昔から健康食品として利用されてきた「青汁」ですが、具体的にはどのように健康に役立つのか、あまり知らないという人が多いのではないでしょうか。
青汁の原料や栄養成分から、どんな風に使うのがベストか、考えてみましょう。
青汁の原料は何?何のために飲むの?
そもそも青汁とはどんな食品なのでしょうか?
主原料とその効果、取り入れる目的を整理しました。
ケールや大麦若葉などの野菜類が主原料
青汁が製造され始めた1980年代では、「ケール」と呼ばれるキャベツの仲間の野菜が主原料として使用されていました。
最近では大麦の若葉やアシタバ、モロヘイヤなどの「緑の葉物野菜」もつかわれるようになっているようです。
なにかに「効く」というものではないのが大前提
健康食品として知られており、健康のために飲んでいる人も多い青汁ですが、あくまで「健康食品」であり「医薬品」ではありません。
そのため、「病気が治る」というようなものではないことが大前提です。
各メーカーの商品説明にも、「○○に効く」「○○の予防になる」といった表現はありません。
野菜が不足しやすい人にいいイメージがあるけれど…
何らかの効果や効能を明記している情報はありませんでしたが、
「野菜不足の方に」
「美容と健康のために」
といった表現がある商品もありました。
たしかに、緑の濃い葉物野菜を原料にしている青汁は、野菜不足の人に適した食品なのかもしれません。
青汁の栄養価から、野菜の栄養素をとることはできるのか、調べてみました。
青汁の栄養価
「青汁=健康にいい」というイメージはあれど、どんな栄養素が含まれているのか知らない人のほうが多いのではないでしょうか。
青汁を販売しているメーカーは多数存在しますが、その中から3社の商品の栄養成分を調べてみました。
日本人の食事摂取基準(2020年版)と比較した各種青汁の栄養成分データ
市販品A | 市販品I | 市販品Y | 1日摂取基準 (18歳以上女性) |
|
1日目安量 | 粉末10.5g(3食) | 液体200ml(1食) | 粉末8g(2食) | – |
エネルギー | 25.2kcal | 16kcal | 24kcal | – |
たんぱく質 | 1.3g | 0.6g | 0.9g | 50g |
脂質 | 0.3g | 0g | 0.2g | – |
炭水化物 | 5.9g | 5.9g | 6.0g | – |
食物繊維 | 2.0g | 3.7~5.6g | 2.7g | 18g以上 |
カリウム | 107.1㎎ | 17~133㎎ | 269㎎ | 2000㎎ |
カルシウム | 115.5㎎ | 3~19㎎ | 13㎎ | 650㎎ |
ビタミンA | 24.3㎍RAE | データなし | 66.7㎍RAE | 650~700㎍RAE (年齢区分により変動) |
ビタミンE | 0.5㎎ | 8.2㎎(添加) | データなし | 5.0~6.5㎎ (年齢区分により変動) |
ビタミンK | 20㎍ | 9~161㎍ | 91㎍ | 150㎍ |
葉酸 | 20㎍ | 2~24㎍ | 40㎍ | 240㎍ |
ビタミンC | 1.68㎎ | データなし | データなし | 100㎎ |
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
青汁で摂れる栄養素は製品によって異なる
ひとくちに青汁といってもメーカーによって原材料やその割合も異なるため、栄養成分は一定ではありません。
また、原料に含まれる栄養成分にも幅があるため、同じ製品でも大きく幅がある場合もあるようです。
サプリ感覚で使うには心もとない
ドラッグストアなどで販売されているビタミンやミネラルのサプリメントは、1日の目安量をとれば、各種栄養素が摂取基準値に近い量をとれるようになっています。
青汁は栄養素が豊富、というイメージがありますが、実際には1日分の青汁で1日の摂取基準値を満たせるような栄養素はなく、サプリのような感覚で使うにはやや心もとない成分値になっています。
一部、特定のビタミン等を添加することで栄養機能食品として販売しているものもありますが、これは青汁そのものの栄養素によるものではないことに注意が必要です。
添加された栄養素で栄養価が高くなっているため、必ずしも青汁として取る必要はないということです。
青汁は野菜不足にきく?
一部の青汁メーカーでは野菜不足の人におすすめします、との表現もあるようです。
野菜が十分とれない食生活の人でも、青汁で代用することはできるのでしょうか?
野菜350gはどのくらいの栄養が取れる?
野菜の栄養とはどんなもので、1日に食べる野菜に入っている量はどれくらいなのでしょうか?
厚生労働省では、健康日本21という健康への取り組みの中で、
「生活習慣病やがん予防に効果的に働くカリウム、食物繊維、抗酸化ビタミンの摂取、不足しがちなカルシウムの確保のためには、1日あたり野菜を350g、そのうち120gを緑黄色野菜でとること」
を目標としています。
緑黄色野菜120gを含む野菜350gでは、どのくらいの栄養素が取れるのでしょうか?
