豚肉はお肉の中でも比較的手に取りやすい価格で、どんな味付けにも合うためとても使いやすい、便利な食材のひとつ。
とても身近な食材ですが、栄養面でも特徴のある食品です。
豚肉の栄養価と部位による違い、栄養バランスよく食べるポイントを紹介します。
豚肉全般の栄養価
豚肉に含まれる栄養素のうち、代表的なものは以下の栄養素が挙げられます。
- たんぱく質
- ビタミンB1
それぞれについて詳しく解説します。
たんぱく質
豚肉の主成分は(部位によっても異なりますが)たんぱく質です。
豚肉を含む肉類全般は、質のよいたんぱく質を摂取するのに最適の食品です。
たんぱく質の「質」を示すものとして、人が体内で作ることができない「必須アミノ酸」をどれだけバランスよく含んでいるかを示す「アミノ酸スコア」という指標があります。
豚肉をはじめとした肉類・魚類・卵・牛乳などのアミノ酸スコアは100で、タンパク質の摂取源としては理想的な食品です。
鶏肉(皮付きもも) | 豚肉(肩ロース) | 牛肉(肩ロース・輸入) | |
エネルギー | 204kcal | 253kcal | 240kcal |
たんぱく質 | 16.6g | 17.1g | 17.9g |
脂質 | 14.2g | 19.2g | 17.4g |
炭水化物 | 0g | 0.1g | 0.1g |
*)100gあたり、文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より作成
ビタミンB1が豊富
たんぱく質のほか、豚肉はビタミンB1、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンB12が豊富に含まれているのが特徴です。
- ビタミンB1…糖質エネルギーの代謝に関与
- ナイアシン…炭水化物、たんぱく質、脂質のエネルギー代謝に関与
- ビタミンB6…たんぱく質・アミノ酸の代謝と免疫系の維持に関与
- ビタミンB12…赤血球のヘモグロビン産生に関与
中でも、豚肉に特に多く含まれているビタミンが、「ビタミンB1」です。
ビタミンB1は「糖質(≒炭水化物)のエネルギー代謝」に関与しているビタミンです。
たとえて言うならば、ごはん(糖質)だけを食べていても、ビタミンB1がなければ体がエネルギー源として使えないということ。
かつて日本ではビタミンB1不足による欠乏症「脚気(かっけ)」がよくみられていました。
脚気とは: ビタミンB1の欠乏症であり、倦怠感や食欲不振、むくみ、低血圧や麻痺などの症状を示す。 |
糖質の摂取量が多くなったり、運動などでエネルギー消費が大きい人ではビタミンB1の必要量が増えることが分かっています。
食品名 | ビタミンB1含有量 | 1食あたり含有量 |
豚ヒレ(生) | 1.32㎎/100g | 1.98㎎(カツ1人前:150g) |
豚バラ(生) | 0.51㎎/100g | 0.41㎎(炒め物1人前80g) |
たらこ(生) | 0.71㎎/100g | 0.04㎎(1切れ:5g) |
ごま(いり) | 0.49㎎/100g | 0.01㎎(小さじ1:3g) |
玄米(生) | 0.41㎎/100g | 0.31㎎(1/2合:75g) |
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
豚肉はグラムあたりで比べても、1食に使う量で比べてもトップレベル。
含有量が多いうえに1回に使う量も少なくないため、優秀な摂取源といえますね。
豚肉に特徴的なビタミンB1は主に「赤身部分」に存在します。
そのため、ビタミンB1は「赤身の割合が多い部位」ほど多く含まれています。
具体的には、ヒレやモモにはビタミンB1が豊富。(ヒレ=1.32㎎/100g、脂身付きモモ=0.90㎎/100g)
反対に、ばら肉などの脂身が多い部位はあまり多くはありません。(バラ=0.51㎎/100g)
とはいえ、どの部位を選んでもすべての食品の中では豊富に含まれているといえるレベルなので、食事メニューに合わせて選んでOKです。
