ナッツは健康的な食品のひとつとして知られている一方で脂質を多く含み高カロリーという特徴もあり、「ダイエットによい」「太りやすい食品」など、相反するうわさも。
ダイエット中にナッツは食べたほうがいいのでしょうか?それとも避けるべきでしょうか?
Contents
ダイエット中のナッツは食べても大丈夫?
ダイエットの原則はエネルギーの収支です。
ダイエット=余分な体脂肪を減らすためには、消費エネルギーよりも摂取エネルギーを小さくする必要があります。
体脂肪を減らすためのダイエットとカロリーについて詳しく解説した記事はこちら
つまり、ダイエットに効果があるものとは、
- 消費エネルギーを増やす
- 摂取エネルギーを減らす
いずれかの効果があるもの、といえるでしょう。
ナッツにやせる効果はある?
ナッツ類はいくつもの種類があり、どれも異なる植物からとれるものであり、含まれる栄養素や食品成分も同じではありません。
ナッツ類に共通する特徴としては、脂質が多く含まれ、(50-75%ほど)重さのわりにカロリーの高い食品(500~700kcal台/100g)であること。
この点はダイエットにおいてはデメリットであり、食事のカサ増しやエネルギーカットにはあまり役立つとは言えません。
ナッツ類のメリットとしては、脂質の大部分が植物油脂に多い「不飽和脂肪酸」であり、動物性脂肪に多い「飽和脂肪酸」よりも生活習慣病へのリスクが低い点があげられます。
また、ナッツの種類によっては、ビタミンやミネラルの一部が豊富に含まれているものもあります。
ダイエット効果につながる栄養成分及び機能性について、複数のナッツを調べましたが、いずれのナッツにも「やせる効果」が報告されているものは見つかりませんでした。
ナッツを食べる習慣とBMI
ナッツ類に「やせる効果のある成分」は確認されていない一方で、「ナッツを食べる人ほどBMIが低い」というデータも存在します。
もともとはアメリカで行われたナッツ類の摂取頻度と死亡率の関連を調べた研究*)の一部で、ナッツ類を良く食べる人の特徴の一つに、BMIが低いというものがありました。
とはいえ、このデータからナッツ=痩せると簡単に結論付けることはできません。
ナッツ類を良く食べる人は、ナッツだけでなく野菜や果物もよく食べ、運動量も多いといった特徴もあったのです。(ほかにアルコール及びマルチビタミン摂取量も多かったという特徴もありました)
ナッツ類をよく食べる人の平均的なBMIが低いというデータは事実でも、「ナッツを食べるとやせる」ではなく、「ナッツをよく食べている人は食事や運動に気を遣う人が多く、BMIも比較的低い」と考えたほうがよさそうです。
ちなみに、この研究の本題はナッツの摂取頻度と死亡率の関係についてでした。
ナッツ以外のBMIや食事・生活習慣の影響を取り除いて調整した場合でも、ナッツの摂取頻度が高いほど死亡率が低く、(明確な理由はわからないものの)ナッツが健康的な食品であることは正しいといえそうです。
ダイエット中にナッツを取り入れるときのポイント
脂質が多く高カロリーな食品でありながら、健康的な食品としても知られるナッツ類。
ダイエット中はどのように取り入れるのが正解なのでしょうか?
