お肉の代用品として注目されている「大豆ミート」。
ベジミート、ソイミートなどとも呼ばれ、「ヴィーガンでも食べられる」「お肉より健康的」「地球環境にも優しい」と話題です。
大豆ミートの魅力と注意点、どんな人に向いているかを紹介します。
Contents
大豆ミートとは?肉類とどう違う?
大豆ミートは私たちが普段食べているお肉と比べると、どう違うのでしょうか?
大豆ミートの主原料と食品としての形態について解説します。
主原料は大豆
大豆ミートの主原料はその名の通り「大豆」です。
油分を絞った後の「脱脂大豆」を加熱・加圧・高温乾燥させて作ったものであり、大豆100%から作るもののほか、つなぎとなる原料や、調味料を加えたものなどがあります。
また、お肉の代用品…いわゆる「代替肉」の原料は大豆だけではなく、そのほかの植物由来原料、お肉の細胞を培養することで作るものなど、様々です。
乾燥タイプから調理品まで
大豆ミートは大きく分けると水で戻して使う乾燥タイプ、水戻し不要のレトルトタイプがあり、それぞれミンチ、薄切りタイプ、かたまりタイプなど、形状にもバリエーションがあります。
また、ソーセージやナゲット、パスタソースなどに加工した状態で販売されているものもあり、調理の手間なく取り入れられるものも存在します。
取り入れやすい価格
大豆ミートの価格はメーカーによっても幅がありますが、最も加工度の低い乾燥タイプの場合、水戻しした状態に換算すると100gあたり120~170円前後になるようです。
普段のお肉と比べて特別高価であるということはなく、無理せず日常的に取り入れられる価格帯といえそうです。
栄養価を比較してメリットとデメリットを評価
大豆ミートは普段のお肉と比べて栄養価にどのような違いがあるのでしょうか?
ひとくくりに「大豆ミート」といっても、原材料の細かな違いなどから、どの製品も同じ栄養価であるわけではなく、個別の栄養価についてはそれぞれの製品情報を確認するのが確実です。
今回は普段のお肉と栄養価を比較するため、お肉類・大豆ミートの栄養価はいずれも「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」から引用しました。
(大豆ミートは成分表では「粒状大豆たんぱく」の名前で収載されています。)
また、大豆ミートは水戻しをしてから使用することを考慮し、水戻し後にお肉と同じ重量になるように、重量を調整した数値を使用します。
エネルギーと栄養素バランスの比較
大豆ミート | 鶏ささみ | 豚ロース (脂身付き) |
牛肩ロース (脂身付き) |
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エネルギー | 120kcal | 109kcal | 263kcal | 318kcal |
たんぱく質 | 15.4g | 23.9g | 19.3g | 16.2g |
脂質 | 1.0g | 0.8g | 19.2g | 26.4g |
炭水化物 | 12.2g | 0.1g | 0.2g | 0.2g |
*100gあたり(大豆ミートは乾燥33.3g(水戻し後100g)あたり) |
100gあたりのエネルギーと主な栄養素のバランスを比較すると、脂質と炭水化物で大きな違いがあるようです。
肉類にはたんぱく質を主に含む部分(赤身部分など)と、脂質を主に含む部分(脂身などの脂肪組織)があり、脂肪組織の割合が多くなるほど重さあたりのエネルギーも高くなります。
また、どの種類でも炭水化物はほとんど含まれないことも、肉類の特徴のひとつといえそうです。
いっぽうで、大豆ミートは油分を取り除いた大豆を主原料としており、脂質の含有量が低く、大豆にもともと含まれる炭水化物が比較的多く含まれているのが特徴的です。
比較する肉類そのものに栄養価の差が大きいものの、大豆ミートは鶏ささみや皮なしの鶏むね肉など、脂身の少ない肉類とほぼ同じくらいのエネルギーで、栄養価の特徴としてはたんぱく質だけでなく炭水化物が含まれていることがいえるでしょう。
ビタミン、ミネラルの比較
大豆ミート | 鶏ささみ | 豚ロース (脂身付き) |
牛肩ロース (脂身付き) |
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カリウム | 800㎎ | 410㎎ | 310㎎ | 260㎎ |
カルシウム | 90㎎ | 4㎎ | 4㎎ | 4㎎ |
鉄 | 2.6㎎ | 0.3㎎ | 0.3㎎ | 0.9㎎ |
ビタミンB1 | 0.22㎎ | 0.09㎎ | 0.69㎎ | 0.06㎎ |
ビタミンB6 | 0.21㎎ | 0.62㎎ | 0.32㎎ | 0.21㎎ |
*100gあたり(大豆ミートは乾燥33.3g(水戻し後100g)あたり) |
ビタミンやミネラルといった微量栄養素は肉類の中でもそれぞれに特徴があり、牛肉は吸収率の高い鉄が、豚肉はビタミンB1が、鶏肉はビタミンB6がそれぞれ豊富という特徴があります。