鶏肉・牛肉との違い
同じ肉類でも、豚肉と鶏肉・牛肉では含まれている栄養素にも違いがあります。
鶏肉(皮付きもも) | 豚肉(肩ロース) | 牛肉(肩ロース・輸入) | |
ビタミンB1 | 0.10mg | 0.63g | 0.07mg |
ビタミンA | 40㎍RAE | 6㎍RAE | 10㎍RAE |
ビタミンK | 29㎍ | 2㎍ | 5㎍ |
鉄分 | 0.6mg | 0.6mg | 1.2mg |
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
鶏肉や牛肉と比較すると、豚肉はビタミンB1が豊富に含まれています。
ビタミンB1は炭水化物をエネルギーとして利用するのに必要なビタミンで、ビタミンB1が足りないと糖質を摂取してもうまくエネルギーになりません。
ビタミンAやビタミンKについては鶏肉が、鉄分に関しては牛肉に比較的多く含まれており、これらの点では鶏肉や牛肉にも優れた面があります。
豚肉は栄養価の高い食品ですが、鶏肉や牛肉もまんべんなく取り入れるのが望ましいですね。
豚肉の部位別の栄養価の特徴
ひとくちに「豚肉」といっても、モモやバラなど、部位によって栄養価も味わいも異なります。
豚肉の部位ごとに栄養成分を調べてみました。
ヒレ・モモ
豚ヒレ肉 | 豚もも肉 | |
エネルギー | 130kcal | 183kcal |
たんぱく質 | 22.2g | 20.5g |
脂質 | 3.7g | 10.2g |
炭水化物 | 0.3g | 0.2g |
ビタミンB1 | 1.32mg | 0.90mg |
ビタミンA | 3㎍RAE | 4㎍RAE |
鉄分 | 0.9mg | 0.7mg |
*)100gあたり、文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より作成
ヒレやモモは脂質が少なく低カロリーな部位です。
赤身が多いためビタミンB1が豊富な特徴もあります。
バラ
豚バラ肉 | |
エネルギー | 395kcal |
たんぱく質 | 14.4g |
脂質 | 35.4g |
炭水化物 | 0.1g |
ビタミンB1 | 0.51mg |
ビタミンA | 11㎍RAE |
鉄分 | 0.6mg |
*)100gあたり、文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より作成
バラは1/3を脂質が占める高カロリーな部位です。
赤身の割合が低いため、ビタミンとたんぱく質は少なめです。
ロース・肩ロース
豚肩ロース肉 | 豚ロース肉 | |
エネルギー | 253kcal | 263kcal |
たんぱく質 | 17.1g | 19.3g |
脂質 | 19.2g | 19.2g |
炭水化物 | 0.1g | 0.2g |
ビタミンB1 | 0.63mg | 0.69mg |
ビタミンA | 6㎍RAE | 6㎍RAE |
鉄分 | 0.6mg | 0.3mg |
*)100gあたり、文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より作成
ロース、肩ロースは豚肉の中では中間的な肉質で、赤身と脂身のどちらも存在する部位です。
平均的な栄養価の部位と考えるのがよいでしょう。
レバー
レバー | |
エネルギー | 128kcal |
たんぱく質 | 20.4g |
脂質 | 3.4g |
炭水化物 | 2.5g |
ビタミンB1 | 0.34mg |
ビタミンA | 13000㎍RAE |
鉄分 | 13.0mg |
*)100gあたり、文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より作成
レバーは肝臓にあたります。
他の部位と異なる組織となっているため、栄養価も異なります。
ビタミンB1は少ないものの、ビタミンAや鉄分が突出して多いのが特徴です。
こま切れ肉
