成人男性の身体が必要とするエネルギー(カロリー)は、1日あたりどのくらいでしょうか?
平均的な体格の成人男性について、年齢・身体活動レベルごとの推定エネルギー必要量を紹介します。
体重を考慮した詳しい計算方法のほか、ダイエット中の摂取カロリーの目安、健康維持のための栄養素のバランスについても解説します。
*「カロリー」は正確には主に食品等から得られるエネルギー量の「単位」ですが、一般では食品等から得られるエネルギーを指す言葉としても使われているため、この記事ではエネルギーについて、「カロリー」という単語を用いて解説します。
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Contents
成人男性に必要な摂取カロリーとは
健康な状態を維持するために必要なカロリーの量はどのくらいでしょうか?
食事から摂取したカロリーを消費する要素、必要なカロリーの量に影響する個人差などを踏まえつつ、平均的な体格の場合の必要摂取カロリーを紹介します。
必要摂取カロリー=消費カロリー
私たちが食事から摂取したカロリーは生命維持や身体活動によって消費されています。
原則として、消費カロリーと比較して摂取カロリーが少ないと体重が減り、摂取カロリーが多いと体重は増えていきます。
よって、必要な摂取カロリーとは、生命維持や身体活動によって消費するカロリーと同じ値となります。
成人男性の年齢・身体活動レベル別必要カロリー早見表
日本人の食事摂取基準2020年版において、平均的な体格における必要なカロリー量は、身体活動レベルごとに以下のようになっています。
(身体活動レベルについては後述します)
■18歳以上男性の推定エネルギー必要量
身体活動レベル | 低い(Ⅰ) | ふつう(Ⅱ) | 高い(Ⅲ) |
18-29歳 | 2300kcal | 2650kcal | 3050kcal |
30-49歳 | 2300kcal | 2700kcal | 3050kcal |
50-64歳 | 2200kcal | 2600kcal | 2950kcal |
65-74歳 | 2050kcal | 2400kcal | 2750kcal |
75歳以上 | 1800kcal | 2100kcal | -(設定なし) |
ここまでで解説した通り、必要なエネルギー量は性別、年齢、身長、体重、体組成、毎日の身体活動量による影響を受けるため、この表の数値は「平均的な身長・体重と活動量の大まかな区分における参考値」となります。
個人の実際の必要量は早見表の値に対して±200kcal程度の幅があると考えられています。
補足:身体活動レベルの目安
日常の平均的な消費カロリー(≒必要なカロリー)を算出するために、日常的なおおよその身体活動量を3つのレベルに分けたのが身体活動レベルです。
■身体活動レベルの目安
|
消費カロリー・必要カロリー自動計算ツール
上記の必要カロリー早見表は、各性別・年齢における「平均的な身長・体重」の場合の必要カロリー量です。
同じ年性別・年齢でも、身長や体重によって必要カロリーには差ができるため、可能であれば自分の身長・体重から計算する方法をとるほうが誤差を少なくできます。
ここからは、性別・年齢・身体活動レベルに加え、個人それぞれの身長と、身長に対する標準体重(BMI22にあたる体重)から、標準体重を維持するのに必要なカロリー量を計算します。
レベル
カロリー
■身体活動レベルの目安
|
必要なカロリーに影響する要素
必要なカロリーを計算するためには、以下の2つの要素が必要です。
- 基礎代謝量
- 身体活動レベル
これらの数値は
- 性別
- 年齢
- 身長
- 体重
…などの数値が影響するため、個人ごとに1日に必要なカロリーは異なります。
必要なカロリーに影響するこれらの数値について、詳しく解説します。
必要なカロリー=基礎代謝量×身体活動レベル
1日に必要なカロリー(消費するカロリー)は大きく2つの要素に分けることができます。
- 体を動かさなくても消費するカロリー(基礎代謝量)
- 体を動かすことで消費するカロリー
日本人に必要な栄養素摂取の基準を示した日本人の食事摂取基準2020年版では、基礎代謝量に身体活動レベルの係数を掛けることで1日に必要なカロリーを算出しています。
基礎代謝量とは
基礎代謝量とは、上述の通り「体を動かさなくても消費するカロリー」を指します。
正確には、覚醒状態で快適な室内で安静にした状態で測定されるカロリー消費量のことで、年齢、性別、身長、体重などの数値を用いることで推定することができます。
基礎代謝量を計算する方法には、以下のようなものがあります。
- 基礎代謝基準値と体重を用いる方法
- 推定式と身長、体重を用いる方法
