投稿日: 2022.07.08 | 最終更新日: 2023.08.17

ケトジェニックダイエットとは?やり方とメリット・デメリットを解説

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人気のダイエット方法のひとつにケトジェニックダイエットというものがあります。
従来の摂取カロリーを制限する方法とは異なるメカニズムで痩せるとされており、有名なアスリートが取り入れているなど、話題のダイエット方法ですが、どんな方法で、どのくらい効果が得られるのでしょうか?

ケトジェニックダイエットについて、やり方とその効果、メリットとデメリットについて解説します。

ケトジェニックダイエットとは

ケトジェニックダイエットとは、「超低炭水化物・高脂肪食」によるダイエット方法のこと。
従来のダイエット方法では脂質が特に避けられてきたものであるのに対して、ケトジェニックダイエットで避けるのは主に炭水化物であるところに特徴があります。

ケトジェニックダイエットはどのような仕組みで痩せるダイエット方法なのでしょうか?

ケトジェニックダイエットの仕組み

ケトジェニックダイエットは、「糖質の摂取を制限することで脂質をエネルギー源として消費する体の状態を作ることで体脂肪を消費して痩せる」という考え方に基づくものです。

実際に体重や体脂肪が減るメカニズムについては後述しますが、糖質(炭水化物)由来のエネルギーを極端に少なくすることで脂質由来のエネルギー源(ケトン体)を利用する状態にするための「食事制限」を行うことがメインの取り組みとなります。

ケトン体とは

ケトジェニックダイエットでは、糖質ではなく脂質由来のエネルギー源である「ケトン体」を主なエネルギー源にすることを目指しています。

ケトン体とは、体内で脂肪組織などの脂質から生成するアセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸、アセトンの3つを指す言葉で、飢餓時や糖の不足時にエネルギー源となる物質です。

ケトーシスとは

体内、特に血液中のケトン体量が高くなった状態を「ケトーシス」といいます。
ケトジェニックダイエットでは食事制限によってこのケトーシスの状態を引き起こします。

ケトジェニックダイエットでおこるケトーシスではあまり心配する必要はないという見解も一部でありますが、一般的にケトーシスが進行すると酸性物質であるケトン体が血液のpHを酸性に傾け、「ケトアシドーシス」になる場合もあり、重症では生命にかかわる場合もあることから、通常の生活においては「ケトーシス」は健康上望ましい状態とは言えないことに注意が必要です。

通常のカロリー制限ダイエットとの違い

ケトジェニックダイエットと従来の一般的なダイエット方法とでは、どちらも食事内容に制限を加えるという点は同じですが、制限を行うポイントが異なります。

従来の一般的なダイエット方法は「摂取エネルギー(カロリー)」を制限するものです。
エネルギー源となる栄養素である炭水化物、脂質、たんぱく質(特に重さあたりのエネルギーが高い脂質)の摂取量を控えることとされています。

一方、ケトジェニックダイエットで制限されるのは炭水化物(糖質)であり、脂質やたんぱく質はむしろ摂取量を増やすように指示される場合もあります。

糖質制限ダイエットとの違い

ケトジェニックダイエットと糖質制限ダイエットはどちらも「糖質の摂取量を制限する」という意味で似たダイエット方法となっていますが、両者には「やせるメカニズム」の考え方などに違いがあるようです。

糖質制限は食後の血糖値が上がることで体脂肪が合成されるという前提のもと、糖質の摂取量を減らすことで食後の血糖値の上昇を抑え、体脂肪の蓄積を防ぐ、体脂肪を減らすという考え方がもとになっています。
糖質の制限は1日あたりの摂取重量で示されることが多く、その数値は提唱する人などにより様々です。

一方でケトジェニックダイエットでは血糖値ではなくケトン体の産生に注目した方法です。
糖質の摂取量は摂取エネルギー全体に占める割合で示されることが多く、糖質の摂取量を制限するという方法では似ているものの、異なるダイエット方法といえそうです。

