糖質制限によるダイエットが流行したり、低糖質の食品が多数開発されたりと、摂取量を気にする人が増えている「糖質」ですが、健康維持のためには1日に最低でもどのくらいとる必要があるのでしょうか?
体に最低限必要な糖質の量と、ダイエット中の糖質摂取量のコントロールについて解説します。
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Contents
一日に必要な糖質の量は?
糖質はたんぱく質・脂質と並んで「3大栄養素」のひとつで、主にエネルギー源として働く栄養素ですが、健康維持のために「必ず摂取しなければいけない量」はあるのでしょうか?
糖質の摂取量「ゼロ」はだめ
糖質以外のたんぱく質や脂質もエネルギー源として利用できる栄養素ですので、糖質をとらなくても脂質やたんぱく質をとればよいのでは?と思われることもありますが、それは間違いです。
脳や神経系、赤血球などの組織は原則として糖質(グルコース、ブドウ糖)のみをエネルギー源としています。
そのため、糖質の摂取量をゼロにしてしまうとこれらの組織のエネルギー代謝がうまくいかなくなってしまいます。
1日に必要な糖質量は最低でも160g以上
脳、神経系、赤血球といった「原則糖質のみをエネルギー源とする組織」が必要とする糖質の量は1日に160g以上ともいわれています。
病的なレベルで糖質が不足すると、血糖値の低下によって発汗、ふるえ、疲労、脱力感、思考力の低下などの症状が起こることがあります。
さらに、ケトーシスと呼ばれる状態に陥って口臭や体臭、吐き気、疲労を引き起こすこともあり、また、アシドーシスと呼ばれる状態まで悪化すると命に危険が及ぶことも考えられます。
このような健康への悪影響を避けるためには、最低でもおよそ160g以上の糖質を食事から摂取する必要があります。
栄養素としての糖質と炭水化物について詳しく解説した記事はこちら
バランスの取れた食事の糖質量は?
「最低限必要な糖質量」とは別に、「栄養バランスの取れた食事」として目標となる糖質の摂取量も存在しますが、それぞれの数値には差があります。
栄養バランスをとるために必要な量と、最低限必要な量との違いを解説します。
摂取エネルギー全体の50~65%を糖質からとると栄養バランス的によい
日本人の食事摂取基準2020年版では、たんぱく質、脂質、炭水化物(糖質)それぞれからの摂取エネルギーの目標とする量を「摂取エネルギー全体に占める割合」で示しています。
炭水化物(糖質)は「摂取エネルギー全体の50~65%」が目標量となっています。
これを1日あたりの糖質量に換算すると、平均的な体格・活動強度(身体活動レベルⅡ)の女性(18~64歳)の場合、1日の推定エネルギー必要量は約2000kcal(1950~2050kcal)となっていますので、
糖質からとりたいエネルギー量=2000kcal×50~65%=1000~1300kcal
となります。
糖質は1gあたり4kcalのエネルギー源となりますので、目標量を糖質量に換算すると、
1日に取りたい糖質量=1000~1300kcal÷4kcal/g=250~325g
となり、平均的な体格・活動強度の女性(18~64歳)の場合、1日あたりおよそ250~325gの糖質の摂取が目標値とされています。
(平均的な体格・活動強度の男性(18~64歳)の場合、推定エネルギー必要量が約2650kcalとなるため、糖質エネルギーとしては1375~1723kcal、糖質量としては344~431gが目標値となります)
補足:そのほかの栄養素の目標となる摂取エネルギー比は脂質で20~30%、たんぱく質は49歳以下では13~20%となっています。
摂取目標量が最低限の必要量よりも多いのはなぜ?
体組織が最低限必要とする量は1日あたり160g以上である一方、日本人の食事摂取基準2020年版から計算された糖質の摂取目標量は少ない数値でも250gと差があるのはなぜでしょうか?
日本人の食事摂取基準2020年版では、たんぱく質や脂質の望ましい摂取量を定めたうえで、必要なエネルギーに対しての不足分を糖質(炭水化物)からのエネルギーで補う形をとっています。
たんぱく質や脂質は必須栄養素として一定以上の量が必要ですが、とりすぎによる悪影響も存在します。
体が必要とする最低限の糖質量に加えて、たんぱく質や脂質をとりすぎないように必要なエネルギーを確保するための糖質量が食事摂取基準で示されているような「バランスの取れた食事で望ましい糖質の量」といえるでしょう。
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ダイエット中、糖質の摂取量はどうする?
