投稿日: 2020.08.21 | 最終更新日: 2023.07.27

サラダ油をオリーブオイルに変えると健康的?栄養面での違いを解説

  • Facebook
  • Twitter
  • はてなブックマーク
オリーブオイル

「オリーブオイルは健康的な油」とよく言われています。
対して、「オリーブオイルではない普通の油」のイメージとしては、サラダ油が思い浮かびやすいのではないでしょうか?

では、普段使っているサラダ油をオリーブオイルに変えると健康的といえるでしょうか?
それぞれの油の性質から、比較してみましょう。

オリーブオイルとサラダ油の違い

「サラダ油」とは精製度の高い植物油を指します。
原料は菜種、大豆、ひまわり、トウモロコシなど幅広いですが、日本では菜種油(キャノーラ油など)や菜種油と大豆油を混合したものが一般的です。

今回は大豆油と菜種油を1:1で混合した調合油と菜種油を「サラダ油」として、オリーブオイルと比較します。

エネルギー(カロリー)を比較してみる

エネルギー たんぱく質 脂質 炭水化物
オリーブオイル 921kcal 0g 100.0g 0g
調合油(大豆:菜種=1:1) 921kcal 0g 100.0g 0g
菜種油(キャノーラ油) 921kcal 0g 100.0g 0g
100gあたり、食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)より作成

オリーブオイル、調合油、菜種油のいずれも100%脂質からなり、重さあたりのエネルギー(カロリー)は同じです。
よって、オリーブオイルに変えたからと言って、特に低カロリーで済むから健康的…ということはありません。

健康へ与える影響が変わるとすれば、脂質の中身である「脂肪酸組成」によるものと考えられそうです。

脂肪酸とは?脂肪酸組成とは?

トリグリセリドの組成

「脂肪酸」とは、脂質の構成成分のひとつで、構造によって体内での影響が異なることが知られています。
不純物の少ない油脂においては脂肪酸組成が最も大きな違いとなるため、「健康にいい」「健康に悪い」といわれる違いは脂肪酸組成の違いによるものといえます。

脂肪酸の健康への影響

脂肪酸はその構造によって飽和脂肪酸・一価不飽和脂肪酸・多価不飽和脂肪酸に分けることができます。

「健康」にかかわる影響としては、それぞれの脂肪酸の摂取量や摂取比率によって、血中LDLコレステロール値や血管系の病気の発症率などに対しての作用が異なることがわかっています。

  • 飽和脂肪酸
    摂取量を増やすと血中LDLコレステロール濃度を上昇させる*1)*2)*3)*4)

  • 一価不飽和脂肪酸
    摂取量を増やしても血中LDLコレステロール濃度に影響しない*2)
    飽和脂肪酸に対して摂取量が多いと循環器疾患死亡率が低くなる傾向がある*1)*5)

  • 多価不飽和脂肪酸
    摂取量を増やすと血中LDLコレステロール濃度を低下させる*2)
    飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸に置き換えると冠動脈疾患の発症率が低下する*1)*6)

健康にいい油とは?

特定の食品が健康にいいかどうか、というのは、たくさんのものさしがあるため一概に判断することはできません。

しかし、「血中LDLコレステロール値を上げず、血管系の疾患につながりにくい」ということを「健康にいい」とすれば、「健康にいい油」というものは

  • LDLコレステロール値を上げやすい飽和脂肪酸が少ない

  • LDLコレステロール値に影響しにくい一価不飽和脂肪酸やLDLコレステロール値を下げる働きを持つ多価不飽和脂肪酸などの不飽和脂肪酸が多い

といった特徴を持つもの、と考えることができそうです。

ただし、「健康にいい」というのは、あくまで適正量の範囲で、同じ量を使った場合。
どの油であってもエネルギーはありますし、摂りすぎは摂取エネルギーの過剰から肥満を招き、健康を脅かすことにつながりますので、摂取量は気を付けたいですね。

オリーブオイルとサラダ油の脂肪酸組成を比較してみよう

植物油の脂肪酸組成

飽和脂肪酸 一価不飽和脂肪酸 多価不飽和脂肪酸
オリーブオイル 13.29g 74.04g 7.24g
調合油(大豆:菜種=1:1) 10.97g 41.10g 40.94g
菜種油(キャノーラ油) 7.06g 60.09g 26.10g
脂質100gあたり、食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)より作成

オリーブオイルとサラダ油である調合油・キャノーラ油を比較すると、いずれも飽和脂肪酸よりも不飽和脂肪酸が多い特徴があります。
細かく見れば、飽和脂肪酸はサラダ油とのほうがやや少なく、多価不飽和脂肪酸に関してはサラダ油のほうが多いことがわかります。

脂肪酸組成からみた場合、オリーブオイルよりもサラダ油のほうがより血中LDLコレステロールを上げにくい(下げるはたらきのある)「健康的な油」と考えられそうです。

そのため、サラダ油をオリーブオイルに置き換えても、「健康的かどうか」というと、あまり利点はなさそうです。

オリーブオイルが健康的…というのはうそ?

