きのこは身近な食材のひとつですが、すべてのきのこのうち、食用になるのはほんの一部。
日本国内だけでも4000~5000種が存在するといわれていますが、食べることができるのが分かっているものは数百種類、人工栽培が可能でスーパーなどで購入することができものは数十種類ほどといわれています。
まだまだ未知の部分が多い食材でもありますが、どんな栄養素が含まれているのでしょうか?
Contents
きのこ類全般に含まれる栄養素
スーパーなどで手軽に手に入るきのこはほとんど人工栽培によるもの。
えのきたけ・しいたけ・ぶなしめじ・なめこ・ひらたけ・エリンギ・マッシュルームなどが人工栽培で育つきのこです。
マツタケやトリュフといったきのこは人工栽培がまだ不可能であるため、手に入りにくく、高級食材として知られています。
きのこ類の栄養成分値(100gあたり)
スーパーなどで手軽に手に入る種類のきのこについて、100gあたりの栄養成分値は以下の通りです。
えのき | しいたけ | ぶなしめじ | なめこ | ひらたけ | エリンギ | マッシュルーム | |
エネルギー | 22 kcal | 19 kcal | 18 kcal | 15 kcal | 20 kcal | 19 kcal | 11 kcal |
水分 | 88.6 g | 90.3 g | 90.8 g | 92.1 g | 89.4 g | 90.2 g | 93.9 g |
たんぱく質 | 2.7 g | 3.0 g | 2.7 g | 1.8 g | 3.3 g | 2.8 g | 2.9 g |
脂質 | 0.2 g | 0.3 g | 0.6 g | 0.2 g | 0.3 g | 0.4 g | 0.3 g |
炭水化物 | 7.6 g | 5.7 g | 5.0 g | 5.4 g | 6.2 g | 6.0 g | 2.1 g |
食物繊維 | 3.9 g | 4.2 g | 3.7 g | 3.4 g | 2.6 g | 3.4 g | 2.0 g |
カリウム | 340 ㎎ | 280 ㎎ | 380 ㎎ | 240 ㎎ | 340 ㎎ | 340 ㎎ | 350 ㎎ |
*1)文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より作成 |
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
エネルギー(カロリー)が低い
きのこはどの品種も水分が90%程度を占め、さらにエネルギー源となる栄養素も半分程度しか利用されないと考えられています。
(今回紹介したきのこ類のエネルギーは人体での利用効率が考慮されている数値です)
そのため、きのこ類は総じて低カロリーな食材といえそうです。
食物繊維が豊富
きのこに含まれる3大栄養素(炭水化物、たんぱく質、脂質)のうち、炭水化物が比較的多く含まれていますが、その大部分が食物繊維であることも特徴です。
食物繊維というと野菜類のイメージが強いですが、実はきのこは野菜を超える量の食物繊維を持つものも。
きのこの中でも特に食物繊維が豊富なのはきくらげやしいたけ、えのきたけです。
カリウムのよい摂取源
日本人がとりすぎる傾向にあるナトリウム(塩分)の排出を促してくれるカリウムは、主な摂取源としては野菜や果物が有名です。
きのこも野菜類に匹敵するほどカリウムが豊富です。
きのこ類の利点を生かした使い方
きのこは低カロリーで食物繊維・カリウムに富む食品ですが、どのような目的で使うのが良いのでしょうか?
ダイエット中の食材に
きのこ類はエネルギー源になりにくく、どの種類でもかなり低カロリーです。
そのため、食事からの摂取エネルギーを抑えたいダイエット中の人に特におすすめの食材です。
きのこならたくさん食べても摂取エネルギーに影響しにくいので、料理のカサ増しにたっぷり使うのがおすすめです。
栄養バランスの改善に
将来の生活習慣病リスク低下のためにも、摂取量を増やしたい栄養素のひとつが食物繊維です。
きのこ類は野菜や穀類と並んで食物繊維を豊富に含む食材であり、毎日の食事に接触的に取り入れたいもののひとつといえそうです。
しいたけの栄養素と健康機能
きのこ全般は以下のような栄養的特徴を持つ食品です。
- 低カロリー
- 食物繊維がとれる
- カリウムがとれる
数あるきのこの中でも、「しいたけ」はさらに「干しシイタケ」に加工されることで以下のような成分が増えることが知られており、さらに特徴のある食品となります。
- ビタミンD
- うまみ成分のグアニル酸
しいたけ、特に干ししいたけに特徴的な栄養素等について紹介します。
ビタミンD
ビタミンDは食事中のカルシウムの吸収と骨をつくる作用を促進するはたらき、体内で作られてしまったがん細胞の増殖を抑制するはたらきがある栄養素です。
しいたけなどのきのこの中にはこのビタミンDのもとになる「プロビタミンD」という成分が存在し、紫外線を浴びることでヒトの体内で利用できるビタミンDに変わることが知られています。
そのため、生のしいたけよりも干ししいたけでよりビタミンDが多くなっています。(天日干し・熱風乾燥など、製造方法によって大きく差があります)
現在、市販の干ししいたけのほとんどは紫外線のあたらない熱風乾燥が主流ですが、調理前に1時間程度日光に当てるだけでも、ビタミンDは7.5-24倍(光を当てる面の違いによる)に増えることが報告*2)されています。
ちなみに、日光によってビタミンDが増えるのは干ししいたけに限ったものではなく、生のしいたけでも1.5-3.5倍程度に増えることも報告*2)されています。
一方、人間も皮膚に紫外線が当たることで、体内でビタミンDを作り出しています。
