りんごはほぼ一年を通して手に入りやすい身近な果物のひとつです。
おいしさだけでなく、含まれる栄養素や機能性成分が注目されています。
この記事ではりんごの栄養価や機能性成分について解説し、健康維持・増進に良いおすすめの取り入れ方を紹介します。
ぜひ日々の食事に活かしてくださいね。
りんご1個に含まれる栄養素と機能性成分
りんごはイギリスでは「1日1個のりんごは医者いらず」といわれることも。
りんごの大きさはばらつきがあるものの、1個200gほどです。
りんご1個200gには、以下のような栄養素が含まれています。
栄養素名等 | りんご(200g)あたりの含有量 |
カロリー | 106kcal |
水分 | 168.2g |
たんぱく質 | 0.2g |
脂質 | 0.4g |
糖質(炭水化物-食物繊維) | 28.2g |
食物繊維 | 2.8g |
カリウム | 240㎎ |
ビタミンC | 8㎎ |
文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」より作成
また、これらの主要な栄養素以外にも、さまざまな機能性成分が含まれていることが知られています。
それぞれの栄養素の特徴と、機能性成分について解説します。
カロリー
りんごの100gあたりのカロリーは53kcalで、1個200gでは106kcalとなっています。
りんごは食品全体から見ると比較的低カロリーな食品ですが、果物としては平均的なカロリーとなっています。
■主な果物類のカロリー(100gあたり)
食品名 | 100gあたりのカロリー |
バナナ | 93kcal |
キウイフルーツ(黄) | 63kcal |
ぶどう(皮なし) | 58kcal |
パイナップル | 54kcal |
りんご(皮なし) | 53kcal |
キウイフルーツ(緑) | 51kcal |
みかん | 49kcal |
ブルーベリー | 48kcal |
すいか | 41kcal |
メロン | 40kcal |
いちご | 31kcal |
文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」より作成
糖質
りんご1個200gには28.2gの糖質が含まれています。
りんごにたんぱく質や脂質はほとんど含まれておらず、おもな栄養素は炭水化物(糖質)です。
含まれる糖質は果糖、ショ糖(砂糖)、ブドウ糖が占めており、りんごの甘い味はこれらによるものといえます。
食物繊維
りんご1個200gに含まれる食物繊維は、2.8gとなっています。
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、1日あたりの摂取目標量は18~64歳の女性で18g以上、18~64歳の男性で21g以上とされています。
この量をりんごだけでまかなうことは難しいですが、食事にりんごを取り入れることで食物繊維の摂取量を増やすことに貢献できます。
カリウム
りんご1個200gからは、240㎎のカリウムが摂取できます。
カリウムは塩分(ナトリウム)の排出を促すミネラルで、十分な量を摂取することで塩分のとりすぎが原因のむくみや、高血圧の予防にもつながります。
りんごに含まれるカリウムの量は平均して多いとは言えないものの、日常的な摂取量の底上げに役立つといえます。
ビタミンC
りんご1個200gに含まれるビタミンCの量は、8㎎です。
ビタミンCは抗酸化作用を持つ栄養素で、血管、皮膚、骨などの健康維持に役立っています。
果物というとビタミンCが取れるイメージも強いですが、りんごに関してはあまり含まれていません。
ポリフェノール(プロシアニジン)
リンゴには「プロシアニジン」というポリフェノールの一種が含まれており、その機能性が注目されています。
プロシアニジンは一部でダイエット効果があるといわれています。
具体的には、りんごに含まれるポリフェノールに脂肪吸収を抑える効果があり、その働きによってダイエットできると考えられているようです。
実際に、リンゴ由来のプロシアニジン110㎎を12週間摂取した場合に、内臓脂肪面積が低減したという報告があります。
この報告をもとにして、生のりんごが機能性成分リンゴ由来プロシアニジンを含む機能性表示食品として販売されています。
しかし、内臓脂肪を減らす機能性が確認されたリンゴ由来プロシアニジンの含有量は生のりんごでは約520g(およそ3個)に相当。
毎日3個のリンゴを食べるのはダイエットのためとはいえ、かなり大変なものとなることが予想されます。