ケトジェニックダイエットのやり方

ケトジェニックダイエットはどのように進めるのでしょうか?
ケトジェニックダイエットの食事のルールや実施期間、食べ物の選択について解説します。

糖質を減らし、たんぱく質と脂質の摂取量を増やす

ケトジェニックダイエットでは、エネルギー源となる栄養素の脂質、たんぱく質、炭水化物(糖質)の摂取エネルギーにおける割合が決まっています。

提唱者や時代によっても異なりますが、ケトジェニックダイエットで指示される摂取エネルギー比率の例を挙げると

  • 脂質…60%
  • たんぱく質…30%
  • 炭水化物…10%

となっています。

対して、日本人の食事摂取基準2020年版で示されている、一般的に「バランスが良い」とされるエネルギー比率は

  • 脂質…20~30%
  • たんぱく質…13~20%(年齢区分により差あり)
  • 炭水化物…50~65%

となっており、ケトジェニックダイエットで指示される栄養素のバランスは一般的に言われる「健康的な食事バランス」と比較してかなり異なるものであることがわかります。

*補足:令和元年度の国民健康・栄養調査によると、日本人の平均的な食事の摂取バランスはおおむね日本人の食事摂取基準2020年版の基準を満たしているため、平均的な食生活=おおむねバランスが取れているもの と考えて差し支えありません。

ケトジェニックダイエットを行う期間の目安

ケトジェニックダイエットを行う期間について、明確なルールはありませんが、数週間~数か月程度が一つの目安となります。

体重の変化などの効果は数日程度では期待できないため、最低でも数週間程度の継続が必要とされています。
一方で、通常の食習慣と大きく異なるケトジェニックダイエットの食事を長期的に続けることも現実的ではないことから、数か月程度までが実施可能な範囲と考えられます。

ケトジェニックダイエットで避ける食べ物

ケトジェニックダイエットでは炭水化物の摂取量が厳しく制限されているため、基本的に炭水化物を多く含む食品は避けるべきものとなります。

炭水化物を多く含む食品としては

  • 米、小麦などの穀類
  • 芋や根菜類
  • 果物類
  • 砂糖類

などが挙げられます。
メニュー単位では、ごはんや麺類のような「主食」のほか、「果物」「菓子類」などが該当します。

ケトジェニックダイエットで積極的にとる食べ物

炭水化物の摂取量が厳しく制限されている一方で、たんぱく質や脂質を多く含む食品は制限がないか、または十分な摂取を求められます。

たんぱく質を多く含む食品としては

  • 肉類
  • 魚介類
  • たまご
  • 乳製品
  • 大豆製品(比較的炭水化物も多く含む)

脂質を多く含む食品としては

  • バターや調理用オイルなどの油脂類
  • 肉や魚の脂身

などが挙げられます。
メニュー単位では、メインのおかずである「主菜」のほか、「乳製品」などがあてはまります。

また、炭水化物の含有量が少ない食品として、

  • 野菜類(根菜を除く)
  • キノコ類
  • 海藻類

といった食品も推奨されています。

ケトジェニックダイエットのメリット

通常の食事とは大きく異なる食事となるケトジェニックダイエットには、通常のダイエットと比較してどのようなメリットがあるのでしょうか?

早期に体重の減少がみられる

ケトジェニックダイエットでは開始後の比較的早い段階で数㎏程度のまとまった体重減少がみられることがあり、その後のダイエット継続へのモチベーションになりやすい、という利点があります。

このまとまった体重減少には炭水化物の摂取量を厳しく制限することにより、体内で貯蔵された糖質であるグリコーゲンが消費され、それに伴ってグリコーゲンと結合していた水分も排出されることが関係しています。
グリコーゲンの消費によって排出される水分量が比較的大きく、ケトジェニックダイエットによる体重の減少を大きく見せると考えられています。

本来のターゲットである体脂肪とは異なる部分での体重の減少ではありますが、実際に効果が数値にあらわれるのはうれしいポイントといえそうです。

食事メニューを豪華にできる

ケトジェニックダイエットでは従来のダイエット方法に比べて、食事面での不満が出にくいかもしれません。

摂取エネルギーに着目した従来のダイエット方法では、特に重さあたりのエネルギーが高い「脂質」を減らすのが主流でした。

普段の食事から脂質を減らそうとすると、揚げ物は焼き料理に、肉や魚は脂の少ない部位に、またはメインのおかずは量を減らして…といったように、「質素な食事」になりやすかったといえます。

一方でケトジェニックダイエットでは、制限するのは炭水化物であり、料理でいうとごはんや麺といった主食は減らしても、おかず類は減らす必要はなく、場合によっては増やす場合もあり、むしろ「豪華な食事」になりやすい特徴があります。

主食が好き!という人には厳しいダイエット方法ですが、脂質を減らすダイエット方法と比較して食事制限による負担を感じにくく続けやすいという人も少なくなさそうです。

ケトジェニックダイエットのデメリット

早い時期の体重減少や食事内容によってモチベーションが保ちやすいケトジェニックダイエットですが、デメリットにはどんなものがあるでしょうか?

