「飲む点滴」「飲む美容液」とも呼ばれ、健康効果や美容効果が期待されている「米麹甘酒」ですが、栄養面ではどのような成分が含まれているのでしょうか?
甘酒の栄養面での特徴と機能性、メリットを活かす取り入れ方を紹介します。
Contents
甘酒とは
甘酒といわれる食品には「酒粕甘酒」と「米麹甘酒」の二つがあります。
ひとつめは酒粕(日本酒の搾りかす)と砂糖を合わせた「酒粕甘酒」、
ふたつめはお粥をコウジカビの作用で糖化させた「米麹甘酒」です。
見た目はどちらも白く濁った飲み物ですが、風味は大きく異なります。
また、酒粕甘酒にはわずかにアルコールが含まれていますが、米麹甘酒にはアルコールが含まれていません。
このうち、近年健康的な食品として注目されているのは「米麹甘酒」です。
この記事では、米麴甘酒について紹介します。
米麹甘酒の原料と製法
米麹甘酒は「お米」と「米麹」から作られる加工食品です。
お米でおかゆをつくり、50~60℃に保温した状態で米麹を加えて発酵させることで、甘い甘酒ができあがります。
甘酒が甘い理由
甘酒の甘味は、米麹に含まれる「ニホンコウジカビ」という微生物の消化作用によるものです。
ニホンコウジカビは甘酒を作る際に米に含まれる鎖状の糖質(でんぷん)をバラバラに分解する性質があります。
バラバラになった糖質は甘味のあるブドウ糖やオリゴ糖などとなるため、甘く感じるようになるのです。
甘酒の栄養価
甘酒は栄養価の高い食品として知られていますが、カロリーやその他の栄養価について詳しく知っている人は少ないのではないでしょうか?
甘酒のカロリーや栄養素について解説します。
甘酒のカロリー
製法やメーカーによってばらつきはありますが、標準的には100gあたり70kcal程度です。
米を5倍の水で炊いた「全粥」とほぼ同じ成分で、同じくらいのカロリーとなります。
成分表・甘酒 | 成分表・全粥 | |
エネルギー | 81 kcal | 71 kcal |
糖質 | 18.3g | 15.7g |
脂質 | 0.1 g | 0.1 g |
タンパク質 | 1.7 g | 1.1 g |
ナトリウム | 60㎎ | 微量 |
食塩相当量 | 0.15g | 0g |
アルコール | – | – |
各社ホームページおよび文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より作成
砂糖の入ったソフトドリンクのカロリーが100gあたり40kcal程度なので、甘酒は飲み物としてかなり高カロリーな部類に入ります。
主成分は糖質
甘酒は約80%が水分で、主成分は糖質です。
たんぱく質や脂質は含まれているものの、量としては多くありません。
ビタミンやミネラルに関しては全く含まれないわけではないものの、豊富とは言いにくい量にとどまります。
メーカーによる違い
甘酒はそれぞれのメーカーの製法や、加える水分量などにより栄養価が異なります。
厚生労働省が発表している日本食品標準成分表のデータと、大手メーカーで市販されているそのまま飲める製品の100gあたりの栄養価をまとめたものがこちらの表です。
市販品A | 市販品B | 市販品C | 成分表・甘酒 | |
エネルギー | 61.6 kcal | 69 kcal | 74.4 kcal | 81 kcal |
糖質 | 14.24g | 16.5g | 16.88g | 18.3g |
脂質 | 0g | 0g | 0.24 g | 0.1 g |
タンパク質 | 1.2 g | 0.7 g | 1.28 g | 1.7 g |
ナトリウム | 63.0㎎ | 47.2㎎ | 74.4㎎ | 60㎎ |
食塩相当量 | 0.16g | 0.12g | 0.16g | 0.15g |
アルコール | – | – | – | – |
各社ホームページおよび文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より作成
甘酒に含まれる機能性成分
甘酒は微生物であるコウジカビの作用によりつくられる食品ですが、このコウジカビが作る物質にデフェリフェリクリシン、グリコシルセラミド、N-アセチルグルコサミンが挙げられます。
これらの成分は健康や美容に良いのでは?と期待され、研究が進められているものでもあります。
甘酒のメリット
甘酒は特色のある食品ですが、メリットとなりうる点には以下のようなものがあります。
- 消化吸収に優れている
- 美肌効果が期待されている
それぞれについて詳しく解説します。
消化吸収に優れている
通常、ヒトがご飯を食べると、体内で糖質(でんぷん)の鎖をバラバラにしてから(消化)、体の中に取り込みます(吸収)。
甘酒の製造過程において、原料のお米由来の糖質(でんぷん)はコウジカビのはたらきによってオリゴ糖やブドウ糖に分解されています。
甘酒はコウジカビがあらかじめ糖質を分解していてくれるため、同じ量のでんぷんをとるよりも、体内で消化する負担が減るといえます。
