甘味料の中でも、自然由来で体に優しいイメージのあるはちみつ。
砂糖に比べて太りにくい、血糖値を上げにくいといったうわさもありますが、実際のところはどうなのでしょうか?
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はちみつと砂糖の原料・主成分はどう違う?
ハチミツと砂糖は、どちらも甘味料に属する食品で、様々な料理に使われていますが、原料や主成分にはどのような違いがあるのでしょうか?
砂糖=ショ糖を精製したもの。
砂糖、一般的に広く利用されている上白糖の原料は主にサトウキビやてん菜のしぼり汁に含まれる糖分(ショ糖)を濃縮・結晶化させて作ります。
主成分はショ糖(スクロース)といわれる糖類で、ブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)が一つずつ結合した二糖類です。
はちみつ=ブドウ糖と果糖がだいたい1:1
いっぽう、はちみつの原料は様々な花の蜜です。
ミツバチが花の蜜を採取し、体内の蜜胃というタンクにため、巣まで運んで貯蔵します。
ハチの羽ばたきなどによって花の蜜の水分を蒸発させて濃縮されたものがはちみつです。
花の蜜に含まれる主な糖質は砂糖と同じショ糖(スクロース)ですが、ハチが持つ分解酵素によってブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)に分解された「転化糖」といわれる状態になっています。
はちみつに含まれるブドウ糖と果糖の割合はおおむね1:1ですが、蜜源植物(蜜をとるもとの植物)の違いなどから、割合が異なる場合もあります。
また、はちみつは上白糖のように精製されていないため、蜜源植物の成分が混じることで色や風味、含有成分に差が表れます。
はちみつと砂糖を代用するとカロリーや栄養素はどう変わる?
「砂糖よりも低カロリーで太りにくい」
「砂糖より甘味が強いので少量で済んでヘルシー」
といわれるはちみつ。
実際に成分や栄養価の違いを調べてみました。
ハチミツと砂糖の栄養素のデータ
はちみつ | 砂糖(上白糖) | |
エネルギー | 64kcal | 81kcal |
水分 | 3.7g | 0.1g |
たんぱく質 | 0.1g | 0g |
脂質 | 微量 | 0g |
炭水化物 | 17.2g | 20.9g |
*21g(はちみつ大さじ1、砂糖大さじ2+小さじ1に相当)あたり |
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
同じ重さで比べるとはちみつは低カロリー
砂糖にはいくつかの種類がありますが、その中でも上白糖は水分や糖質以外の成分は限りなく0に近いのが特徴です。
いっぽうで、はちみつは花の蜜をミツバチが集めて水分を飛ばし、濃縮したものです。
そのため、はちみつは上白糖に比べると花粉などの不純物や水分が比較的多く含まれた状態です。
主成分は糖類という点は同じですが、水分の割合が異なるため、同じ重さで比較するとはちみつのほうが2割ほどエネルギーが低くなっています。
同じ体積で比べると、はちみつのほうがエネルギーは高い
しかし、はちみつと砂糖を比べた時、はちみつが粘度の高い液体であるのに対し、砂糖は粒子状と、大きな違いがあります。
同じ「大さじ1(15ml)」で比べると、はちみつは21g、砂糖(上白糖)は9g。
この場合のエネルギーを比較すると、
はちみつ | 砂糖(上白糖) | |
大さじ1の重さ | 21g | 9g |
大さじ1のエネルギー | 64kcal | 35kcal |
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
となり、はちみつのほうがよりエネルギーが高くなってしまいます。
はちみつのほうがカロリーが低いから、と大さじ1の砂糖を大さじ1のはちみつに代えてしまっては逆効果になってしまうので、注意しましょう。
同じ甘味で比べると、はちみつも砂糖もほとんど変わらない
「はちみつは甘味が強いから、砂糖よりも少なくて済み、摂取エネルギーを抑えられる」とも言われています。
砂糖(=ショ糖:スクロース)の甘味度を1とすると、
はちみつの成分であるブドウ糖:グルコースは0.64~0.74、
同じくはちみつの成分である果糖:フルクトースは1.15~1.73といわれています。*1)
数種のはちみつの甘味度を調べた研究では、ショ糖の甘味度を1としてはちみつは0.84~0.91の範囲にあったとのこと。*2)
はちみつの種類によってブドウ糖と果糖の比率が変わることや原料由来の酸味があることから、必ずしもこの範囲に収まるとは言えませんが、砂糖に比べて特別に甘味が強く、使用量が少なく済むということはないようです。
果糖は温度によって甘味度が変わる特性もありますので、冷たい状態で食べる場合にははちみつのほうが甘味を強く感じる、ということはありそうです。
砂糖をはちみつで代用するとやせる?