また、食事に占めるりんごの割合が増えすぎると、食事のバランスを欠き、かえって不健康な食生活になることも考えられます。
このようなことから考えるに、りんごそのものから効果が得られる量のリンゴ由来プロシアニジンを毎日摂取するのは現実的ではないでしょう。
今後研究などが進むことで、りんごを活用したダイエット製品が開発されていくかもしれませんね。
ペクチン
ペクチンはりんごをはじめとした果物・野菜に幅広く含まれる「水溶性食物繊維」のひとつです。
ペクチンは果物をジャムに調理する際にゲル化する要因となっている成分です。
ペクチンを含む水溶性食物繊維は、いくつかの健康機能が知られています。
- 食物の胃での滞留時間を長くし、小腸での糖質の消化吸収速度を緩やかにする
- 保水性により便のカサを増す、腸内細菌のエサになるなどにより腸の働きを整える
リンゴだけに限らず、水溶性食物繊維をとれる食材を積極的に食べることで、これらの健康効果が期待できそうです。
りんごに含まれる栄養素の効果
りんごに含まれる栄養素や機能性成分によって、さまざまな効果が期待されています。
りんごに含まれる成分から期待される健康効果について解説します。
便秘解消
りんごには先に解説した「ペクチン」をはじめとした食物繊維が含まれています。
食物繊維は腸内細菌の栄養源になったり、便の骨組みとなって排便を促したりすることが知られており、食物繊維の十分な摂取によって便秘の予防にもつながります。
また、りんごに含まれるリンゴ酸などの有機酸は腸を刺激して排便を促す作用があるため、これらの複合的な効果も期待できそうです。
りんごを食べるだけで必ず便秘が解消されるとは限りませんが、りんごを含む果物類を食事に取り入れるメリットといえそうです。
生活習慣病予防
りんごは食物繊維に加え、カリウムなど、生活習慣病予防に働く栄養素を含んでいます。
カリウムは高血圧の原因と一つになるナトリウム(食塩)を排出する働きがあることが知られています。
多くの日本人では塩分(ナトリウム)をとりすぎている傾向にあることから、減塩に加えてカリウムの十分な摂取も生活習慣病予防には重要なポイントになります。
また、食物繊維は便秘解消のほかに、十分な摂取により心筋梗塞や脳卒中など循環器疾患のリスクを減らすことが知られています。
りんごを含む果物類はカリウムや食物繊維の摂取源となることから、生活習慣病予防のために積極的に取り入れたい食品といえそうです。
ダイエット効果
りんごは幅広い食品の中でもボリュームに対して低カロリーであり、上手に取り入れることでダイエットにも活用しやすい食品のひとつです。
例えば、同じ重量の白米ごはんや焼いた鶏もも肉との重さあたりのカロリーを比較すると、りんごは重さあたりのカロリーがかなり低いことがわかります。
食品名 | 100gあたりのカロリー |
りんご(皮むき) | 53kcal |
白米ごはん | 156kcal |
鶏もも肉・皮付き・焼き | 220kcal |
文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」より作成
もちろん、健康を維持しながらダイエットをすることを考えると、食事の大部分をりんごだけで済ませるような方法はオススメできません。
摂取カロリーを抑えたいけれど食事のボリュームが欲しいときや間食が食べたいときなどに、低カロリーなりんごを活用するのがおすすめです。
美容効果
りんごを食べることでどのような美容効果が得られるかについて、具体的にはいまだ分かっていませんが、りんごに含まれる栄養素や機能性成分の作用には、美容に関してプラスの影響が期待できるものもあります。
含有量は多くないものの、りんごに含まれるビタミンCやポリフェノール類は抗酸化作用により、細胞を酸化ダメージから守るため、皮膚の健康状態を保つ働きが期待されます。
また、食物繊維やリンゴ酸などの成分による整腸作用により、腸内環境の改善を介して皮膚の健康を維持する作用が期待されているようです。
そのほか、りんごを積極的にとることにより、それ以外の高カロリーな食品の摂取量が減り、体重コントロールを介して美容面でプラスの効果が得られるということもあるかもしれません。
いずれにしても、りんごを食べることと美容について直接的な効果があるとは言えませんが、美容のための健康的な生活の一部として、りんごを含む果物類は積極的にとるメリットがあるものといえます。
りんごにまつわる疑問
りんごは身近な食品のひとつですが、疑問を持たれる部分も少なくないようです。
りんごにまつわる疑問とその答えを紹介しますので、りんごを安全に・健康的に食べるのに役立ててくださいね。
りんごジュースでも栄養はとれる?
