「低GI食品」という表示を見たことはありませんか?
「低カロリー」とは別の指標で、血糖値を上げにくい食品のことを指します。
ダイエットに有用な食品のひとつとして注目されることがありますが、その取り入れ方には注意が必要です。
Contents
GI(グリセミックインデックス)とは
GIは「グリセミック・インデックス」の略称で、
糖質量を50gにそろえたときの食材ごとの「食後の血糖値の上がり方」を面積で比較し、示す数値です。
血糖値とは
「血糖値」とは、血液中のブドウ糖(グルコース)の濃度を表す数値です。
ブドウ糖は全身の組織のエネルギー源として、空腹時でも一定レベルの濃度を保っていますが、
食後、食べ物に含まれるブドウ糖が血管内に吸収されると一時的に濃度が上がりますが、2時間ほどで空腹時のレベルまで下がります。
血糖値が高いことによるリスク
食後に一時的に血糖値が上がること自体は当然のことで、問題のあることではありません。
ただ、血糖値が高い状態が継続しすぎると、血管にダメージを与えてしまい、長期にわたると動脈硬化や網膜症などのトラブルを引き起こすこともあります。
血糖値が一定以上高い状態が継続する状態を「糖尿病」といいます。
GIの測定方法
基準となる食品(ブドウ糖や白パン、白米など)を糖質量が50gになる量にして食べたあと120分の血糖値の上がり方を示した曲線(血糖上昇曲線)から得られる面積(血糖上昇曲線下面積)を100として、
GIを調べたい食品を糖質量が50gになる量にして食べた時の血糖上昇曲線下面積がどの程度大きいかを示しています。
同じ糖質量でも、食品によって血糖値へ与える影響の違いを表しており、GIの数値が大きいほど血糖値を上げやすく、GIの数値が小さいほど血糖値へ与える影響が少ないことを示しています。
GI値は複数人の血糖上昇曲線下面積の平均値
食品の「エネルギー(カロリー)」や「栄養素含有量」は、物質の量を測るため、全く同じサンプルを使えば得られる数値(エネルギー量や栄養素の量)に大きなズレは出ません。
しかし、GIは人の体の反応(食後血糖値)を通して食材を見るため、食材が全く同じものであっても、得られるGIの数値はズレが生じます。
また、糖尿病など、健康な人に比べて血糖値が上がりやすい人では高い値が出てしまうため、GIを測るときには原則として健康な人10人以上のデータを平均化して算出します。
それでも調査ごとに差が出ることも多いため、GI値は「あくまで目安」と考えるのがいいでしょう。
GIの基準となる食品に注意
GIの数値は、基準となる食品と比べた時の割合です。
現状、GIを測るときの基準となる食品は基本的にはブドウ糖(グルコース)ですが、白パン、白米ごはんなど、調査によってバラバラです。
これらの中ではブドウ糖が最もGI値が高く、ブドウ糖を100とすると、白パンは75、白米ごはんは73となります。
そのため、ブドウ糖ではなく白パンや白米ごはんを基準とした調査では、ブドウ糖を基準とした場合に比べてGIが高くなりがちです。
基準となる食品がなんであるか、ということを明示せずにGI値を掲載している情報はあまり正確なものとはいえないため、注意が必要です。
ブドウ糖=砂糖ではない
誤解されがちですが、ブドウ糖=砂糖ではありません。
ブドウ糖はグルコースという物質で、料理などに使われる機会はそう多くありません。
一般的に食事に使われる上白糖やグラニュー糖といった砂糖はショ糖(スクロース)という物質です。
ショ糖(スクロース)はブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)が結合したものです。
違う物質なので、当然、体内でのふるまいも異なり、血糖値の上がり方も変わります。
ブドウ糖のGIを100とすると、砂糖は65。砂糖のGIは意外にも低いのです。
特定の食品のGI値を紹介する際に、ブドウ糖と比較して「低い!」と示すものがありますが、ブドウ糖はあまり使われない甘味料であり砂糖とは違うもの、ということを知らないと、誤解しやすいので注意しましょう。
GIが測れる食品と測れない食品
GIは「糖質50gあたり」の「血糖値の上昇具合」を見るものなので、糖質がそもそも含まれていない食品(油脂など)では測ることができません。
また、糖質が存在していたとしても、その量が少なく、計測のために「糖質50gに相当する量」を食べることが現実的でない食品もあります。
GIは基本的には炭水化物を多く含む穀類や菓子類で使う数値、と考えましょう。
低GI食品の定義と基準
「低GI食品」という表示のついた食品が販売されています。
「低GI」とは、実際にはどのくらいのGIのものを指すのでしょうか?