あえて取り入れる必要性はない
ナッツ類は健康的な食品のひとつではあるものの、ナッツそのものにダイエット効果があるわけではありません。
ナッツ類を食べることによってほかの間食などの量が減り、結果として総摂取エネルギーのカットにつながるのであれば、食べるメリットはあるかもしれませんが、ナッツは脂質が多く、エネルギーも高いため、いつもの食事に足すだけであれば、摂取エネルギーを増やすことにしかなりません。
よって、ダイエット目的で「あえて」取り入れる必要はありません。
素焼きがおすすめ
ダイエット中や健康のためにナッツを食べるのであれば、フライ・味付きのものより素焼きのものを選ぶのが正解です。
ナッツは製品によって栄養価が異なり、油で揚げてあるものはエネルギーが上乗せされ、味付けされているものは塩分摂取量が多くなりがちです。
塩分量はカロリーとは直接の関係はありませんが、塩分摂取過多はむくみの原因になったり、将来の高血圧のリスクを上げてしまいます。
ナッツはもともと脂質が多いものであることに加え、日本人は塩分をとりすぎている人が多いことからも、ダイエット中や健康のためにナッツを取り入れるのであれば、揚げたものや味付けしたものではなく、素焼きのものがおすすめです。
量を決めて食べる
もともとナッツが好きで、ダイエット中もなるべく食べるのをやめたくない、という人もいるかもしれません。
ナッツは脂質が多く高カロリーな食品であり、食べすぎは摂取エネルギー過剰につながりやすいため注意が必要な食品のひとつです。
しかし、だからといって「一切食べてはいけない」ということはなく、適度な量を保てるのであれば、ダイエット中でも楽しんで食べることができます。
バランスのとれた食事のモデルを示した「食事バランスガイド」では、間食に多い「菓子・嗜好飲料」の1日の目安量として200kcalまでを示しています。
(ナッツ類(種実類)は正確には菓子に分類されませんが、おやつとして食べる場合が多いため、菓子・嗜好飲料の枠組みに入れることとします)
ダイエット中の間食ということを考えると、少し控えめの100kcalまでにとどめるのがよさそうです。
100kcal分のナッツはどのくらい?
各種ナッツについて、間食として「適量」にあたる100kcal分の量を調べてみました。
- クルミ(煎り)…15g…5かけほど
- ピスタチオ(煎り・味付け)…16g(殻付き30g)…30粒ほど
- マカダミアナッツ(煎り・味付け)…14g…7粒ほど
- 落花生(煎り)…18g(殻付き25g)…20粒ほど
- アーモンド(煎り)…17g…15粒ほど
手のひらに乗りきるくらいの量であれば、間食としても問題なさそうです。
袋から直接取り出して、だらだらと食べないように注意しましょう。
ナッツの栄養価比較
ひとくくりにナッツといっても、それぞれ別の植物からとれるものであるため、栄養成分値はまちまちです。
ここからは、ナッツの種類ごとの栄養価の違いを紹介します。
■ナッツ5種の栄養成分値
エネルギー | たんぱく質 | 脂質 | 炭水化物 | 食物繊維 | |
アーモンド(いり) | 608kcal | 20.3g | 54.1g | 20.7g | 11.0g |
くるみ(いり) | 674kcal | 14.6g | 68.8g | 11.7g | 7.5g |
らっかせい(いり) | 588kcal | 25.0g | 49.6g | 21.3g | 11.4g |
ピスタチオ(いり・味付) | 615kcal | 17.4g | 56.1g | 20.9g | 9.2g |
マカダミアナッツ(いり・味付) | 720kcal | 8.3g | 76.7g | 12.2g | 6.2g |
*100gあたり、日本食品標準成分表2015年版(七訂)より作成 |
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
ナッツ全体の傾向としては、50-75%前後を脂質が占める高脂質・高カロリーな食品です。
また、脂質の中でも不飽和脂肪酸の割合が多いのが共通した特徴です。
そのほか、それぞれのナッツに含まれる栄養素の特徴は以下の通り。
いちどの食事で100gものナッツを食べる機会は少ないため、15gあたりの栄養素量を紹介します。
アーモンド
アーモンド(いり) | 食事摂取基準比(18-64歳女性) | |
エネルギー | 91kcal | – |
ビタミンE | 4.3㎎ | 72-86%(目安量) |
ビタミンB2 | 0.16㎎ | 13%(推奨量) |
ナイアシン | 1.13㎎ | 9-10%(推奨量) |
マグネシウム | 47㎎ | 16-17%(推奨量) |
*15gあたり、日本食品標準成分表2015年版(七訂)より作成 |
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