このことから、甘酒は「消化吸収に優れている」という利点があります。
美肌効果が期待されている
甘酒は白米にコウジカビを作用させてつくるものです。
コウジカビが産生する、いくつかの成分に美容にかかわる機能性があるのでは?と期待されています。
いまのところ期待されているものとしては、以下の働きがあげられます。
- デフェリフェリクリシン…「メラニンの生成を抑えるはたらき」*1)
- グリコシルセラミドやN-アセチルグルコサミン…「皮膚の水分量を高め、皮膚からの水分の蒸発を防いで潤いのある肌を保つはたらき」*2)
とはいえ、甘酒を飲めばたちまちメラニンが生成されにくくなって明らかに色白になったり、潤いのある美肌になれるか、というとそうではありません。
残念ながら現時点では人を対象にした研究は少なく、効果があるとは言えない状況。
研究が進めば、将来的には「甘酒のどんな成分にどんな美容効果があるのか」がはっきりとわかるかもしれませんね。
甘酒のデメリット
甘酒の栄養的な特徴は、場合によってはデメリットにもなりえます。
摂取カロリーを抑えたいときや栄養バランスを取りたいときには適していないようです。
ダイエットに不向き
甘酒は消化吸収に優れていることにより、素早いエネルギー補給に適した半面、腹持ちはあまりよくないという特徴も。
なるべく摂取エネルギーを抑えたいダイエット中においては、「よく噛んで少量の食事でも満腹感を得る」「消化吸収に時間がかかる食品で満腹感をキープする」といったことが重要ですが、飲み物で噛む必要がなく、消化吸収に優れている甘酒に関しては正反対の性質となっています。
ビタミン・ミネラルは少ない
甘酒は消化吸収しやすい糖質を豊富に含むいっぽう、たんぱく質や脂質、ビタミンやミネラルは多くは含まれていません。
そのため、甘酒だけを長期間の栄養摂取源としたり、栄養バランスを整える目的で取り入れたりすることには適していません。
甘酒のメリットを活かすおすすめの飲み方
消化吸収に優れて美容効果も期待されている甘酒を活かす方法を紹介します。
具体的には、疲れた時の素早いエネルギー補給や、美肌のために習慣的に取り入れるなどの方法があります。
疲労回復に
甘酒はコウジカビによってすでにお米のでんぷんがブドウ糖やオリゴ糖に分解されているため、消化吸収の負担が少ない食品であるため、素早いエネルギー補給に適しています。
江戸時代には栄養ドリンクのように飲まれており、特に食欲の落ちやすい夏場によく飲まれていたそうです。
もちろん現代でも、風邪や夏バテなどの体調不良の時のエネルギー摂取に最適。
疲れた時のほかにも、朝食を食べる時間のないときなど、手軽に栄養補給したいときにもおすすめです。
バナナなどを一緒に食べても、腹持ちがよくなっていいですね。
とはいえ、「飲む点滴」といわれる一方、本当の点滴のように必要な栄養素が調整されたものではありません。
甘酒だけでは糖質以外の栄養素の必要量を満たすのは難しいので、栄養バランスを整える目的で摂取したり、長期間の食事を甘酒だけに制限したりするのは避けましょう。
美肌のための習慣として
甘酒に含まれている機能性成分についての研究は進められているものの、その機能性はいまだ未知数なところも多いのが現状であり、「甘酒だけ」で美肌が手に入るとはいえませんが、栄養バランスのとれた食事や十分な睡眠、適度な運動、自分に合ったスキンケアなど、基本的な美容のための取り組みに加えて甘酒を取り入れるのも間違いではありません。
短期間で効果が得られるものではないので、ほかの食事に影響しすぎない範囲で習慣化するのがおすすめです。
まとめ
甘酒は消化吸収に優れた食品であり、からだが弱っている時でもエネルギーを取り入れやすいのが利点です。
また、機能性に関しては研究の途中で、即効性は期待できないものの、無理のない範囲で取り入れてみても良いでしょう。
甘酒は食欲がないときや胃腸がつかれているときなどの栄養源として使うのに最適。
用途によっては適さない場面もありますので、使いどころに注意しながら活用したいですね。
米麴と同じ微生物の乳酸菌の働きについて詳しく解説した記事はこちら
参考文献 文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」 吉田勉 監修:「わかりやすい食品機能栄養学」.三共出版,2010. *1)大浦新、堤浩子、秦洋二.麹菌が産生する鉄キレート環状ペプチド(5)-培養細胞および皮膚モデルにおけるデフェリフェリクリシンの美白効果-、日本農芸化学会大会(2012) *2)植田愛美 他.健常成人女性における米糀甘酒摂取による皮膚バリア機能改善効果の検討 ー無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験ー. 薬理と治療, 45巻 11号 1811-1820 (2017) |