砂糖よりも健康的なイメージがあるはちみつですが、砂糖をはちみつに代えた場合、体重に差は出るのでしょうか?
糖質量をそろえた砂糖、果糖ブドウ糖液糖(いわゆるガムシロップ。清涼飲料によく使用される)、はちみつを含む飲み物をそれぞれ飲んだ試験では、いずれの場合でも体重や血糖値などの変化に違いはなかったようです。*3)
いずれの甘味料も糖質量が同じであれば摂取エネルギーも同じになります。
砂糖でも、はちみつでも、同じエネルギーに相当する量を食べるのであれば太る・太らないの程度は同じといえそうです。
はちみつは砂糖よりもビタミンやミネラルを多く含む?
はちみつは砂糖に比べるとビタミンやミネラルを豊富に含む、といわれます。
同じ甘味でも、ビタミンやミネラルといった微量栄養素が含まれているのであれば、体にいい、ともいえそうです。
では、実際はどうでしょうか?
はちみつ | 砂糖(上白糖) | 食事摂取基準 (18~74歳女性) |
|
エネルギー | 64kcal | 81kcal | – |
カリウム | 14㎎ | 0㎎ | 2600㎎以上(目標量) |
カルシウム | 1㎎ | 1㎎ | 650㎎(推奨量) |
亜鉛 | 0㎎ | 0㎎ | 8㎎(推奨量) |
ビタミンB1 | 微量 | 0㎎ | 1.1㎎(推奨量) |
ビタミンB2 | 0㎎ | 0㎎ | 1.2㎎(推奨量) |
ビタミンB6 | 0㎎ | 0㎎ | 1.1㎎(推奨量) |
ビタミンB12 | 0㎍ | 0㎍ | 2.4㎍(推奨量) |
ナイアシン | 0.1㎎ | 0㎎ | 11-12㎎(推奨量) |
*21g(はちみつ大さじ1、砂糖大さじ2+小さじ1に相当)あたり |
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
*日本食品標準成分表2015年版(七訂)、日本人の食事摂取基準(2020年版)より
砂糖はほぼ糖質のみで、ビタミンやミネラルといった微量栄養素は全く含まれていません。
いっぽう、はちみつはカリウムなどのミネラルやビタミンが含まれているようです。
しかし、その含有量は「豊富に含まれている」わけではなく、ごく微量です。
ビタミンやミネラルは含まれていることは間違いではありませんが、ほとんど意味のある量ではありません。
ビタミンやミネラルの含有量は、砂糖やほかの甘味料と比べてはちみつを選ぶ理由にはならないでしょう。
はちみつは砂糖よりもGI値が低くて血糖値を上げにくい・太りにくいって本当?
糖質をとると消化吸収されて血糖値を上げます。
食後の血糖値が急に上がったり、高い状態が続くと血糖値を調整するホルモンを分泌する膵臓に負担がかかり、インスリンの効きが悪くなって糖尿病になるリスクが高くなると考えられています。
はちみつは砂糖に比べると「グリセミック・インデックス(GI)」の値が低く、血糖値を上げにくいといわれています。
グリセミック・インデックス(GI)値とは?
グリセミック・インデックスとは、「一定量の炭水化物を含む食品」を食べた後の血糖値の上がり方を、血糖値を記録したグラフから得られる面積から求め、比較する方法です。
基本的にはブドウ糖(グルコース)を食べた時のグラフ面積を100として比較しますが、データによっては白パンや白米などを基準にしていることがあり、単純に比較できないため、注意が必要です。
基準となっている食品が違うとGI値が異なるため、GI値を比べるときは基準となる食品が同じかどうかを確認する必要があります。
血糖値とは?
血糖値とは、血中のブドウ糖の量を表します。
糖のうち、ブドウ糖は食事から吸収されるとダイレクトに血糖値を上げます。
果糖はブドウ糖とは異なる物質なので、吸収されてもすぐには血糖値に反映されず、肝臓に運ばれてブドウ糖に変換されてから血糖値を上げます。
基準となるブドウ糖は100%がブドウ糖なのに対し、
砂糖(ショ糖=スクロース)はブドウ糖と果糖がひとつずつ結合した二糖類で、
はちみつはブドウ糖と果糖が混ざり合った液体です。
はちみつや砂糖のGI値は?
砂糖やはちみつには血糖値をすぐには上げない果糖が含まれているため、それぞれGI値は
ブドウ糖を100として
砂糖65±4
はちみつ61±3
となっており*4)、砂糖とはちみつではほとんど違いはありません。
ブドウ糖のGI値=砂糖のGI値と勘違いしていると思われる情報も多く、砂糖よりも血糖値を上げにくいといわれることもありますが、GI値だけを見れば、砂糖にもはちみつにも大きな差はありません。
GI値が低いと太りにくい?