基礎代謝基準値と体重を用いて基礎代謝を計算する方法
基礎代謝基準値とは、参照体位(各性別・年齢において平均的な体格のこと)における体重当たりの基礎代謝量で、体重と組み合わせることで基礎代謝量を求めることが可能です。
基礎代謝基準値(kcal/㎏体重/日)×体重(㎏)=基礎代謝量(kcal/日)
■成人男性の参照体位(日本人の食事摂取基準2020年版で使用)
年齢 | 参照身長(cm) | 参照体重(㎏) |
18-29歳 | 171.0 | 64.5 |
30-49歳 | 171.0 | 68.1 |
50-64歳 | 169.0 | 68.0 |
65-74歳 | 165.2 | 65.0 |
75歳以上 | 160.8 | 59.6 |
■成人男性(参照体位)における基礎代謝基準値
年齢 | 基礎代謝基準値 (kcal/㎏体重/日) |
18-29歳 | 23.7 |
30-49歳 | 22.5 |
50-64歳 | 21.8 |
65-74歳 | 21.6 |
75歳以上 | 21.5 |
この基礎代謝基準値と体重を用いて、自分の体重に合った必要摂取カロリーを簡易的に計算することができます。
■基礎代謝基準値と個人の体重を用いた必要摂取カロリーの推定
必要な摂取カロリー=基礎代謝基準値 × 体重(㎏) × 身体活動レベル係数 |
ここで得られる値は個人の体重に対応した数値ではありますが、平均的な体形から外れるほど誤差が大きくなる数値となっており、
- 痩せた人では実際の数値よりも少なめになりやすい
- 肥満の人では実際の数値よりも多めになりやすい
といった特性があります。
推定式と身長、体重を用いて基礎代謝を計算する方法
参照体位とは関係なく、完全に個人の性別・年齢・身長・体重から基礎代謝を計算する方法もあります。
■国立健康・栄養研究所が作成した基礎代謝量の推定式
男性:(0.0481×W+0.0234×H-0.0138×A-0.4235)×1,000/4.186 |
この式を使った場合の数値はBMI30程度までなら誤差が少ないとされているので、多くの人で信頼できる数値が得られるものとなっています。
とはいえ、基礎代謝量は厳密には体重や身長、年齢だけでなく、体組成などによっても影響を受けます。
よって、推定式で得られる基礎代謝量はあくまで推定値であり、同じ年齢、性別、体重、身長の人であっても個人間に差がある場合があります。
基礎代謝基準値で得られた基礎代謝量と同様に、この式で得られた基礎代謝量に身体活動レベル係数を掛けることで、必要摂取カロリーを計算することができます。
身体活動レベルとは
身体活動レベルとは、日常的な身体活動の強さを3段階に分けたものです。
身体活動によるカロリー消費は個人差だけでなく日によっても変化するため、身体活動によるエネルギー消費量を正確に把握することは困難ですが、基礎代謝量に各身体活動レベルの係数を掛けることで、日常における平均的な消費カロリーを算出することができます。
■身体活動レベル別の活動内容と活動時間の例
身体活動レベル | 係数 | 日常生活の内容 |
低い(Ⅰ) | 1.50 | 生活の大部分が座ったまま、静的な活動が中心 |
ふつう(Ⅱ) | 1.75 | 仕事は座ったままが多いが、職場内の移動、立ち仕事、通勤や買い物での歩き、家事、軽いスポーツなどのいずれかを行っている |
高い(Ⅲ) | 2.00 | 移動や立ち仕事が多い仕事をしている、または休日などにスポーツなど活発な運動習慣がある |
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摂取カロリーと消費カロリーのバランスは「体重の推移」でチェック
上述の通り、自分の体が1日に必要とする摂取カロリーを正確に知ることは容易ではありません。
また、日々異なる食事から得られる摂取カロリーに関しても、正確な数値を得るのは困難です。
自分の食事から得られる摂取カロリーが必要とするカロリーに合っているかを確認するのに推奨されているのは体重の変化です。
数か月程度の期間において、運動量などが変わらない場合、
- 体重が増えていく…必要なカロリーに対して多く摂取している
- 体重が減っていく…必要なカロリーに対して少なく摂取している
- 体重が変わらない…必要なカロリーと同じくらい摂取している
ことが推定できます。
BMIが18.5以上25未満の普通体型の人の場合には、体重を維持できていれば摂取カロリーと消費カロリーのバランスが適切、と考えることができます。
必要な摂取カロリーの「数値」はあくまでおおよその目安の値であることを頭に入れつつ、体重の変化を観察しながら上手に活用していけるとよいでしょう。
1食あたりの摂取カロリーの目安は?