日によって食べる野菜は異なりますが、ここでは一例として
- ほうれん草(緑黄色野菜)1/3束 60g
- にんじん(緑黄色野菜)1/3本 60g
- キャベツ(淡色野菜)2枚 100g
- きゅうり(淡色野菜)1/2本 50g
- 玉ねぎ(淡色野菜)1/2個 100g
を1日分の野菜として、青汁の栄養価の平均値と比較しながら栄養価を見てみましょう。
上記の野菜350gで 摂れる栄養素 |
青汁(1日目安量) 3製品平均 |
野菜に対して 青汁で摂れる割合 |
1日摂取基準 (18歳以上女性) |
|
エネルギー | 104kcal< | 21.7kcal | – | – |
たんぱく質 | 4.8g | 0.9g | 18.7% | 50g |
脂質 | 0.7g | 0.2g | – | – |
炭水化物 | 23.1g | 5.9g | – | – |
食物繊維 | 7.6g | 3.5g | 46% | 18g以上 |
カリウム | 910㎎ | 131.5㎎ | 14% | 2000㎎ |
カルシウム | 130㎎ | 37.6㎎ | 29% | 650㎎ |
ビタミンA | 700㎍RAE | 45.5㎍RAE | 7% | 650~700㎍RAE (年齢区分により変動) |
ビタミンE | 2.2㎎ | 8.2㎎(添加あり) 0.5㎎(添加なし) |
462% 23% |
5.0~6.5㎎ (年齢区分により変動) |
ビタミンK | 300㎍ | 70.25㎍ | 23% | 150㎍ |
葉酸 | 190㎍ | 21.5㎍ | 11% | 240㎍ |
ビタミンC | 71㎎ | 1.68㎎ |
2% | 100㎎ |
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
青汁は野菜不足を補える?
「1日分の野菜」と「1日の青汁の目安量」の栄養価を比べると、食物繊維で野菜の半分程度、それ以外の栄養素では3割を下回ることが分かります。
青汁を飲むことによって野菜の3割を補える栄養素もありますが、ビタミンCや葉酸、ビタミンAといった栄養素(いずれも野菜が主な摂取源となるもの)は野菜には大きく及ばないようです。
これは、青汁原料の野菜そのものは栄養価が高くても、使用量が少なかったり、粉末や飲料に加工する過程で失われるものがあるためと考えられます。
コップ1杯で野菜不足を解消、というのは、青汁でも難しいようですね。
野菜を食べる意味
野菜のかわりに青汁を、と考える人もいますが、「野菜を食べる意味」というのは、ビタミンやミネラルといった栄養素だけではありません。
ごはんやパンなどの穀類、肉や魚などの食材に比べ、野菜類はエネルギー源となる栄養素が少なく、重さあたりのエネルギーが低いという特徴があります。
ボリュームのわりにエネルギーが低く、また噛み応えのある野菜を食べることで、それ以外の食品(穀類や肉類など)の摂取量が相対的に減る、ということが起こります。
そのため、野菜をたっぷり使った食事と野菜が入っていない食事では、「同じ重さの食事」を食べていても、摂取エネルギーに違いが出てきます。
野菜がしっかり入った食事をとることで、野菜の栄養素をとることはもちろん、同じ量でもエネルギーの取りすぎを防いで太りにくい食事にすることができます。
しかし、この効果は食事内容を変えなくても取り入れられてしまう青汁や野菜ジュース、サプリメントなどではあまり期待できません。
お肉やごはんを食べすぎる食生活の人が青汁を飲むようになっても、食事内容が変わらなければお肉やごはんを食べすぎることによるリスクは減らせません。
単に青汁を飲むだけでは、根本的な食生活の改善にはなっていない、ということが言えます。
青汁の賢い使い方は?
青汁は食物繊維が比較的豊富です。
食物繊維は穀類や野菜類からとることができますが、比較的バランスのとれた食生活でも、意識して取らないと不足しがちな成分です。
バランスのとれた食事を心がけることを大前提として、「食物繊維のちょい足し」として活用するのがベストではないでしょうか。
青汁はダイエットにきく?
青汁製品の中でも、一部の商品は「ダイエット効果がある」として販売されています。
しかし、現時点で青汁そのものや青汁の原材料であるケール、明日葉、大麦若葉、モロヘイヤなどにダイエットに効果がある特別な成分は見つかっていません。
青汁が食事をなかったことにしてくれることはない
体についた脂肪を落とすには、摂取エネルギーよりも消費エネルギーを大きくすることしかありません。
そして、いくら青汁に食物繊維やビタミン、ミネラルが含まれていても、食べたものをなかったことにする効果はありませんので注意しましょう。
まとめと注意点:過剰摂取に注意
1日の目安量で栄養素がさほど多くないのなら、たくさん飲めばいいんじゃない?と考えるのは危険です。
製品によっては栄養素が添加されていたり、栄養素や、それ以外の成分の含有量も一定ではありません。
粉末タイプなどは使い方によっては多量に摂取することが可能なため、むちゃな使い方によって過剰量の摂取につながりやすい点があげられます。
食物繊維やビタミン、ミネラルの補給に役立つ面はあるものの、青汁はあくまで「食品」のひとつです。
野菜不足を解消する魔法の食材でもなく、健康になれる薬でもないことを頭に入れ、賢く利用したいですね。
野菜不足を解消するコツについて詳しく解説した記事はこちら
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青汁のおすすめ商品を紹介した記事はこちら
参考文献 厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書 文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報(青汁、ケール、明日葉、大麦、モロヘイヤについて) |