食物アレルギーとは
免疫の過剰反応により、体内に入ってきた本来無害な物質を排除すべきものとして判断、排出するために様々なアレルギー症状を起こすアレルギー疾患のうち、食べ物に対してアレルギー反応を起こすものを食物アレルギーといいます。
原因となる食品を食べておおよそ2時間以内にアレルギー反応による症状が現れ、皮膚や口の中にかゆみ・発疹・腫れ、吐き気・嘔吐・下痢などの消化器症状のほか、咳や呼吸困難などの呼吸器症状がみられることがあります。
このうち、2つ以上の強い症状が出るとアナフィラキシーといい、さらにアナフィラキシーに加えて血圧低下・意識障害などのショック症状がある場合には、アナフィラキシーショックという命にもかかわる重篤な状態にを引き起こすことも。
食物アレルギーは子どもたちに多く見られ、乳幼児の5~10%、学童期の1~3%が食物アレルギーを持っているとも考えられています。
食物アレルギーの概要について詳しく解説した記事はこちら
食物アレルギーの予防法にまつわるウワサの真偽
食物アレルギーは乳幼児期の発症が多いためか、子どもの食物アレルギー予防に関して、様々な「予防法」がウワサされています。
妊娠中・授乳中のお母さんの食事、離乳食の開始時期、アレルギー対応食品の使用…などですが、効果はあるのでしょうか?
妊娠中・授乳中のママはアレルゲンを避けるべき?
妊娠中・授乳中からアレルゲンになりやすい食品は食べないほうがいい…というウワサがありますが、これは誤りです。
厚生労働省から発表されている「授乳・離乳の支援ガイド(2019改訂版)」では、子どもの食物アレルギーの予防のために、妊娠・授乳中のお母さんが特定の食品を避けたり、反対に過剰に摂取したりすることに「効果はない」としています。
妊娠中・授乳中はそうでない時期と比べても、より多くの栄養素が必要な時期です。
また、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群などが起こりやすく、食事のバランスが通常以上に大事な時期でもありますので、むやみに特定の食品を避けたり、とりすぎたりせず、バランスよく食べることが大切です。
母乳育児はアレルギーになりにくい?
粉ミルクではなく、母乳だけで育てる「母乳育児」はアレルギーになりにくいというウワサもありますが、これも誤りです。
赤ちゃんに母乳を与えることそのものは、赤ちゃんに最適な成分組成であること、消化器感染症の減少、お母さんの体の回復促進といった様々なメリットがありますが、食物アレルギーの発症予防には効果がないという研究結果が出ています。
反対に、粉ミルクを与えた赤ちゃんが食物アレルギーになりやすい…ということもありません。
赤ちゃんやお母さんの体調、育てる環境に応じて、どちらを選んでも問題のあることではありません。
アレルギー用粉ミルクが乳アレルギー予防になる?
アレルギー用粉ミルクを飲ませると乳アレルギーの予防になるというウワサも。これも、誤りです。
すでに乳アレルギーをもつ赤ちゃんのため、アレルゲンを除去した粉ミルクも存在しますが、食物(乳)アレルギー予防のために取り入れることについての効果は現在では否定する研究報告が多いようです。
粉ミルクに限らず、アレルゲンの除去は自己判断で行わず、必ず医療機関に相談するようにしましょう。
離乳食はなるべく遅く始めるべき?
食物アレルギー予防のため、離乳食の開始(または、アレルゲンになりやすい食品の摂取)はなるべく遅らせるほうがいいというウワサもありますが、これも誤りです。
離乳食の開始はおおむね5~6か月ごろが目安ですが、これよりも遅く始めたり、たまごや乳製品などアレルゲンになりやすい食品を食べるのを遅らせたりすることにも、予防効果についての科学的根拠はないようです。
むしろ、食物アレルギーのリスクが高いアトピー性皮膚炎をもつ赤ちゃんにおいては、たまごの摂取が遅くなるほどたまごアレルギーを発症するリスクが高くなることもわかってきています。
心配な場合は医師の助言を受け、様子を見ながら新しい食材を試していくのがよいでしょう。
食物アレルギー予防法の噂のまとめ
かつては食物アレルギーの予防法として実践されてきた方法でも、現代においてはその効果が否定されているものが多いようです。
お母さんの食事についても、赤ちゃんの食事についても、必要のない制限は行わず、その時期に適した食事をとることが大切です。
ここまでの内容をまとめると、
- 妊娠中、授乳中のお母さんは特定の食品にこだわらず、バランスの取れた食事を心掛ける
- 母乳育児のメリットはあるが、アレルギーの予防効果はない
- 乳アレルギーのない赤ちゃんにアレルギー用ミルクを与える意味はない
- 離乳食は適切な時期に始め、徐々に食べられるものを増やしていく。
(例:卵黄は5~6か月ごろおかゆに慣れてきてから、全卵や乳製品は7~8か月ごろから)
となります。
食物アレルギーのリスク要因となるもの
妊娠・授乳中のお母さんの食事や、母乳かミルクか…などの違いは食物アレルギーのリスクとは関係がありませんが、それ以外で食物アレルギーのリスク因子となることがわかっているものもあります。
厚生労働省から発表されている「授乳・離乳の支援ガイド(2019改訂版)」、日本小児アレルギー学会の「食物アレルギー診療ガイドライン2016」では、
- 遺伝的素因や家族歴
- 皮膚バリア機能の低下
- アトピー性皮膚炎
- 出生季節(秋冬)
- 特定の食物の摂取開始時期の遅れ
…などが指摘されています。
食物アレルギーのリスク因子の予防法
食物アレルギーの直接的な予防法についてはほとんど明らかになっていませんが、リスクになるものを予防する方法についてはいくつか分かってきているようです。
具体的には、アトピー性皮膚炎や皮膚バリア機能低下の部分です。
食物アレルギーそのものの予防効果は証明されていないものの、食物アレルギーの発症リスクとなる湿疹やアトピー性皮膚炎の予防・減少のための取り組みは意味のあるものになるのではないでしょうか?
妊娠・授乳中ママのプロバイオティクス摂取
妊娠・授乳中のお母さんがプロバイオティクスを摂取することで、生まれた赤ちゃんの湿疹が減少することが期待できるようです。
プロバイオティクスとは、生きた有用な微生物を含む食品のこと。
- ヨーグルト
- 乳酸菌飲料
- 味噌
- 納豆
- ぬか漬け
- キムチ
毎日の食生活に取り入れやすい食品も多いので、ぜひ活用したいところです。
保湿によるスキンケア
保湿によるスキンケアを行うことで、食物アレルギーのリスク因子であるアトピー性皮膚炎の予防効果が期待できるようです。
赤ちゃんの皮膚は薄く、乾燥によって荒れやすいのが特徴です。
日常的な保湿に加え、肌に異常があるときは小児科に相談するなど、こまめなケアを心掛けましょう。
まとめ
食物アレルギーの予防法についてはさまざまな噂があるものの、実際に効果が期待できるものは少ないようです。
食物アレルギーの予防に関して、また食物アレルギーのような症状がみられた場合にも、自己判断での対応は勧められません。
不安なことがある場合には医師の診断を受け、専門職のサポートを受けるようにしてくださいね。
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参考文献
日本小児アレルギー学会:「食物アレルギー診療ガイドライン2016ダイジェスト版」
食物アレルギー研究会:「食物アレルギーの診療の手引き2017」