必要な摂取カロリーのうち、食事ごとにどのようなバランスでとるのがよいのでしょうか?
摂取カロリーの割り振りは基本的に自由
成人において、1日のうちどのタイミングでどのくらいのカロリーをとるかについて、特に決められたルールや推奨される比率などはありません。
極論では1日1食で必要カロリーをすべて摂取してもよいということになりますが、血糖維持のための貯蔵された糖質が食後数時間で枯渇することなどを考えると、やはり1日あたり3回程度に割り振ったほうが身体的な負担は少なく済みそうです。
朝:昼:夜=1:1:1を基本として、個人の体質や習慣に応じて無理なくアレンジするのがよいでしょう。間食を取り入れても問題ありません。
日本人の食生活では、朝:昼:夜=2.5:3.5:4 などのやや夕食に重心を置いた比率が多いと考えられます。
1食あたりの目安は650~1000kcal前後
18~64歳の身体活動レベルがふつうの成人男性の場合、1日に必要な摂取カロリーは2650kcal前後とされており、これを3等分すると833kcalとなります。
上で例として挙げたバランス(朝:昼:夜=2.5:3.5:4)のように朝食を軽めに、夕食を重めにする場合、1食あたりの摂取カロリーはおよそ660~1060kcalの範囲となります。
118~64歳の身体活動レベルがふつうの成人男性の場合、1食あたりの摂取カロリーは650~1000kcalの幅で、1日を通しての摂取カロリーが必要なカロリーから大幅にずれないようにできるとよいでしょう。
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ダイエット中の摂取カロリーの目安
普通体重の人が体型を維持するには必要摂取カロリーの維持が必要ですが、過体重の人がダイエットをしたい場合にはどのように摂取カロリーを管理するのがよいのでしょうか?
体脂肪1㎏に相当するカロリーは7200kcal
消費カロリーと比較してカロリーを摂取しすぎると、余ったカロリーは体脂肪として蓄積されます。
体脂肪1㎏に相当するカロリーは7200kcalともいわれています。
蓄積した体脂肪を減らすには、消費カロリーよりも摂取カロリーを少なくし、体脂肪を消費することで不足するカロリーを得る状況を作る必要があります。
1か月に1㎏の体脂肪減少が目標の場合の目安
1か月で1㎏の体脂肪を消費したい場合、1日あたりの減らすべき摂取カロリーはどのくらいになるでしょうか?