果汁100%のりんごジュースは生のりんごよりも手に入れやすさが魅力ですが、栄養面では全く同じものと考えるのは避けましょう。
重さあたりのカロリーや糖質のバランスは大きく変わらないものの、果汁のみを絞るため、搾りかすに多く含まれる食物繊維などの栄養素が失われてしまうためです。
搾りかすが残るような方法ではなく、丸ごとミキサーにかけてスムージーのように飲む場合には、食物繊維も損なわれずに摂取することが可能です。
とはいえ、飲み物の形状では生のりんごを食べるときのような「咀嚼」が必要ないために、摂取した量に対しての満足感が得られにくいかもしれません。
野菜ジュースと生野菜の栄養面での違いについて解説した記事はこちら
りんごが茶色くなるのはなぜ?
切ったりんごの断面が茶色くなるのは、りんごに含まれるポリフェノール類によるものです。
りんごを切るとプロシアニジンなどのポリフェノールがポリフェノール酸化酵素や空気中の酸素と接するため、ポリフェノールが酸化され、褐色の成分が生成することで偏食が起こります。
りんごを茶色くさせないためには、以下のような方法があります。
- 断面をラップでぴったり覆う(酸素に触れないようにする)
- 塩水、レモン汁につける(ポリフェノール酸化酵素の働きを弱める)
- 変色する前に加熱する(ポリフェノール酸化酵素を失活させる)
食べるタイミングや味の好みによって使い分けてみてくださいね。
皮つきは農薬がついていて危険?
りんごは皮つきで食べる場合もありますが、農薬の危険性を不安視する人も。
結論から言うと、りんごを皮つきで食べた場合にも、残留農薬による悪影響は心配する必要はないようです。
残留農薬について、厚生労働省では健康に悪影響が無いよう、基準値を定めたうえで必要に応じて検査が行われています。
野菜や果物について、皮ごと検査にかけられ、そのほとんどが基準値(ADI)以下の結果が得られているようです。
りんごに限らず、さまざまな食品からごく微量の残留農薬が体に入ることはあるようですが、その量は一日摂取許容量(生涯にわたって食べ続けても健康に影響しないとされる量:ADI)の1%にも満たないといわれています。
残留農薬以外の理由からも、食べる前の洗浄は必要ですが、残留農薬を気にして皮を避ける必要はあまりないようです。
皮つきの野菜の栄養と安全について詳しく解説した記事はこちら
りんごは毎日食べてもいい?
食べる量と食事全体のバランスにもよりますが、りんごを毎日食べること自体は問題ありません。
むしろ、果物は摂取量が少なくなりやすいため、りんごを積極的に食べることは健康面でプラスとなるでしょう。
健康維持のための「バランスの取れた食事」を提示する「食事バランスガイド」では、1日に食べるとよいとされる果物の量はおよそ200g。
りんごなら(大きさにもよりますが)おおよそ1個分くらいです。
毎日200g以上の果物をかかさず食べることは難しくとも、意識して取り入れるようにできるといいですね。
ただし、食事の大部分をりんごだけにするような極端な食事はりんごからは取れないたんぱく質や脂質などの必須栄養素が不足する原因となりますので避けましょう。
りんごのおすすめの食べ方
りんごは一年中手に入りやすく、不足しがちな果物の摂取源として優秀ですが、さらに健康的に食べるためにはいくつかの工夫ができるとよいでしょう。
- 低カロリーな間食として食べること
- 食物繊維の摂取量を増やしたいなら皮つきで食べること
- ダイエット目的で食べるなら生で食べること
りんごを健康的に食べるためのポイントについて解説します。
低カロリーな間食におすすめ
りんごを含む果物は食事のエネルギーを低くしながら、積極的にとりたい食物繊維・カリウム・ビタミンCを補給することができる食品として、適量の摂取が推奨される健康的な食品です。
一方、お菓子類は、砂糖や油脂を多く含み高カロリーになりやすいわりに必須栄養素はあまり含まれていないことが多く、取りすぎには注意したい食品といえます。
りんごは甘味がありながらも、お菓子類などと比較して低カロリーながら必須栄養素もとれることが大きな魅力のひとつです。
チョコレートは20g(板チョコなら1/3枚程度)で100kcalを上回りますが、りんごなら100g(1/2個分)食べてもエネルギーは半分程度に抑えられます。