様々な食品のGI値のデータベース化しているシドニー大学では、
GI | 分類 |
70以上 | 高GI |
56~69 | 中GI |
55以下 | 低GI |
としています。
身近な食品のGI値と一覧
身近な食品のGI値(基準:ブドウ糖)を表にしました。
食品名 | GI値 |
ブドウ糖 | 103±3 |
コーンフレーク | 81±6 |
じゃがいも(ゆで) | 78±4 |
白パン | 75±2 |
全粒粉パン | 74±2 |
白飯 | 73±4 |
玄米ごはん | 68±4 |
砂糖(ショ糖) | 65±4 |
じゃがいも(フライ) | 63±5 |
うどん | 55±7 |
バナナ | 51±3 |
スパゲティ | 49±2 |
表の数値は参考文献*1)より引用
ここに乗っていない食品は、シドニー大学のデータベースからも調べることができます。
→シドニー大学 グリセミックインデックス データベース(英語サイト)
GI値は食べ合わせ・調理法でも変化する
GI値は食事の組み合わせや調理法でも変化することが知られています。
例えば白ごはんのみの食事と比較すると、山芋や納豆といった粘りのある食品や食物繊維が豊富な食品を一緒に食べたり、油を使った調理にすることでGIは下がる*2)ことが分かっています。
GI値が高い・低い食事の影響
低GI食品は太りにくい、糖尿病になりにくい食品…といわれることがあります。
それぞれ、本当なのでしょうか?一つずつ解説します。
GIが低いと太りにくい=嘘
残念ながら、「GI値の高い低い=太りやすさ・太りにくさ」ではありません。
太る、というのは一般的には体脂肪が増えること。
消費エネルギーに対して食事からの摂取エネルギーが多いことで、余ったエネルギーが体脂肪として蓄積されてしまうことです。
GIはエネルギー(カロリー)とは異なる指標です。
GIが低くてもエネルギーが高い食品もあれば、その逆も存在します。
GIが低い食品やGIを測れない食品(油脂など)でも、エネルギーとしては利用されるため、血糖値を上げない食品でも、そのエネルギーが余れば体脂肪として蓄積されてしまいます。
GIはあくまで血糖値の上がり方を示すものであり、エネルギーとは別物です。
低GI食品だからと言って、いくらでも食べていいもの、というわけではないため、誤解しないように気をつけましょう。
GIが低いと糖尿病になりにくい=半分嘘
習慣的な食事のGIが高いほど糖尿病にかかりやすく、低いほどかかりにくいという研究報告があります。*3)
そのため、GIの低い食品は糖尿病のリスクになりにくい食品、といえるかもしれません。
ただし、糖尿病のリスク要因となるのは食事のGIだけではなく、肥満度や運動習慣、塩分や飽和脂肪酸の摂取量など、より優先度の高いものもあります。
「太りにくさ」と同様に、低GI食品を食べていればほかは何を食べても大丈夫、どれだけ食べても大丈夫というものではありません。
現状では体重管理や運動、減塩、飽和脂肪酸の摂取量を抑えることが予防法としては大きく、これらに気をつけたうえでGIにも注目するとより効果的、といったものだと理解するといいですね。
低GI食品を食べるダイエット方法とその効果
「血糖値を上げない食事なら太らない・やせる」という考えから、血糖値を上げない食事を推奨するダイエット方法があります。
上で解説した通り、「血糖値の上げやすさ」=「太りやすさ」ではありません。
体脂肪の増減はあくまで「消費エネルギーと摂取エネルギーとの差」が問題であるためです。
血糖値を上げないことを目的として、結果的に摂取エネルギーが消費エネルギーに対して減少すればダイエットになりますが、ダイエットの本質は血糖値ではないことに注意しましょう。
まとめ
「GI」は「血糖値の上げやすさ」を示します。
とはいえ、血糖値の上げやすさ=太りやすさというわけではないため、GI値の取り扱いには注意が必要です。
「低GI=健康にいい、高GI=体に悪い」と単純に考えず、普段の食生活や運動習慣を意識したうえで、食事全体のGIを下げるように心がける、というのがちょうどいいかもしれません。
生活習慣病予防のための血糖値を下げる食事方法について詳しく解説した記事はこちら
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参考文献 *1)Atkinson FS, Foster-Powell K, Brand-Miller JC. International tables of glycemic index and glycemic load values: 2008. Diabetes Care. 2008 Dec;31(12):2281-3. *2)Taniguchi A, et al. Natto and viscous vegetables in a Japanese style meal suppress postprandial glucose and insulin responses. Asia Pac J Clin Nutr 2008; 17: 663-8. *3)Greenwood DC, et al. Glycemic index, glycemic load, carbohydrates, and type 2 diabetes: systematic review and dose-response meta-analysis of prospective studies. Diabetes Care 2013; 36: 4166-71. Brand-Miller JC, Stockmann K, Atkinson F, Petocz P, Denyer G. Glycemic index, postprandial glycemia, and the shape of the curve in healthy subjects: analysis of a database of more than 1,000 foods. Am J Clin Nutr. 2009 Jan;89(1):97-105. |