脂質を含む食材

では、「オリーブオイルが健康的な油」というのは間違った情報なのか、というと、そうではありません。
日本で最も一般的な油ともいえるサラダ油と比較するとあまりぱっとしませんが、そのほかの油脂(バターなどの乳脂肪、肉の脂、魚の脂、その他の植物油など)と比較すると、また違った評価になります。

バターや肉類の脂身と比較すると「健康的」といえそう

オリーブオイルやサラダ油などの油脂は、植物からとれたものですが、バターや牛脂は動物の肉や乳からとれたものであり、脂肪酸組成も大きく異なります。

動物性油脂の脂肪酸組成

飽和脂肪酸 一価不飽和脂肪酸 多価不飽和脂肪酸
オリーブオイル 13.29g 74.04g 7.24g
バターの脂質 62.31g 22.19g 2.64g
牛脂 41.05g 45.01g 3.61g
脂質100gあたり、食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)より作成

バターや牛脂のような動物性脂肪と比較すると、オリーブオイルは飽和脂肪酸は少なく、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸が多い「健康的な油」といえそうです。

余談:動物性脂肪すべて悪/植物性がすべて善とは限らない

余談ですが…
植物油は不飽和脂肪酸を多く含む傾向があるものの、植物性油脂がすべて飽和脂肪酸が少ないということはなく、また、動物性油脂がすべて飽和脂肪酸を多く含むということはありません。

例えば、ココナッツの実からとれるココナッツオイルは飽和脂肪酸が多いことが知られており、また、魚は多価不飽和脂肪酸(DHAやEPAが有名)が多いという特徴があります。

ココナッツオイル、魚の脂肪酸組成

飽和脂肪酸 一価不飽和脂肪酸 多価不飽和脂肪酸
オリーブオイル 13.29g 74.04g 7.24g
ココナッツオイル 83.96g 6.59g 1.53g
銀鮭(生)の脂質 17.97g 38.06g 29.23g
脂質100gあたり、食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)より作成

このように、植物油=健康的というイメージが当てはまらない場合もあるので、注意が必要です。

「健康的な油」オリーブオイルは「何とチェンジするか」がポイント

パンとオリーブオイル

オリーブオイルは少なくとも健康を害するようなものではなく、どちらかといえば健康的な油に分類されるのは確かですが、「どの油よりも圧倒的に健康的」というようなものではありません。

オリーブオイルを活用するのであれば、使いどころを見極めるのが大事なポイントとなります。

サラダ油とオリーブオイルはお好みで使い分けてOK

脂肪酸組成にさほど違いはないため、置き換えて使ってもあまり大きな差はありません。
サラダ油が使いやすいものにはサラダ油を、オリーブオイルの風味を生かしたいものはオリーブオイルを…という風に、どちらをつかっても問題ありません。

バターや肉の脂身と置き換えて使う方法が◎

バターや牛脂といった飽和脂肪酸が多い油脂は「使ってはいけないもの」ではありませんが、日常的な摂取量が多い場合や健康診断でコレステロールについて指摘を受けた人については、摂取量を減らすように心がけたいところです。

肉の脂身など、食材に含まれる油は取り除きにくいため、脂身の少ない部位を選ぶといった方法がより簡単ですが、バターなど、油脂単体として使うものはオリーブオイルを代用しやすいポイントです。

バターを例に考えると、パンに塗ったり、料理に使うシーンでオリーブオイルを代用するのは健康的な使い方といえるでしょう。

まとめ:摂取量に注意しながら取り入れましょう

オリーブオイルはそのものの健康効果というよりも「どの油と置き換えて使うか」が重要です。

しかし、「健康的なオリーブオイルを取り入れよう」とするあまり、油の摂取量が過剰になったり、摂取エネルギーが増えすぎて肥満を招いては本末転倒。

適切な摂取量に気を付けながら、上手に取り入れていきたいですね。

オリーブオイルの健康・ダイエット効果について詳しく解説した記事はこちら

【消費カロリー管理に便利】スマートウォッチのおすすめ商品ランキングのページはこちら

【おすすめ】普段のお水をよりおいしく・健康的に!浄水器のご紹介

浄水器のおすすめ商品ランキングのページはこちら

浄水器おすすめ10選

参考文献

一般社団法人日本植物油協会ホームページ「植物油の基礎知識 植物油とJAS制度」

文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」

*1)厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書

*2)mensink R P, M B Katan. Effect of dietary fatty acids on se-rum lipids and lipoproteins: A meta-analysis of 27 trials. Arterioscler Thromb 1992; 12: 911-9.

*3) Keys A, Parlin RW. Serum cholesterol response to changes in dietary lipids. Am J Clin Nutr 1966; 19: 175─81.

*4)Hegsted DM, McGandy RB, Myers ML, et al. Quantitative effects of dietary fat on serum cholesterol in man. Am J Clin Nutr 1965; 17: 281─95.

*5) Schwingshackl L, Hoffmann G. Monounsaturated fatty acids, olive oil and health status: a systematic review and meta-analysis of cohort studies. Lipids Health Dis 2014; 13: 154.

*6) Jakobsen MU, OʼReilly EJ, Heitmann BL, et al. Major types of dietary fat and risk of coronary heart disease: a pooled analysis of 11 cohort studies. Am J Clin Nutr 2009; 89: 1425─32.

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。