りんごを間食として取り入れることで、お菓子類などよりも摂取カロリーを抑えつつ必須栄養素をとれるので、食事内容をより健康的にすることが可能です。
皮つきで食べると食物繊維アップ
りんごの皮部分には身と比べて食物繊維の含有量が多く、りんごは皮むきで食べるよりも皮つきで食べるほうが食物繊維の摂取量が増えます。
■100gあたりの食物繊維含有量
食品名 | 100gあたりの食物繊維総量 |
りんご(皮なし)(生) | 1.4g |
りんご(皮つき)(生) | 1.9g |
文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」より作成
食物繊維は生活習慣病予防のためにも積極的な摂取が勧められている栄養素のひとつです。
りんごは良く洗ってから、皮つきで食べるとより健康的です。
皮の食感が気になるという人は、皮の面積が小さくなるように薄めに切ると、皮の固さが気になりにくくなります。
ダイエット目的なら生のまま
ダイエット目的のカロリーコントロールのためにりんごを取り入れるのであれば、りんごを調理したものではなく、生のまま食べるのがおすすめです。
りんごは生だけでなく加熱してもおいしく食べられる果物です。
しかし、コンポートやジャムのように砂糖で甘く仕上げたものは生のものと同じように考えることはできません。
アップルパイなどの焼き菓子に使われているりんごは水分も抜け、砂糖が多量に使われているため、生のりんごの「低カロリーでカサが張る」という利点が失われています。
どうしてもスイーツが食べたいという場合には、生のりんごを取り入れたものを選ぶのは良い方法です。
スイーツの中では「生の果物」を多く使ったものほど重さあたりのカロリーは低く抑えやすいので、ダイエット中にスイーツが食べたくなった時には生の果物の割合が多いものを選ぶのがおすすめです。
りんごとダイエットの関係で気になるのが、かつて流行したりんごダイエットについて。
これは「3日間の食事すべてをりんごに置き換える」というものでした。
しかし、りんごには体に必要な栄養素はさほど多くは含まれていません。
そのため、1日の食事の全部または大部分をりんごに置き換えるダイエットでは、体に必要な栄養素が不足し、体調不良の原因にもなることが考えられますので、おすすめできる方法ではありません。
あくまで「食事の一部」として取り入れるのがポイントです。
まとめ
りんごは身近な果物のひとつで、
- 低カロリーな食材
- カリウムがとれる
- 食物繊維が取れる
といった点が魅力の食品です。
一方、機能性成分についてはさまざまなものが見つかっていますが、食材としてのりんごを食べることで得られる効果はあまり多くないようです。
また、比較的低カロリーなりんごは、「比較的多く食べても摂取エネルギーを低く抑えられる」という点でダイエットの時に心強い食品といえそうです。
りんごを上手に活用するには、1日を通した食事からの摂取エネルギーを消費エネルギー以下に抑えるために、「低カロリーなりんごをひとつの要素として活用する」ことが重要です。
具体的には、お菓子類と代えて間食として食べることで、自然に食事の栄養バランスを整えることにつながります。
ごはんやパンなどの主食、肉や魚の主菜、野菜を主とした副菜などをまんべんなく食べたうえで、りんごを含めた果物を
上手に活用してくださいね。
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参考文献 吉田勉 監修:「わかりやすい食品機能栄養学」.三共出版,2010. 社団法人日本栄養士会監修:「食事バランスガイド」を活用した栄養教育・食育実践マニュアル.第一出版,2011. 文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」 厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報(プロシアニジンについて) 厚生労働省科学研究成果データベース:「抗酸化物質を含有するいわゆる健康食品の安全性・有効性に関する研究」 庄司 俊彦.リンゴポリフェノールの健康機能性とその活用 日本食品科学工学会誌,63巻1号(2016) 庄司 俊彦.リンゴ由来プロシアニジン類の機能評価と機能性表示食品の開発 化学と生物,55巻9号(2017) |