栄養価が高いイメージの牛乳は、ダイエットでは避けられることも。
ダイエット中は牛乳を飲まないほうがいいのでしょうか?
ダイエットと牛乳の関係と、太らないためのポイントを紹介します。
Contents
牛乳は太る?
結論から言うと、牛乳は飲み物としては比較的カロリーの高いものであり、たくさんの量を習慣的に飲んでいるという場合には、太る原因になりえます。
一方で、栄養価も高いため、ダイエット中だからと言って一切飲まないというのももったいないと考えます。
体脂肪は消費カロリーに対する摂取カロリーの過剰によって増加しますので、カロリーの収支がポイント。
ダイエット中に牛乳を取り入れるには、カロリー収支がプラスにならないよう、量や頻度、取り入れる牛乳の種類に気を配るとよいでしょう。
詳しい内容については、以下で解説します。
牛乳のカロリーと栄養素
普通牛乳 | 食事摂取基準比 (18-64歳女性) |
|
エネルギー | 134kcal | – |
たんぱく質 | 6.6g | 13.2%(推奨量50g) |
脂質 | 7.6g | – |
炭水化物 | 9.6g | – |
食物繊維 | 0g | 0%(目標量18g以上) |
カルシウム | 220㎎ | 34%(推奨量650㎎) |
ビタミンB2 | 0.30㎎ | 25%(推奨量1.2mg) |
ビタミンB12 | 0.6㎍ | 25%(推奨量2.4%) |
パントテン酸 | 1.10㎎ | 22%(目安量5㎎) |
*200g(約コップ1杯)あたり、日本食品標準成分表2015年版(七訂)、日本人の食事摂取基準(2020年版)より作成 |
カロリー
200g(コップ1杯、牛乳瓶1本、小さい紙パック1本)のエネルギーは134kcal。
飲みものとしては高めですが、その分栄養素が豊富に含まれていると考えることができます。
■コップ1杯(200g)あたりのカロリーと栄養価
普通牛乳 | |
エネルギー | 134kcal |
たんぱく質 | 6.6g |
脂質 | 7.6g |
炭水化物 | 9.6g |
*200g(約コップ1杯)あたり、日本食品標準成分表2015年版(七訂)より作成
牛乳に含まれるたんぱく質は主にカゼインやホエイと呼ばれるものです。
脂質は飽和脂肪酸が中心となっており、炭水化物の多くは乳糖が占めています。
カルシウム
牛乳の最も大きな特徴といえるのが、カルシウムです。
カルシウムは骨の主な成分のひとつであり、十分なカルシウムの摂取は骨の健康を保つためにも大事なポイントです。
カルシウムといえば牛乳のイメージが強いですが、実際にはカルシウムを含む食品は牛乳以外にも多数存在します。
100gあたりの カルシウム量 |
1回使用量 | 1食あたりの カルシウム量 |
|
牛乳 | 110㎎ | 200g(コップ1杯) | 220㎎ |
煮干し | 2200㎎ | 5g(1尾0.5g10尾) | 110㎎ |
しらす | 280㎎ | 10g(大さじ2) | 28㎎ |
こまつな | 170㎎ | 100g(1/2束) | 170㎎ |
木綿豆腐 | 93㎎ | 150g(小1パック) | 140㎎ |
日本食品標準成分表2015年版(七訂)より作成 |
牛乳は100gあたりのカルシウム量は特別に多いものではありませんが、液体であるためにたくさんの量を摂取しやすいこと、日常的に取り入れやすいところが利点といえそうです。
また、カルシウムの「吸収率」も利点のひとつ。
1998年に行われた牛乳、小魚、野菜といった食品におけるカルシウムの吸収率を調べた研究では、牛乳がおよそ40%、小魚では33%、野菜では19%であった*)とされています。
この差は牛乳に含まれるカゼインホスホペプチド(CPP)や乳糖などのはたらきによってカルシウムが体内に運ばれやすい状態になるためと考えられています。
牛乳だけがカルシウムの摂取源になるわけではありませんが、カルシウムの含有量だけでなく、吸収率の高さを考えても、牛乳はカルシウム摂取に適した食品のひとつといえそうです。
ビタミン
カルシウムに次いで、ビタミンB2、ビタミンB12、パントテン酸などの各種ビタミンも比較的豊富に含まれています。
■コップ1杯(200g)あたりのカロリーと栄養価
普通牛乳 | 食事摂取基準比 (18-64歳女性) |
|
ビタミンB2 | 0.30㎎ | 25%(推奨量1.2mg) |
ビタミンB12 | 0.6㎍ | 25%(推奨量2.4%) |
パントテン酸 | 1.10㎎ | 22%(目安量5㎎) |
*200g(約コップ1杯)あたり、日本食品標準成分表2015年版(七訂)、日本人の食事摂取基準(2020年版)より作成
