投稿日: 2020.06.26 | 最終更新日: 2024.05.20

熱中症対策の水分補給に麦茶はダメ?麦茶の成分を熱中症予防の観点から解説

  • Facebook
  • Twitter
  • はてなブックマーク
麦茶

麦茶は暑い時期にぴったりの飲み物ですが、熱中症対策にも取り入れられるのでしょうか?

この記事では、麦茶の成分とその特徴をもとに、水分補給に麦茶を活用できるおすすめのシチュエーションを紹介します。
麦茶は熱中症対策にどこまで使えるのか、梅干しやハチミツを加えた場合の効果についても検討しますので、ぜひ参考にしてくださいね。

熱中症対策に麦茶はダメ?

ペットボトル飲料

熱中症対策に活用される飲み物にはいくつかありますが、その中でも麦茶はどの程度活用できるのでしょうか?

結論から言うと、麦茶は夏場でも比較的涼しい室内など、熱中症リスクの少ない環境での水分補給に適しています。
暑い屋外や汗をかく運動をするような、熱中症リスクの高い場面での水分補給には最適とは言えません。

以下から詳しく解説します。

夏場涼しい場所での水分補給に適している

熱中症対策において麦茶は涼しい場所での水分補給に適した飲み物です。
その理由は、下記のような麦茶の特徴によるものです。

  • 糖類は少なく低カロリー
  • カフェインを含まないため利尿作用がない

麦茶の成分は、ほぼすべてが水分です。そのほか、ごく微量のミネラルが含まれます。
清涼飲料水とは異なり、多量の糖類が含まれているものではないため、涼しい日や室内で過ごす際の「通常の水分補給」として、摂取量を気にせずに飲むことができます。

また、麦茶はカフェインを含まないため、誰でも・いつでも安心して飲めるのも魅力です。

カフェインには利尿作用があり、体内の水分を排出する働きがあるため、カフェイン入りの飲料は水分補給に効率的とは言えません。
また、個人差はあるものの、覚醒作用によって眠れなくなる場合もあるため、乳幼児や寝る前の飲用は避けたほうがよいことも。

カフェインを含む飲み物は、コーヒーのほか、チャの葉を原料とする緑茶・紅茶・ウーロン茶など。
これらの飲み物と比較すると、麦茶は効率の良い水分補給に適したものといえそうです。

健康維持のため1日に必要な水分量について解説した記事はこちら

夏場の屋外や運動時には不適

麦茶は涼しい日や室内で過ごすときの水分補給には適しているものの、熱中症リスクの高い状況では最適とは言えません。

その理由は、熱中症の予防や症状の緩和のためには、水分だけでなく、体から失われるミネラル(ナトリウム)や水分の吸収を助ける糖分が適度に含まれている必要があるためです。

一般的に水分補給に適しているといわれているスポーツドリンクや経口補水液と麦茶の成分組成、厚生労働省が推奨しているナトリウム濃度を比較しました。

麦茶
(成分表)
ミネラル麦茶
(市販)
スポーツドリンク
(市販)
経口補水液
(市販)
厚生労働省の目安
エネルギー 1kcal 0kcal 25kcal 7kcal
炭水化物(糖) 0.3g 0g 6.2g 1.8g
ナトリウム 1㎎ 12㎎ 47㎎ 80㎎ 40-80㎎

*100mlあたり

麦茶とスポーツドリンク・経口補水液では、糖やナトリウムの量に大きな違いがあります。

  • 麦茶にはナトリウムがわずかしか含まれていない
  • 麦茶には糖類もほとんど含まれていない

麦茶を飲むことで水分そのものは摂取できますが、ミネラル不足を補う働きはなく、ミネラル不足を伴うような熱中症リスクの高い状況では、麦茶が適しているとは言いにくいようです。
そのため、麦茶は熱中症リスクの高い環境では推奨されません。

熱中症のメカニズム

そもそも、熱中症はどのようなメカニズムで起こるのでしょうか?

熱中症は暑い環境で汗をかくことによる「脱水症状」「体内のミネラル不足」に加え、高温の環境にいることで生じる「体温の異常な上昇」などによっておこるさまざまな症状の総称です。

ヒトの体は暑い環境では汗をかいて体温を下げようとします。
汗をかくことによって体内の水分やミネラルが失われると、脱水症状やナトリウム不足の状態に陥り、さまざまな問題が生じます。

  • 脱水症状…血圧低下、めまい、頭痛、胃腸障害、倦怠感、脱力感
  • ナトリウム不足…手足がつったり動かなくなったりする
  • 過度の体温上昇…脳の中枢に障害、昏睡、けいれん、命の危険

熱中症のメカニズム

熱中症は軽い段階では脱水症状やミネラル不足による倦怠感や頭痛、めまいや吐き気、手足がつったりといった症状がみられます。
それに加え、体温が下がらず40℃を超えてしまった場合には、脳の機能にも影響が表れ、命が脅かされる危険性もあります。

熱中症を予防し、重症化を防ぐためには「水分補給」「ミネラル(塩分)補給」「体温を上げないこと」が重要です。

熱中症予防のポイント

熱中症の予防のためには「水分補給」「塩分補給」「体温を下げること」が重要です。

水分と塩分は飲み物や食事から、体温調整は空調などを活用することが大切です。

水分補給・塩分補給

熱中症の予防では暑い環境で汗をかくことで失われる水分と塩分の補給が重要なポイントです。

とはいえ、水分や塩分をやみくもにとればいいというわけではありません。
熱中症対策には「水分と塩分の最適なバランス」というものが存在し、特に熱中症リスクの高い環境では、このバランスが整った飲み物を選ぶことが重要です。