近年は糖質をターゲットにしたダイエット方法が人気のようです。
ある程度バランスの取れた食事では糖質エネルギーの占める割合は半分以上であり、カットしやすい部分といえるかもしれません。
ダイエット中は糖質の摂取量をどのように減らすのがよいのでしょうか。
最低限以下まで摂取制限をするのはよくない
大前提として、上で述べたような糖質の不足による健康への悪影響が懸念されるため、糖質の摂取源を必要最低限以下まで制限することは勧められません。
糖質制限によるダイエットであっても、最低ラインである1日160g以上の糖質摂取は確保するべきです。
まずは適正量まで減らしてみよう
糖質を減らしてダイエットをしたいという場合、まずは食事摂取基準が示すような適正な糖質の摂取量まで減らしてみるのがよいのではないでしょうか。
今までの食生活で糖質由来のエネルギーが多すぎた、という人の場合には、とりすぎの状態から適正量まで減らすだけでも摂取エネルギーの減少とそれによる体脂肪増加を抑制することができます。
適正量まで減らす程度ではあまり食事内容が変わらない、適正範囲であるのに体重は増え続けているというような場合には、糖質以外のエネルギー摂取源(たんぱく質や脂質、アルコール)が摂取エネルギー過剰の原因となっている可能性が高いので、糖質だけに限らず食事全体を見直すとよいでしょう。
食事内容としては問題ないけれどダイエットのために糖質の摂取を抑えたい、というときに最低ラインを超えない程度に糖質の摂取量を減らす選択肢をとるのがよさそうです。
糖質制限によるダイエットの仕組みや方法についてより詳しく解説した記事はこちら
糖質の多い食品とは?
食品はそれぞれ含まれる栄養成分が異なり、食品の種類によってほぼ糖質のみから構成されるものもあれば、糖質をほとんど含まないものまで様々です。
糖質を多く含む食品や料理の特徴を把握することで、糖質摂取量を抑えたいときでも食事選びがしやすくなります。
糖質の多い食品:食材として
食品の分類ではでんぷん質を多く含む米や小麦のような穀類、芋類、糖類を多く含む砂糖類が主な糖質の摂取源となります。
食品100gあたりの糖質量 (単糖当量) |
|
米(生) | 83.1g |
小麦粉(薄力粉) | 80.3g |
スパゲッティ(乾) | 73.4g |
じゃがいも(生) | 17.0g |
さつまいも(生) | 30.9g |
砂糖 | 104.2g |
はちみつ | 75.3g |
*日本食品標準成分表(八訂)より作成
糖質の多い食品:料理として
料理として糖質の多い食べ物を見てみると、ごはんやパンなどの「主食」砂糖類を比較的多く使うことの多い「菓子」や「嗜好飲料(ジュースやお酒など)」が糖質の摂取源となりやすくなっています。
食品100gあたりの糖質量 (単糖当量) |
|
白米ごはん | 38.1g |
食パン | 48.2g |
スパゲッティ(ゆで) | 31.3g |
チョコレート | 59.3g |
串だんご(みたらし) | 47.4g |
コーラ | 12.2g |
*日本食品標準成分表(八訂)より作成
糖質の少ない食品とは?
反対に、糖質の少ない食品とはどんなものでしょうか?
糖質の多い食品と組み合わせることで、栄養バランスの取れた食事にしやすくなります。
糖質の少ない食品:食材として
食品の分類では、たんぱく質や脂質を比較的多く含む一方で糖質をほとんど含まない動物性食品(牛乳を除く)と、水分量が多く糖質を含むエネルギー源となる栄養素が少ない野菜類(根菜を除く)・海藻類・きのこ類が挙げられます。
食品100gあたりの糖質量 (単糖当量) |
|
鶏もも肉(皮つき) | 0g |
たまご(生) | 0.3g |
ブロッコリー(生) | 2.4g |
トマト(生) | 4.7g |
わかめ(水戻し) | 0g |
しめじ(生) | 1.4g |
*日本食品標準成分表(八訂)より作成
糖質の少ない食品:料理として
料理の分類では、肉や魚のような食品を主に使った「主菜(メインおかず)」や、野菜・海藻・キノコなどを主に使った「副菜(サブのおかず)」が糖質の少ないものとなります。
ただし、主菜や副菜というのはかなり大まかな分け方であり、糖質の少ない食品をメインとする料理であっても、糖質の多い食品を合わせて使っていたり、味付けのために砂糖などの糖類をたくさん使っていたりするものでは糖質を多く含む場合もあります。
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最低限とりたい糖質量とは?身近な食品で例えると…
糖質の摂取量をコントロールする…とはいっても、食品に含まれる糖質量は外から見ただけではわからないため、糖質の摂取量を厳密に管理するのは難しいことです。
そこで、「料理単位」で食事の栄養素を管理する食事バランスガイドを活用して、最低限とりたい糖質量、バランスの取れた食事に必要な糖質量を把握してみてはいかがでしょうか?