1杯の牛乳で1日分がとれる、というわけではありませんが、豊富な水溶性ビタミンも牛乳の魅力のひとつといえそうです。
牛乳のメリット
牛乳は栄養価が高く、摂取するメリットの大きい食品です。
メリットとして大きいのは、たんぱく質やカルシウムの良い摂取源になること。
特にカルシウムに関しては、世代を問わず不足気味なので、意識してとりたい栄養素です。
そのため、ダイエット中にあっても、牛乳は「なるべく取らないほうが良い食品」というわけではありません。
たんぱく質が摂れる
牛乳の栄養的魅力のひとつに、たんぱく質を手軽にとれるという点が挙げられます。
たんぱく質の主な摂取源となる肉や魚、たまごなどの食品と比較すると、牛乳に含まれるたんぱく質の重さあたりの含有量はそう多いものではありませんが、飲み物として摂取できるところが利点です。
食が細く肉や魚が十分に食べられないという場合でも、飲み物としてとれるために負担が少ないのが魅力。
特に、必要な栄養に対して体の小さい子どもや食の細くなった高齢者の方などにはとても有用な食品です。
カルシウムが豊富
カルシウムは年齢に問わず、骨の健康にかかわる栄養素です。
成長途中の子どもたちにとって、カルシウムは必要不可欠な栄養素です。
そのため、体重あたりのカルシウムの必要量は大人よりも子どもで多く、特に12歳~14歳では大人の1.5倍近くにもなります。
なるべく効率よく、たくさんのカルシウムが必要な世代の学校給食に牛乳が定番なのはこういった理由があるためです。
また、成長する時期を過ぎた大人であっても、全身の骨は日々あたらしく作り替えられるため、カルシウムの補給が必要です。
将来の骨粗しょう症の予防のためにも、若いうちからしっかりとカルシウムをとることが大事です。
平成29年度の国民健康・栄養調査の結果からも、日本人のカルシウム摂取量は不足傾向がみられていますので、牛乳はカルシウムの摂取量増加に役立てたい食品です。
牛乳のデメリット
栄養価が高い牛乳ですが、その一方で、デメリットになりうる特徴も持っています。
- ダイエット中の飲み物としてはカロリーが高い
- 体質的に飲めない場合もある
このように、飲む人やその状況によってはオススメしにくい場合も。
それぞれについて詳しく解説します。
飲み物としては高カロリー
牛乳は飲み物として飲む場合も多い食品ですが、飲み物としてはカロリーの高い部類に入るため、飲む量や頻度が多い場合には、摂取カロリーをとりすぎる原因となる場合もあります。
飲む機会の多い飲み物のエネルギーを比較したものを紹介します。
■飲料のカロリー
食品 | エネルギー |
牛乳 | 67kcal |
コーラ | 46kcal |
オレンジジュース(濃縮還元) | 42kcal |
コーヒー | 4kcal |
緑茶 | 2kcal |
*100gあたり、日本食品標準成分表2015年版(七訂)より作成
牛乳を飲み物として考えた場合、牛乳は比較的エネルギーの高いものになります。
飽和脂肪酸が多い
牛乳はカルシウムなどの効果的な摂取源となるいっぽうで、取りすぎが生活習慣病リスクと関連する「飽和脂肪酸」を比較的多く含む食品でもあります。
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、1日あたりの飽和脂肪酸摂取量は総摂取エネルギーの7%以下にとどめることが目標量として定められています。
これは、1日に2000kcalを摂取する人の場合、140kcalぶん、重さにして15.5gにあたります。
200mlの牛乳から摂取される飽和脂肪酸は4.7gほど。
飽和脂肪酸はほかの食品からも摂取されるもので、コップ1杯程度の牛乳では、過剰摂取の直接的な原因にはなりにくいと考えられますが、気になる人は低脂肪乳などを選ぶのもリスクを下げるひとつの方法になります。
体質的に合わない場合も
牛乳は栄養価の高い食品である一方、乳アレルギーや乳糖不耐症によって体質的に摂取することができない人もいる食品でもあります。
ダイエットに直接の関係はありませんが、取り扱いに難しいところがあることは知っておきたい食品でもあります。
乳アレルギー
牛乳及び乳製品はアレルギーの原因食品となることがあります。
発生頻度はたまごに次いで多く、乳幼児で多い傾向があります。
乳アレルギーは牛乳の成分に対して免疫が過剰反応を起こして様々な症状があらわれるもので、症状の重さによっては命にかかわる重大な疾患です。
そのため、牛乳が栄養素に富んだ食品だとしても、医師の指示なしに摂取するべきではありません。
乳糖不耐症
乳糖不耐症は牛乳に含まれる糖質である乳糖を消化吸収できない体質を指します。
乳糖不耐症の人では、乳糖が十分に消化されずに長官を刺激するため、腹痛や下痢などの症状を起こすこともあります。