厚生労働省では、「(労働者の熱中症対策として)作業場所のWBGT値が基準値を超える場合には、少なくとも0.1~0.2%の食塩水(に相当する)、ナトリウム40~80㎎/100mlのスポーツドリンクまたは経口補水液等を、20~30分ごとにカップ1~2杯程度を摂取することが望ましい」*2)としています。(ナトリウム40-80㎎/100mlは食塩として0.1-0.2g/100ml)

脱水予防のための塩分バランス

ある程度幅はあるものの、水分とミネラル(ナトリウム)を同時に取り入れるには、適度な塩分濃度の飲料を適量飲むことが大事といえそうです。

補足:

WBGT値とは、湿球黒球温度のこと。暑さ指数ともいう。
気温だけでなく、湿度、輻射熱も考慮されている。
WBGT値で28度以上(気温としてはおおよそ31度以上)から厳重警戒レベルとなり、活発な活動をしなくても熱中症になる危険性があるとされています。*1)

さらに、適度な濃度の食塩水でも水分とナトリウムを補給することができますが、適量の糖が含まれていると体内への水分とナトリウムの吸収を助けてくれることが知られています。
スポーツドリンクや経口補水液には糖類も含まれており、より水分が素早く体に吸収されるような組成になっています。

体温を下げる

熱中症はそもそも暑い時期に体温が下がらないことが原因といえます。

室内ではエアコンなどを適切に使用することで、体温を上げないようにすることが大切です。

一方、エアコンのない屋外などでは、日陰などなるべく涼しい場所にいることを心がけましょう。
ハンディタイプの扇風機や保冷剤のような冷却グッズを活用し、なるべく体温が上がらないように工夫するとともに、なるべく早く涼しい場所に避難するようにしましょう。

様々な工夫をしても暑く汗をかく環境では、汗によって失われる水分とミネラル分を補給することも必要です。

塩や梅干し・ハチミツを加えた麦茶で熱中症予防ができる?

梅干しとはちみつを加えた麦茶

麦茶にはちみつと梅干しを加えることでナトリウムと糖を補えるという「うめはち麦茶」はテレビやネットで盛んに紹介されています。

はちみつと梅干しを加えることで塩分と糖分がプラスされれば、熱中症対策により良いものになるように思えますが、実際には水分補給に適した濃度にすることが難しいようです。

 

適正な濃度にするのが難しい

明確なレシピは定義されていないようですが、コップ1杯(150-200ml)の麦茶に対して梅干し1個(約15g)、はちみつ大さじ1(21g)を加えたものが一般的なようです。

100mlあたりの成分を経口補水液とスポーツドリンクの成分および厚生労働省の目安と比べてみましょう。

うめはち麦茶 スポーツドリンク
(市販)
経口補水液
(市販)
厚生労働省の
目安
エネルギー 38kcal 25kcal 7kcal
炭水化物(糖) 10.0g 6.2g 1.8g
ナトリウム 230㎎ 47㎎ 80㎎ 40-80㎎

*100gあたり

梅干しとはちみつを加えることで糖とナトリウムが補われたものの、水分に対して濃度が高く、ベストな内容とは言いにくそうです。

特に糖分に関しては、清涼飲料並みの量が含まれるため、熱中症対策のためといって飲みすぎるとかえってのどが渇き、ペットボトル症候群のような状態を引き起こす可能性も考えられます。

熱中症対策に適した濃度にするためのレシピ

水分補給のための糖分・ミネラルの濃度を考えると、梅干しやハチミツは少なくしたほうが良いようです。

厚生労働省が推奨している塩分濃度と、スポーツドリンクに近い成分組成にするためには、以下の配合にするのがおすすめです。

  • 麦茶…100ml
  • 梅干し(塩分濃度7~8%)…2g
  • ハチミツ…7g(小さじ1)
    …100mlあたりナトリウム61㎎、糖分(炭水化物)6.5g

子の配合でスポーツドリンクに近いものができますが、梅干しの塩分濃度によってさらに調整が必要なため、手間を考慮するとわざわざ「梅はち麦茶」を選ぶ必要性はなさそうです。

いずれにしても、水分・ミネラル補給の目的に対して麦茶+梅干し+はちみつである必要性はあまりなく、熱中症対策のためにはスポーツ飲料や経口補水液のほうがより簡単で確実な飲み物、といえますね。

まとめ

麦茶は夏場の普段使いの水分補給に適した飲み物です。

麦茶は過剰の糖分やカフェインが含まれていないため、飲む人・時間・量など、あまり気にせずごくごく飲むことができます。

しかし、塩分や糖分を含まないため、熱中症のリスクが高い環境・すでに熱中症の症状が出ているような場合には、最適な飲み物とは言えません。
麦茶の利点を生かすには、「日ごろの水分補給のため」という使い方が最良といえそうです。

熱中症対策と水分補給に適した飲み物・食べ物について詳しく解説した記事はこちら

【消費カロリー管理に便利】スマートウォッチのおすすめ商品ランキングのページはこちら

【おすすめ】麦茶づくりのお水をよりおいしく・健康的に!浄水器のご紹介

浄水器おすすめ10選

参考文献

文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」

厚生労働省:「職場における熱中症の予防について」

大塚製薬:「経口補水液 OS-1」

大塚製薬:「ポカリスエット 基本情報」

*1)環境省:「熱中症予防情報サイト 暑さ指数(WBGT)とは?」

*2)厚生労働省:「職場における熱中症予防対策マニュアル」

※横スクロールで表全体の確認が可能です。

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。