そのため、ひとくちに肉類として大豆ミートと比較することはできませんが、大豆ミートはこれらの肉類と比べるとカリウムやカルシウム、(吸収率の低い非ヘム鉄ではあるものの)鉄が豊富という特徴があります。
(※ヘム鉄の吸収率は50%、非ヘム鉄の吸収率は15%とする研究報告*)があります)
どれがより優れている、というよりは、それぞれ豊富に含まれる栄養素は異なると考えるのがよさそうです。
生活習慣病予防の観点から(食物繊維、飽和脂肪酸、コレステロールの比較)
大豆ミート | 鶏ささみ | 豚ロース (脂身付き) |
牛肩ロース (脂身付き) |
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飽和脂肪酸 | 0.13g | 0.17g | 7.84g | 10.28g |
一価不飽和脂肪酸 | 0.10g | 0.22g | 2.21g | 12.31g |
多価不飽和脂肪酸 | 0.39g | 0.13g | 2.21g | 1.00g |
コレステロール | 0㎎ | 66㎎ | 61㎎ | 71㎎ |
食物繊維総量 | 5.9g | 0g | 0g | 0g |
*100gあたり(大豆ミートは乾燥33.3g(水戻し後100g)あたり) |
飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸、コレステロール、食物繊維の摂取は生活習慣病リスクに影響することが分かっている栄養素です。
簡単に解説すると…
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大豆ミートは各種肉類と比較すると
- 飽和脂肪酸が少ない
- 多価不飽和脂肪酸の割合が多い
- コレステロールを含まない
- 食物繊維を含む
といった特徴を持ちます。
これらの特徴から、大豆ミートは各種肉類と比較すると生活習慣病のリスクが低い食材…と考えることもできそうです。
ただし、各種栄養素の生活習慣病リスクへの影響は、習慣的な食事全体からの摂取量が重要です。
大豆ミートがほかの肉類と比較して生活習慣病につながりにくい栄養素バランスだったとしても、そのほかに食べている食事の影響を受けないということはありません。
食事全体として飽和脂肪酸・コレステロールはひかえめに、多価不飽和脂肪酸・食物繊維を積極的にとる食事の一要素として、大豆ミートを取り入れるのがよさそうです。
栄養価以外の「選ぶ理由」がある場合も
大豆ミートは栄養価から見ても生活習慣病につながりにくい「健康的な食材」のひとつですが、菜食主義者の方や宗教上の理由で肉類が食べられない方の食事の幅を広げることができるもののひとつでもあります。
また、肉類(特に牛肉)と比較して、生産するにあたって排出される温室効果ガスが少なく、環境への負荷の少ない「地球にやさしい食材」のひとつともいえます。
- 菜食主義の方のたんぱく質摂取源となる食材
- 環境負荷の少ないたんぱく質摂取源となる食材
としても、食の幅を広げる食材として魅力的なものといえるでしょう。
まとめ:健康的な食生活の選択肢の一つとして
栄養素等の特徴からまとめると、大豆ミートは
- 摂取エネルギーを抑えたい場合のたんぱく源として、鶏ささみなどの脂質の少ない肉類に加わる選択肢のひとつ
- 飽和脂肪酸やコレステロールの摂取を減らしたい場合の肉類の代替品
- 食物繊維の摂取を増やしたい場合の肉類の代替品
として取り入れるのがいいのではないでしょうか。
生活習慣病予防の観点では肉類と比較してよい点は多いものの、ビタミンやミネラル摂取の観点では、各種肉類のほうがよりよい面もあるため、「大豆ミートは肉類よりも優れた食材。完全に切り替えるべき」ということではありません。
健康を目的とするのであれば、極端な取り入れ方はせず、選択肢の一つとして取り入れるのがよさそうです。
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参考文献 文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」 厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書 *)Young MF, Griffin I, Pressman E, et al. Utilization of iron from an animal-based iron source is greater than that of ferrous sulfate in pregnant and nonpregnant women. J Nutr 2010; 140: 2162─6. 米国FAO:温室効果ガスの排出量削減のための畜産の取り組みについて 佐々木 敏:「佐々木敏の栄養データはこう読む!」.女子栄養大学出版部,2015. |