名のついた部位と合わせて、お肉売り場で見かけることの多い「こま切れ肉」ですが、栄養価を考える上では決まった特徴があるものではありません。
こま切れ肉に関して、どこの部位を使うといった決まりはなく、お店によってもさまざまであるため、同じ「こま切れ肉」とはいってもエネルギーや栄養素にはかなり幅があると考えられます。
こま切れ肉を買うときはお好みや目的とする栄養素に合わせて、もも肉に近いもの、バラ肉に近いものをそれぞれ選ぶのがよさそうですね。
利点を生かす部位の選び方・使い方
豚肉は部位によって肉質が異なるため、味や栄養価に差があります。
豚肉の各部位の利点を活かす選び方と使い方を紹介します。
ダイエットにはヒレ・モモ
ダイエットの観点では、カロリーの低い食材選びがポイントとなります。
豚肉のうち、脂質が少なくエネルギーが低い部位はヒレとモモ。
かたまりでもやわらかく、食味に優れているのはのはヒレですが、価格面でコスパがいいのはモモです。
モモは塊では固くなりやすいのが難点ですが、薄切りにしたり、しっかり煮込むと食べやすくなりますよ。
ジューシーな部位はバラ
やわらかくジューシーなお肉がお好みであれば、おすすめはバラ肉です。
その一方でバラ肉は脂身が多くエネルギーも高め。ダイエット中にはあまりオススメではありません。
カロリーや脂質の量が気になる場合は量を控えたり、脂を落とす調理法を選んだりといった工夫ができるとよいでしょう。
鉄分重視ならレバー
レバーは鉄分も多く女性にはうれしい部位です。
その一方、実は摂りすぎに注意が必要な「ビタミンA」も多いのが特徴です。
栄養素は豊富ですが、一度にたくさん食べたり、毎日食べたりするのは避けたほうが安心です。
ニンニクでビタミンB1の吸収率アップ
豚肉とにんにく・ニラの組み合わせは元気の出る味で、しばしば「スタミナメニュー」となっていますが、実は栄養面でも理にかなった組み合わせとして知られています。
豚肉に豊富なビタミンB1は、炭水化物をエネルギーにするはたらきを助け、炭水化物を豊富に含むごはんと一緒に食べることで効果を発揮します。
また、にんにくやニラに含まれている「アリシン」という成分にはビタミンB1と結合し、体内に吸収しやすくしてくれるはたらきがあります。
豚肉のビタミンB1を助けるにんにく・ニラのアリシンと、エネルギー源となる炭水化物をとることで、体は炭水化物のエネルギーをより使いやすい状態になります。
元気を出したいときに豚肉・にんにく・ニラが入ったスタミナメニューを食べるのは、正解だったといえますね!
にんにくの栄養価について詳しく解説した記事はこちら
栄養バランスが整う組み合わせ
豚肉は栄養素に富んだ食材ではありますが、それだけでは栄養バランスとしては不十分。
豚肉ばかり食べていては摂取する栄養素が偏ってしまうため、それを補う食品と一緒に食べるのがおすすめです。
具体的には、以下のような点を意識するとよいでしょう。
- 主食や副菜を加えた定食メニューの一部として取り入れる
- 同じたんぱく源では鶏・牛・魚など、バリエーションのひとつとして採用する
主食・副菜を加えた定食メニュー
豚肉だけでは補えない栄養素としては、
- 穀類などに含まれる炭水化物、
- 野菜や果物に含まれる食物繊維やビタミンC
が代表的です。
これらの栄養をを補うためには、
- 炭水化物が豊富な食品…ごはんやパンなど(食物繊維も比較的豊富です)
- 食物繊維が豊富な食品…野菜類、海藻類、キノコ類など
- ビタミンCが豊富な食品…野菜類、果物類
このような食材をとり合わせて食べるのがおすすめです。
ごはんやパンなどの主食に豚肉のおかず、野菜のおかずなどを組み合わせた「定食メニュー」は、不得意分野を補い合うバランスの取れた食事にしやすいです。
その他のたんぱく源となる食品とローテーションを組むとよい
豚肉はたんぱく質源であり、ビタミンも豊富に含む食材ではあるものの、ほかのたんぱく源に比べて圧倒的に健康に良いというものではありません。
たんぱく質源となる食品には鶏肉、牛肉、魚介類、たまご、乳製品などが挙げられますが、それぞれ異なる点で魅力のある食品です。