しかし、冬場や梅雨などの日照時間の少ない時期や、ほとんど日光に当たらないような生活をしている人では、体内で作られるビタミンDが少ないことが予想されます。
体内で生成されるビタミンDの不足分を、干ししいたけや魚類などのビタミンDを豊富に含む食品を食べて補うことができます。
干ししいたけなど、長期の保存ができるものに関しては、日光にあててから時間がたっていても、6か月以内であれば60%以上は残る*3)ともいわれています。
干ししいたけを買ってきたら、天気のいい日にまとめて日に当てておいたり、使う前に日にあてる時間をつくることで栄養価を高めることができます。
グアニル酸
かつお節にはイノシン酸、昆布にはグルタミン酸といったうまみ成分が含まれており、これらの成分を煮出すことで「だし」として使われています。
しいたけを含むきのこにも「グアニル酸」といううまみ成分のもとになる「核酸」が含まれており、加熱する過程でグアニル酸に分解され、うまみ成分が増えることが分かっています。
しいたけなどのきのこ類にはグアニル酸が含まれていますが、生よりも乾燥させたもののほうが細胞が壊れているために成分が出てきやすい状態にあります。
生のしいたけではなく干ししいたけがだし取りに使われるのはこういった理由があるためです。
また、ゆっくり加熱することで、よりたくさんのグアニル酸がつくられるので、
- 干ししいたけを一度水で戻して成分が出入りしやすい状態にする
- グアニル酸がつくられやすいようにゆっくり加熱する
という方法がおすすめです。
おいしいきのこの選び方
栄養面ではカロリーが低く食物繊維やカリウムの摂取源として魅力的なきのこ。
きのこは鮮度が落ちるのが早いため、おいしく食べるためには新鮮なものを選ぶのがコツです。
カサの開き具合
軸と傘がしっかり分かれたいわゆる「きのこ型」のものに関しては、傘が開ききっていないこんもりとした形のものがおすすめです。
カサの裏のヒダ
きのこは鮮度が落ちると裏のヒダが茶色く変色することがあるため、なるべくヒダがきれいな状態のものを選びましょう。
マッシュルームに関しては、ヒダがもともと黒いものなので、特に問題はありません。
全体のハリ、湿り気
きのこは鮮度が落ちるとしんなり、湿ったようになってしまいます。
また、水分があるとさらに傷みやすいため、表面が湿っていないものを選ぶようにしましょう。
きのこをおいしく食べる調理のポイント
きのこは独特の代わりが魅力です。
香りを残しつつ、べちゃっとしないようにするのがポイントです。
なるべく洗わない
きのこの香り成分は水洗いをすると弱まってしまうので、水洗いは最小限に済ませましょう。
土のついたものやなめこは雑菌が比較的多いと考えられるため、さっと洗うのが望ましいですが、それ以外の人工栽培された多くのきのこは衛生的な環境で栽培されているため、実は洗わなくても料理に使えるものがほとんどです。
炒めるときは強火で
きのこは加熱しているとどんどん水分が出てきてしまいます。
炒め物ではべちゃっとした食感にならないよう、高温・短時間で仕上げるのがおすすめです。
生のまま冷凍保存もOK
きのこは鮮度が落ちやすいですが、新鮮なうちに石づきを取って食べやすいサイズに切り、冷凍しておくといつでも使うことができます。
凍ったまま炒め物やスープに使うことができます。
きのこの注意点
きのこは身近な食材である一方、注意が必要なポイントも。
疾病予防効果をうたう健康食品や、食中毒の恐れがある生食には注意が必要です。
生活習慣病やがん予防効果のウワサ
身近な食材であるきのこですが、きのこに含まれる特定の成分が健康増進や疾病予防に効果があるかも?という研究報告から、きのこそのものの健康効果が期待されているようです。
具体的には、以下のようなものが挙げられます。
- マイタケと抗がん作用
- シイタケの血中脂質改善作用
- ヤマブシタケのアルツハイマー予防効果
しかし、これらの研究はいずれも人での十分な効果は確認できておらず、研究はまだ発展途上の状態です。
残念ながら、現段階ではきのこを食べることでこれらの効果があるとは言えません。
新鮮でも生食はNG
野菜感覚で使うことが多いきのこですが、実は野菜とは違い、生で食べることはできません。
生のきのこ・非加熱のきのこの戻し汁を摂取して皮膚炎を発症したり、赤血球が破壊される場合もあります。
また、これらの作用は鮮度とは全く関係がないので、きのこに関して「新鮮だから生で食べられる」ということはほとんどありません。
きのこは十分に加熱して、おいしく食べてくださいね。
まとめ
きのこは摂取エネルギーを低く抑えながら、食物繊維の摂取源として、料理のカサ増しにも適した食品のひとつです。
通常の食事から外れた使い方には注意が必要ですが、健康的な食材として、上手に食事に取り入れていきたいですね。
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参考文献 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報(ヤマブシダケ、キノコキトサン、シイタケについて) *1)文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」 *2)竹内 敦子, 岡野 登志夫, 和田 知子, 須藤 都, 新谷 有美, 小林 正. 日光照射によるしいたけ中のビタミンD_2増量効果. ビタミン 65 (3), 121-124 (1991) *3)桐渕 壽子.紫外線照射条件の違いによるキノコのビタミンD2生成量の比較および保存中における変化 紫外線照射によるキノコ類の効果的利用 (第5報)日本家政学会誌,43巻7号(1992) |