従来のダイエット法と大きく異なるがゆえに体への負担が大きかったり、食事内容によっては金銭的な負担が大きくなったりしやすいようです。

体調不良の懸念がある

ケトジェニックダイエットは必須栄養素のひとつである炭水化物(糖質)を厳格に制限したダイエット方法です。
摂取する栄養素のバランスが大きく変わることで身体的にも様々な症状が出ることが2021年の論文*1)でも報告されています。

ケトジェニックダイエットに関して報告された有害事象には短期的に起こるものと、長期間続けた場合に起こるものとに分けることができます。

短期的に起こるものとしては、

  • 脱水症
  • 炭水化物制限による低血糖
  • 強い眠気や意識障害
  • ケトーシスによる口臭
  • 吐き気や嘔吐
  • 高脂肪な食事による下痢や便秘などの胃腸障害
  • 高尿酸血症

などが報告されています。

長期的に起こるものとしては、

  • たんぱく質摂取量が不十分な場合の低タンパク血症
  • カルシウムの摂取量低下による低カルシウム血症及び骨損傷
  • おそらく高脂肪な食事によるLDLコレステロールの増加
  • 慢性アシドーシスや脱水による尿路結石症
  • 急激な体重減少による胆石
  • タンパク質摂取が不十分な場合の脱毛

などが報告されています。

いずれも「報告があった」というものであり、すべての人に必ず起こるというものではありませんが、ケトジェニックダイエットを行う際はこのようなことが起こる恐れがあるということを把握しておきたいですね。

長期的な取り組みには適していない

ケトジェニックダイエットでは糖質の厳格な制限により心身への負担が大きく、長期の継続が難しいという点が挙げられます。

もちろん、強い意志を持って継続できるという人もいないわけではないでしょうが、万人が長く続けられる方法とはいいにくいと考えます。

食費が高くなる傾向がある

加えて、食事内容の変化から、経済的な負担も大きくなりやすい特徴があります。

制限される糖質の摂取源となる米や小麦などの穀類と比較すると、摂取が推奨される肉・魚類は重さあたりの価格が高く、同じ量を食べようとすると食費が上がることが懸念されます。

短期的にはさほど大きな影響ではありませんが、毎日の食事となると無視できない負担になることも考えられます。

ダイエット方法としてオススメできるか?

メリットとデメリットを踏まえて、ケトジェニックダイエットはダイエット方法として積極的に取り入れるべきものといえるでしょうか?

ケトジェニックダイエットでなければ得られない効果はあるか、健康的に痩せることはできるか整理します。

ダイエット効果はカロリー制限と同じ

ケトジェニックダイエットは糖質の摂取量を減らすことにより脂肪を消費する状態を作ることで痩せるという考え方がもととなっています。

しかし、上で紹介した2021年の研究*1)では、400件を超える研究からケトジェニックダイエットのメカニズムや効果について分析した結果、ケトジェニックダイエットで体重の減少が起こるメカニズムは「食欲が落ちて摂取エネルギーが減少するため」としています。

また、ケトジェニックダイエットに限ったものではありませんが、糖質を制限するダイエット方法と栄養バランスの取れたダイエット方法では、摂取エネルギーが同じであれば糖質の比率が低くても、低くなくても、体重の減少にはほとんど差はなかったという報告*2)があります。

つまり、ケトジェニックダイエットで糖質を制限した場合でも、一般的なダイエットでも、摂取エネルギーが減ることで体重が減少するという仕組みは同じと考えられるということです。

どちらのダイエット方法も摂取エネルギーを減らすための仕組みは同じであり、違いはどのように食事にアプローチするかという点で、特別にケトジェニックダイエットの効果が優れているとは言えないようです。