乳糖不耐症だけど牛乳を飲みたいという場合には、腸管への刺激を少なくする摂取方法をとるのが良いでしょう。
- 冷たい牛乳ではなく温める
- 少量ずつ飲む
- 加熱調理を行う料理に使う
- チーズやヨーグルトなどを選ぶ(加工中に乳糖が取り除かれたり分解される)
このような対処を行った場合でも下痢症状が起こる場合には、無理に牛乳をとるのは避けたほうが安心です。
牛乳で太らないためのポイント
牛乳はカルシウムの摂取源としても優秀であり、ダイエット中だからと言って飲んではいけないものではありません。
ダイエットの妨げにならないように食事に牛乳を取り入れる方法を考えてみましょう。
低脂肪乳・無脂肪乳を取り入れる
低脂肪乳や無脂肪乳は牛乳から脂肪分を減らしたり、なくしたりしたもので、その分のカロリーが低く抑えられます。
「低脂肪乳」「無脂肪乳」を選ぶことで、摂取エネルギーを抑えたい人、飽和脂肪酸の摂取量が気になる人(血中LDLコレステロール値が高いなどの理由)でも、エネルギーや飽和脂肪酸の摂取量を抑えつつ牛乳の栄養素を摂取することができます。
普通牛乳 | 低脂肪乳 | 脱脂乳 | |
エネルギー | 67kcal | 46kcal | 34kcal |
たんぱく質 | 3.3g | 3.8g | 3.4g |
脂質 | 3.8g | 1.0g | 0.1g |
飽和脂肪酸 | 2.33g | 0.67g | 0.05g |
炭水化物 | 4.8g | 5.5g | 4.8g |
カルシウム | 110mg | 130mg | 100mg |
*100gあたり、日本食品標準成分表2015年版(七訂)より作成
低脂肪乳では脂質の半分以上がカットされ、エネルギーも2/3ほどに抑えられています。
無脂肪乳(脱脂乳)ではさらに少なく、エネルギーは半分ほどになっています。
たんぱく質やカルシウムといった脂質以外の栄養素に大きな変化はないので、栄養素の摂取にも適しています。
水替わりにしない
牛乳は飲み物としてはカロリーが高いため、ダイエット中は飲み水の代わりに牛乳を飲むのは避けたほうが良いでしょう。
食事バランスガイドでは、乳製品の摂取目安は牛乳として200mlほど。
ダイエット中の場合、1日にコップ1杯以上の牛乳摂取はカルシウム等のメリットよりも、カロリー摂取過剰のデメリットのほうが大きくなってしまうかもしれません。
ダイエット中は牛乳は飲み放題にせず、量を決めて取り入れると健康的です。
カロリー収支を管理する
太るというのは運動などによる消費エネルギーよりも食事などからの摂取エネルギーが上回ったことで、余ったエネルギーが体脂肪として蓄積されてしまうことです。
つまり、本質は一定期間を通しての消費エネルギーと摂取エネルギーのバランスであり、牛乳を含め、特定の食品が原因で太るということはありません。
牛乳を飲んでいても、カロリー収支がマイナスであればダイエットは成立します。
200ml(コップ1杯または牛乳瓶1本または小パック1本)を毎日飲んでいたとしても牛乳から摂取するエネルギーは134kcalほど。
自分の消費カロリーと摂取カロリーを
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まとめ
牛乳だけでなく、特定の食品によって太る、ということはありませんが、体脂肪が増えてしまうのは何らかの理由によって摂取エネルギーが過剰になっている(または消費エネルギーが少ない)ためです。
摂取エネルギーを増やしている原因は人それぞれ。
自分が普段の食事で何を食べすぎているのか、どれが余分なのかを見極められると理想的です。
特に、砂糖類やアルコール、過剰な量の油脂は減らしても必須栄養素の不足につながりにくいので、牛乳よりも先に見直すのがおすすめです。
牛乳自体は魅力の多い食品ですので、上手に取り入れていきたいですね。
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厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書 文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」 社団法人日本栄養士会監修:「食事バランスガイド」を活用した栄養教育・食育実践マニュアル.第一出版,2011. *)上西 一弘, 江澤 郁子, 梶本 雅俊, 土屋 文安.日本人若年成人女性における牛乳, 小魚 (ワカサギ, イワシ), 野菜 (コマツナ, モロヘイヤ, オカヒジキ) のカルシウム吸収率 日本栄養・食糧学会誌 51巻5号(1998) |