豚肉だけに偏らず、いろいろな食品をとるのが健康的な食生活といえます。
豚肉活用レシピ
豚肉をより簡単に食事に取り入れられる、電子レンジ調理や短時間調理でできる豚肉のレシピを紹介します。
たっぷり野菜と組み合わせることで栄養バランスもアップ。
メイン料理として、ごはんと一緒に食べてくださいね。
豚肉と豆苗のレンジ蒸ししゃぶ
【材料】2人分
豚もも肉 | 200g |
豆苗 | 1パック(85g) |
白菜 | 2枚(150g) |
酒 | 大さじ2(30g) |
顆粒中華だし | 小さじ2(5g) |
ポン酢 | 大さじ2(30g) |
【作り方】
1. 豆苗は根元を切り、半分の長さに切る。白菜は5㎝幅に切る。
2. 耐熱の皿に白菜を敷き詰め、豆苗、豚肉も重ねて敷き詰める。
3. 中華だし、酒を振りかけてラップをし、電子レンジ600Wで6分加熱する。
4. 豚肉に火が通ったらポン酢をかける。
【栄養価】
1人分234kcal たんぱく質23.6g ビタミンC 34mg
お肌のコラーゲンのもとになるたんぱく質を豚肉から、コラーゲン合成を助けるビタミンCを豆苗からとれるメニューです。
電子レンジで蒸すことでダイエット中にもうれしい低エネルギー(カロリー)メニューです。
スタミナ豚ニラ炒め
【材料】2人分
豚肩ロース肉(薄切り) | 200g |
もやし | 1袋(200g) |
ニラ | 1/2束(50g) |
にんにく | ひとかけ(5g) チューブでも可 |
鷹の爪 | ひとつまみ(1g) ラー油少々でも可 |
ごま油 | 大さじ1(12g) |
塩 | ひとつまみ(0.5g) |
こしょう | 2~3ふり |
醤油 | 大さじ2(30g) |
砂糖 | 小さじ2(8g) |
酒 | 大さじ1(15g) |
みりん | 小さじ2(10g) |
片栗粉 | 小さじ1(5g) |
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
【作り方】
1. にんにくはすりおろしかみじん切りにする。にらは5㎝幅に切る。調味料は混ぜておく。
2. フライパンにごま油、にんにく、鷹の爪を入れて熱し、香りが出たら豚肉を加えて炒める。
3. 豚肉の色が変わったらもやしとニラを加え、塩コショウを振る。
4. 全体がなじんだら調味料を加え、煮立ってとろみがついたらできあがり。
【栄養価】
1人分387kcal たんぱく質20.6g ビタミンB1 0.70mg
糖質をエネルギーに変えるビタミンB1が豊富な豚肉、
ビタミンB1の吸収をよくするアリシンを含むにんにくとニラを合わせたスタミナ炒めです。
ごはんに乗せるのもおすすめです。
【レシピ動画紹介】豚バラえのきと豆苗のレンジ蒸し
【材料】 2人分
豚バラ薄切り肉 | 150g |
えのきたけ | 1袋(200g) |
豆苗 | 1パック(85g) |
めんつゆ(2倍濃縮) | 大さじ3 |
ごま油 |
【栄養価】
1人分414kcal たんぱく質16.6g 脂質33.8g 炭水化物13.4g ビタミンC22㎎
→豚もも肉の場合 255kcal たんぱく質21.2g 脂質14.9g 炭水化物13.5g ビタミンC22㎎
風味豊かな中華めんつゆバージョンです。
肌の細胞の材料として、豚肉からたんぱく質とビタミンB1が、豆苗からビタミンCが取れます。
動画では豚バラになっていますが、脂質が多めになってしまうので豚もも肉で作るのがおすすめ。カロリーも1/3ほどカットできます。
まとめ
豚肉はたんぱく質源としてのほか、一部のビタミンもとれる食材です。
部位ごとの特徴を生かしながら、健康的な食生活に役立ててくださいね。
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参考文献 文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」 吉田勉 監修:「わかりやすい食品機能栄養学」.三共出版,2010. |