投稿日: 2019.04.19 | 最終更新日: 2023.08.07

酵素ダイエットとは?酵素の本来の意味、ダイエット効果と危険性を解説

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酵素カプセル

ダイエットや健康について、いろいろなところで「酵素」という単語を見かけます。
サプリやドリンクなどで販売されていることが多く、それらしいメカニズムとともに紹介されていますが、実際にはこのような商品で痩せるといったことはありません。
それどころか、質の悪い製品では健康被害も出ているそう。
ダイエット業界が紹介している酵素のメカニズムの間違っている点や、多くの人を誤解させている点について解説していきます。

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酵素ダイエットとは

酵素を使ったダイエット方法は決まった手順があるというわけではなく、紹介している媒体によって様々です。

よく見られるものとしては、

  • 1日の食事を酵素ドリンクに置き換える
  • ファスティング(断食)ダイエット中の栄養補給に「酵素」ドリンクやサプリをとる
  • ダイエット中に酵素の入ったサプリを取り入れることで痩せやすい体になる

このような紹介をされていることが多いように見受けられました。

その中でダイエットに役立つ成分として紹介されているのが「酵素」です。
まずはこの酵素がそもそも何なのか、というところから解説します。

「酵素」の本来の意味とダイエット・健康食品の「酵素」の違い

研究イメージ

「酵素」とは、そもそもどういったものなのでしょうか。

本来の意味での「酵素」とは

酵素とは生体内の様々な化学反応において触媒(化学反応を助ける物質)として働くタンパク質です。

たとえば、ヒトの消化管内ではアミラーゼという酵素によって炭水化物を分解して吸収しやすい形に変えています。

また、体内でも様々な物質をエネルギー源として作り替えたり、体内の有害物質を無害なものに変えたりする反応にかかわっています。
このタイプの酵素の例として、アルコールを処理するアルコールデヒドロゲナーゼなどがあげられます。

生化学的な酵素のはたらき

これらの酵素は体内の化学反応に深くかかわっている物質で、生命の維持には欠かせないものといえます。

ダイエット・健康食品業界の「酵素」とは

酵素とは、生体内で合成されるタンパク質で、生体内で行われる化学反応に対して触媒として機能する栄養素、といわれています。

酵素サプリやドリンクの紹介ページでは、人間が一生のうちに合成できる酵素の量は遺伝子によって決まっており、加齢とともに減少していくとされます。

体内で合成される酵素の量が減ることによって太りやすい体になったり、肌トラブルが現れるという説明もありました。

そのため、食品として酵素を摂取することで、基礎代謝を高め、ダイエットに効果を発揮するとされています。

これらの説明には多くの間違った点があるのですが、その点は次に説明します。

生化学的な意味での酵素と、ダイエット・健康食品業界で紹介している「酵素」とは、定義として一致している部分とそうでない部分がありますね。

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酵素ダイエットの理論と誤解

ダイエットや健康食品では、人間が一生のうちに合成できる酵素の量は遺伝子によって決まっており、加齢とともに減少していくと紹介されていました。

このような理論の起源はアメリカの医師であるエドワード・ハウエル氏が提唱した「酵素栄養学」といわれています。

酵素栄養学では、ヒトの体にはすべての酵素のもととなる「潜在酵素」と呼ばれるものがあり、その量はあらかじめ決められている。
そしてその潜在酵素を節約するために食品から酵素をとるのがよい、としています。

しかし、この酵素栄養学の理論は現代科学から見ると間違っている部分が多くあり、誤解のもととなっています。

酵素ドリンクの問題点

酵素は不足しない

実際には、潜在酵素というものの存在も確認されたことはありません。
さらに、体内の酵素は必要に応じて生合成されるもので、そもそも外から摂取する必要はないものです。
よって、この時点で酵素をサプリとして摂取する意味はないとも言えます。