アーモンドはビタミンEが特に多いのが特徴です。
そのほかビタミンB2やナイアシン、マグネシウムなどのビタミン・ミネラルが豊富に含まれます。
くるみ
くるみ(いり) | 食事摂取基準比(18-64歳女性) | |
エネルギー | 101kcal | – |
脂質 | 10.3g | – |
多価不飽和脂肪酸 | 7.54g | – |
うちn-3系 | 1.34g | 70-84%(目安量) |
うちn-6系 | 6.20g | 78%(目安量) |
*15gあたり、日本食品標準成分表2015年版(七訂)より作成 |
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
くるみは多価不飽和脂肪酸が豊富で、15gで必須脂肪酸の1日目安量の大半を摂取することができます。
多価不飽和脂肪酸は通常の食生活では不足するものではありませんが、脂質の摂取量が少ない食生活の人にとっては、必須脂肪酸の手軽な摂取源となりそうです。
ピスタチオ
ピスタチオ(いり・味付) | 食事摂取基準比(18-64歳女性) | |
エネルギー | 92kcal | – |
カリウム | 150㎎ | 6%(目標量) |
ビタミンB1 | 0.06㎎ | 5%(推奨量) |
ビタミンB6 | 0.18㎎ | 16%(推奨量) |
*15gあたり、日本食品標準成分表2015年版(七訂)より作成 |
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
ピスタチオはカリウム、ビタミンB1、ビタミンB6を比較的多く含んでいます。
少量で1日に必要な分がとれる…といったものではありませんが、栄養素の摂取量をある程度底上げすることができそうです。
マカダミアナッツ
マカダミアナッツ(いり・味付) | 食事摂取基準比(18-64歳女性) | |
エネルギー | 108kcal | – |
脂質 | 11.5g | – |
*15gあたり、日本食品標準成分表2015年版(七訂)より作成 |
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
マカダミアナッツはナッツ類の中でも特に脂質が多く、76%を脂質が占めているのが特徴です。
そのため、重さあたりのエネルギーはバターに匹敵するほど。
とはいえバターと比較すると不飽和脂肪酸の割合が多く(バター29%⇔マカダミア83%)、生活習慣病のリスクにつながりにくい油といえそうです。
ピーナッツ(らっかせい)
らっかせい(いり) | 食事摂取基準比(18-64歳女性) | |
エネルギー | 88kcal | – |
ナイアシン | 4.1㎎ | 34-37%(推奨量) |
ビオチン | 15.8㎍ | 32%(目安量) |
*15gあたり、日本食品標準成分表2015年版(七訂)より作成 |
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
落花生は正確には豆の1種ですが、栄養素の特徴がナッツ類に近いため、ナッツ類として分類されています。
脂質のほか、ナイアシン、ビオチンといったビタミンが多く含まれています。
栄養価の高いナッツを活用しよう
ナッツは高カロリーではあるものの、栄養価が高く健康にも良い食品のひとつといえます。
ダイエットの妨げにならないよう、適量の範囲で取り入れるようにしたいですね。
まとめ
ダイエット中の間食としてのナッツ類は、やせる成分が含まれた特別な食品ということはありません。
クッキーやチョコレート、ケーキなどと比較すれば、噛み応えがあり、健康的な特徴を持つというメリットはあります。
その一方、脂質を多く含み、エネルギーの過剰摂取につながりやすいデメリットもあります。
適量を守り、「少し健康的なおやつ」として、食べすぎに注意しながら楽しむのがよさそうです。
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参考文献 文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報(マカダミアナッツ、クルミ、カシューナッツについて) 社団法人日本栄養士会監修:「食事バランスガイド」を活用した栄養教育・食育実践マニュアル.第一出版,2011. *)Bao Y, Han J, Hu FB, Giovannucci EL, Stampfer MJ, Willett WC, Fuchs CS. Association of nut consumption with total and cause-specific mortality. N Engl J Med. 2013 Nov 21;369(21):2001-11. |