身体への負担が大きい

特定の栄養素を制限しない通常のカロリー制限によるダイエット方法と比較して、ケトジェニックダイエットでは糖質が不足することによる負担が現れやすくなっています。

近年は糖質の摂取量について、少ないほど良いというような風潮がありますが、必須栄養素である以上、体が必要とする量を下回るほど体に負担がかかります。

脳や神経系、赤血球などの組織は原則として糖のみをエネルギー源としており、これらの組織が必要とする糖の量は1日あたり160g以上とされます。

一方、ケトジェニックダイエットでは、糖質の摂取量は摂取エネルギーの10%程度とされています。
平均的な体格・身体活動量の成人男性および成人女性の必要とするエネルギー量はそれぞれ約2650kcalと約2000kcal(年齢区分によって差あり)ですが、このエネルギー量の10%を糖質からとるとすると、その量は66g、50gとなり、脳などの組織が必要とする量は満たせません。

不足する糖の代わりにケトン体がエネルギー源として利用されたとしても、糖が不足することによる低血糖症状や意識障害などの有害事象が起こらないわけではありません。

通常のカロリー制限によるダイエットと同程度の摂取エネルギーをカットした場合、ケトジェニックダイエットでは糖質の不足による有害事象が上乗せされる可能性が高くなります。

長期的に見ても健康的なダイエットではない

ケトジェニックダイエットでは、生活習慣病などの長期的な健康への悪影響も懸念点のひとつです。

日本人の食事摂取基準2020年版で提示されるような、一般的に健康的といわれる食事の栄養バランスは、

  • 各種栄養素の不足や過剰の予防
  • 生活習慣病の発症予防

などを目的として設定されています。

この一般的な栄養バランスから大きく離れた内容となるケトジェニックダイエットでは、炭水化物(糖質)の不足だけでなく、たんぱく質、脂質の過剰も起こりやすくなります。

ケトジェニックダイエットでは制限がなかったり、積極的な摂取を勧められたりするたんぱく質も脂質も、摂取量や摂取エネルギーに対する割合が増えすぎたりすると生活習慣病のリスクを高めることが知られており、どんな栄養素も適量範囲での摂取が大事です。

実行する場合は体調管理を意識して行う

ケトジェニックダイエットは、

  • 摂取エネルギーが同じなら通常のダイエットと効果は同等
  • 体が必要とする糖が不足することでの有害事象がある
  • 指示される栄養バランスが疾病リスクの低い栄養バランスと大きく異なる

…といったことから、ダイエット方法として積極的におすすめできるものではないと考えます。

それでもケトジェニックダイエットを試してみたい…という場合には、自分の体調をよく観察しながら無理のない範囲で行い、有害事象が現れたら直ちに中止することを念頭に置いて実施するようにしましょう。

まとめ

ケトジェニックダイエットは炭水化物を摂取エネルギーの10%に制限する・脂質やたんぱく質は制限しないか十分にとるといったルールのもと行うダイエット方法です。

体の主なエネルギー源を炭水化物から脂質由来のケトン体に切り替えることで体脂肪を減らすという考え方に基づいていますが、実際のダイエット効果は摂取エネルギーの減少によるものと分析されています。

ケトジェニックダイエットでは初期の体重減少や推奨される食事内容からモチベーションが保ちやすいというメリットはありますが、炭水化物の不足による有害事象も起こりやすく、長期に続けると生活習慣病のリスクも無視できないことからも、必ずしも優れたダイエット方法であるとは言えません。

健康的なダイエットを目指す場合には推奨できる方法ではありません。
実施の際は体調に気を配りながら行うことを強く勧めます。

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参考文献

吉田勉 監修. わかりやすい食品機能栄養学. 三共出版, 2010.

厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書

厚生労働省:「国民健康・栄養調査」

文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」

*1)Ashtary-Larky D, Bagheri R, Bavi H, et al. Ketogenic diets, physical activity and body composition: a review [published online ahead of print, 2021 Jul 12]. Br J Nutr. 2021;1-23. doi:10.1017/S0007114521002609

*2)Low carbohydrate versus isoenergetic balanced diets for reducing weight and cardiovascular risk: a systematic review and meta-analysis. Naude CE, Schoonees A, Senekal M, Young T, Garner P, Volmink J.PLoS One. 2014 Jul 9;9(7):e100652.

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。