海苔は栄養豊富な食材、と言われています。
各種ビタミンやミネラルが普通の食材の何倍も含まれているとのこと。
でも、海苔のような食品は栄養豊富でも、実際に摂取できる栄養素の量は限られそうです。
海苔に含まれる栄養素と海苔の特性について、解説していきます。
Contents
海苔100gあたりの栄養価
海苔は栄養素をたっぷり含むことが知られており、「栄養豊富な食材」として様々な場面で紹介されています。
実際にどのくらいの栄養素を含むのか、栄養素の含有量と、私たちの体が必要とする量との比較をチェックしてみましょう。
■海苔に含まれる各種栄養素量(100gあたり)
焼きのり | 食事摂取基準に対して 充足率(18~64歳女性) |
|
エネルギー | 188kcal | – |
水分 | 2.3g | – |
たんぱく質 | 41.4g | 82.8% |
脂質 | 3.7g | – |
炭水化物 | 44.3g | – |
うち食物繊維 | 36.0g | 200% |
カリウム | 2400㎎ | 92% |
マグネシウム | 300㎎ | 103~110% |
鉄 | 11.4㎎ | 109%(月経有の場合) |
ヨウ素 | 2100㎍ | 1615% |
モリブデン | 220㎍ | 880% |
ビタミンA当量 | 2300㎍ | 330~350% |
ビタミンK | 390㎍ | 260% |
ビタミンB2 | 2.33㎎ | 210% |
ナイアシン当量 | 20.2㎎ | 168~183% |
葉酸 | 1900㎍ | 792% |
ビオチン | 46.9㎍ | 94% |
ビタミンC | 210㎎ | 210% |
*100gあたり 文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」、厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書より作成 |
栄養素が豊富だが1回の食べる量は少ないのが特徴
人が生きていくうえで食事などから摂取することが必要な栄養素はたんぱく質・脂質・炭水化物に加え、ビタミン13種、ミネラル13種です。
上記のデータから、海苔はたくさんの栄養素を豊富に含むことがわかります。
海苔100gで1日の摂取基準量を大きく上回る項目も多数ありますが、このデータは「100gあたり」という点に注意が必要です。
一般的に売られている海苔のうち、一番大きいサイズ、全形(21㎝×19㎝)1枚の重さは3g。
100g分の栄養素を取り入れるためには、33枚以上を食べなければいけません。
もともと、海苔というものは1回にさほど多くを食べる食材ではないため、実際に食べる量を基準に考える必要があるのではないでしょうか。
海苔1枚当たりの栄養価
海苔の全形(21㎝×19㎝)1枚の重さは3gとされています。
海苔の摂取量はその日に食べる料理によっても異なりますが、手巻き寿司のような海苔を多く使う料理を除いては、1日に1枚以上を食べるということはあまりないのではないでしょうか。
平均的な食生活について、1日に食べる海苔の量は平均1枚以下と考え、この量の海苔からとれる栄養素について考えてみましょう。
■海苔に含まれる各種栄養素量(全形1枚3gあたり)
焼きのり | 食事摂取基準に対して 充足率(18~69歳女性) |
|
エネルギー | 6kcal | – |
水分 | 0.1g | – |
たんぱく質 | 1.2g | 2.4% |
脂質 | 0.1g | – |
炭水化物 | 1.3g | – |
うち食物繊維 | 1.1g | 6.1% |
カリウム | 72㎎ | 2.8% |
マグネシウム | 9㎎ | 3.1~3.3% |
鉄 | 0.3㎎ | 2.9%(月経有の場合) |
ヨウ素 | 63㎍ | 48.5% |
モリブデン | 7㎍ | 28% |
ビタミンA当量 | 69㎍ | 9.9~10.6% |
ビタミンK | 12㎍ | 8% |
ビタミンB2 | 0.07㎎ | 5.8% |
ナイアシン当量 | 0.6㎎ | 5.0~5.5% |
葉酸 | 57㎍ | 23.8% |
ビオチン | 1.4㎍ | 2.8% |
ビタミンC | 6㎎ | 6% |
*全形(21㎝×19㎝)1枚3gあたり 文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」、厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書より作成 |
1枚あたりではほとんどの栄養素が多いとは言えない
たんぱく質が豊富、けた違いの食物繊維を含む、といわれることもある海苔ですが、やはり3g程度では「優れた摂取源である」とまでは言えなくなってしまいます。