GI値が低い食品=太りにくい食品といわれますが、厳密にはこれは間違いです。
重さあたりのエネルギーが多い脂質(9kcal/g)はGI値は低いものの、取りすぎればだれもが知っている通り、肥満につながります。
また、果糖は血糖値を上げにくい糖質で、単体でのGI値は15となっていますが、肝臓でブドウ糖に変換され、エネルギーとしての余剰分は中性脂肪として蓄積されるため、「太らない」というものではありません。
GI値はあくまで「血糖値の上がり方」を比較するための数値ですので、「低GI食品=太らない」と考えるのは避けたほうがいいですね。
血糖値とダイエットの関係
近年、摂取エネルギーや消費エネルギーではなく、血糖値に着目したダイエット法が注目されています。
糖質制限ダイエットやケトジェニックダイエットがこれに当てはまります。
血糖値を上げるもの(=糖質)を食べなければ太らない・やせるという方法ですが、摂取カロリーが同じであれば糖質を制限しても、糖質を摂取しても体重の変化はほとんど変わらないと考えられています。
現時点でダイエットをするときに考えるべきは糖質だけの量や血糖値、GI値ではなく、消費エネルギーと摂取エネルギーの差が一番です。
GI値が高くても低くても、摂取カロリーと消費カロリーが同じであれば、体重の変化も変わらないと考えましょう。
はちみつは咳の改善に効果あり?
ダイエットや栄養価に関して、はちみつと砂糖にあまり違いはないといわざるを得ませんが、イスラエルで行われた研究ではちみつには「咳を改善する効果」がある可能性が示唆されています。*5)
メカニズムははっきりとはわかっていませんが、咳の出る風邪の時は、はちみつをなめたり、はちみつ入りの飲料を飲むことで咳が改善できるかもしれません。
はちみつに関して現在いえる健康効果は、「咳の改善」だけにとどまりそうです。
はちみつのダイエット効果について詳しく解説した記事はこちら→はちみつダイエットとは?夜寝る前のはちみつに痩せる効果はある?
まとめ
砂糖とはちみつには細かな違いはあるものの、カロリー、ビタミンやミネラルの含有量、血糖値への影響など、実質的にほとんど違いはないといえそうです。
使い道やお好みに合わせて、どちらも取りすぎには注意しながら適度に楽しむのがよさそうです。
はちみつの注意点
自然由来で健康的・体に優しい甘味料、というイメージがあるはちみつですが、1歳未満の乳児に食べさせてはいけないということはあまり知られていないかもしれません。
はちみつには強い毒素を出すボツリヌス菌が芽胞(熱や乾燥に強く、100℃数分間の加熱でも死滅しない状態)で含まれていることがあります。
1歳以上ではあまり心配のいらないものですが、1歳未満の乳児の腸内環境はボツリヌス菌が定着・繁殖しやすくなっており、腸内で毒素を産生して乳児ボツリヌス症を発症することがあります。
まれにではありますが命にかかわることもあるので、1歳未満の乳児にははちみつを与えないように気をつけましょう。
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参考文献 文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」 厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書 *1)前橋 健二. 甘味の基礎知識 日本醸造協会誌. 106巻 (2011) 12号 818-825. *2)綾部 園子, 本間 千裕, 松岡 寛樹. 蜜源の異なるはちみつの甘味度と嗜好性, 日本調理科学会大会研究発表要旨集. 23巻 (2011) 平成23年度日本調理科学会大会. セッションID D2p-18, 179. *3)Raatz SK, Johnson LK, Picklo MJ. Consumption of Honey, Sucrose, and High-Fructose Corn Syrup Produces Similar Metabolic Effects in Glucose-Tolerant and -Intolerant Individuals. J Nutr. 2015 Oct;145(10):2265-72. *4)Atkinson FS, Foster-Powell K, Brand-Miller JC. International tables of glycemic index and glycemic load values: 2008. Diabetes Care. 2008 Dec;31(12):2281-3. *5)Cohen HA, Rozen J, Kristal H, Laks Y, Berkovitch M, Uziel Y, Kozer E, Pomeranz A, Efrat H. Effect of honey on nocturnal cough and sleep quality: a double-blind, randomized, placebo-controlled study. Pediatrics. 2012 Sep;130(3):465-71. 農林水産省:「広報誌aff 2009年8月号 特集2 食材まるかじり「愛しのハニー」(1)」 |