食事バランスガイドを活用しよう
食事バランスガイドとは、厚生労働省と農林水産省が発表している「料理単位」で栄養バランスをとるためのガイドラインです。
食事バランスガイドでは、年齢や性別などで異なるエネルギー必要量に応じて、それぞれの料理の望ましい摂取量を「主食〇つ」といった個数でカウントする仕組みになっています。
糖質については、「主食」が主な摂取源と位置づけられています。
この主食の量をカウントすることでおおよその糖質の摂取量を把握することができます。
1日あたりおにぎり4個分は確保したい
食事バランスガイドでは炭水化物(糖質)40gに相当するごはん100g(おにぎり一個分、ごはん小盛1杯分)を「主食1つ」としています。
年齢、性別、日常的な運動量などによりエネルギー必要量は人それぞれ異なりますが、エネルギー必要量2000~2400kcalの基本形では1日あたり5~7つ(糖質量で200~280g)を摂取量の目安としています。
1日に最低限必要な糖質量は160g以上であることを考えると、1日に主食4つは確保したい最低ラインと考えることができます。
主食「1つ」に相当する食品と料理の例
- 白米ごはん…100g、おにぎり1個、お茶碗小盛1杯
- 食パン…4~6枚切り1枚
- 麺類…1/2玉
食事バランスガイドの考え方を取り入れると、日々の生活の中で、例えば朝と昼で主食3つ分を食べたから、夕食では必要な糖質を確保するために最低主食1つは食べたい、またはダイエット中だから主食は2つまでにしよう…といった管理がしやすくなりますので、ぜひ活用してみてくださいね。
糖質を上手に抑える食事の選び方
昼食や夕食など同じ「1食」でも、糖質を摂りすぎやすい料理の組み合わせ、そうでない組み合わせが存在します。
糖質の摂取量を抑えるコツを身に着けて、上手に糖質摂りすぎを避けましょう。
主食+主食の組み合わせを避ける
ラーメン+チャーハン、ハンバーガー+ポテトのような組み合わせは主食+主食や炭水化物+炭水化物の組み合わせであり、糖質に偏りやすくなっています。
組み合わせのどちらかをこのような組み合わせで不足しがちな「副菜(野菜のおかず)」に置き換えることで栄養バランスもとりやすく、糖質のとりすぎを避けることができます。
菓子類、嗜好飲料を控える
砂糖を多く含む菓子類や嗜好飲料(ジュースなど)は栄養バランスの面では不必要である一方で糖質エネルギーの過剰摂取の一因となります。
日々の楽しみの面も大きいものであるため、完全にゼロにする必要はありませんが、適量の範囲に収めることが望ましいでしょう。
食事バランスガイドでは、菓子・嗜好飲料合わせて1日に200kcal以内が一つの目安とされています。
ダイエット中の場合には1日に100kcal以内にする、など量を決めて楽しみましょう。
3食に分散させて摂取すると負担が少ないかも?
糖質の摂取量を減らしたい場合、1食で1日分の主食をまとめて食べるよりも1日3食に分散させるほうがおすすめです。
体は脳などへのエネルギー供給のために血糖値をなるべく一定に保とうとする働きがありますが、体内の糖分はあまり多くは貯めておけず、食後数時間程度しか持ちません。
体内で貯蔵された糖質が使い切られてしまうと軽い低血糖のような症状が起こることもありますので、1日あたりの糖質摂取量が同じであれば、数回に分けて摂取したほうが体への負担も少なく、挫折の原因になりにくいでしょう。
まとめ
ヒトの体には原則糖質のみをエネルギー源とする組織があり、体の機能を健康に保つために最低限必要な糖質量は1日あたり160g以上とされています。
糖質には絶対的に必要な量がある一方で、糖質からのエネルギー摂取はたんぱく質や脂質の過剰摂取を避けるという役割もあり、バランスの取れた食事ではエネルギー必要量に応じて250g以上をとることが望ましいとされています。
ダイエット中であっても、健康の維持のために最低限の糖質摂取量を確保すること、長期的には最低限ではなくほかの栄養素とのバランスが取れる量の糖質摂取が大事です。
今まで糖質からのエネルギー摂取が多かった人ではバランスの取れた食事にするだけでも糖質の過剰摂取を改善することができますので、まずは最低限まで減らすのではなくバランスの取れる量まで減らすことをおすすめします。
糖質は食材でいうと穀類やイモ類、砂糖類に、料理単位でいうと主食や菓子、嗜好飲料に多く含まれています。
糖質制限を行いたいときはこれらを中心に見直すとよいでしょう。
料理単位で食事のバランスを考える食事バランスガイドでは、糖質の摂取量の目安は通常の食事の場合1日でおにぎり5~7個相当、ダイエット中でも確保したい最低ラインはおよそ4個相当となっています。
そのほか、主食+主食の組み合わせを避けたり、菓子・嗜好飲料の量を減らしたりすることで健康的に糖質を控えることができ、将来の健康維持にも役立ちます。
糖質は悪者にされがちだが少なければ少ないほど良いというものではありません。
糖質そのものも体に必要な栄養素であり、ほかの栄養素が多すぎても健康リスクを高めることにつながります。
将来の健康も視野に入れつつ、健康的なダイエットを選択してくださいね。
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参考文献 吉田勉 監修. わかりやすい食品機能栄養学. 三共出版, 2010. 社団法人日本栄養士会監修:「食事バランスガイド」を活用した栄養教育・食育実践マニュアル.第一出版,2011. |