食物繊維の「ちょい足し」にはよさそうですが、海苔を食事に取り入れれば理想的な量が取れる、とは言いにくいというのが実際です。
1枚あたりでも、ヨウ素、モリブデン、葉酸についてはよい摂取源になりそう
ヨウ素とモリブデンは不足が心配される栄養素ではないものの、海苔全形1枚で摂取基準量の大部分(ヨウ素は5割近く、モリブデンは3割ほど)を摂取できます。
また、妊娠中に必要量が増える葉酸に関しても、十分な量とは言えないものの、補給源のひとつとして摂取量の底上げには繋げられそうです。
葉酸を豊富に含む葉物野菜などとともに、海苔を取り入れるのもいいかもしれませんね。
サプリメント的な使い方は難しい
いくら海苔が栄養豊富な食材だったとしても、1日に何十枚も食べられるものではないうえ、ほかの食材を食べられる量が減ってしまうことも考えられます。
「海苔は栄養素を豊富に含む食品」「栄養素を効率的にとれる」ということは嘘ではありませんが、実際に私たちが摂取可能な量でも豊富な栄養素を摂取できるか、と考えると、少し難しい食品といえそうです。
栄養価の高さについての考え方
基本的に、食品の栄養価は「食品100gあたりに含まれる栄養素の量」で考えられることが多くなっています。
しかし、食品によって1回に食べる量、食べられる量には違いがあり、単純比較が難しい場合も少なくありません。
栄養価について考えるときに気を付けたい、重さや1回摂取量について解説します。
重さあたりで考えると、乾物類は栄養価が高く出る
「●●に比べて、○○は栄養素が豊富な食べ物です!」といわれるとき、単純に考えれば「同じ重さの場合」で比べることが多いと思います。
食品は水分が少ないほどその他の栄養素の割合は増えるため、一般的に同じ重さで比較すると、水分の少ない食品ほど「栄養価が高い」ように見えるという特徴があります。
例えば、高野豆腐は豆腐を凍結・乾燥させて水分を抜いた食品です。
凍結・乾燥前と比べて栄養価が「増えている」という訳ではありませんが、水分が抜けているために、重さあたりの栄養素量は大きくなります。
栄養価が著しく高い食品はそのまま食べられない場合も
しかし、水分が少なく乾燥した食品の場合、調理による水分や、消化管内の水分を吸収して膨張することが多く、「栄養価が著しく高く見える食品=実際には少量しか食べられない食品」であることが多いです。
例えば、切干大根の場合、乾燥状態のまま食べることはほとんどありません。
水戻しを行い、煮物などにすることがほとんどですが、この際に水分を吸収して4倍程度に重量が変化します。
また、海苔やきな粉など、乾燥状態のまま食べる食品もありますが、これらは食べた後おなかの中で水分を含んで膨張するため、あまり多くは食べられません。
水分を含んだ野菜を100g食べることは容易でも、乾物では調理などによって数倍から数十倍に膨張することがあります。
調理前の状態で栄養価を考えても、食べるときには現実的ではない量になってしまう、といったことがおこります。
一回に食べる量で考えると間違いが少ない
肉と肉、野菜と野菜のように調理によってカサや重さの変化に大きな差がない食材同士を比べる場合は重さあたりで比べることもできます。
しかし、乾物や調味料類、香辛料、油脂類などは1度に食べる量がもともと少ないため、肉類や野菜類と比べるのは難しい食品です。
そのため、単純な重さではなく、1食当たりに使う量で比べる考え方もあります。
例えば、切干大根とゴボウの栄養価を比較したい場合、水分量や調理による重量変化率が異なるため、乾燥状態の切干大根と生のゴボウの栄養価を比較するのはあまり良い比較とは言えません。
調理後に同じ重さになる調理前の重さ、で比較すると間違いが少なくなります。
まとめ
世の中には様々な健康情報が流れていますが、摂取可能な量や、比較条件を考慮しないものも少なくありません。
いくら栄養素が豊富に、高濃度に含まれていたとしても、摂取可能な量が少ないのであれば、大きな意味を持たないという場合も多くあります。
海苔についていえば、一度に食べられる量を考慮すると、栄養素の摂取を目的として海苔を食べることはあまり現実的ではなさそうです。
あまりたくさん食べては消化管内の水分を吸収して膨らみ、腸管に悪影響を及ぼすことも考えられます。
海苔は栄養価の高い食材というのは間違ってはいませんが、おいしい食材のひとつとして選ぶのがよいのでは、と考えます。
海苔と同じ海藻類のわかめについて詳しく解説した記事はこちら
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参考文献 文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」 厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書 五訂増補 調理のためのベーシックデータ. 女子栄養大学出版部, 2009.6 |