テレビを見ながら筋トレやストレッチをする

続けられる、習慣化するためのポイント

自分ひとりで目標を決めて体を動かすのはつらく、長続きしない…という場合には、ほかの人を巻き込むのがおすすめです。

目標を家族や仲間に宣言したり、家族や仲間と一緒に体を動かすことで、楽しく、続けやすくなります。

けがをしないために気を付けたいこと

健康のために体を動かそうとして、けがをしてしまっては元も子もありません。
以下のことに気を付けながら、無理のない範囲で身体活動量を増やしていきましょう。

  • 体調の悪いときは無理をしない
  • 動きやすい服装・靴で
  • 運動の前は準備体操を行うとけが予防に良い
  • きついと感じる運動はしない(楽、ややきつい程度まで)
  • 痛みや病気の不安があるときは医療機関に相談する

特定保健指導を活用しよう

特定健康診査・特定保健指導では、今現在の生活習慣病リスクを判定したうえで、必要に応じて食事や身体活動について専門家のアドバイスを受けることができます。

身体活動を増やすうえでも、今の生活習慣の中で健康のために見直したいポイントなどを対象者の方それぞれに見つけてくれるので、成果につながりやすいのが魅力です。
ぜひ、活用してくださいね。