1㎏の体脂肪のカロリー7200kcalを1か月(30日)で割ると、1日あたり240kcalとなります。
1か月で1㎏の体脂肪を減らすためには、
- 食事の見直しによる摂取カロリーのカット
- 身体活動による消費カロリーの上乗せ
を組み合わせ、消費エネルギーと摂取エネルギーについて平均240kcal/日の差を作ることがおおよその目安となります。
ダイエット中の摂取カロリーカットのための食事選びについて詳しく解説した記事はこちら
健康維持のために気を付けたいカロリーと栄養素のバランス
摂取カロリーを適正範囲に収めることは健康維持の観点で重要ですが、摂取カロリーの「PFCバランス」まで気を配れるとより健康的です。
カロリー管理から一歩進んだ栄養バランスについて解説します。
PFCバランスとは
PFCバランスとは、カロリー源となる栄養素のバランスのことで、具体的には
- P=たんぱく質
- F=脂質
- C=炭水化物
の摂取量のバランスを指しています。
食事のPFCバランスを整えることで必須栄養素であるたんぱく質、脂質、炭水化物の摂取不足を防ぎ、さらに将来の生活習慣病の予防に役立つことが期待されます。
■日本人の食事摂取基準2020年版で目標とされているPFCバランス(18歳以上男性)
年齢 | たんぱく質(%) | 脂質(%) | 炭水化物(%) |
18-29歳 | 13~20 | 20~30 | 50~65 |
30-49歳 | 13~20 | 20~30 | 50~65 |
50-64歳 | 14~20 | 20~30 | 50~65 |
65-74歳 | 15~20 | 20~30 | 50~65 |
75歳以上 | 15~20 | 20~30 | 50~65 |
食事バランスガイドを活用した食事管理がおすすめ
PFCバランスと簡単に言っても、食品に含まれるたんぱく質や脂質、炭水化物を計算するのは難しく、普段の生活では現実的ではありません。
そこでおすすめなのが、「食事バランスガイド」を使って「料理単位」で食事のバランスをとる方法です。
食事バランスガイドは厚生労働省と農林水産省が発表している「何をどれだけ食べるとバランスが良いか」を示したものです。
引用:厚生労働省:「食事バランスガイド」について より
食事バランスガイドでは、食事を
- 主食(ごはん、パン、麺)
- 副菜(野菜、きのこ、いも、海藻料理)
- 主菜(肉、魚、たまご、大豆料理)
- 牛乳・乳製品
- 果物
に分け、必要な摂取カロリーごとに適量を示しています。
18~69歳の男性で身体活動レベルがふつうの場合、
- 摂取カロリー…2600kcal
- 主食…7~8つ(1つ=炭水化物40g=ごはん100g相当)
- 副菜…6~7つ(1つ=主材料70g相当)
- 主菜…4~6つ(1つ=たんぱく質6g=たまご1個相当)
- 牛乳・乳製品…2~3つ(1つ=カルシウム100㎎=牛乳100ml相当)
- 果物…2~3つ(1つ=主材料100g相当)
- 菓子・嗜好飲料…200kcalまで
が適量とされています。
食事バランスガイドは厳密な栄養管理には向いていませんが、日常的な食事のバランスを管理するのに便利なツールとなっています。
食事バランスガイドと普段の食事を照らし合わせながら、自分にとっての適量を身に着けられると将来の健康維持にも役立ちそうですね。
食事バランスガイドに沿った主食・主菜・副菜のそろった食事の健康的なメリットについて詳しく解説した記事はこちら
まとめ
成人男性の1日に必要な摂取カロリーは年齢や体格、日常的な活動量の違いにより個人差がありますが、日本人の食事摂取基準2020年版では、平均的な身長・体重で身体活動レベルが普通の場合、2650kcal前後となっています。
個人の体重などを反映したより詳しい計算方法としては
- 基礎代謝基準値×体重×身体活動レベルで求める方法
- 推定式を用いる方法
の2種類があります。
普段の生活で自分に必要な摂取カロリーや食事に含まれるカロリーを知ることは難しいため、実際に自分の食生活で摂取カロリーが適正かどうかを知るためには、体重の増減を観察する方法が現実的です。
1日のうちどのようにカロリーをとるか、1食あたりのカロリー量に決まったルールはありませんが、血糖値維持のための糖の供給を考慮すると、1日に3回前後、ある程度均等に割り振るのが無難です。
朝は軽め・夜は重め、またはその逆など、自分の生活スタイルに合わせて無理のない配分で食事がとれるのがよいでしょう。
ダイエットによって体脂肪を減らしたい場合は、摂取カロリーを減らすか消費カロリーを増やすことで、摂取カロリーのマイナス状態を作る必要があります。
1日あたり240kcalをカットすることで、1か月で1㎏の体脂肪に相当するカロリーをカットすることができます。
また、長期的な健康維持のためには、摂取カロリーの量だけではなく、そのバランスも重要です。
たんぱく質・脂質・炭水化物の摂取バランスであるPFCバランスがその目安となりますが、日常生活での測定は困難であるため、食事バランスガイドなどを用いて主食・主菜・副菜をそろえるなどの「料理単位」でバランスの取れた食事に気を付ける方法が取り入れやすくおすすめです。
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参考文献 厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書 社団法人日本栄養士会監修:「食事バランスガイド」を活用した栄養教育・食育実践マニュアル.第一出版,2011. |