食品から摂取した酵素は体内の酵素と同じ働きはしない

食品から酵素を摂取することで、基礎代謝を高め、ダイエットに効果を発揮するという説明がありました。
しかし、食品に含まれる酵素はタンパク質からできています。
酵素を食品から摂取しても、胃や小腸で酵素以外のタンパク質と同じようにペプチドやアミノ酸に消化・分解されてしまいます。
よって、サプリとして酵素を摂取しても体内や消化管内で働くことはほとんどありません。
仮に糖や脂肪をエネルギーに変えるような反応を触媒する酵素が含まれた食品を摂取しても、基礎代謝が上がるといったことは起こりません。

食品から酵素をとる必要性はない

このように、酵素が不足するということも、酵素を節約する必要性もありません。
また、食品から摂取した酵素が体内で作られた酵素と同じように働くことはありません。
ペプチドやアミノ酸に分解され、生体が必要とする用途に使用されます。

酵素ダイエットの効果

食品から摂取できる酵素の働きにより痩せられる、としている酵素ダイエットですが、実際に効果が得られたとしても、その本質は酵素以外のところにあるようです。

酵素ダイエットの効果は、サプリやドリンクの摂取とともに行う食事の置き換えやファスティング(絶食)による摂取エネルギー(カロリー)の減少によるものが大きく、食品として摂取した酵素の働きではないことが推測されます。

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酵素ダイエットの危険性

酵素ドリンク・サプリによる健康被害

酵素という物質によるダイエット効果は期待できないことをお伝えしました。
しかし、酵素ダイエットにはサプリやドリンクの摂取だけでは効果が見込めないどころか、製品の質によっては健康に悪影響がでる可能性もあります。

摂取カロリー減少による体調不良やリバウンド

体重の変化があるとうたう酵素ダイエットの本質の多くは置き換えや断食による摂取エネルギー(カロリー)の低下によるものです。

単に食事を食べない(もしくは極端に食事量を減らす)といったダイエット方法は、筋肉量を減らして基礎代謝を下げ、リバウンドしやすい体を作ってしまうことになります。
また、体の様々な機能を正常に保つための栄養素が不足し、肌の不調や感染症にかかりやすくなるなどのリスクも考えられます。

健康食品の「酵素」は発酵食品と混同しているかも

「〇〇種類の原料を使用!酵素を壊さないため非加熱で製造!〇年間かけてじっくり発酵!」といった文章で宣伝されていることも多い酵素サプリ。
いわゆる酵素サプリや酵素ドリンクといったものの原料や製法を調べると、野菜や果物などの原材料を発酵させたもののようです。
発酵食品の健康イメージと酵素栄養学を結びつけて論じているようなサプリのサイトが多くみられます。

どのような酵素が入っているか不明

発酵に使われた乳酸菌などの微生物の説明は記載されている場合もあるものの、どのような種類の酵素がダイエットや健康増進に効果があるのかという説明はありません。
製品となっているものにどれだけ酵素が含まれているのかも、表示がないため実際には不明です。

健康被害の報告も

さらに、2016年の国民生活センターの発表では、酵素食品は2015年において190件もの健康被害が報告されており、下痢や体調不良の報告もあったとのことです。
非加熱で長期間かけて製造されていることもあり、製造工程がずさんな製品によっては、人体に有害な微生物が繁殖している可能性すら疑われます。

科学的なデータがない

このような酵素サプリや酵素ドリンクを扱った通販サイトや、酵素ダイエットの効果を紹介するサイトが多数存在しますが、どれも科学的な裏付けとなるデータは提示されていませんでした。
その代わりに使用者の体験談が多く掲載されていましたが、残念ながら体験談は効果を裏付けしてくれるものではありません。

まとめ:時間とお金を使うなら、根拠の分かるものに

せっかくサプリやドリンクにお金をかけるのであれば、しっかり根拠のあるものに使いたいですよね。

酵素を使ったダイエット法は根拠があるどころか、健康を害する恐れもあります。

時間とお金を大事に使って、体にやさしいダイエット方法を選びたいですね。

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参考文献

独立行政法人 国民生活センター:「2015年のPIO-NETにみる危害・危険情報の概要」

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。